土木学会論文集F3(土木情報学)
Online ISSN : 2185-6591
ISSN-L : 2185-6591
72 巻, 2 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
特集号(論文)
  • Mohammad Hannan Mahmud KHAN, Motohiro FUJITA, Wisinee WISETJINDAWAT
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_1-I_13
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     A massive downpour due to Typhoon Roke attacked the Tokai region on 20th September, 2011. Several roads in the northeastern part of Nagoya city and the adjacent areas were closed to traffic, resulting in a serious commuter chaos. In this research, we attempted to explore the effects of departure hours, early or late departure, the significance of acquiring proper traffic information as well as the impacts of road closures on the level of difficulty of home returning trips. Regression models were developed using both questionnaire survey and taxi probe data. Questionnaire survey can gather drivers' information; however, it is difficult to gather the actual changes in travel condition. On the other hand, probe data can demonstrate a real time change in travel condition at every couple of minutes. Therefore, this study presents a combined usage of both data for a clearer explanation on the travel condition and the behavior of drivers during the typhoon. The findings revealed that the difficulty to gather reliable and comprehensive information on the traffic regulations enforced temporarily during the typhoon had led drivers facing the closure sections and the consequent very long travel delay. In fact, these delays can be avoided if the drivers had chosen the right detour route from the beginning. Based on the findings, this paper also suggests some proper counter-measures to reduce the severity of commuter chaos for the future disaster.
  • 小林 有理, 馮 東方, 武田 茂樹, 鹿子嶋 憲一, 梅比良 正弘
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_14-I_20
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     近年,IoT(物のインターネット)と呼ばれる概念が提唱され,インフラ保守においても利用されることが期待できる.本論文では,UHF帯パッシブRFIDとセンシング技術を組み合わせることで,バッテリーレスの無線センシングを可能とする技術を提案する.ここでは,インフラ保全において重要と考えられる傾斜/振動センサの実現を目的とする.提案するバッテリーレスUHF帯無線傾斜/振動センサタグは,アンテナ特性を傾斜/振動センサにより変化させ,一体で設置される基準タグの特性と比較することで,アンテナ特性変化に起因するRFIDタグの特性変化を検出し,傾斜や振動を検出するものである.
  • 山岡 大亮, 青山 憲明, 川野 浩平, 重高 浩一, 関谷 浩孝
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_21-I_28
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     国土交通省では,平成24年度からCIMモデル事業を実施しており,社会資本の老朽化に伴い今後増加が見込まれる維持管理においても,CIMの利用が期待されている.著者らは,平成28年度に予定している「先導的事業に対するCIM導入ガイドライン」の策定を目的として,維持管理での活用を考慮したCIMモデルの要件をまとめ,CIMモデル作成仕様として公開した.本研究では,CIMモデル作成仕様に基づいた3次元モデルを整備するにあたり,設計・施工段階で作成されたCIMモデルを維持管理での活用に適した形となるよう最適化する際の作業内容及びそのコストを明らかにした.
  • 田原 孝, 矢吹 信喜
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_29-I_41
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     鉄道事業における建設工事プロジェクトでは,情報交換に時間と労力がかかるという課題がある.特に工事施工段階では,構造物の品質管理を目的とした検査およびそれに伴うデータの集約に多くの時間を費やしており,それらの効率化が求められる.そこで,計画段階で構造物に付与したIDに建設ライフサイクルを通して生成される構造物の情報を連携させて蓄積・活用していく仕組みを築き,効率的な情報の管理を目指した.現場の品質管理業務において検証を行った結果,検査およびその後のデータの管理が効率的になることを示し,また,自動認識技術により,構造物の情報を現場で瞬時に利用できること,建設ライフサイクルのプロセス段階を跨いだ情報の連携へと繋がることを示した.
  • 宮武 一郎, 岡崎 仁司, 塚原 大輔, 栗山 卓也, 松田 寛志
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_42-I_51
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本稿は,3次元モデルを利活用した堤防設計において期待される効果について,従来における設計との比較・検証を通じて実証的に述べるものである.
