生体医工学
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55Annual 巻, 4AM-Abstract 号
選択された号の論文の74件中51~74を表示しています
抄録
  • 恩田 寛之, 菅原 賢悟, 岡田 志麻
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 303
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    近年、多種多様なウェアラブルデバイスが開発されているが、開発の際に様々な課題が生じている。本研究では、課題の一つとなっている体脂肪率と生体内の活動電位の関係性を人体の電磁界シミュレーションを用いて明らかにする。一般に、体脂肪率と観測される生体活動電位には負の相関があると考えられてきたが、実人体を用いた検討では、体脂肪率を変化させると体型も連動して変わるため、系統的な検討が困難であった。そこで、電磁界シミュレーションを用いて、人体モデルの体型を固定した状態で、人体組織の電気特性を置き換えることにより体脂肪率のみを変化させ、観測される心臓の活動電位との関係性を調査した。その結果、観測される活動電位の体脂肪率依存性は小さく、体型に対する依存性が支配的であることが明らかになった。

  • 小林 敬裕, 岡田 志麻
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 304
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    本誌では筋疲労を筋が期待する力を発揮できない状態と定義する.今回我々は運動中における筋疲労に着目した.運動中は交感神経が有意に働くことで筋を必要以上に酷使したり,症状を楽観視し無理をしたりするケースがある.これらは怪我やオーバーワーク,運動効率の低下に繋がる恐れがある.そのため運動中に筋疲労を検知できるシステムが必要であると考えられる. 従来の筋疲労検知方法に筋電位を用いた方法があるが,筋電位計測には一般に粘着ゲルを含む電極が使われる.この電極は粘着ゲルによる皮膚のかぶれ,再使用できないこと,金属アレルギーを引き起こす恐れがある.そのため本研究では従来の電極に代わる筋疲労検知システムを開発することを目的とする. 開発システムにはコンデンサの原理を応用した容量結合型電極を採用した.本システムは筋電位導出用の導電布と皮膚表面との間に絶縁体を挟んだ構造をとりコンデンサが形成されることで筋電位の導出が可能となる.そのため粘着ゲルによる皮膚のへの影響がなく,繰り返し使用することもできる. 本実験では被験者5名を対象にフットサル前後における前脛骨筋の筋疲労を開発システムより評価する.結果として,筋疲労を検出できた被験者は少なかった.要因としてフットサルによる負荷が十分ではなかったことを含め実験条件が不明瞭であったことが考えられる.そのため実験条件を明確化した上で再度実験を行う予定である.

  • 瀧 千波, 塩澤 成弘, 木村 哲也
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 305
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    自律神経系が関与する心拍や血圧は、安静時においても一拍毎に変化し、その変動は自律神経機能のモニタリング指標として広く用いられている。一方、運動時には心拍数の増加や血圧の上昇がみられ、これらのモニタリングは運動強度の把握のみならず、リスクマネジメントの観点からも非常に重要である。従って、このような生理学指標のモニタリングをウェアラブルセンサにて簡便に行うことができれば、スポーツ健康科学分野での広い応用が期待できる。本発表では、スポーツ健康科学分野における、心拍、血圧、呼吸を用いた実践的研究の紹介を通じて、ウェアラブルセンサのスポーツ健康科学部分野での応用の可能性を考察する。第一に安静時の呼吸方法(鼻呼吸、口呼吸)の違いが、心拍フラクタルゆらぎの動的特性に与える影響から、呼吸方法の違いによる自律神経活動の変化について検討した研究を紹介する。次に、自律神経系の筋パフォーマンスへの関与の可能性について検討した研究について紹介する。

