土木学会論文集B1(水工学)
Online ISSN : 2185-467X
ISSN-L : 2185-467X
67 巻, 2 号
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和文論文
  • 朝位 孝二, 古賀 将太, 榊原 弘之
    2011 年67 巻2 号 p. 30-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
     近年水害経験のある流域に配布されたハザードマップの公開効果を把握と流域住民の効果的な防災意識向上の方法を探索することを目的として,山口県岩国市の錦川中流部(美川地域,錦地域)住民にアンケート調査を行った.アンケート調査はハザードマップ配布前後の2回行った.調査の結果,水害対策行動に至る心理段階として「知識」が,規定因として「愛着感」「危機感」が主要な要因であることが分かった.水害対策行動の実施確率からハザードマップの配布効果があることが示唆された.さらに,「知識」「台風14号の被災経験」「危機感」「有効感」「負担感」「ハザードマップの分かりやすさ」が防災意識向上の鍵となることが分かった.
  • 渡辺 勝利, 森山 拓士, 佐賀 孝徳
    2011 年67 巻2 号 p. 41-53
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     低レイノルズ数の片複断面開水路流れにおける斜昇流の内部構造の特徴を,流速計測法と可視化法を用いて考察した.斜昇流の形成が卓越する高水敷水深が比較的大きい流れでは,縦渦構造が集中して形成される領域が高水敷上に複数存在する.とくに高水敷先端部には,水表面まで発達する縦渦構造が安定して形成されることが認められた.この構造は低水路方向への傾斜運動が顕著であり,時針,反時針方向の旋回状の瞬時二次流れ,局所的な低速領域,瞬時レイノルズ応力の生成に直接寄与している.このような瞬時の速度場の形成に寄与する縦渦構造の高水敷先端部における時空間的集中によって,長時間平均特性である斜昇流を内包した対を成す大規模な旋回状の二次流分布が生成されることが明らかとなった.
  • 横山 勝英, 金子 祐, 山本 浩一
    2011 年67 巻2 号 p. 60-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
     感潮河道の湾曲部における流れの特徴と高濁度水塊によるSSの輸送,沈降,堆積現象について筑後川を対象として研究した.高濁度水塊が遡上する際に湾曲の上流側で2次流が観測され,SSが内岸側の底層で上昇していた.湾曲内岸には浮泥層が発達し,最大移動速度は流軸方向に約0.4m/sであった.最大層厚は満潮時に1.3mとなり,河床には3潮汐を経て0.2mの堆積層が形成されていた.底面での巻き上げフラックスと摩擦速度の関係を調べたところ,湾曲内岸では上げ潮よりも下げ潮において巻き上げられにくくなっていた.以上より,湾曲の影響で内岸にSSが集積し,粒子が沈殿して浮泥層を形成し,さらに数時間の間に耐浸食性が高まることで浮泥の堆積が進行してゆくと考えられた.
  • 関根 正人
    2011 年67 巻2 号 p. 70-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
     近年,東京都心部では想定を超える規模の集中豪雨に見舞われることが少なくない.本研究では,このような豪雨に見舞われたときに都心部の住宅密集地域ではどのような浸水が生じ,どのようなプロセスを経て内水氾濫が拡大するのかに注目し,これを数値解析により予測する手法を開発・確立することを目的とする.さらに,この手法を2005年に妙正寺川流域で生じた浸水・氾濫と,2008年に雑司ヶ谷地域で発生した下水道水難事故時の豪雨流出事例に適用した.結果として,現時点で得られているデータに限られるとはいえ解析手法の妥当性が検証されたほか,実際に被害にまで発展した浸水・氾濫のプロセスが水理学的にかなり精密に解析できるようになり,その理解も深まったと考える.
和文報告
  • 中村 智幸
    2011 年67 巻2 号 p. 54-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     1991年から2008年に,利根川水系鬼怒川の黒部ダム下流4.5kmの水域において,河床の露盤化の推移を調査した.露盤河床は1991年に19箇所,2001年に27箇所,2006年に41箇所,2008年に50箇所確認された.露盤河床の総延長は,1991年の571mから2008年の1,309mに増加した.距離100mごとの区間に占める露盤河床の長さの比率はダムに近い区間ほど高かった.流下してきた土砂が黒部ダムで捕捉されて下流への供給量が低下し,その一方で流水がダム下流の土砂を運搬するため,露盤化が進行していると推測された.露盤河床を礫河床に復元するためには,ダム下流に土砂を供給するとともに,流下した土砂を捕捉する構造物を河床に設置する必要があると考えられた.
和文ノート
  • 李 洪源, 松永 信博
    2011 年67 巻2 号 p. 86-91
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
     諫早湾内の海上風データと塩分データを用いて,塩淡成層構造の風応答特性を調べた.諫早湾では,夏季に南南西の風と北北東の風が卓越する.筑後川から供給された淡水は,一般に有明海奥部西岸に沿って輸送され,諫早湾口に達することが知られている.筑後川から108m3/dayオーダの淡水が有明海奥部に流出し,北寄りの風が連吹すると,諫早湾内では強い塩淡成層が形成される.これは,筑後川起源水の諫早湾への流入が,北寄りの風によって加速されるためである.その後,南寄りの風が連吹すると,湾奥部の塩淡成層は解消する.これは,上層の低塩分水が有明海側に押し戻されるためである.データ解析から,諫早湾上を連吹する風は,諫早湾内の塩分構造に大きな影響を与えることを見出した.
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