     堤防設計に3次元モデルを利活用することにより,確実に近接構造物との干渉や離隔の確認・把握することや,現況の地形形状をより反映した擦りつけ形状とすることができる.また,設計に堤防法線の修正が伴うような修正が生じた場合においても,3次元モデルを利活用することにより,従来に比して,設計の品質確保・向上や業務の効率性向上にも寄与することが期待できる.関係者へ説明においても,3次元モデルを利活用した堤防設計を活用することは有用な手段として期待される.そして,築堤盛土の数量についてもその精度向上に資することを述べる.
  • 松田 優花, 植松 恒, 熊谷 樹一郎
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_52-I_60
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     緑地などに存在する植生が空間的に連なるように分布することで,ヒートアイランド現象の緩和や生物多様性への寄与などの植生分布が有する機能が効果的に果たされる.我々は,衛星データから算出したNDVIに空間的自己相関分析を応用することで,植生被覆量の多い箇所から少ない箇所へと植生分布が空間的に連なる箇所を抽出する分析手法を開発してきた.その一方で,わが国では少子高齢化が進むなかでコンパクトシティへの移行が提唱されており,今後,増加の見込まれる移転跡地などにおいて植生分布の空間特性を明らかにした上で,オープンスペースの利用方針を検討する必要がでてきている.本研究では空間的自己相関分析を段階的に適用する方法を提示し,土地利用状況に応じた植生分布の空間的な連なりを抽出するとともに,その特性について考察した.
  • 飯田 純也, 名越 豪, 柴崎 隆一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_61-I_72
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     経済のグローバル化やサプライチェーンの進展に伴い,国際貨物を扱うわが国の荷主や物流事業者にとって,日本国内だけでなく,相手国における貨物の動きも含めて貨物の現況を把握するニーズが増加している.このような状況のなか,日中韓の三ヵ国政府はコンテナ物流情報を共有するための取組として,北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の構築に合意した.本稿では,NEAL-NET構築の合意に基づき,開発した情報システムの方針・内容や接続試験による検証結果について整理し,また,その他の港湾物流情報システムとの特徴について比較したうえで,開発プロセスにおいて得られた知見に基づき,政府系港湾物流情報システム間において,港湾物流情報の可視化のための国際連携を行う際の適用技術や展開のあり方について,技術的観点からの示唆を整理するものである.
  • 河村 圭, 吉崎 晶俊, 古賀 通博, 塩崎 正人, 澤村 修司
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_73-I_82
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     トンネルの定期点検は,道路トンネル定期点検要領(H26)にて,5年に1回の頻度で実施することが基本とされたことから,点検業務の効率化が期待されている.このような背景から,著者らは,デジタルビデオカメラを用いた車載型撮影装置よりトンネル壁面を撮影した動画を作成し,キャプチャ画像を結合することでトンネル壁面画像展開図を作成する撮影画像結合ソフトの開発を進めている.しかし,本ソフトに実装されている既存研究の画像間の結合位置探索手法では,結合位置探索精度が不十分であった.このため,本研究では,トンネル壁面画像の結合位置探索精度の向上,さらに結合位置探索処理時間の短縮を目的とした,局所探索法を結合位置探索に用いた手法を提案し,その有効性を検証した.
  • 河村 圭, 長谷川 達哉, 塩崎 正人
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_83-I_92
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     斜張橋ケーブルの一般的な点検方法は,大きく二つに分類され,高所作業車を用いた目視点検,または,クライミング技術等の特殊高所技術による目視点検で行われている.しかし,点検時に高所作業車を使用する場合は,橋面上約30mの高さまでが点検の限界であり,点検中は交通規制が必要である.また,特殊高所技術による目視点検の場合は,作業者の安全性の確保が問題となる.これらを背景として,著者らは,ロボットを用いた斜張橋ケーブル点検装置の開発を進めている.特に,本研究では,USBカメラ,ミニPC,さらに画像処理技術の活用により,1度の撮影でケーブル全周の撮影画像展開図を作成可能とする点検記録システムのプロトタイプを開発した.