  • 福田 茂一, 椎名 毅
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 306
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    World Congress on Medical Physics and Biomedical Engineering(国際医用物理・生体工学会) は、医学物理学会と生体医工学に関する国際組織であるIUPESM(International Union for Physical and Engineering Sciences in Medicine)が主催し、3年毎に開催されてきました。これまで、日本での開催は、1991 年に京都で 第17 回国際医用物理・生体工学会(WC1991) で開催しています。その後、アジア地域の主要都市である、ソウル(2006年)、北京(2012年)、シンガポール(2021年)開催が決まりましたが、日本では1991年以来、30年間以上も開催されないことになります。 日本は、アジア地区でそして世界で、生体工学、医学物理の分野において、先導的役割を果たすことが期待されており、国際会議の開催はある意味、最も自然な形で、その使命を果たすことになると言えます。IUPESMでは、生体工学および医学物理に関する加盟学会が連携してWorld Congressの開催を誘致することが条件となっています。このため、将来、World Congress の開催を日本に誘致することを視野に継続的に日本生体医工学会(JSMBE)と日本医学物理学会(JSMP)、が交流をはかることが必要との考えから、昨年度から双方の学会にて、交流セッションを企画することにいたしました。今年も、4月に第112回日本医学物理学会学術大会で「日本生体医工学会との交流セッション」の企画がなされ、この第56回日本生体医工学会大会にて「JSMBE & JSMP交流セッション2017」を企画しました。今年は、第2回目ということで、World Congress誘致に必要な取り組みについて、互いに具体的な取り組みの紹介と今後の課題について話題を提供して頂き、会場の皆さんと議論を重ねることで、誘致に向けて一歩前進することを期待いたします。

  • 山田 昭博
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 307
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    Asian Pacific Research Network Fellowship(APRNF)は、2006年より国際生体医工学会IFMBEのAsia-Pacific Working Groupによってアジア太平洋地域の連携促進のためにはじまったもので3年ごとにWorld Congress on Medical Physics and Biomedical Engineeringにあわせて実施される。私は、2015年に日本のFellowとして参加させていただいた。APRNF 2015では、私のほか、香港からDr. Thomas Ming Hung LEE (The Hong Kong Polytechnic University)、シンガポールからDr. James Chen Yong KAH (National University of Singapore)、台湾からDr. Chih-Chung HUANG (National Cheng Kung University) が参加した。我々4人は、約2週間行動を共にし、台湾で大学や研究施設の訪問、日本にて大学や研究施設の訪問、そしてカナダでWC2015に参加するという旅程で、様々な施設で、様々な研究者や技術者と交流する機会を得た。各国訪問時は、その国のFellowが訪問施設などをアレンジし、各施設等で交流の場を設ける。台湾では、国立成功大学やバイオテクノロジー産業関連施設を訪問した。日本では、東京大学や早稲田大学(TWIns)などの研究施設を訪問したほか、日本の文化や食に触れる機会を設けた。その後、カナダでのWC2015にてAPRNFの報告と研究発表行った。このような貴重な経験を通じ、多くの知見を得ることができ、多くの研究者とのつながりを得ることができただけでなく、各国のFellowとは現在でも連絡をとりあい、研究者仲間として、また友人として、非常に強力な関係を築くことができている。

  • 酒谷 薫
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 308
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(「地域包括ケアシステム」)の構築を推進している。我々は、IoT/BD/AIの先端技術を応用した地域包括ケアシステムを開発し、福島県郡山市のモデル地区で実証実験を行っている(2016年4月~)。本オーガナイズドセッションでは、我々が開発したシステム及び実証実験の途中結果について報告し、地域包括ケアシステムにおけるIoT/BD/AIの先端技術の有用性について検討する。本システムは、ICTとセンサー技術による見守りシステム(睡眠センサー、水道センサー)とNIRSによる脳と心の見える化により構成されている。本システムをモデル地区の高齢者家庭に設置し、睡眠時の心拍数、呼吸数、離床、及び水道使用量を遠隔でモニターしている。さらに、定期的に公民館にて、心理テスト(STAI,MMSE)及びNIRSによる脳機能計測を実施し、参加住民の健康相談に応じている。本講演では、実証実験の結果を供覧し、IoT/BD/AIを導入した次世代地域包括ケアシステムの有用性と問題点について考察する。

  • Zunyi Tang, Linlin Jiang, Lizhen Hu, Yutaka Sato, Yuki Komuro, Kaoru S ...
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 309
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    This paper presents an automatic sleep quality assessment method based on an unobtrusive sleep monitoring system, which comprises mainly of a bed sensor monitoring heart rate, respiratory rate, body movement during sleeping and leaving the bed, and a cloud system processing the daily sleep data. The data obtained during sleep are further derived to mine features and pattern of sleep so that it can be used to rate the sleep from a predefined scale. Six subjects were employed to evaluate the validity of the proposed sleep quality assessment method. Experimental results preliminarily show that the consistency and validity of our method comparing to the reference Pittsburgh sleep quality index (PSQI), which is a traditional sleep quality assessment method.

