土木学会論文集F3(土木情報学)
Online ISSN : 2185-6591
ISSN-L : 2185-6591
最新号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
特集号(論文)
  • 北川 悦司, 加藤 諒, 本間 亮平, 若泉 拓磨, 谷口 宙河
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_1-I_9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     AR(Augmented Reality)は,現実空間に仮想物体を重ねて表示する技術であり,建造物の維持管理や医療など幅広い分野で業務効率化に役立てられている.マーカレスARは,特定のマーカを必要とせず屋内外で利用できるため,特に注目されている.しかし,利用環境が限定的であることや,幾何学的整合性と時間的整合性の技術課題がある.そこで,本研究では,SLAM技術でリアルタイムに取得した環境地図からマーカを自動作成し,GISの幾何データを対象にそのマーカを検索することで位置合わせする手法を提案する.これにより,利用環境に限定されないマーカレスARを実現する.実証実験の結果,AR表現が高精度かつリアルタイムに実現できることがわかった.

  • 矢吹 信喜, 有賀 貴志, 中野 正樹, 酒井 崇之, 大塚 義一, 岩下 将也, 加藤 雅彦
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_10-I_21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     災害廃棄物の処理実行計画は発災後至急策定しなければならないが,多くの時間を要するなどの課題が山積している.そこで本研究グループでは,AI等を活用し実効性のある処理実行計画の策定に資する自動作成支援システムの開発を実施している.本論はその一環として,災害廃棄物の処理実行計画書等の関連文書で使用される各種用語を洗い出し,語彙,概念,意味の機能的な知識の体系化を行うために,これらの用語の概念,属性,関係などを表現するオントロジー(Ontology)を構築した.さらに,構築したオントロジーを基に,自動作成支援システムの根幹となる計画書テンプレートおよび過去の計画書の目次や文章の意味論的照査を自動的に行うシステムを開発し,実際のデータを用いて検証を行った.

  • 牧野 純也, 矢吹 信喜, 福田 知弘
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_22-I_32
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     東日本大震災により発生した指定廃棄物の輸送時には,種々の制約を満たす最適な輸送車両の運行計画を立てる必要があるが,組み合わせ爆発による計算時間の増大により,近似解を求めることに留まっている.本研究では,指定廃棄物の輸送計画を作成する際,必要な制約条件として挙げられる,就業時間内に輸送を完了させること,荷降施設への輸送車両の到着時刻重複を防ぐことに着目し,量子アニーリングにより最適な輸送計画案を導くための基礎的な定式化を行った.また,輸送計画の実行中に発生しうる遅延による計画の乱れの際,運行計画の再作成に用いるコスト関数の定式化を行い,平常時と遅延発生時を想定した輸送計画の最適化を行った.最適化の結果,適切なパラメータ値の設定により,様々な条件下で最適な運行計画表を出力することを確認した.

  • 山田 真, 佐田 達典, 江守 央
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_33-I_42
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     センチメータ級測位補強サービス(CLAS)は,利用時の手軽さや低廉さを特徴とし,移動体での利用に適している.本研究では,AQLOC-Lightを用いたCLASによる移動測位実験を行い,CLASの精度を検証した.また,比較のためRTK測位を同時に実施した.検証の結果,実験ルート別のFix率は,CLASがRTK測位より高い傾向にあった.また,観測衛星数別でFix率を評価したところ,観測衛星数の低下が発生しても,CLASはRTK測位より高いFix率を保つ傾向があることを確認した.さらに,RTK測位のFix解をみなし真値とした評価では,CLASの測位解に大きな水平誤差を持つものが少ないこと,Float解の安定性が高いことを確認した.これらの解析結果から,移動測位におけるCLASの優位性を示した.

  • 安室 喜弘, 藤井 隆行, 谷口 皐貴, 檀 寛成, 窪田 諭
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     図面等が残存しない既設インフラに対する維持管理において,写真測量に基づくSfM(Structure from Motion)による3次元データ化を導入するケースが増えている.足場を選ばないUAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮は効率的であるが,立体構造物の測量撮影には属人的技能が要求されるだけでなく,SfMに多大な計算時間を要する上に,事前には3次元データ化の成否が分からない.本研究ではSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)により,UAVの撮影視点をモニターし,3次元データ化に対する適否を実時間で判断するシステムを提案する.被写体に対する相対移動速度とSfMの成否との因果に基づいた指標を導出し,実験によりその有効性を確認した.

