土木学会論文集F3(土木情報学)
Online ISSN : 2185-6591
ISSN-L : 2185-6591
74 巻, 2 号
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特集号(論文)
  • 影山 輝彰, 矢吹 信喜
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_1-I_11
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     土木工学分野における3次元プロダクトモデルの利活用は,建築工学分野におけるBIM(Building Information Modeling)の急速な広がりと政府調達における義務化や生産性向上の手段に用いられることにより,その重要性が認識されつつある.本研究では,官側の調達単位や複数の建設プロジェクトを統合して客観的に評価して監理する発注者側の新たな積算マネジメント手法を提案することを目的に,鋼橋を対象に3次元プロダクトモデルより算出する工事数量,直接工事費と工事日数の関係を明らかにしてデータ構造を定義した.この新たに定義したデータ構造を用いて3次元プロダクトモデルを用いた出来高管理EVM(Earned Value Management)システムを開発し,有効性の検証を行った.
  • 辻原 治, 岡本 輝正
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_12-I_19
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     大規模地震が発生するときには,同時多発的な火災を伴う場合が多い.地震による建物の倒壊,津波による浸水などと共に,火災によるリスクについて自治体や住民などが正しく理解し,火災発生時の住民による初期消火や避難行動,消防による対応,また防災まちづくりなどに役立たせることが重要である.
     地震火災リスクの評価に延焼解析を用いることが考えられるが,大規模な領域を一括して解析するのは,コンピュータのメモリや計算時間の関係で限界がある.
     本研究では,電子住宅地図を利用して延焼解析を行う方法において,解析対象領域をブロックに分割して,それぞれのブロックの延焼解析結果を統合する方法を提案し,地震火災のリスク評価に応用した結果を示す.
  • 辻原 治, 植前 成美
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_20-I_28
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     2011年3月の東日本大震災を契機に,防災教育の重要性が強く認識され,地震や津波に関する正しい知識と理解,また,災害時の対応に関する教育が始まっている.これまでに,防災教育に関するテキストやコンテンツは種々開発されているが,教育の動機付けや効果などについて十分な検討がなされてこなかった.本研究では,学生の携帯用として作成された和歌山高専版大地震対応マニュアルを題材に,その内容が学習できるRPGソフトウェアを制作した.そして,ゲーム学習のグループとテキスト学習のグループに対してそれぞれ2回のテストを行って,正答率を比較し,ゲーム学習の効果について考察した.
  • 太田 耕介, 江守 央, 佐田 達典
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_29-I_37
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     鉄道駅をはじめとする公共空間には,人の移動円滑化を目的にサインシステム(以下,サイン)が設けられている.サインに関する研究は,実空間での歩行実験が主流であるが,その手法には課題が残されている.そこで本研究は,モバイルマッピングシステムを用いて鉄道駅空間を3次元点群データとして取得し,そのデータを用いてシミュレーションを行うことで吊り下げ型サインの視認性評価が可能であるか検討を試みた.視認性を評価するにあたり,歩行者の混雑程度による影響,視点高さの違いによる影響を考慮している.その結果として,吊り下げ型サインの健常者視点と車いす使用者視点に対する視認性の差を定量的に明らかとし,点群データによる仮想空間でのサインの視認性評価は可能であることを報告する.
  • 天野 遼太, 佐田 達典, 江守 央
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_38-I_50
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,カーナビゲーションシステムや自動運転,国土交通省による取り組みであるi-Constructionなど,衛星測位による位置情報を用いた技術開発が進められている.日本では高い精度での位置情報取得を目指し,準天頂衛星システムQZSSを整備している.本研究では,GPSと準天頂軌道のみちびきを併用した場合の精度向上効果について検証するため,異なる遮蔽環境において測位実験を行い,測位精度の比較を行った.その結果,QZSSを3機併用した場合に最も測位精度が向上し,特に鉛直方向の精度の向上に大きく寄与することが示された.また,QZSSは準天頂軌道であることから周囲の遮蔽による影響を受けにくく,遮蔽が少ない地点と比べ,遮蔽が多い地点での精度向上効果が高いことが確認できた.