  • 胡 莉珍, 佐藤 豊, 小室 有輝, 唐 尊一, 姜 琳琳, 酒谷 薫
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 310
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    少子高齢化が進む現代社会において,認知症患者の増加は喫急の問題である.2025年には,全国の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)の有病者数が約700万人を突破すると推計されている. 高齢者の認知機能を早期に診断し,発症や症状の悪化を予防することは極めて重要な課題である.本研究は,福島県内の某リハビリ病院の入院及び外来患者291名 (平均年齢73.0±12.5歳)を対象とし, 近赤外分光法の一種である近赤外時間分解分光法(Time resolved near infrared spectroscopy: TNIRS) を用いて計測した前頭前野の安静時Hb濃度と, 問診式テストによる全般性認知機能 (MMSE), ワーキングメモリ機能(タッチエム)との相関性を検討した. さらに,TNIRSにより計測した安静時Hb濃度から全般性認知機能を予測する可能性を検討した. TNIRSで計測した前頭前野の安静時Hb濃度は, 全般性認知機能MMSEスコア及びワーキングメモリ機能との間に有意な正の相関性が認められた.二項ロジスティック回帰分析を用いて導出した回帰モデルは,TNIRSの測定データ,年齢,性別から73.2%の確率で認知症疑いの群を予測可能であった.本研究により,TNIRS測定は認知症を客観的に予測できる可能性が示唆された.

  • 谷田 正弘
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 311
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    当社が「身だしなみセミナー」として、岩手県の老人施設で初めて、高齢女性に化粧を施したのは1975年のことである。その後も、全国各地の事業所で、それぞれの地域にある老人施設に向けたボランティア活動として、高齢者向けの美容セミナーが続けられていた。こうした活動を通じて、継続的に化粧を続ける事により、表情が明るくなるだけでなく、認知症の周辺症状の緩和や要介護者の日常生活行動の改善など、高齢者のQOL向上に役立つことが明らかになった。40年近くが経った現在、女性のライフステージや愁訴の違いに合わせた様々な化粧セラピーが提案されている。この間、我々は、化粧の連用は、若い世代の女性にも、ストレスの緩和効果、認知機能低下の予防効果があることを医工学的手法を用いて明らかにし、その成績の幾つかを本学会で報告して来た。このようなエビデンスに基づき、高齢者だけでなく、若年層からの予防も含めた、サスティナブルなソーシャルビジネスを目指したライフクォリティ事業を立ち上げ、2013年から、順次、全国エリアに展開し、郡山市で進められている地域包括ケアの試みにも一部が活用されている。ここでは、これまでの化粧の地域包括ケア活用の歴史と研究成果をまとめ、現状と今後について展望したい。

  • 吉野 雄介, 根本 幾
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 312
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    我々の実験の目的は、多義的旋律の認識を通じて、旋律の認識過程を研究することである。多義的旋律とは複数種類の旋律として認識できるひとつの旋律である。多義的なものの例として視覚的に有名なのはネッカーの立方体である。我々の実験ではA4,E5が連続してC5が断続的に流れる音を用いた。この音を聴くと、C5-A4-C5-A4(DOWN)、C5-E5-C5-E5(UP)、もしくは断続するC5音(NEUTRAL)の3種類の聞こえ方がある。先の2つのように聞こえた場合には錯聴が起き、一つの音を2種類の旋律として聞くので多義的である。実験では最初聞く旋律を誘導するため、2秒の先行刺激としてC5-A4もしくはC5-E5-を4回繰り返すものを用いた。その1音の継続時間は0.25秒で、その後60秒の多義的部分が続くものを1刺激とした。この刺激を50回提示した。被験者は多義的旋律を聴いている間、自分が聞こえている旋律が変化したらボタンを押した。ボタンは3種類あり、それぞれUP, DOWN, NEUTRALである。ボタンを押した時刻の系列から、状態遷移時間の分布を求め、状態遷移モデルのパラメータ推定を行った。さらにそのパラメータが時間依存性をもつかどうか検討した。