  • 河村 圭, 児玉 聖治, 村上 慧季, 塩崎 正人, 中村 秀明
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_93-I_102
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本研究では,ひび割れ抽出ソフトにおいて,ユーザが処理対象であるコンクリート壁面画像中の任意のひび割れ部分を指示することで,より効率的に処理対象画像に適した画像処理パラメータを設定することを可能とする手法を提案する.なお,ひび割れ抽出ソフトとは,著者らが開発した,コンクリート壁面をデジタルカメラなどで撮影したデジタル画像より,ひび割れを画像処理を用いて効率的に抽出するソフトである.本提案手法の有効性を検証した結果,本検証の範囲では,従来のひび割れ抽出ソフトと比較して,本提案手法を使用することにより,同等のひび割れ抽出精度を保持した上で,ひび割れ抽出作業時間を短縮し,かつソフトの操作回数を削減することが可能であることが示された.
  • 廣田 彰久, 西山 哲, 菊地 輝行
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_103-I_111
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本研究は,コンクリート構造物に発生したひびわれの幅をモニタリングする技術として画像計測を適用したものである.まず,反射ターゲットを計測機器として計測点に設置する.そして,任意の位置から1枚の画像に反射ターゲットとひびわれを写し,ひびわれ幅の変位を計算する.本研究では,撮影距離,撮影角度と計測精度の関係性について実験から検証を行った.その結果,撮影距離100mまで,撮影角度30°以内でひびわれの0.1mmの幅の変化を計測できることを確認した.さらに実際の現場に適用しひびわれの計測を行うことによって構造物の劣化進行状況を把握し,モニタリング技術への実用性を示した.
  • 巻幡 憲俊, 髙橋 宗昭, 狩野 正人, 家入 正隆, 津川 拓也
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_112-I_121
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本研究は,腐食した道路照明柱の風振動による疲労損傷度に着目する.疲労損傷度の算出に必要な1次固有振動数・減衰比を精度よく求めるための加速度センサおよび加振方法を検討する.次に,実際に腐食した道路照明柱による疲労試験を行い,疲労強度等級の明確化を行う.腐食進行により道路照明柱の疲労強度が著しく低下し,強風地域以外でも疲労損傷による倒壊リスクが高まることを検証する.最後に,疲労損傷度の算出に必要なセンシングデータを効率的に収集・解析するプラットフォームを構築する.
  • 飯田 純也, 宍戸 達行, 中島 潔, 柴崎 隆一, 三宅 光一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_122-I_139
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     国際海事機関における国際海上交通簡易化条約付属書の改正やASEANシングルウィンドウの進展など,港湾行政手続の電子化が世界的に加速している.近年,わが国でも港湾行政手続を処理する情報システムである港湾EDIシステムについて,国際展開に取り組んでいるところであり,今後も,港湾EDIシステム未導入国からの開発支援の要望がさらに高まることが期待される.そこで本稿は,港湾EDIシステムを巡る世界の動向やASEAN諸国における港湾EDIシステムの導入可能性,わが国の港湾EDIシステム国際展開第一号案件であるミャンマーの事例の整理・分析を通し,港湾EDIシステムを国際展開する際に考慮すべき点についての示唆を整理する.
  • 石田 安理, 山本 恭平, 吉町 徹, 樫山 和男, 志村 正幸
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_140-I_147
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本論文は,VR(バーチャルリアリティ)技術を用いた幾何音響理論に基づく航空機騒音評価システムの構築を行ったものである.本システムは,VR空間内の利用者の位置情報を用いてVR空間内においてリアルタイムに騒音レベルを算出し,航空機の飛行CG映像とともに騒音レベルを実際の音源データを用いて可聴化することで,航空機騒音を視覚と聴覚の両面から体験可能なシステムである.新たに航空機の指向性モデルを導入するとともに,屋内での騒音レベル評価式の実装を行った.本システムの妥当性と有効性を検証するため.実測結果との比較を行うとともに,屋内外での騒音レベルの計算結果を可聴化して,VR空間において計算結果と測定結果との比較を行った.