  • 熊谷 樹一郎, 植松 恒, 小野 裕基, 山本 純平
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_51-I_58
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     我が国では少子高齢化社会の到来を迎えており,コンパクト・プラス・ネットワークの方針の下で都市構造を変化させようとしている.その結果,誘導施策による人口流出・都市機能の移転が進む一方で,郊外にむけた都市化は依然として進行しつつあり,都心部・郊外部での低未利用空間の増加が危惧されている.低未利用空間の状態を表す一指標として空き家率があるが,都市全体を対象とするためその調査には多大な労力と時間を要することが指摘されており,今後必要となる中長期的なモニタリングに採用するには課題があった.そこで本研究では,国や地方自治体が定期的に取得・更新する情報に着目し,ベイズ統計に基づいた空き家推定モデルの構築を試みた.現地調査結果との比較から,本モデルの適用により85%以上の推定精度が得られることが明らかとなった.
  • 岡本 健, 今井 龍一, 新名 恭仁, 加古川 尚
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_59-I_69
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     都市部では,今後老朽化の著しいインフラ設備や地下埋設物が輻輳している箇所での構造物の改築・更新・新設といった事業の増加が予想される.既存の構造物は主に二次元図面で管理されているため,工事施工の際に地下埋設物の位置・高さの把握が困難となっている.
     本研究の目的は,地下埋設物の簡易な三次元モデル生成手法を考案し,既存の二次元図面を補正する手法の確立とした.本研究では,近年普及・発展が進んでいるスマートフォンやデジタルカメラを使用して三次元モデルの生成を試行し,施工計画や仮設計画における地下埋設物の状況把握への適用可能性を検証した.その結果,生成した三次元モデルは二次元図面の補正に利用ができる位置精度を有していることを確認した.
  • 山本 耕平, 矢尾板 啓, 矢吹 信喜
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_70-I_81
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     鉄道事業では,線路内の支障事故などを防ぐため,鉄道建築限界を適切に把握することが必要であるが,現状では実際の2本のレールの位置関係から,迅速かつ正確に計測することは難しい.そこで,本研究では,移動計測車両(Mobile Mapping System: MMS)を用いて,線路内における鉄道建築限界の支障を把握することを目的とし,鉄道建築限界断面の中心位置抽出のための計測手法および鉄道建築限界の可視化システムを検討した.鉄道建築限界断面の中心は,2本のレールの軌間の中心をレールの高さに合わせた位置であるため,2台のMMSを各レールの真上に配置して計測する手法を採用した.鉄道建築限界断面はレーザの走査線単位にレール頭部の点群位置から算出し評価することとした.また,連続した軌間中心位置に鉄道建築限界断面モデルを出力し,3次元で可視化するプログラムを試作した.本システムを実験用鉄道線に適用した結果,曲線区間で拡大した鉄道建築限界を用いて,支障物を0.02m以下の精度で把握が可能であり,直線,曲線区間での鉄道建築限界3次元モデルの実用性について問題が無いことを確認した.
  • 井筒 竜宇, 山野 高志
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_82-I_89
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では京阪本線連続立体交差事業をケース・スタディとし,国土地理院が発行している汎用的な空間データを用いて三次元都市モデルの作成手法を構築し,モデルを用いた景観分析を2つのアプローチで行い,両者の結果を比較検証することを目的とした.作成された三次元都市モデルは空間分析に適したモデルに変換され,まずはGIS上での可視・不可視分析を行うことで,高架橋上の列車からの建築物に対する被可視頻度を明らかにした.次に視線追跡装置を用いた実験により,被験者の実際の注視傾向を分析し,両者の比較検証と考察を実施した.結果,視線追跡装置による注視傾向分析によると,水平線付近に位置してスカイラインを遮る建築物がとくに注視され,GIS上で計算された被可視頻度の値とは差異があることを確認することができた.