  • 根本 幾, 草野 睦月
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 313
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は多義的旋律を聴取中の脳活動を調べることである.旋律とは音の高低変化が,リズムと連結される一つの音楽的な意味を持つものとして形成される音の流れである.しかし,これは人間の脳による認識であり,物理的な音の配置そのものではない.我々は視覚的な多義性を持つ例として有名な図形(ネッカーキューブ)に類似した曖昧な旋律(多義的旋律)を提案した.多義的旋律とは,2つの持続音(A4とE5)と断続的に繰り返される音(C5)を同時に提示することにより,C5-A4-C5-A4(Down),C5-E5-C5-E5(Up)のフレーズ,または中間音の繰り返しであるC5-C5(Neutral)のフレーズのいずれかに聞き分けることができるメロディである.また,多義的旋律を提示する前に曖昧さを減らすための先行誘導刺激としてC5-A4またはC5-E5のメロディを,コントロール実験としてC5-C5を付加した.そして,先行誘導刺激が異なることで多義的旋律を聴取した時の脳活動にどのような差があるのかを調査した.また,先行誘導刺激を付加した時の脳活動と,先行誘導刺激を付加していないコントロール実験での脳活動の比較を行った.実験条件として,刺激音に対して注意であった時と非注意であった時の脳活動の測定を行った.

  • 中村 伊吹, 福田 浩士, 樋脇 治
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 314
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    外的・内的事象に関連して生じる事象関連電位 (ERP) のP300成分を用いて外部機器を操作するBrain-Machine Interface (BMI) の研究は視覚刺激を用いているものが主流である.しかしながら,モニタが必要,視覚障害者は利用できないなどの課題があるため,近年は聴覚注意を用いたBMI (聴覚BMI) が研究されている.先行研究として複数のスピーカーの方位を,空間的な聴覚注意を用いたP300成分から推定する研究や,異なる種類の音刺激のうち,注意を向けていた刺激をP300成分から推定する研究があるが,前者はBMIの携帯性に劣る一方で,後者は刺激と機能の対応を記憶する必要がある.そこで,本研究では携帯性に優れ,単一の刺激を用いた聴覚BMIの開発を目指し,両耳聴音に対する聴覚注意に関するERPについて検証することを目的とした.実験ではイヤホンを用いて2 kHzの純音を被験者の右耳,左耳,両耳のいずれかに等確率で呈示した.被験者は左右どちらか一方に注意を向け,注意を向けた方に刺激が呈示されたときにその回数をカウントした.右耳または左耳の刺激に注意を向けた条件のそれぞれにおけるERPを解析し,注意を向けた音呈示に対してP300が確認されるかどうか検討した.

  • 神野 将梧, 船瀬 新王, 内匠 逸
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 315
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    我々は,空間的注意に関連した事象関連電位P300成分の特性の解明を目標として研究を行っている.本稿ではP300導出課題として2種類の実験課題(左右音源弁別課題,単純オドボール課題)を行い,観測した脳波から,標的音源方向の違いに起因したP300の振幅の差について検討する.左右音源弁別課題では,被験者の左右にスピーカを設置し,無作為な順番で左右のスピーカから刺激を呈示する.刺激には1kHzの純音を用いる.左右どちらかを標的方向とし,被験者に標的方向から刺激が呈示された回数をカウントさせる.刺激は,標的方向から50回,非標的方向から200回,計250回呈示される.単純オドボール課題では,用いる音源方向を左右音源弁別課題で用いた方向のうち1つとする.標的刺激に1kHzの純音,非標的刺激に500Hzの純音を用いる.標的刺激と非標的刺激を無作為な順番でスピーカから呈示する.被験者に標的刺激が呈示された回数をカウントさせる.刺激は,標的刺激が50回,非標的刺激が200回,計250回呈示される.左右音源弁別課題と比較することで,刺激の弁別に音源の位置情報が必要な場合と必要ではない場合のP300の特性を検討する.実験の結果,左右音源弁別課題時,標的音源方向と反対の半球でP300の電位が大きく観測された.このことから,標的音源方向の違いがP300を優位に観測できる位置に影響を及ぼしている可能性を示した.