  • 峰岸 樹, 江守 央, 佐田 達典
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_49-I_55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     近年,衛星測位技術の進歩やスマートフォン等の携帯情報端末の普及・高度化により,高精度な測位環境が整備された社会(高精度測位社会)の実現が見込まれている.奈良部らは歩行型MMSを用いた3次元点群計測実験を行い,屋内ナビゲーションのための3次元モデルを作成した.しかし,点群の処理やモデリング作業の簡略化が課題として残った.そこで本研究では,歩行型MMSを用いて取得した点群から屋内環境の3次元モデルを生成することを想定した上で,取得した点群に含まれるノイズの除去の自動化と,その手法に関する評価と考察を行い,点群データから3Dデータを生成する作業の簡略化を行った.

  • 河村 圭, 鄭 巍, 藤井 猛, 中村 隆史, 塩崎 正人
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_56-I_64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     筆者らは,斜張橋の斜材点検の効率化を図るため,斜張橋ケーブル点検ロボットの開発を進めている.本点検ロボットは,一度の昇降でロボット内に搭載された6台のカメラで,斜材表面全周を撮影し,撮影した動画から画像展開図を作成することを特徴としている.本稿では,各カメラで撮影された動画の展開図作成処理の開始時刻を同期させるための目印として,斜張橋ケーブル点検ロボット内部の緑色基盤上に赤色LEDを設置し,撮影画像から赤色LEDの点灯を自動検出することで時刻同期を実現する手法を提案する.さらに,実際に斜材を撮影した動画からの赤色LEDの点灯自動検出精度の結果を示す.

  • 岩原 雄大, 西内 裕晶, 井料 隆雅
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_65-I_72
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     本研究は,道路の路側から取得したビデオカメラの映像から各車両の走行軌跡データを作成する方法を構築し,車線別の交通状況を把握することを試みる.具体的には,高知県高知市にある石立交差点の前後の道路区間をビューポールによりビデオ撮影し,OpenCVライブラリのオプティカルフローを用いて通過する全車両の車両走行軌跡データを作成するものである.加えて,作成した車両走行軌跡データから走行車線と追い越し車線の車頭時間分布を集計し比較するものである.その結果,約9割の車両について正確な車両走行軌跡データを作成することができた.また,走行車線と追い越し車線の平均車頭時間は走行車線の方が有意に短い結果となり走行車線が追い越し車線よりも混雑する傾向にあることを把握できた.

  • 川越 健生, 滕 飛, 樫山 和男, 吉永 崇, 琴浦 毅, 石田 仁
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_73-I_81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     本論文は,地下埋設構造物に対する計画・設計・施工・維持管理を支援するためのMR(MixedReality)可視化システムの構築を行ったものである.MRデバイスとしてHoloLens 2を用い,屋内での使用を想定した計画・設計段階での支援に対するMR可視化システム,屋外での使用を想定した施工・維持管理段階での支援に対するMR可視化システムの構築を行った.本システムの妥当性と有効性について検討するため,屋内における設計図面と3DCADモデルのMR可視化と屋外の施工現場における地下埋設構造物のMR可視化に適用した.

  • 今井 龍一, 山本 雄平, 姜 文渊, 神谷 大介, 中原 匡哉, 安藤 祐輝
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_82-I_92
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     現在,我が国の歩行者交通量調査の多くは,現地調査や動画像の目視判断で歩行者を計数している.そのため,ヒューマンエラーによる誤計数や屋外の長時間計測による熱中症の危険性などの課題が山積している.また,不特定多数の人が往来する環境では,頻発するオクルージョンによる歩行者計数精度の低下の課題が顕在化しており,解決策の確立には至っていない.そこで,本研究では,オクルージョンに対応可能な深層学習による人物認識の技術を検証し,課題点を明らかにすることで,実用可能な歩行者交通量の調査手法を導出した.その結果,人物領域の大半が隠れている場面でも考案手法を適用することで高精度に歩行者を計数できることが示された.

  • 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 土田 直之, 山本 忍
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_93-I_102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     移動体計測車両(MMS)や地上設置型レーザスキャナ等の測量機器やカメラの技術革新に伴い,様々な場所の大量な点群データが計測・蓄積されている.点群データの主な用途は地図調製や地形・構造物の形状把握等である.点群データは膨大な点の集合体であるが,区画線や道路標識等の道路地物としての意味をコンピュータに認識させられると,業務の効率化・高度化や多用途化が実現し,デジタルツイン環境の基盤となることが期待できる.