  • 今井 龍一, 谷口 寿俊, 山田 実典
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_90-I_101
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     我が国では自動運転・安全運転支援システムの実現に向けて高精度3次元地図のダイナミックマップの開発が推進されている.ダイナミックマップは,実在地物および仮想地物の34種類で構成されている.これら地物は,用途や取得位置等の仕様は異なるが,道路基盤地図情報等の既存の道路地図でも定義されている.そのため,両者の相互変換が可能になると,鮮度・網羅性の確保が可能となるため,両者の相互補完に大きく寄与することが期待できる.
     本研究は,ダイナミックマップおよび道路基盤地図情報の地物・属性等を対象に親和性を分析した.そして,親和性の高い12地物を対象に変換手法を考案し,ケーススタディを通じて有用性を明らかにした.
  • 今井 龍一, 栗原 哲彦, 谷口 寿俊, 伊藤 誠, 横田 拓也
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_102-I_112
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     コンクリート打設は,技能者の経験則に基づく機器の操作等の手動の作業が多いため,熟練技能者の経験知を後進に継承していくことが極めて重要となる.我が国の建設業では,高齢化の進行によって熟練技能者が次々と引退していくと予想されているため,技能継承が喫緊の課題として挙げられている.課題解決の一方策として,熟練技能者の経験知を計測・収集し,形式知に置き換えて後進に継承できる可能性があるが,現時点では,熟練技能者の経験知の計測可能性は明らかにされていない.
     本研究は,コンクリート打設作業における技能継承の基礎技術の開発を最終目標として,バイブレータの差し込み位置・時間の計測手法を考案した.そして,模擬現場および実現場で考案手法に則した計測実験を実施し,有用性のある知見を得た.
  • 河村 圭, 長谷川 瑛士, 塩崎 正人
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_113-I_120
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,斜材ケーブル点検ロボットの開発が活発となっている.著者らは,斜材表面を複数台のカメラで撮影することで斜材の損傷を検出する点検ロボットCHiQWAの開発を進めている.本ロボットの特徴は,UAVを用いて斜材最上部へと移動後,点検ロボットの降下を自動制御で行いながら,斜材表面全周を4台のカメラを使用して動画撮影し,さらに撮影結果より撮影画像展開図を作成することである.しかし,撮影画像展開図を作成するための課題として,撮影された画像の円周曲面の展開手法が未開発であることがあった.本研究では,円周曲面展開の手法として,幾何学変換の一つである射影変換を利用する方法を提案した.また,本手法での展開図の作成精度の検証を行い,射影変換を利用する手法の可能性を示した.
  • 吉川 慶, 宮下 征士, 濱田 展寿, 崎田 晃基, 西山 哲
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_121-I_131
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     落石調査の効率化に向けて,航空レーザ測量データから作成した微地形強調図と,タブレット端末上で作動するGISを用いた手法を検討した.実験フィールドにおける微地形強調図を用いた調査では,比高差約1.5m 以上,傾斜角60°以上の急崖を机上抽出可能であったが,安定度までは判定できないため現地調査が必要であった.現地調査では,山の斜面における微地形強調図とタブレット端末が示す自己位置の関係性について検証し,タブレット端末が示す自己位置が落石発生源へのアプローチに効果的であることが明らかとなった.また,タブレット型GISを用いた落石調査データの蓄積は,防災カルテ更新の効率化に貢献するだけでなく,落石発生源の位置再現性もあるため今後の維持管理に有効である.
  • 河村 圭, 中村 優志, 若月 強, 佐村 俊和
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_132-I_143
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     我が国では,地震や豪雨に伴う斜面変動による土砂災害が多く,人的被害・環境被害が問題となっている.その為,斜面変動の広域分布を把握する為の土砂災害領域のアーカイブ化が公的機関や大学・研究所等によって行われている.この作業は,作業者が目視により,土砂災害発生後に撮影された空中写真から斜面崩壊や土石流等による土砂移動範囲を抽出することが多い.しかし,長時間の緻密な目視作業は作業者への負担が大きい.そこで,本研究では,土砂移動範囲の抽出作業の効率化を目指して,深層学習を利用した土砂移動範囲の自動検出手法を提案するとともに提案手法の有効性を検証した.