  • 菅田 大輔, 樫山 和男, 宮地 英生, 前田 勇司, 道前 武尊, 西畑 剛, 厚山 伊智朗, 横山 侑機
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_148-I_155
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本論文は,スマートデバイスを用いた環境流れ問題のためのマーカーレスAR可視化システムの構築を行ったものである.マーカーレスAR技術には,トラッキングのロバスト性を向上させたExtended Tracking技術を用いている.本システムの有効性を確認するため,構造物周辺の大気環境流れ問題および海上工事現場における水環境流れ問題を取り上げ,本システムの適用性について検討を行った.その結果,本システムは環境流れ問題のAR可視化ツールとしてロバスト性が高く有効であることが確認された.
  • 日高 菜緒, 道川 隆士, 矢吹 信喜, 福田 知弘, Ali MOTAMEDI
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_156-I_166
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本論文では,スイープ構造であるモノレールのレールの点群のポリゴン化手法を提案する.モノレールは長大でモデル化が容易でなく,特にレール部分は高所にあり満足に点群を計測することも難しい.そのため,既存の手法ではレールの維持管理に有効なポリゴン化は困難であった.本論文で提案する手法は,構造物がもつ対称性に着目して,点群の欠損に頑健なスケルトンを抽出する.スケルトンが得られれば,それに沿って断面を押し出すことでポリゴンが容易に生成できる.提案手法によって生成されたポリゴンは,規則的な構造を持っており,維持管理に活用しやすい.また,入力点群に欠損があったとしても,補完できるなどの利点がある.本論文では,レーザースキャナで計測したモノレールの点群に提案手法を適用することで有用性を検証した.
  • 杉原 健一, 村瀬 孝宏
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_167-I_174
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     3次元都市モデルは,様々な分野で利活用が期待される重要な「情報基盤」である.これまでの研究で,電子地図上の建物境界線が「頂角がほぼ直角の直角ポリゴン」である場合,それらを長方形の集まりまで分割して,これら長方形の上に,Box形状の建物本体や上から見て長方形の屋根を配置して,3次元建物モデルを自動生成する手法を提案した.しかし,手作業で建物境界線を描くので,建物ポリゴンは厳密に頂角が直角の直角ポリゴンではなく,また,不必要な分割をしてしまう場合もある.そのため,Box形状を組み合わせて作る建物で,Box間に「隙間」や「重なり」が生じてしまう.本研究では,建物ポリゴンを互いに直交する,より少ない数の長方形の集まりに分割するよう整形し,精緻な建物の3Dモデルを自動生成する手法を提案する.
  • 江守 央, 佐田 達典, 岡本 直樹, 岩上 弘明
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_175-I_181
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     近年,MMSによる3次元点群データの活用が注目をされている.特に道路空間においては,道路上から見える路面・道路構造物・周辺の樹木などの点群データを取得することにより道路の基礎情報として道路計画等に活用されつつある.一方,歩道空間においては,超高齢社会を迎えた我が国では移動円滑化促進が必要とされており,歩道空間の平坦で連続的な移動が求められている.このようなバリアフリーに向けた整備において,歩道の状況を的確に把握することは重要な課題とされている.このようなことから本稿では,歩道を歩行しながら計測する歩道計測型MMSを用いて計測した歩道空間の3次元点群データより,歩道空間のバリア評価を実施し, その有用性について考察する.
  • 中村 健二, 田中 成典, 藤本 雄紀, 外山 諒
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_182-I_191
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     我が国の道路網では事故などの交通現象が日々発生している.これらの監視には,監視カメラやトラフィックカウンターなどが用いられているが,定点監視であるため監視範囲には限界がある.そこで,SNSの一種であるマイクロブログを解析し,交通現象に関する情報取得を補完する方法が提案されている.しかし,あらかじめ設定したキーワードで探索するため,取得できるツイート数に多寡が発生する.
     そのため,本研究では,交通現象発生時に関連するキーワードがバーストする特性を用いて,交通現象の獲得に有用なキーワードを選定する手法を提案し,その有効性を評価する.
