土木学会論文集F3(土木情報学)
Online ISSN : 2185-6591
ISSN-L : 2185-6591
77 巻, 2 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
特集号(論文)
  • 渡邉 大智, 古木 宏和, 宗像 俊, 小島 尚人
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_1-I_12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,コンクリート表面点検支援を目的として,画像特徴領域内外の分類・解釈を担うアルゴリズム(TFCアルゴリズム)を提案したものである.画像が高分解能になる程,画像特徴別に教師データ選定が困難となる.この対策として,TFCアルゴリズムでは非階層型教師無し分類法を中核とし,クラス別重心ベクトルのノルム(電磁波反射率)に基づいて,画像特徴領域内外を分類する.高分解能画像に対する適用実験の結果,1)電磁波反射率に基づいて,対象画像特徴領域内外の分類と点検候補ランク付け(表面部or深部)が可能,2)多重散乱によって発生する微細ひび割れ境界の「浮き領域」も検出できる.3)さらに,点検画像(動画・静止画)に対する準リアルタイム処理システムを開発し,既存システム併用型&アイデア創出支援型システムとしての新規性と拡張性を示した.

  • 宇野 敬太, 佐田 達典, 江守 央
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_13-I_22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     Galileoの初期サービスが2016年に開始され,日本においてもGalileoを利用する際の利便性が高まっているため,今後GalileoとGPSやQZSSとの併用が進められていくことが予想される.本研究では,キネマティック測位におけるGalileoの利用方法の検討として,信号強度を閾値として設定し測位に利用する衛星を選択することで,GPS,QZSSとGalileoを併用した際の測位性能への影響を検証した.信号強度マスクを設定した場合,GPS,QZSSのみでは衛星数の不足が懸念されたが,Galileoを併用した場合では信号強度マスクを設定することによる有意なFix率への影響を示した.

  • 小川 福嗣, 近田 康夫, 中山 晶一朗
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_23-I_29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,橋梁点検の一部である所見記述に対してStructural Topic Modelを援用し,専門技術者の総合的な判断を利用した点検結果の分類および損傷形態の把握を試みた.点検所見には,これまで主に活用されてきた点検管理システムに入力された損傷程度といった定型的な項目以外の維持管理上重要な情報も含まれ,情報の抽出や解析を行えることにより,点検管理システムに蓄積するレコードの検証および簡略化や高度化に活用することができる.損傷種別ごとにトピックが形成され,また,北陸地域における早期劣化の一因であるASRに関する損傷を生じているなど特徴的な損傷形態をトピックとして抽出されていることから,今後の維持管理への活用可能性を示した.

  • 鎰谷 賢治, 菊地 太郎
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_30-I_39
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     トンネル点検業務の効率化や省力化を目的とした写真画像による点検支援技術が注目されている.この技術で変状の検出や測定などを高精度に行うためには,その撮影画像は変状の検出や測定などの後工程が要求する画像品質を満たす必要がある.この画像品質は,撮影条件や撮影システムの工学的性能だけでなく,撮影対象であるトンネル壁面や変状の状態からも大きな影響を受けるが,撮影されたトンネル壁面や変状の状態を定量的に取り扱うことはこれまで困難であった.本研究では,トンネル壁面や変状の状態を3種類のパラメータのみで定量的に取り扱う方法と,この方法を用いてシステムの性能を低コスト,短時間で合目的的かつ定量的にベンチマークすることができるトンネル点検用撮影画像のシミュレーション方法を開発し,その実用性について検討を行った.

  • 山根 達郎, 全 邦釘, 渡部 達也
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_40-I_50
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     橋梁点検における撮影画像には,特定の損傷以外にも部材名称などの様々な情報が含まれている.本研究では,多様な損傷や部材が写っている画像を基に,損傷状況を説明した文章を生成できるDeep Learningモデルの構築を行った.さらに,Deep Learningモデルが文章を生成する際に,入力画像のどの部分に着目しているのかの可視化を行った.構築されたDeep Learningモデルは高い精度で損傷状況を説明する文章を生成できることが示された.また,損傷状況を説明した文章の生成時に,損傷の発生箇所や各部材に着目して単語を出力していることが示された.さらに,損傷発生部材のみならず部材周囲の複合的な要素に着目して判断を下していることが示唆された.