  • 今井 龍一, 松島 敏和, 金井 翔哉
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_144-I_152
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     ETC2.0対応車載器搭載車両が400万台を超え,ETC2.0プローブ情報のデータ取得量は劇的に増加している.著者らは,ETC2.0プローブ情報による自動車交通流動の総量把握手法の研究開発に取り組んでいる.自動車交通流動の総量把握には,道路交通実態に即したトリップの起終点を把握する必要があるものの,ETC2.0プローブ情報には,誤判別された起終点の情報が含まれている.
     この課題に対して,本研究では,ETC2.0プローブ情報に含まれる誤判別された起終点を自動的に特定し,補正する手法を提案する.具体的には,道路ネットワークのうち,起終点が出現し得ないと考えられるものを「起終点なしリンク」と定義し,起終点なしリンク上の起終点は,すべて誤判別起終点とみなして補正する.提案手法により,誤判別された起終点の補正を試行し,その有用性を確認した.
  • 廣瀬 詢, 檀 寛成, 窪田 諭, 尾崎 平, 石垣 泰輔, 安室 喜弘
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_153-I_158
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,短時間集中豪雨の多発による都市部での浸水被害に伴い,都市部の地下街での内水氾濫のリスクも増加している.降雨状況から予測される地下浸水被害の解析は進んでいるものの,対象となる地下空間にいる一般市民に対して,予測される浸水リスクを分かり易く伝達する方法は未解決である.本研究では,予測される浸水深を写実的なCGにより表示する方法を提案する.3次元データの配信やCG のレンダリングは,端末での計算や通信の負荷が高くなるため,サーバ側でユーザ位置に合わせた全周パノラマ画像を生成し,HTMLとして配信する.これにより,予測される浸水状況を理解しやすく1人称視点で表現できるだけでなく,周囲を見回して対話的に状況を確認することが可能となる.
  • 檀 寛成, 稲津 直毅, 尾﨑 平, 窪田 諭, 安室 喜弘
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_159-I_166
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,屋外構造物の点検・調査や災害現場の状況把握のために,UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮が多用されている.UAVは,足場を選ばず様々な視点から迅速に撮影できるという利点があるが,その飛行経路計画は上空から真下を撮影するための簡易なものに過ぎず,立体形状の空撮では,操縦者の技量に頼らざるを得ない.本研究では,対象の立体形状に合わせて,効率的なUAV空撮用の3次元飛行経路を立案する手法を提案する.具体的には,写真測量や3次元化処理に必要とされるラップ(重複)率を確保しつつ,全体を網羅した撮影を実現するための最適な飛行経路を算出する方法を提案する.本稿では,高度一定の条件で,様々な向きの垂直な壁面をもつ対象について提案手法を適用し,有効性を示す.
  • 今井 龍一, 神谷 大介, 井上 晴可, 田中 成典, 櫻井 淳, 藤井 琢哉, 本間 伸哉, 伊藤 誠
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_167-I_177
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     建設現場において労働災害を未然に防ぐには,ヒヤリハットの段階で危険の芽を摘むことや,個人の疲労状態を常に把握することが重要である.近年,道路交通安全対策や健康管理を目的としたヒヤリハットや疲労度を把握する既存研究が多く存在する.その中で建設現場の労働者を対象にしたバイタルサイン,ヒヤリハットや疲労度に関する既存研究もあるが,当該領域の技術は開発途上であり,今後ますます高度化が図られることが期待できる.
     本研究では,安価で容易にバイタルサインを取得できるスマートウォッチを用いて,建設現場を想定した環境にてヒヤリハットや疲労度の把握の様々な可能性を検証した.その結果,心拍数からヒヤリハットおよび疲労度を把握できる可能性の知見を得た.