  • 佐藤 啓介, 島田 尊正
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 316
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    ワーキングメモリとは,認知心理学において,短時間の情報を保持し,同時に処理する能力を持つ構造や過程を指す構造概念である.これまでの研究において音楽家は非音楽家に比べてより速いワーキングメモリの更新を示し,より多くの神経リソースを音響刺激に割り当てていることを示したと報告されており,楽器の演奏経験期間がワーキングメモリの改善と関連があることが示された.しかしながら,どのような音楽的スキルがワーキングメモリに影響するか明らかではなかった.そこで音楽的スキルとワーキングメモリとの関連性について検証を行った.音楽的スキルとして視唱,絶対音感,相対音感を用い,被験者のワーキングメモリの能力を脳波のP300の振幅と潜時により計測し,関連性について検証した.その結果,音呈示のP300の振幅と絶対音感和音の間で有意な正の相関がみられた.また,画像呈示のP300の潜時と視唱の間において有意な負の相関がみられた.一方,画像呈示のP300の潜時と相対音感和音の間で有意な正の相関がみられた.この結果は,音楽的スキルとワーキングメモリ能力の負の相関を示しており他の結果と矛盾している.この理由として,被験者が6名と少なかったためであることが考えられる.今後は,被験者を増やし統計的な問題を解決したい.

  • 関 崚平, 船瀬 新王, 内匠 逸
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 317
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    近年,SSVEP(Steady-State Visual Evoked Potential)を利用したBCI(Brain-Computer Interface)の研究が進んでいる.我々はこれまで湿式電極を用いた脳波計を使用して,SSVEPの検出アルゴリズムについて検討を行ってきた.しかしながら,湿式電極を使用した脳波計を装着する際,ペーストを使用し電極を固定する.これは,使用者の不快感を発生させるものである.そこで,本研究では乾式電極を使用した脳波計でSSVEPを測定し,その精度を確認する.また,従来研究では刺激呈示時と安静時のSSVEPの判別を行っていないという問題点がある.そこで,本稿では刺激呈示時と安静時のSSVEPを判別するためのSSVEP検出アルゴリズムを提案する.被験者4名に対して反転周波数10,12,15Hzの3種類でパターンリバーサル刺激を呈示する.脳波は乾式脳波計を用い,それぞれ10秒間計測する.解析には,短時間フーリエ変換を利用する.先行研究では,周波数の含有率を算出することにより,SSVEPを検出した.本稿では,フレーム毎にパワーが最大となる回数に着目するアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムでは最大となる回数に閾値を設け,刺激呈示時と安静時の判別が行える.実験結果より,刺激呈示時では刺激周波数と同じ周波数でパワーが大きく出現することが確認された.また,被験者4名で刺激呈示時と安静時の平均検出率はそれぞれ,83.7%と89.0%となった.

  • 竹原 大貴, 栢沼 一修, 松原 未来, 関 直人, 和田 賢弥, 倉田 雅哉, 小野 弓絵
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 318
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    簡易脳波計を用いた事象関連脱同期(Event-related desynchronization: ERD)計測システムの開発を行った。ERDとは運動の想起により一次運動野のμ波帯域活動が減衰する現象をさす。ERDを応用する従来のBrain-machine interface (BMI) 技術では医用脳波計が主に使われているが、高価であり普及しにくい。近年、Emotiv Epocに代表される低コストの簡易脳波計が市販されているが、精度に問題があるとする報告も散見される。本研究では、簡易脳波計と医用脳波計の同時計測を行い、簡易脳波計が医用脳波計と比べてどの程度の精度をもつのかを調べた。手に自覚する運動障害のない若年成人11 名が実験に参加した。被験者は椅子に座り、ボールの掌握を行う手の運動の動画を観察しながら、動画と同じように手の運動想起を行った。簡易脳波計に装着する電極アームを3Dプリンタで作製し、簡易脳波計と医用脳波計の頭表電極1個ずつを運動野の直上に隣り合って配置させて脳波を記録した。ボールを握る運動想起時、手を開く運動想起時のいずれにおいても、簡易脳波計と医用脳波計では同等のERD強度が確認できた。したがって、ERD計測の用途に限定すれば、低コストの簡易脳波計は医用脳波計の代用としてBMIへの実装に十分な脳波の検出が可能であると考えられる。