  • 花立 麻衣子, 菅田 大輔, 樫山 和男, 宮地 英生, 前田 勇司, 西畑 剛
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_192-I_199
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     本論文は,水環境流れ問題のためのAR(Augmented Reality)可視化システムの構築を行うとともに,その適用性について検討を行ったものである.本システムは,対象環境の風景をマーカー画像とし,その内部の特徴点に基づき,カメラの位置・姿勢を推定するマーカーレスAR技術を用いている.河川および海岸における水環境流れ問題を例に,マーカー画像の設定方法について検討を行うとともに,本システムの妥当性について検討を行った.その結果,安定的かつ正確な重畳を行うためには,マーカー画像としては非定常的に変化する水面の部分は含めずに,構造物周辺のみを用いることが重要であることが明らかとなった.
  • 池田 隆博
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_200-I_208
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     衛星測位システムは,GPSやGLONASSに加えてQZSSやGalileoの運用により利用可能な衛星電波が増加傾向にある.衛星電波の増加は,反射波や回折波といったマルチパスの影響を受ける衛星を除去しても,解析に必要な衛星数が得られる可能性があり,今後はマルチパスの影響を受ける衛星を判別する手法が必要となる.本研究では,移動測位に対応したマルチパス検知手法を検証するため、信号強度と搬送波位相変化量の差からマルチパスの影響を受ける衛星を除去した場合の効果を検証した.その結果、マルチパスの影響を受ける衛星の除去によりFix解の取得率が向上することが確認された.
  • 櫻井 淳, 田中 成典, 中村 健二, 今井 龍一, 窪田 諭, 重高 浩一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_209-I_218
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     国土交通省では,土工とコンクリート工を中心に,UAVによる空中写真測量と地上設置型のレーザスキャナの活用が検討されている.レーザスキャナは,UAVより高精度であるが,一度の計測では対象物の不可視領域が発生するため複数回計測する必要がある.多地点のレーザスキャナから取得した点群データを重畳した場合,精度の異なる点が混在する.そのため,3次元モデル生成時に計測特性を考慮して高精度な点を選択する手法が求められる.そこで,本研究では,レーザスキャナの多地点計測における高精度な点群データの選択技術を開発し,実証実験により提案手法の有効性を評価する.
  • 櫻井 淳, 田中 成典, 中村 健二, 窪田 諭, 中原 匡哉, 平 謙二
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_219-I_230
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     地上設置型レーザスキャナなどで計測した点群データの施工管理への活用が期待される.しかし,施工中の点群データには建機や樹木などの点が混在するため,これらを除去して地表面を抽出する必要がある.さらに,建機などとのオクルージョンによって地表面が計測されない場合があるため,計測タイミングの異なる点群データを用いた補完処理が必要となる.既往の点群データからの地表面抽出手法は,都市部や森林部などの計測成果に適している.しかし,これらの手法を道路や河川の土工に適用した場合,傾斜面や整地されていない地表面を正しく抽出できない課題や,欠損した地表面を補完できない課題がある.そこで,本研究では,連続的に計測した2時期の点群データを用いて,施工現場の常時観測における地表面生成技術を開発し,その有効性を評価する.
  • 渡辺 完弥, 今井 龍一, 田中 成典
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_231-I_241
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     昨今は,携帯端末等から取得された自動車,自転車や歩行者の交通モードのプローブデータが交通分析に活用されており,近い将来,高精度な測位座標のプローブデータが大量に流通することが期待される.このことを見据えると,多様な交通モードのプローブデータを同時に,効率的かつ効果的に扱える分析基盤となるデジタル道路地図の整備により,自動車,自転車や歩行者を組み合わせた道路交通分析の効率化や高度化に寄与できる.しかし,このようなデジタル道路地図は開発途上の状況である.
     本研究では,道路交通分析のユースケースから抽出した要件に基づき,デジタル道路地図の仕様や生成手法を考案した.さらに,考案した生成手法に基づき地図を試作し,生成手法の有用性を検証した.
  • 川野 浩平, 谷口 寿俊, 青山 憲明, 重高 浩一, 山岡 大亮, 関谷 浩孝
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_242-I_248
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     国土交通省では,「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入する取組であるi-Constructionを推進している.これまで,情報化施工に利用するために施工段階で3次元データを作成してしてきたが,ICT土工では,測量・設計段階で作成した3次元データを施工や維持管理等のあらゆる建設生産プロセスで活用し,土工における抜本的な生産性の向上を目指している.しかし,各プロセスではそれぞれ異なる3次元データ利用システムが用いられているため,各プロセス間で3次元データの互換性がない状態である.本研究では,道路土工を対象としたソフトウェア間でデータの交換が可能な標準仕様と,その運用方法や具体的な交換すべきデータを検討した.また,データ交換実験を実施して,本研究の成果を用いることで各プロセス間で円滑なデータ交換が可能になることを確認した.