     本研究では,高精度な3次元地図データであるダイナミックマップから区画線や道路標識等の道路地物の位置情報を解析し,点群データの属性管理仕様【道路編】(案)に準拠した道路地物の3次元空間の領域データへの生成(変換)手法を考案した.そして,考案手法に準じたケーススタディにより,道路地物の点群データを領域データで抽出できることを明らかにした.

  • 大川 博史, 八木 笙太, 大本 茂之, 宮本 崇, 樫山 和男
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_103-I_112
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     本論文は,小型の自律航行型無人潜水機(Autonomous Underwater Vehicle:以後「AUV」とする)により取得した水中マッピングデータを用いて,水中に存在する物体分類を迅速かつ正確に行う手法の構築について検討したものである.取得した水中マッピングデータのうち,水中音響反射強度画像に加え,水深データおよび後方散乱強度データを入力データとして使用し,これらの異種データの特徴量を融合したマルチモーダル深層学習に基づく畳み込みニューラルネットワーク物体分類手法を提案した.本手法の有効性を検証するために,実測した水中マッピングデータへの適用を行った結果,精度評価指標(正解率・マクロ平均F値および再現率)の向上を確認することができた.

  • 梅原 喜政, 塚田 義典, 田中 成典, 上月 康則, 下鳴 恒彰, 平野 順俊
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_113-I_121
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     我が国では,台風,地震,津波などの災害が多発しており,発災時にブロック塀の倒壊による危険性が指摘されている.そのため,現在,ブロック塀の現状把握と点検が急務とされている.徳島大学では,県や市区町村の協力のもと,国交省の点検指標に基づいた実地調査を進めている.しかし,ブロック塀は各所に点在しており,現地に作業員を直接派遣する現行の実地調査では,広域をカバーできない.そこで,著者らは,広域を計測した点群データからブロック塀を抽出する技術を開発し,実地調査の省力化に取り組んできた.本研究では,ブロック塀の抽出技術をさらに発展させ,ブロック塀の点群データを用いて高さと傾きにより危険度を判定する技術を提案する.

  • 井上 晴可, 梅原 喜政, 今井 龍一, 神谷 大介, 田中 成典, 中畑 光貴, 島野 寛己
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_122-I_130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     我が国では,Society 5.0の提唱を契機として,様々な分野でIoTやAIなどの先端技術の導入が検討されている.特に,建設現場では生産性向上や安全管理の発展に大きく寄与することが期待されており,接触事故や墜落事故の低減に向けて作業員の位置や状態を管理する技術の開発に関心が高まっている.そこで,著者らは,建設現場の安全管理に着目し,作業員のヘルメットに貼り付けた模様を対象に深層学習による人物識別の手法を提案してきた.しかし,先行研究には,カメラからの距離や模様の映り方の違いなどにより誤識別すると,同一人物をフレーム間で連続して正しく識別できない課題が生じた.そこで,本研究では,ヘルメットの追跡に基づく補正手法を新たに考案し,人物識別手法を改良する.そして,実証実験を実施した結果,補正手法が有用であるという知見を得た.

  • 塚田 義典, 梅原 喜政, 中原 匡哉, 西田 義人, 窪田 諭, 田中 成典, 川﨑 悠史
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_131-I_140
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     我が国では,道路や河川などの社会基盤の維持管理や自動運転のための高精度3次元地図の生成にMMSが用いられている.ただし,MMSは非常に高価であるため,全国の地方公共団体が利用することは難しい.筆者らは,市販の安価なセンサ機器を組み合わせて車両搭載型センシングユニットを開発し,その実用可能性を検証してきた.その結果,両側に高架橋や高層ビルがある環境下ではGNSSのFix解を得ることができないため,SLAMによる車両の自己位置の推定を検討した.ただし,植生が計測データの中に含まれる場合に推定精度が低下する課題があった.そこで,本研究では,自己位置推定精度の誤差の要因を調査し,その誤差の要因を取り除くことで点群データを補正する手法を提案する.そして,実証実験により提案手法の有用性を確認した.