  • 野田 拓司, 船瀬 新王, 内匠 逸
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 319
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    近年,精神疲労による精神疾患の患者が増加している.我々は,生体信号を用いることにより精神疲労の定量化を行うことを目指している.本稿では被験者の疲労課題中の脳波および脈波を計測し,疲労が蓄積することによる脳波,脈波の変動に着目する.また,被験者自身による精神疲労の評価としてRoken Arousal Scale(RAS)を用いる.本研究では,疲労課題として文の音読を被験者に行わせる.実験課題は50文の文章の音読と1分間の休憩を1試行とし,計10試行を行う.また,最初の課題の前に1分間の休憩を取得させる.RASは実験開始前,5試行目の休憩終了後,実験終了後の3回で行わせる.本研究では実験課題を行っている最中において脳波および脈波を計測する.計測した脳波のうち1分間の休憩時のデータに対し,それぞれフーリエ変換を行う.フーリエ変換によって得られる周波数のうちα(8-12[Hz]),β(13-30[Hz]),γ(31-70[Hz])の平均パワーを求める.また,計測した脈波に対しても同様に1分間の休憩時のデータに対してフーリエ変換を行いLF(0.05-0.15[Hz]),HF(0.15-0.50[Hz])の平均パワーを求める.本研究の結果,脳波および脈波それぞれで実験進行に伴う変動において有意な差を確認することができた.

  • 福永 道彦, 梶原 登雲子, 伊藤 邦之, 長嶺 隆二
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 320
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    膝蓋骨は大腿四頭筋と膝蓋腱をつなぐものであり,その運動によって大腿四頭筋力のレバーアームが変わることから,膝関節や下肢全体のキネティクスと相互に影響する.しかしながら,膝関節の運動解析は大腿脛骨関節が主であり,大腿膝蓋関節を対象にしたものは多くない.特に,膝屈曲角度が130度を超える深屈曲動作を対象にしたものは極めて少ない.本研究では,膝深屈曲において大腿骨が大きくロールバックすることを考慮し,脛骨の前方移動が大腿膝蓋関節のキネティクスに与える影響を調べた.方法は矢状面二次元モデル解析であり,関節面の接触と力学的平衡を条件として,大腿膝蓋関節の運動と大腿四頭筋力に対する大腿膝蓋関節力と膝蓋腱張力を算出した.脛骨の運動には,人工膝関節を対象として伸展位から屈曲角度150度まで屈曲させたシミュレーションの結果を用い,これを5mmおきに前方移動した.結果として,脛骨の前方移動量を15mm以上とすると最大屈曲時に大腿膝蓋関節が非接触となることを確認した.また,大腿膝蓋関節力は脛骨の前方移動に伴って減少したが,膝蓋腱の張力は非接触となる寸前まで大きく変化しなかった.このことは,脛骨が大きく前方移動しても大腿四頭筋のレバーアーム長は大きく変わらないことを示唆した.今後の課題は,深屈曲位における脛骨の回旋運動の影響を併せて検討することである.