  • 河村 圭, 橋本 祐弥, 塩崎 正人, 中村 隆史
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_51-I_57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     現在,斜張橋の斜材の点検は,高所作業車を用いた目視点検または特殊高所技術による目視点検によって行われている.しかし,これらの点検方法には,点検可能な高さに限界があることや点検者の安全に細心の注意を払いながら作業を行う必要があるといった問題がある.そこで筆者らは,斜材点検の効率化を図るため,斜張橋ケーブル点検ロボットの開発を進めている.本点検ロボットは,一度の昇降で斜材表面全周を撮影し,撮影した動画から画像展開図を作成することで,損傷の位置と形状を簡単に確認できる点を特徴としている.本稿では,画像展開図を作成する上で課題となっていた斜材表面の平面化手法として,幾何学的に導き出した画像変換式を利用する手法を提案するとともに,その変換式を画像処理プログラムとして実画像に適用した結果を示す.

  • 今井 龍一, 神谷 大介, 井上 晴可, 田中 成典, 藤井 琢哉, 三村 健太郎, 伊藤 誠
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_58-I_66
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     建設現場における労働災害をゼロにするには,効果的な安全管理の対策の徹底が肝要である.安全管理の一方策として,ビデオカメラを用いて危険箇所への侵入や建機と接触する恐れのある作業者をリアルタイムに警告することが考えられるが,この場合,作業者の自動識別が必要となる.深層学習を用いた人物識別の既存研究では,顔認証,歩容認証や人物同定などで従来よりも高精度な成果を得ることが報告されているが,服装などが類似する作業者が往来する建設現場への適用は困難である.

     本研究は,建設現場の作業者が常に装着するヘルメットに着目し,深層学習の畳み込みニューラルネットワークに基づく人物の識別手法を提案した.そして,模様と符号の学習モデルに同手法の評価実験を実施し,建設現場における人物識別に適用できる可能性のある知見を得た.

  • 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 伊藤 大悟, 栗原 哲彦
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_67-I_76
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     我が国では,道路管理者による日々の目視点検や数年に1度の路面性状調査により道路舗装の健全性が保たれている.これらの作業では,作業時間や点検費用が課題とされている.この現状に対し,近年では,走行車両に取り付けたカメラの画像から深層学習を用いて道路舗装のひび割れやポットホールといった道路損傷を検出する手法やひび割れ率を算出する手法が提案されている.しかし,これらの技術は,ひび割れの評価方法が実現場の評価方法と異なる.

     本研究では,ドライブレコーダの動画像に深層学習を適用し,道路舗装のひび割れを評価する手法を考案した.そして,実証実験より,舗装点検要領における診断区分I~III相当のひび割れ評価が可能なことを確認した.

  • 久保田 恭行, 西山 哲, 矢吹 信喜, 福田 知弘, 手塚 仁, 尾畑 洋, 村上 治
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_77-I_88
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     トンネル工事での肌落ち災害を防止するため,作業中は切羽の状態を常時継続的に監視する必要がある.切羽での大規模な崩壊の予兆として,崩壊までの時間に差はあるものの小規模な落石が見られる場合があるが,目視では落石の確認が困難であるため,大規模崩壊に巻き込まれ,重大災害に繋がる可能性がある.そこで,筆者らはAIにより切羽のみに解析範囲を制限し,背景差分法を軸に面的に落石を検出するシステムの開発を検討した.本研究では,落石検出の処理の解析範囲を切羽に制限することや,粉塵といった微小な物体や映像のノイズ除去等について検討した.次に切羽の大規模崩壊の前兆となる落石を想定した映像を用いて画像解析を行った.その結果,小規模な落石を検出でき,肌落ち災害の発生リスクを軽減する可能性を示した.

  • 土屋 充志, 水谷 孝一, 若槻 尚斗, 海老原 格
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_89-I_96
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     本論文では屋内土木環境においてロボットを導入する際の自己位置推定法について音響反射を用いる手法を提案する.音響センサーは一対の水平無指向性スピーカーと水平無指向性マイクロフォンで構成され,スピーカーから放出した音が壁面で反射しマイクロフォンに到達するまでの時間を計測することで各壁に対する反射経路の距離を計測する.さらに,推定された反射経路の距離,ロボットの車輪に取り付けられたロータリーエンコーダーの回転数,事前に与えられた地図情報を入力とし拡張カルマンフィルタを用いて自己位置推定を行った.シミュレーションによる検証では音響センサーの標準偏差が0.2mの時,位置誤差が0.1m以下となった.また,無響室にてロボットステージを1m動作させたときの位置推定誤差が最大で±0.05mであることを確認した.