  • 今井 龍一, 谷口 寿俊, 田中 拓也
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_178-I_186
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     将来流通が期待される走行車線を識別できるプローブデータの特長を活かした道路交通分析を行うには,車線ネットワークデータが必要となる.車線ネットワークデータは走行支援サービスの用途で調製されているため,道路交通分析でも活用できるようにしていく必要がある.また,道路管理の用途で整備が進められている道路基盤地図情報を道路交通分析でも利用できると,道路の計画系および管理系の各データの相互運用性の向上にも寄与することが期待される.
     本研究は,道路基盤地図情報を対象に道路交通分析に適した大縮尺道路地図の要件に対する満足度を評価し,対応策を定義した.さらに,対応策に基づいて,高精度プローブデータおよび道路基盤地図情報を用いたケーススタディを実施し,有用性のある知見を得た.
特集号(報告)
  • 清本 貴哉, 小島 尚人, 野村 貴律, 酒見 卓也, 渡邊 大智
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_1-II_13
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究は,ハイパースペクトルキューブ動画(HSC動画)を対象とした画像特徴強調処理と分光反射特性のリアルタイム分析支援策を提案したものである.新規に設計・開発した錯視誘発画像特徴強調・判読支援システム(VIS)を用いて,HSC動画に対する画像特徴強調と視認性評価効果について検討した.VISは,元動画と比較しつつ,錯視誘発画像特徴合成動画とそれに対する視認性評価動画をリアルタイムで表示できる.コンクリート供試体表面に対する検討の結果,VISを介して画像特徴強調処理を実施しつつ,分光反射特性と対比するといった「空間&波長スケール」での同時分析をリアルタイムで実現できることが確認された.さらに,画像特徴分類のための教師データ選定支援等,「HSC動画」そのものを新たな製品の一つとして提供できることも示している.
  • 保田 敬一, 山崎 元也
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_14-II_31
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     戦後の高度成長期以降に整備してきた既存インフラはその有効利用・有効活用の観点から,近年は利用者の満足度向上方策や快適性向上対策が求められてきている.本論では維持管理上,道路管理者が快適性を向上させる施策を立案するために複数の代替案を検討できるようにすることを目的として,道路走行時の快適性向上には路面の状態改善と道路景観の改善の両面から検討できることを示す.さらに,本論では道路の快適性向上の成果を評価する方法として快適性マップを新しく提案する.この快適性マップは道路管理者の視点と道路利用者の視点の両方がある.道路管理者は快適性の低い区間の改善をすることで来場者の増加対策とともに維持管理の優先順位決定とも連動させることが可能となる.一方,道路利用者は快適性の高い路線や区間は訪問の動機付けとなる.
  • 宮武 一郎, 飯嶋 有年, 高柳 佐和子, 小澤 直樹, 田中 義光
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_32-II_40
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     国土交通省では,土木機械設備における設計・施工・維持管理の効率化・高度化を目的に3次元モデルの利活用について検討を行っている.本稿は,土木機械設備のうちゲート設備に関する3次元モデルの詳細度や利活用により期待される効果について,述べるものである. 本稿では,ゲート設備に関する3次元モデルの詳細度について,ゲート設備の事業プロセス等を踏まえつつ整理・提案し,その結果について樋門およびダムの放流設備の3次元モデルにおいて事例研究を行い,その提案の妥当性について確認する.また,ゲート設備の各事業プロセスにおける3次元モデルの利活用により期待される効果について整理するとともに,河川用ゲート設備における試行工事により,その利活用により期待される効果についてその一部を確認する.
  • 今野 新, 関谷 浩孝, 蘆屋 秀幸
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_41-II_47
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     行政機関は地震による被害状況を迅速に把握する必要がある.国土技術政策総合研究所では,国土交通省が管理するインフラに設置したCCTVカメラを地震発生後に自動で水平旋回し,俯瞰的に状況を把握可能なパノラマ画像を生成し初動対応を支援する研究を行っている.
     光量が不足する夜間に地震が発生した場合,CCTVカメラの電子感度を上げる機能により光の帯が旋回中の動画に発生する.光の帯はパノラマ画像を生成する際のノイズとなる.そこでCCTVカメラを小刻みに旋回,停止しながら旋回する手法を提案する.
