日本における遺伝子組換え作物の生物多様性影響評価は,「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)に基づき行われている.現在,海外で栽培された遺伝子組換え作物の収穫種子をコモディティ(食品・飼料・加工用)として日本で利用する場合は,当該遺伝子組換え作物を日本において栽培する予定がない場合であっても,国内での隔離ほ場試験の結果に基づく生物多様性影響評価が求められている.本稿では日本モンサント株式会社が過去に隔離ほ場試験を行い,既にカルタヘナ法に基づく生物多様性影響評価を終え,「食用又は飼料用に供するための使用,栽培,加工,保管,運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為」が承認された遺伝子組換えトウモロコシ11系統の中から,除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性の形質を持つMON88017系統,チョウ目害虫抵抗性の形質を持つMON89034系統,高リシンの形質を持つLY038系統,そして乾燥耐性の形質を持つMON87460系統の4系統に関する隔離ほ場試験の結果をまとめることで,遺伝子組換えトウモロコシの生物多様性影響評価に用いられた基礎的データを提示した.これらの結果に基づいて,筆者らがどのような視点で生物多様性影響評価を行ったかについて詳述し,結果に基づいて,今後の日本における遺伝子組換えトウモロコシの生物多様性影響評価の在り方に関する考察を行った.
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