  • 小山 誠稀, 矢吹 信喜, 福田 知弘
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_97-I_113
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     国土交通省は橋梁管理者に対して,5年に1度の定期点検を義務づけている.センサ類の小型化,低価格化に伴い,多数のセンサを橋梁に設置してモニタリングが可能になると考えられる.人間は,センサから得られる大量のセンシングデータとセンサの設置情報から橋梁の状態を判断する.人間と同じようにコンピュータが橋梁の状態を判断するためには,橋梁とセンサの関係とセンシングデータを合わせて処理する必要がある.そこで,本研究では橋梁とセンサの関係をデータベースで管理する手法を提案する.橋梁とセンサの関係をデータベースで管理することで,橋梁諸元情報とセンシングデータを一元的に処理できると考えられる.検証実験で,従来の図面や書類による情報管理手法と比較して,提案手法では人間の作業時間が3割以下となることを確認した.

  • 田中 陸人, 矢吹 信喜, 福田 知弘
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_114-I_123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     就業中の作業姿勢の悪化は筋骨格系障害を始めとする労働災害の要因となるため,作業姿勢の定量的な評価を通じて姿勢の改善につなげる必要がある.既往研究では,機械式モーションキャプチャシステムが用いられているが,それらの機器は現場導入時のコスト増大が懸念される.そこで本研究では,建設現場での利用が開始されているヘルメット装着型端末を利用することで,コストの課題に配慮した上で,LSTM(Long Short-Term Memory)を用いた姿勢推定手法を提案する.また,検証実験では,OWAS(Ovako Working Posture Analyzing System)法による姿勢評価に対して,提案手法を適用することにより,鉄筋工作業員の身体負荷が大きい姿勢を再現率80%以上で推定できることを確認した.

  • 安室 喜弘, 浅井 優志, 森 直紀, 窪田 諭
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_124-I_130
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     近年,現場作業において普及が進むタブレット端末に搭載されているカメラと手書き入力機能に注目し,タブレットで作業者が手書きでメモをした内容を現場でAR(Augmented Reality)表示することで,効果的な情報共有を可能にすることを目的とする.作業者が現場で手書きした作業内容とともに,背景のカメラ画像の自然特徴点を登録しておくことでマーカレスARを実施する.従来のマーカレスARでは,平面上の画像特徴点を使うため表示可能な観察角度の範囲が限定的であったが,本研究では,SfM(Structure from Motion)を基に立体的に自然特徴点を登録することにより,AR表示可能な観察範囲を拡大させた.コンクリート構造物を対象として実験において確認した提案手法のAR表示性能について報告する.

  • 洲崎 文哉, 樫山 和男, 琴浦 毅, 石田 仁, 吉永 崇
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_131-I_139
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     本論文は,iOSに対応したARKitを用いて,地下埋設物の設計・施工・維持管理を支援するAR可視化システムの構築を行ったものである.具体的には,地下埋設物のCADモデルを設計図面上に重畳させるシステムおよび現地においてCADモデルを重畳させるシステムの構築を行った.設計図面上にCADモデルを重畳させるシステムでは,3次元都市モデルを同時に重畳することで位置関係の把握を容易にした.また,現地においてCADモデルを重畳させるシステムでは,地下埋設物のAR可視化を現地において違和感なく行うマスキング処理について検討するとともに,CADモデルの重畳位置の精度を向上させるための方法について検討を行った.本システムの有効性を検証するため,実際の埋設構造物のAR可視化に対して適用を行った.

  • 奥田 知之, 窪田 智則, 篠原 崇之
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_140-I_152
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     深層学習による路面ひび割れの自動抽出は,密粒,排水性,コンクリート等路面種別の違いにより抽出漏れ又は過抽出する課題があった.そこで,本研究は前段で路面を4クラスに分類し,後段でそのクラス分類と路面パッチ画像を用いてひび割れを抽出する,2段階路面ひび割れ抽出手法の提案と検証を行った.それにより,路面種別を用いない場合と精度を比較すると,密粒は殆ど変化なく,それ以外の路面種別ではF値8.3%〜0.6%,AUC0.14〜0.08程度向上した.

     更にその様なパッチ画像に対する自動ひび割れ抽出結果から,舗装調査・試験法便覧のメッシュ法に準拠したひび割れ率を算出する手法を提案し,それにより20m評価ひび割れ率を算出した結果,目視解析ひび割れ率との相関は0.94であった.

  • 河村 圭, 藤井 猛, 塩崎 正人, 中村 隆史
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_153-I_160
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     トンネル建設工事において,落石等の事故により作業員への被害が発生している.被害の主な原因として,切羽からの肌落ちが挙げられる.そこで,厚生労働省は,切羽の監視方法として,切羽監視責任者による目視監視を義務付けている.しかし,工事現場には重機や作業員が多数存在し,落石等の予兆の発見が難しいといった問題がある.そこで著者らは,切羽の監視を強化するために,センサーを使用して工事中の切羽をリアルタイムで撮影し,落石があった場合に警報を発することで危険を周知するシステムを開発している.本研究では,30分程度の連続監視を想定した落石検知手法の提案と,提案したシステムを用いた簡易実験の結果を示す.