  • 三田 隆広, 山下 和彦, 小山 裕徳, 川澄 正史
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 321
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    高齢者の転倒要因として,歩行機能の低下など,身体機能の低下が挙げられている.一般に高齢者の歩行は,クリアランス,蹴り出し力などが減少,低下している.また,変形性膝関節症などの関節疾患は潜在的患者を含め,有病率は高く,下肢関節の可動域が低下している高齢者は多いと考えられる.そのため,歩行機能を評価するにあたり,膝関節の可動域低下が歩行時の下肢関節群の運動連鎖に与える影響に着目する必要があると考えられる.そこで本研究では,擬似的な膝関節の可動制限が歩行時の足底圧力,下肢関節可動範囲,歩行周期の時間パラメータなど歩行特性に与える影響について調査した.実験は健常者8名に直線8mの歩行路を定常歩行および膝関節の可動制限を施した歩行の2通りの計測を行った.膝関節の可動制限は高齢者擬似体験セットを使用した.足底圧力はF-Scan(ニッタ社製)を使用して,足底圧中心軌跡(COP)と足指部,前足部,踵部の足底圧力を算出した.また,下肢関節の可動範囲は右側方からデジタルビデオカメラを使用して,関節可動範囲を算出した.解析は左右足2歩行周期を解析対象とした.定常歩行と膝制限歩行を比較した結果,膝関節制限時の足指部足底圧力が有意に低下していた.また,踵接地時のつま先のクリアランス,蹴り出し時のMP関節の背屈角度が低下していた.これらのことから,膝関節の可動制限はクリアランス,蹴り出しに関与する可能性が示唆された.

  • 西條 涼平, 五月女 康作, Dushyantha Jayatilake, 鈴木 健嗣
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 322
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    近年,高齢者の増加に伴い,飲み込みの障害(嚥下障害)を抱える高齢者が増加している.我々はこれまで、嚥下を計測する機器の開発を行っているが、今後はこれらの知見に基づき患者の嚥下を支援する装置の実現を目指している.そこで本研究では,嚥下開始の自動検出を目的として,嚥下開始時の随意運動に伴う筋活動の特徴を調査した.本研究では,20代健常男性1名に対し,顎二腹筋(前腹),顎舌骨筋および,咬筋に電極を貼付けて10mlの水を嚥下する際の筋活動を表面筋電位(EMG)により計測するとともに,同時に嚥下造影検査(VF)も実施した.得られたEMG波形とVF動画の解析により,口腔内から咽頭にかけて食塊を送り込む際には,舌骨上筋群に属す顎二腹筋(前腹)と顎舌骨筋が2峰性のある筋活動を示すことが明らかになった.舌骨上筋群の活動に先駆けて,咬筋活動が生じることも明らかになった.また,舌骨上筋群の2つ目の筋活動は,反射運動である舌骨の前上方挙上を示すものであることが確認された.この結果に基づき,嚥下初期区間を嚥下開始時の随意運動を示す咬筋活動から,反射運動を示す舌骨上筋群の2つ目の筋活動までの区間と定めた.これにより咬筋活動と舌骨上筋群の活動から嚥下初期区間を推定するモデルを提案する.このモデルを20代健常男性5名の水10ml嚥下時のEMG波形に適用し,有効性を確認した.

  • 古川 大介, 佐伯 壮一, 楠本 修也, 西野 亮平, 原 祐輔, 青木 晋, 伊藤 高文, 西野 佳昭, 斯波 将次
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 323
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    加齢や紫外線照射によって進行するシワや弛みなどの皮膚の老化現象は,皮膚組織における代謝機能の低下に関連しており,組織や細胞への組織液のやり取りを含めた微小循環システムは,スキンケアやアンチエイジングの重要な評価指針である.毛細血管は表皮直下の乳頭層から真皮上層の乳頭下層に掛けて,皮膚表面から500μm程度の深さに走行している.微小血流動や漏出する組織液の流動特性は,代謝機能と共に皮膚粘弾性特性をも変化させうるため,シワ発生などのスキンメカニクスの解明には微小循環血流を非侵襲定量計測する必要がある.近年,Optical Coherence Tomography (OCT)が開発され,5μm程度の空間分解能にて生体組織内部の形態分布を非侵襲in vivo断層可視化している.更に,OCT干渉信号におけるドップラー変調量を解析し,血液等の流動を可視化するDoppler OCTが開発されている.しかし,定量的な毛細血管血流速の評価には至ってはおらず,更にスキンメカニクスとの関連性について検討されていない.本研究では,OCT干渉信号における位相変化を検出する隣接自己相関法を用い,高精度にドップラー変調量を断層計測するOptical Coherence Doppler Velocigraphy (OCDV) を構築する.ヒト皮膚前腕屈側部手指側を計測対象とし,カフにより加圧し駆血時から開放した皮膚表層部の毛細血管血流速分布を断層計測し,経時変化から毛細血管血流速の応答特性について評価する.