特集号(報告)
  • 内田 裕貴, 朝香 智仁, 野中 崇志, 岩下 圭之, 杉村 俊郎
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_1-II_6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     2014年10月に打ち上げられた「ひまわり8号」は,従来より大幅な観測機能の向上が図られた次世代静止気象衛星である.地球全体を10分,日本付近においては2.5分間隔で観測を行い,地球表面温度の日変化を詳細に監視することが出来る.一方,1999年12月に打ち上げられた米国地球観測衛星TERRAに搭載されたセンサASTERは15年にわたる観測実績および検証実験の成果から地表面温度情報に補正するアルゴリズムを確立し,処理したプロダクトを提供している.
     「ひまわり8号」が観測する温度情報は大気の影響を受けたもので,従来機においても地球表面温度を推定するため種々補正手法が開発されている.簡単な手法としては,近接した観測波長帯域の観測値から大気の影響を推定し補正するスプリットウィンドウ法が知られている.本研究は同時刻に観測されたASTERデータを参照して「ひまわり8号」データにおける本手法の有効性について検証したもので,得られる地表面温度分布や日変化等は都市の熱環境調査へ応用が期待できる.
  • 宇野 昌利, 竹内 啓五, 藤内 隆
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_7-II_12
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     ダム施工においては,コンクリート締固めに専用の機械(バックホウにダム用バイブレータを数本装着した機械.以下バイバック)を使用して締固めを行う.従来,コンクリートの締固め程度や範囲は,バイバックのオペレータが目視で判断し,それを施工管理技術者が確認してきた.これに対し筆者らは,オペレータの熟練度等による個人差のない客観的な締固め完了指標を得る手法として,3Dスキャナの適用性を確認した.これにより締固め作業をリアルタイムで記録するシステムを開発について述べる.
  • 辻原 治, 山口 恭平, 伊藤 秀幸, 岡本 輝正
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_13-II_22
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     MMS(モバイルマッピングシステム)によって撮影した実写映像のDIG(災害図上訓練)への応用を提案する.MMSでは,全方位カメラ,傾斜計,GPSアンテナを車などの移動体に装着し,連続撮影した映像とGISを関連付けることができる.
     DIGはリスクコミュニケーションの手法として各地で展開されており,対象とする地域の地図を用いて,災害時に危険な箇所や避難できる場所などを書き込み,そのような情報の共有と課題の抽出などを行うものである.
     しかし,室内で行うDIGでは,災害情報の見落としや抽出した災害情報の参加者への定着という観点から改善の余地がある.
     本研究では,MMSの映像を利用することで,これらの課題を改善する仕組みとツールを提案する.また,提案した仕組みについて,実践を通して明らかになった効果や課題について議論する.
  • 村本 準, 羽柴 秀樹
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_23-II_30
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     東京でヒートアイランド現象によって真夏日と熱帯夜が増加してきている事がこれまでに数多く報告されている.また,過去100年の間に平均気温が3℃上昇している.これらの問題に対し,都市内土地被覆と気温上昇の関係を分析するために高分解能衛星リモートセンシングはほとんど利用されていない.本検討では,従来から地表面温度を観測してきているLANDSAT衛星画像と高分解能衛星Worldview-3画像を重ね合わせる事により,従来の地表面温度分布画像では解釈が困難であった都心域の詳細な土地被覆と地表面温度分布の関連性が効果的に表示された.更にLANDSAT衛星観測による地表面温度が現地調査から検証された.これらの結果から,地表面温度の分布と都市の土地被覆環境の関係について考察され,特に植生域や影域が地表面温度低下に影響を与えている事が確認できた.