  • 梅原 喜政, 塚田 義典, 田中 成典, 上月 康則, 下鳴 恒彰, 平野 順俊
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_161-I_173
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     台風,地震,津波等の災害が多い我が国では,ブロック塀の倒壊による危険性が指摘されている.そのため,現在,ブロック塀の現状把握と点検が急務とされている.徳島大学では,県や市区町村の協力のもと,国交省の点検指標に基づいて実地調査を進めている.しかし,ブロック塀は各所に点在するため,現行の実地調査では,短時間で広域をカバーするには限界がある.一方,建設コンサルタント会社や測量会社では,レーザやカメラ等のセンシングデータの利活用が進んでいる.そこで,本研究では,センシングデータを用いてブロック塀の維持管理を高度化する方法について言及とすると共に,点群データからブロック塀を自動で抽出する技術を提案する.

特集号(報告)
  • 杉本 達哉, 杉浦 聡志, 髙木 朗義
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_1-II_8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     人口減少社会では,都市構造や経済活動等といった,都市活動規模の縮退が想定される中,長期間に亘り都市空間を占有する社会資本の整備検討には,空間を取り扱った経済モデルによる分析・評価は有用である.一方,データ環境の充実や,将来の不確実性に対するシナリオ設定の複雑化を背景として,モデルの計算負荷が増大傾向にあり,その低減は課題の一つと言える.

     本稿では,空間を扱う経済モデルの計算時間効率化を検討することを目的として,杉本らのモデルを対象に,深層学習で広く用いられるRMSpropおよびAdamを最適化計算に適用して,既存適用手法による結果との比較を行った.この結果,計算時間が最大で99%短縮することを確認し,計算時間の効率化に十分貢献することを示した.

  • 窪田 諭, 石井 慶之介, 丸山 明, 安室 喜弘
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_9-II_15
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     我が国に約53万橋ある橋長2~15m未満の小規模橋梁の点検においては,その位置と名称の特定に課題がある.そこで,本研究では,現地で橋名を示すものがない小規模橋梁を対象に,点検効率の向上と点検ミスや点検漏れをなくす点検結果の信頼性向上とを目的に,タブレット端末に橋梁名とその概要を表示するシステムを開発した.システムでは,橋梁名の特定にRFIDとQRコードを採用し,橋梁名,橋梁コード,橋長,総幅員,緯度と経度を表示する機能を有する.システムの有用性を評価するために,新潟県新潟空港周辺の小規模橋梁5橋を対象に実証実験を行った.その結果,本システムが現場での橋梁名の特定に利用可能であることが示唆された.実験では,RFIDの読み取り距離は約23~27cmであり,その貼り付けは橋梁の側面が適していた.

  • 岩城 英朗, 多田 浩幸, 能美 仁
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_16-II_22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     山岳トンネル工事における肌落ち・落石等による死傷災害の防止対策のために,切羽の変状を面的かつ非接触で捉えることが可能なミリ波高速イメージングレーダーに着目し開発を行っている.

     本報では,切羽の肌落ち・落石等の前兆を,削孔作業等に伴う切羽表面の微小な動きや振動数の変化と考え,それらが同レーダーで捉える可能性を,パネル試験体を用いた基本試験および分布振動試験を通じて検証した.次に,トンネル切羽に対し同レーダーを適用する際に,得られた計測値を切羽に対して投影する際の座標変換における課題を示し,その対策として簡易的な変換法を提案した.これらの一連の成果を,実トンネルにおける計測実験を通じて検証した.

  • 藤村 大輔, 笹野 拓海, 山口 裕哉, 白石 宗一郎, 岡本 直樹, 岩上 弘明, 佐田 達典, 江守 央
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_23-II_33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     近年MMSへの搭載が進む位相差方式(PS方式)レーザスキャナを搭載したMMSはインフラ等の点検において活用が見込まれている.そこで基本的な層厚検出精度を把握するため,従来のTOF方式レーザスキャナを搭載したMMSとの層厚検出精度の比較を行った.さらにトンネル等の測位衛星電波遮蔽環境における点検を想定し,同じ計測実験のデータを用いて,測位衛星補正有とIMUのみで自己位置推定した場合の計測データでの基本的な層厚検出精度を比較した.結果として,PS方式はTOF方式と比べ,2倍程度層厚検出精度が良いことが示された.また測位衛星補正無しデータにおいても,較差のRMS誤差は測位衛星補正有と比べて大きな差は無く,測位衛星電波遮蔽環境においても走行速度によらず層厚1mmまで判別可能であることが示された.