  • 中村 健二, 塚田 義典, 梅原 喜政, 今井 龍一, 田中 成典, 中原 匡哉, 大月 庄治
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_141-I_149
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     我が国は,台風や地震などの自然災害が多発することから,道路や河川などにおける社会資本の網羅的な維持管理が期待されている.道路分野では,発災直後の道路土工構造物の倒壊による避難経路の断絶を未然に防止する必要がある.こうした背景の下,道路の機能への影響が著しい高盛土や長大切土法面といった特定道路土工構造物の特定土工点検の実施が義務付けられている.しかし,全ての道路法面の正確な位置や詳細な現況を管理,把握できているとは言えず,特定道路土工構造物の適切な管理が不十分な課題がある.そこで,本研究では,MMSや航空レーザ測量によるLPデータの点群データと道路の線形を用いて,道路法面の点群データを自動で抽出する手法を提案した.そして,検証実験により,提案手法の実現場への適用可能性があることを明らかにした.

  • 大月 庄治, 平野 順俊, 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 梅原 喜政, 田中 成典, 岩本 達真
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_150-I_157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     国土交通省では,3次元情報を活用して施工現場の生産性を向上させるi-Constructionを推進している.レーザースキャナで計測された現況地形を示す3次元情報の多くは,点群データで保存されている.点群データは,一般的に3次元座標値と反射強度のみを保持するが,カメラ画像を用いることでRGB値を付与することができ,地物の視認性の高さから広く活用されている.しかし,各点に対応したカメラ画像の選定に労力を要する課題や,カメラ非搭載の機器では着色できない課題がある.そこで,本研究では,GANを用いることで,カメラ画像を必要としない点群データの自動着色技術を開発する.

  • 中畑 光貴, 今井 龍一, 神谷 大介, 山本 雄平, 田中 成典, 中原 匡哉, 姜 文渊
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_158-I_168
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     我が国では,自動車交通の実態を把握するために交通量調査が実施されている.当該調査は,調査員が目視にて車両を確認し,小型車と大型車ごとの通過台数を計数する方法が一般的であるが,調査員の確保が難しく深刻な問題になっている.そのため,国土交通省では,人手による調査を廃止し,動画像を用いて通過台数を自動で計数する技術の導入が検討されている.既存研究に着目すると,機械学習や深層学習を用いて車種を分類して計数する手法が開発されているが,実務で必要とされる車種の分類精度に至っていない.そこで,本研究では,調査員が車種の分類時に着目する車両の外形や部位の形状に基づいて車種を分類することで,車種ごとの通過台数を計数する技術を開発した.そして,実証実験を通じて,提案手法の有用性を確認した.

  • 今井 龍一, 神谷 大介, 山本 雄平, 田中 成典, 中原 匡哉, 姜 文渊, 中畑 光貴
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_169-I_178
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     我が国では,道路の交通実態を把握するために,交通量調査が実施されている.昨今,当該分野では,作業の効率化や省力化を目的として動画像から交通量を計数する技術が注目されており,多数の技術が開発されている.これらの技術は,昼間に撮影された動画像に対しては実務に適用可能な精度で計数できる.しかし,夜間に撮影された動画像に対しては,十分な明るさを確保できず,車両の形状や色が不明瞭になるため,計数精度が著しく低下して実用性が確保できない課題がある.そこで,本研究では,深層学習を用いて夜間に撮影した動画像を昼間に撮影した動画像のように変換して交通量調査を実施する手法を考案した.そして,実証実験を通じて考案手法の実用化に向けた具体的な検討事項を明らかにした.

  • 松尾 龍平, 姜 文渊, 山本 雄平, 中村 健二, 田中 ちひろ, 田中 成典, 鳴尾 丈司
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_179-I_188
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     近年,建設現場では労働災害を防ぐため,IoTによる効果的な安全管理の対策が求められている.これに対して,物体検出手法により作業員や建設機械の位置情報を取得して安全管理に生かす試みがなされている.しかし,作業員や建設機械が混在し,危険な領域が常時変化する建設現場では,動画像から物体検出手法を用いて検出対象物を検出することが困難である.そこで,深層学習の適用が考えられるが,正確に検出するには,建設現場に特化した検出モデルへの更新が必要である.しかし,そのための学習データを手動で作成するには多大な労力を要する.そこで,本研究では,建設現場において高精度に検出するための深層学習用学習データの自動生成手法を提案する.実験では,建設現場の映像を対象にシステムを適用した結果,その有用性を確認できた.