     パノラマ画像を地震発生の直後に生成する必要があるため,本手法の有用性は光の帯を除去可能な停止時間の短さで評価した.地方支分部局の協力が得られた全国の16台を対象に検証した結果では,停止時間は長くても3秒確保すれば十分という知見を得た.
  • 奈良部 昌紀, 佐田 達典, 江守 央
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_48-II_54
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     現在,衛星測位技術や情報通信技術(ICT)の進展により,高精度測位社会の実現が期待されている.しかし,衛星電波を受信できない屋内空間では,統一的な測位手法が存在しないことや3次元の地図が整備されていないこと等,期待される社会の実現にはいまだ大きな課題が残されている.そこで本研究では,屋内空間の3次元地図整備のために,屋内型MMSを用いて建物内の点群データを取得し,3次元形状や位置情報の検証を行うとともに,点群データの3次元座標から屋内空間をモデリングした.その結果,衛星電波の受信できない環境下においてセンチメータ級の精度で位置情報検出が可能であった.また,世界測地系に基づく点群データから3次元モデルを作成することにより,屋内ナビゲーションの地図として,活用可能性を示した.
  • 江守 央, 佐田 達典
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_55-II_62
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     現在,GNSS(Global Navigation Satellite System)は,土木施工などの建設分野などへの活用が期待されている.今後は,都市部での活用も考えられるが,GNSSは高層建築物などの遮蔽物が存在する場所では精度が低下する傾向がある.本研究では,このような遮蔽環境下において,車両走行中の高精度マルチGNSSデータの精度向上を目指し,3次元都市モデルを用いた可視性評価に基づいた衛星選択方法の検証を目的とする.遮蔽環境における取得データをFix解の割合から分析した結果,遮蔽条件に応じて精度向上が確認された.
  • 中島 和希, 佐田 達典, 江守 央
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_63-II_70
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では,GPSとQZSSを併用した場合のQZSSの機数の違いと,仰角の違いによる測位精度を比較して精度変化を検証することを目的とする.2017年12月8日時点ではQZSSは初号機と2号機のみが運用中であったため,GPSのみ,GPSとQZSS初号機であるJ01,GPSとQZSS2号機であるJ02,GPSとQZSS2機の4つのパターンで測位解析を行った.また,仰角が75°~90°の高仰角,45°~75°の中仰角,15°~45°の低仰角に衛星が存在する場合のパターンを解析し比較を行なった.その結果,QZSSの機数が増えると,解析値の標準偏差が減少することがわかった.また,仰角が高い位置にQZSSが存在すれば精度が良くなる傾向にあるが,受信衛星数やDOPによってはその限りでないことがわかった.
  • 中村 栄治, 山本 義幸
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_71-II_78
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     下水施設の健全な運用は現代社会の至上命題の一つである.自治体の財政が縮小する昨今,一般市民に支持される下水施設の管理(ストックマネジメント)が強く求められている.この課題を解決するための一つの手段として,本研究では,下水施設の維持管理業務の効率化を目的として,地上を表す点群を下水管路の3次元モデルと融合させて利用することで,下水管路を可視化できるシステムを開発した.地上の風景と埋設されている下水管路の3次元点群からビデオクリップを作成し,クラウド上のデータベースに登録し,管内の検査結果も合わせて登録する.現場において,これらのデータを携帯端末で参照することにより,地上にいながら下水管路の埋設状況や管内の現況を推測できるシステムである.
  • 野島 和也, 桜庭 雅明
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_79-II_85
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究は,土砂氾濫や津波,高潮などの氾濫災害時における氾濫流の来襲状況を把握・体験するための,疑似体験システムを構築するものである.本研究では,汎用的なツールやデータを用いて,容易にVR映像の構築を行うものとした.現実感を高めるため,数値シミュレーションにより氾濫流を再現し,ゲームエンジンを用いてVR映像を作成する仕組みを作成した.氾濫流に流されて来襲する流木や巨石などのがれきは,氾濫発生時の現実感と緊迫感を向上させる要素であり,疑似体験システムにがれきを取り入れる方法を開発した.氾濫流の計算には3次元のVOF法に基づく自由表面流れの計算を汎用CFDコードであるOpenFOAMの自由表面流ソルバを用いるものとし,その結果をゲームエンジンのUnityに取り込む仕組みとした.がれきの挙動の計算は,Unityの物理エンジンを利用し,簡易に実現させる方法を考案した.ヘッドマウントディスプレイ型のバーチャルリアリティ装置を用いて,氾濫流が押し寄せた場合の状況を擬似的に体験できるシステムを構築した.