  • 岡本 直樹, 佐田 達典, 江守 央
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_31-II_39
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     MMSの位置精度はGNSS電波の受信状況に依存する.受信状況が良好でない区間では標定点を設置し調整処理を行うことにより位置精度が改善されるが,標定点を多く設置することでMMSの低コストかつ効率的に計測が出来る利点が損なわれてしまう.そのため標定点の配置について研究がなされているが,速度の考慮がされていないなど有効な配置について検討する余地がある.本研究ではMMSの走行速度と標定点間隔について検証実験を行った.計測データを設定した標定点間隔で補正を行い,時間経過と累積誤差の関係について検証した.結果として,速度や標定点間隔が変わっても時間経過と累積誤差の関係は同様であり,水平方向において速度60km/hで目標精度を0.10mと設定した場合,補正後約166m間は目標精度を満たすことができる事が示された.
  • 頼光 拓真, 檀 寛成, 小林 晃, 安室 喜弘
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_40-II_46
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     農業水利施設は,幹線が単純なパイプライン構造をとるものが多く,1箇所の破損事故で広範囲への被害を及ぼす可能性が高いため,調査・診断の効率化が重要である.我々は,従来のカメラ調査では,地上と埋設管との位置関係の把握が容易でないことに注目し,調査画像を3次元化したモデルを検査位置に重畳表示する拡張現実感(AR)システムを提案する.AR表示に用いる調査画像を3次元展開する際に,管内調査カメラの位置や向きが中心からずれることにより,画像に歪が生じ易いという難点がある.本稿では,RGB-Dカメラを併用して検査カメラの姿勢変化を把握し,これを逐次補正する手法を開発した.本手法を用いた実装と実験により,立体に可視化された調査画像の歪を安定して低減させることができ,実時間でのAR表示が可能であることを示す.
  • 飛田 悠樹, 長瀬 清, 内田 理絵, 大槻 颯, 柴崎 敬大, 田上 遼, 川野邊 慧, 入江 博樹, 浪江 宏宗, 岡本 修
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_47-II_54
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     我々が想定する衛星測位の環境には,周囲に構造物や樹木等の障害物が存在する.このような環境での測位では,障害物からの反射波の影響を受け,測位精度が悪化することや測位できないこと等の問題が発生する.これらの問題は,特定の衛星に制限をかけることや衛星システムの選択等の設定により解決できる場合が多い.仰角マスク,SNRマスク等を環境に合わせて設定することでより良い測位結果が得られる.
     本研究では衛星の選択による測位結果の改善を目的に,仰角マスクやSNRマスク等の測位計算ソフトウェアの設定変更にてFix率を向上させる方法を提案した.また,複数の設定にて解析する手法について提案し,実環境であるつくばチャレンジ2016走行コースにて観測したデータに提案手法を適用してFix率を改善した.
  • 田中 成典, 窪田 諭, 櫻井 淳, 長谷川 裕之, 森田 智幸, 安井 嘉文
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_55-II_64
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     建設事業のライフサイクルにおいて図面データを円滑に流通するために,拡張DMデータとSXFデータの相互変換システムが国土地理院によって公開されてきた.ただし,国土交通省公共測量作業規程やSXFなどの改定に対応して,計画,調査段階の数値地形図データから設計,施工段階のSXFデータへの変換,および設計,施工段階のSXFデータから維持管理段階の数値地形図データへの変換を実現する必要がある.本研究では,数値地形図データとSXFデータの相互変換の仕様を策定し,相互変換システムを実装した.本システムは,実務で利用された図面データを正常に相互変換できることを検証し,国土地理院により公共測量ビューア・コンバータに組み込まれて公開され,一般に供している.
  • 内田 理絵, 川野邊 慧, 岡本 修, 藤原 泰明, 高田 知典, 宇野 昌利, 宮瀬 文裕, 米山 文雄, 藤枝 達也
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_65-II_72
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     建設工事では,地域住民とのコミュニケーションを図り,工事への理解と協力を得て工事を進めることが重要である.近年のダムカードに代表されるインフラ施設の理解への取り組みは,その関心の高さから効果が期待されており,工事への理解と協力を得るための積極的な「見せる工事」への要求は高まりつつある.場所毎に異なる多種多様な工種が混在しながら,時々刻々と進捗する工事現場に合わせて工事情報を提供することは,工事への理解と協力を得るためにとても重要である.著者らは,スマートフォンとビーコンを利用した現場見学者のための工事概要案内システムを開発した.見学場所に応じて画像と音声を使って案内するシステムで,誰でも容易に使えるようにスマートフォンの操作を極力必要としないインターフェースを採用した.開発したシステムをダム本体建設工事に適用し,その有効性を確認した.