  • 肖 智葳, 姜 文渊, 山本 雄平, 中村 健二, 田中 ちひろ, 田中 成典, 鳴尾 丈司
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_189-I_198
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     我が国では,i-Constructionを通じて建設現場の生産性の向上を目指す革新的な技術を求めている.この実現には,AIやIoTなどの技術により作業員や建設機器を追跡し,動線を取得する必要がある.こうした背景の下,多くの研究は,建設現場の作業員や建設機器を追跡可能な技術を開発している.しかし,これらの技術を建設現場に適用する場合,オクルージョンが長時間かつ多発する区間において,追跡が困難な課題が見られた.そこで,本研究では,オクルージョン箇所の前後において作業員や建機の画像上の特徴を用いた同定手法を提案し,それにより,オクルージョン区間においても,継続的に追跡可能な技術を開発する.実験では,提案手法を実際の建設現場の映像に適用することで,オクルージョン箇所の前後における作業員や建機を正しく同定して追跡を継続できることを確認した.

特集号(報告)
  • 山田 怜旺, 鈴木 弘司
    2022 年 78 巻 2 号 p. II_1-II_8
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     交通安全対策事業について,道路管理者や交通管理者が協力して効果的な事故対策を検討するためには様々な情報を組み込みつつも専門家以外も継続使用できる簡易な事故データベースシステムの構築が求められる.そこで本研究では,より多くの人が利用できるよう汎用性の高いソフトウェアを用いてデータベースを構築し,地理情報等データも活用した分析システムを提案した.また事故データの発生位置精度の課題を解消し,元データに含まれない路線情報を付与するため,マッチング手法に関する検討を行った.さらに,構築したデータベースを行政職員に使用してもらい,アンケートにより使用感を評価した.本データベースで得られた集計結果を用いて,特定の事故属性の発生分布の把握や既対策箇所との関係を可視化することが可能となった.

  • 照井 理仁, 佐田 達典, 江守 央
    2022 年 78 巻 2 号 p. II_9-II_17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     準天頂衛星システムは,日本国内における衛星測位の精度を向上させることを目的として整備が進められている衛星測位システムである.本研究は,準天頂衛星システムと他の衛星測位システムの併用時の測位精度の検証を行ったものであり,衛星測位によって取得された測位結果について衛星測位システムの併用パターンごとに比較することで,どのような併用パターンが最も効率よく精度の高い測位となるのかを評価した.その結果,天空が開けた地点においては,準天頂衛星システムとGPSの併用による測位が最も安定して高いFix率を得られ,建物等による電波遮蔽が顕著な地点においては,さらにBeiDouを追加した3種類の衛星測位システムを併用した測位が最もFix率が高いことがわかった.

  • 宮澤 塁, 佐田 達典, 江守 央
    2022 年 78 巻 2 号 p. II_18-II_25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     自動運転など次世代ITSの技術開発には,衛星測位システムによる位置特定技術が必要である.衛星測位システムは,高層ビルが建ち並ぶ環境や上空が植生に覆われた環境においては,捕捉可能な測位衛星の数が少なくなることや反射波や回析波といったマルチパスの影響を受ける信号により,測位精度が大きく低下する.本研究では,車両が走行中か停車中かの車両挙動ごとに信号強度の差を求め,測位計算に適した衛星選択を行った場合の効果を検証した.その結果,走行方向,走行環境,車両挙動によってはマルチパスの影響を受けている衛星が除外され測位率,Fix率の向上が確認された.

  • 笹野 拓海, 山口 裕哉, 白石 宗一郎, 岡本 直樹, 岩上 弘明, 佐田 達典
    2022 年 78 巻 2 号 p. II_26-II_33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル フリー

     モービルマッピングシステム(MMS)に搭載されるレーザスキャナはTOF(Time of Flight)方式が主流であったが,近年では位相差方式レーザスキャナを搭載した機種が登場している.そこで本研究では位相差方式レーザスキャナを搭載したMMSによる計測時におけるターゲット表面の素材が異なる場合での取得点群の分析および検証を行った.結果として,反射強度が強いターゲットではターゲットの設置位置とは異なる場所に点群がプロットされノイズを生じやすいこと,反射強度が中程度となる場合は正常な計測となり,反射強度が弱いターゲットでは取得した点群の形状に乱れや取得点数が少なくなること,ターゲットに対するレーザ入射角が83°以上90°未満と大きな値になる場合に限りノイズが発生しなかったことが示された.

feedback
Top