  • 園部 雅史, 羽柴 秀樹
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_86-II_92
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     2018年5月からハワイ島キラウエア火山の火山活動が活性化し,大規模な噴火が継続して発生している.これらの噴火によって溶岩流の流出,火山灰や火山ガスを含む噴煙が発生し,建物や道路,周辺環境に多くの損害を与えている.本研究では,CバンドSAR衛星のSentinel-1による観測情報を利用し,噴火による火口の形状の変化や溶岩流の広がりおよび地震による地殻変動の状況を調査した.結果として,火口の形状や溶岩流による地表面の変化および地殻変動が効果的に把握された.これらの観測後に準リアルタイムに入手可能な全天候性の特徴を有するSentinel-1衛星画像を用いた調査結果から災害対応における概要調査や継続的なモニタリングに対する適用性を考察した.これらの調査結果から,溶岩流域分布と火山活動による地殻変位の概略的かつ継続的な調査に対してSentinel-1衛星の有用性が確認された.
  • 高橋 里緒, 松下 真之介, 檀 寛成, 安室 喜弘
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_93-II_98
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,我が国では,他の先進諸国に例を見ない程の急速な高齢化と同時に,身体的弱者の増加傾向にある.福祉政策により新しい公共建築物等でのバリアフリー化は進むものの,実環境では,詳細な物理的バリアの検証や把握は容易ではないことが車椅子利用者に寄り添ったバリアフリー化を妨げている.また,実環境の物理的バリアをAR(Augmented Reality)で可視化する既往研究では,実環境及び車椅子の通行軌跡の3次元モデル作成に時間がかかり,迅速性を欠く.そこで本研究では,デプスカメラの入力をリアルタイム処理することで効率よくバリアを検証しARで可視化する手法を提案する.3次元点群データから床面を認識し,車椅子の占める空間との干渉チェックにより,バリアとなり得る起伏や狭隘箇所を2cm単位程度で検出可能となった.
  • 窪田 諭, 今井 龍一, 中村 健二, 櫻井 淳, 田中 成典
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_99-II_109
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     地形データはLP,MMS,地上設置型レーザスキャナ,カメラ搭載UAVなどの計測機器によって3次元で積極的に取得されているが,その表記標準が定義されておらず,3次元データの標準規格のための基礎資料が存在しない.本研究では,現況地形をLP,MMS,地上設置型レーザスキャナ,カメラ搭載UAVによって計測して得られる点群データを3次元で表示し作成するための方法を検討した.まず,現況地形の点群データを複数計測機器により取得し表示するために,点密度による表示の検討を行った.次に,道路土工の出来形管理を対象として,点群データの点密度を変えることによる精度を検証し,出来形管理に必要な点密度として100点/m2以上にすることを示した.そして,複数の計測機器による点群データを融合するための留意点を検討した.
  • 塚田 義典, 窪田 諭, 田中 成典, 梅原 喜政
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_110-II_117
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     国土交通省は,3次元地理空間情報を国家の最重要基盤と位置付け,データ整備の効率化と迅速化に供する技術開発を推進している.しかし,屋内や地下空間等では,GNSSを用いて正確な位置を測位できない.このような背景の下,近年では,可搬性に優れたセンシングユニットが登場しつつある.既存研究では,画像や点群の時系列データから計測者の相対的な位置と姿勢の変化量を算出し,空間の3次元データを生成するSLAMが提案されている.しかし,SLAMでは,ブレイクライン等の形状特徴や輝度変化の乏しい環境下では自己位置を推定できず,3次元データの生成が困難な課題がある.そこで,本研究では,携帯型のモバイルセンシングユニットを開発すると共に,3次元計測結果から複数の平面領域を推定し,その平面間の交差部にブレイクラインを発生させることにより,点群データの生成精度を向上する手法を提案する.