  • 清水 亮汰, 松本 健志
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 324
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    被写体によるX線の位相変化を利用することによって、X線吸収を利用した従来の方法よりも遥かに高い感度でコントラスト像を得ることができる。本研究では、被曝量の低減が期待できるインライン法に基づく位相CTを用い、マウスの脛骨に作製した欠損の修復過程をモニタリングした。 10週齢のマウスに卵巣摘除あるいはsham手術を行い、12週齢時に脛骨骨幹部に直径0.5 mmのドリル欠損を作製した.卵巣摘除したマウスはOVX群(OVX, n=10)およびOVX+EET群(n=10)に分け、後者には組織再生を促進する生理活性物質であるepoxyeicosatrienoic acidを持続投与した。欠損作製後3日,7日,11日後に位相CT計測(SPring-8放射光施設)を行った。位相コントラストイメージングには位相情報の取得に適した単色放射光X線(33 keV)を利用し、画像再構成はフィルタ補正逆投影法により行った(ボクセル分解能6.5 μm)。 3群間の骨修復には7日後まで有意な差は見られなかったが,11日後の再生骨のミネラル密度はOVX群でshamより低値側に分布した。また、OVX+EET群の骨体積率,骨幅,平均骨ミネラル密度はOVX群に対して有意に高値を示した。以上より、位相CTが骨修復モニタリングに有用であることが示された。

  • 徳毛 悠真, 速水 啓介, 宮本 怜於奈, 丹野 福士
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 325
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    2型糖尿病患者の横紋筋細胞や脂肪細胞では、インスリンに対する感受性低下により4型グルコース輸送体(GLUT4)が細胞膜へ運搬できず高血糖の原因となっている。本研究ではパルス波電気刺激が骨格筋組織のGLUT4とその運搬に関わる微小管モータータンパク質の遺伝子転写レベルにおよぼす影響を検討した。全身麻酔下にF344ラットの両側前脛骨筋を露出して針電極を刺入し右前脛骨筋のみを30 ppmまたは400 ppmのパルス波(幅 0.7 ms、5 V)で1時間刺激した後、両側の筋組織からRNAを抽出しcDNAに逆転写した。2色リアルタイム定量PCRを行い、GAPDHを内在性対照としてGLUT4(SLC2A4)、キネシン-1重鎖(KIF5B)、細胞質ダイニン重鎖(DYNC1H1)のmRNA相対レベルを比較CT法で算出した。400 ppmパルス波刺激群(n=7)でのみ対照脚に比べ刺激脚で、筋組織のSLC2A4(p<0.01)、KIF5B(p<0.05)、DYNC1H1(p<0.05)の各々のmRNA相対レベルが有意に上昇していた。また、400 ppm刺激完了時の筋断端からの血液中のグルコース濃度は対照脚と比較して刺激脚で有意に低下していた(p<0.05)。以上より、骨格筋でのGLUT4の細胞膜への表出と血中グルコース利用の促進により、本法が糖尿病に対する非薬物治療として応用できる可能性が示唆される。

  • 木部 善清, 善明 大樹, 宮田 昌悟
    2017 年55Annual 巻4AM-Abstract 号 p. 326
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/13
    ジャーナル フリー

    本研究ではメカニカルストレスによる幹細胞系の軟骨分化誘導を最終目的とし,軟骨前駆細胞株であるATDC5を用いた基礎的研究を実施した.特に周期的圧縮刺激に着目し,アガロースゲル中で培養されたATDC5の軟骨分化に与える影響を評価した.ATDC5細胞を包含するアガロースゲルに1 Hz,10%圧縮ひずみの条件で力学的刺激を印加しながら培養を実施した.軟骨分化は細胞増殖および硫酸化グリコサミノグリカンの含有量を定量することで評価した.結果として,周期的な圧縮刺激の印加することで硫酸化グリコサミノグリカンの含有量が上昇することが明らかとなった.以上より軟骨前駆細胞株であるATDC5の軟骨分果において,周期的な圧縮刺激が有効に作用することが明らかとなった.

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