  • 櫻井 淳, 田中 成典, 中村 健二, 窪田 諭, 今井 龍一, 重高 浩一
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_73-II_81
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     災害時・平常時においてUAVの利用が広まり,土砂災害の状況把握や橋梁点検など様々な事例で活用されている.i-Constructionでは,UAVの空中写真測量を活用した施工管理への積極的な活用が期待されている.i-Constructionに係る規程では,UAVによる空中写真測量で得られた結果に対して,現行の試行成果に基づき要求精度が示されている.しかし,計測条件は現場ごとに異なるため,様々な条件下で同様の精度を実現する必要がある.そこで,本研究では,UAVの空中写真測量における誤差要因の影響度や発生条件を調査し,施工管理のための計測手法を提案する.また,その手法による実現場での計測精度を検証する.
  • 田中 成典, 窪田 諭, 今井 龍一, 中村 健二, 山本 雄平, 寺口 敏生, 櫻井 淳
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_82-II_89
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     社会基盤の維持管理や安心安全・防災等の分野において,様々な機器や解析・処理技術を用い,構造物や地形の状況を正確かつ効率的に把握するための計測技術が研究開発されている.この流れを受けて,国土交通省より3次元情報の利活用促進のための取り組みであるi-Constructionが提唱されたことから,3次元空間を高精度かつ迅速に計測する技術が求められている.著者らは,UAVを用いたレーザ計測技術に着目し,その計測システムと解析・処理技術の開発及びそれらの普及を目的とした運用モデルの提案等の研究を実施している.本論文では,これらの研究活動の基礎段階として実施した網羅的な技術や特許の調査成果を取りまとめ,国内の計測技術の動向について分析し,レーザスキャナ搭載UAVの開発に必要な項目を明らかにする.
  • 小林 優一, 吉野 博之, 谷口 和昭, 金光 都, 徳武 広太郎
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_90-II_95
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     我が国では少子高齢化や,建設業の労働生産性の低迷などの課題を抱えている.国土交通省は,これらの解決策として平成24年度からCIM,平成27年度からi-Constructionの2つを発表した.CIMは建設ライフサイクルを通し,様々な分野で幅広く生産性の向上を図ることを目標とし,i-Constructionは施工において土工を中心に同様の目標を定めている.国土交通省がCIMに関する様々な試行を進める中,各種検討に用いる3次元モデルに関するデータ構築や,次工程へ引き継ぐ際の形状のモデル精緻度を主眼とした試行は未実施である.
     本研究は,CIMとして作成する部材が非常に多い鋼上部工を対象とし,鋼上部工の3次元モデルを効率的に構築する手法を提案する.さらに3次元モデルを構築する際,3次元モデル自体の精度を確保し,従来の2次元設計に対して業務効率化へ寄与する効果を検証する.
  • 藤里 和樹, 檀 寛成, 安室 喜弘
    2016 年 72 巻 2 号 p. II_96-II_102
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/24
    ジャーナル フリー
     災害現場などの記録用途において,地上型レーザスキャナや,空撮画像を用いたSFM(Structure from Motion)が普及しているが,レーザスキャナは足場の制約などから網羅的な計測が難しく,SFMだけでは実寸スケールが得られない.本研究では両者を相補的に統合する手法を提案する.レーザスキャナ併設の校正済みカメラで撮影した画像と空撮画像群を併せてSFMを行い,スキャナ視点位置と被写体とを同時に3次元復元する.被写体の3次元データは,スキャナ画像に投影することでスキャン点群と明確に対応づけられる.これにより,データ統合のための座標変換を陽解法で求められる.レーザスキャナ(Riegl LMS-Z420i)とドローン(DJI phantom II)による空撮による実験より,本手法の有効性を検証した.
feedback
Top