  • 浅井 優志, 廣瀬 詢, 安室 喜弘
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_118-II_124
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,現場作業においてタブレット端末の利用が普及している.本研究では,タブレット端末のカメラと手書き入力機能に注目し,現場を撮影した画面に留意点などを直接書き込んで保存し,再度同じ場所をカメラで写すと自動的に手書きの注意内容が表示されるAR(Augmented Reality)機能を実現し,効果的な情報の伝達と共有を可能にすることを目的とする.作業者が現場で手書きした内容を保存するともに,カメラ画像からは自然特徴点を抽出して登録する.登録された自然特徴点を認識し,手書き情報を重畳表示することにより,マーカレスARを実現する.本稿では,コンクリート構造物の点検を想定して,場所を指示する表示と,常にユーザの方を向く表示の2通りのAR表示を実装し,実験による表示性能や効果について報告する.
  • 田中 成典, 窪田 諭, 今井 龍一, 中村 健二, 山本 雄平, 塚田 義典, 谷口 寿俊, 中原 匡哉
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_125-II_135
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     UAV写真測量により生成された点群データを施工管理や災害時などの様々な利用シーンで活用することが期待されている.しかし,UAV写真測量には,点群データの生成に膨大な時間がかかる課題や日中の明るい時間帯以外では計測できない課題がある.そのため,UAV写真測量よりも短い時間で,かつ,夜間に計測でき,点群データを生成可能なUAV搭載型レーザスキャナが開発されている.しかし,その点群データの生成精度は現場の条件や計測方法によって変わるため,様々な条件下で同様の精度を実現する必要がある.そこで,本研究では,施工管理の現場における環境や計測方法による計測誤差を調査し,各誤差要因による点群データの生成精度への影響の有無を明らかにする.そして,計測誤差を考慮した方法で計測した場合の点群データの生成精度を評価する.
  • 樋口 智明, 佐田 達典, 江守 央, 村山 盛行, 福森 秀晃
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_136-II_142
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     従来,出来形管理では巻尺,レベルを用いて,幅,長さ,高さの計測が行われてきた.2016年度から国土交通省ではi-Constructionに取り組んでおり,生産性の向上を目標としている.その中で2016年4月に地上型レーザースキャナーを用いた出来形管理要領(舗装工事編)(案)が公表され,今後の利用が見込まれる.本研究は,複数の性能の異なる地上型レーザースキャナーを用いて,出来形管理要領の精度確認試験方法に沿って実験を行い,計測精度を検証した.その結果,出来形管理要領に規定されている表層の要求精度に対して,機種の性能に応じて,想定通りに満たす場合と想定通り満たさない場合があったが,機器の不具合や観測条件に影響されて想定に反して満たさない場合も見られた.
  • 北川 悦司, 村木 広和, 吉永 京平, 山岸 潤紀, 津村 拓実
    2018 年 74 巻 2 号 p. II_143-II_148
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,地上分解能が小さい空中写真を容易に撮影できる手段としてUAV(Unmanned Aerial Vehicle)が注目を集めている.このUAV空撮画像を用いた3次元計測には,一般的にSfM(Structure from Motion)とMVS(Multi-View Stereo)を用いた3次元モデリングソフトウェアが利用される.しかし,これらのソフトウェアは,それぞれ傾向が異なることが指摘されている.そこで,本研究では,現在多く利用されているPix4DとPhotoScanの2つのソフトウェアについて,実験から特徴を導き出し,それぞれの違いについて比較した.その結果,SfM処理時に各ソフトウェアにおいてレンズ補正式が異なる点や,PhotoScanが見た目は綺麗であるが変位抽出に弱い傾向があること,Pix4Dは点群のZ値が若干揺れるが変位抽出しやすいことなどの比較結果を得ることができた.
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