  • 宮澤 塁, 佐田 達典, 江守 央
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_34-II_41
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     自動運転など次世代ITSの技術開発には,測位衛星システムによる位置特定技術が必要である.衛星測位システムは,高層ビルが建ち並ぶ環境や上空が植生に覆われた環境においては,捕捉可能な測位衛星の数が少なくなることや反射波や回析波といったマルチパスの影響を受ける信号により,測位精度が大きく低下する.本研究では,車両が走行中か停車中かの車両挙動ごとに信号強度の差を求め,測位計算に適した衛星選択を行った場合の効果を検証した.その結果,走行方向,走行環境,車両挙動によってはマルチパスの影響を受けている衛星が除外され測位率,Fix率の向上が確認された.

  • 笹野 拓海, 藤村 大輔, 山口 裕哉, 白石 宗一郎, 岩上 弘明, 佐田 達典, 江守 央
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_42-II_49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     モービルマッピングシステム(MMS)は現在道路台帳作成や構造物の点検などの用途で活用が進んでいる.既往研究ではMMSの路面(下方)や壁面(側方)を計測対象とした精度検証は行われているが,天井などの上部を対象とした精度検証は十分になされているとはいえない.そこで,本研究では上部および路面上を対象としてMMSの計測をレーザ発射点数を1,000,000点/秒と500,000点/秒の2つの計測レートで行った.結果として、上部空間および路面上にターゲットの設置した場合では上部空間に設置した場合の計測精度が良好であることが示された.

  • 高橋 里緒, 檀 寛成, 安室 喜弘
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_50-II_57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     近年,我が国では高齢者の急速な増加に伴い,車椅子ユーザが増加傾向にある.新しい施設のバリアフリー化は進むものの,既存の物理的バリアの詳細な検証や把握は容易ではなく,身近な環境に見過ごされたバリアが多く存在する.デプスカメラでバリア検証する既往の研究では,検証内容や位置関係の表示が分かり難く,また 検証結果を蓄積し閲覧する手段が未解決である.本研究では,幾何学的な整合性の高いAR(Augmented Reality)による情報提示と,SfM(Structure from Motion)を援用した3次元マップの生成による検証結果の記録方法を提案する.実装に基づく実験により,広視野で正しい隠蔽関係を担保した視認性の高い情報提示と,簡便な操作で検証結果の3次元記録が可能であることが確認された.

  • 窪田 諭, 塚田 義典, 梅原 喜政, 中原 匡哉, 田中 成典
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_58-II_67
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     我が国では,道路や河川などの社会基盤の維持管理や自動運転のための高精度三次元地図の生成にMMSが用いられている.しかし,MMSは非常に高価であるため,全国の地方公共団体が利用することは難しい.筆者らは,市販の安価なセンサ機器を用いて,車両搭載型センシングユニットを設計したが,ユニットの揺れやセンサ機器の設置位置などに課題があった.

     本研究では,高精度な三次元空間データを構築することを目的に,既存のセンシングユニットの課題を解決する新たなユニットを設計し,製作した.そして,車両搭載型センシングユニットによる三次元空間データの生成のための解析手法を考案し,計測実験により,提案手法はレーザスキャナとGNSSのカタログスペックの範囲内で高密度な点群データが生成できることを確認した.

  • 田淵 太雅, 三谷 泰浩, 谷口 寿俊, 田露 , 大辻󠄀 喜典
    2021 年 77 巻 2 号 p. II_68-II_77
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,2017年7月九州北部豪雨で発生した斜面崩壊地を対象としてALOS-2/PALSAR-2データを用いて,単偏波後方散乱差分解析,コヒーレンス解析により斜面崩壊に伴う地形変化箇所の抽出を行った.その結果,前者がより精度よく地形変化を抽出できることを明らかにした.さらに,地形変化の抽出箇所に対して,傾斜角,方位角,局所的な入射角などの地形,衛星の特徴の観点から整理を行った.その結果,後方散乱差分解析では傾斜角の低い領域で地形変化をよく抽出でき,誤抽出も少ないこと,方位角はコヒーレンス解析では東西方向,後方散乱差分解析では南向きの斜面が良く抽出できることが明らかとなった.また,オフナディア角が大きくなるほど,局所的入射角が小さい箇所が抽出されやすくなる傾向が示された.

feedback
Top