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佐藤 裕一
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
107_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
医師の働き方改革の一環で、改正医療法が2024年4月から施行され「医師の時間外労働の規制」が適用開始される。その対応策として、医師の業務のうち他の職種に移管可能な業務について業務のタスクシフト/シェアを早急に進めるよう提言され、医療現場では人材不足や働き方の見直しへの対応が急務となっている。 こうした状況の中で、タスクシフトされる側である医師以外の医療関係職種でも、関連法の整備や業務の範囲拡大・明確化が進んでいる。そのため、各職能団体を通じて、拡大業務の講習や告示に基づく研修を行っている。しかし、従来の業務からかけ離れた手技も多く、指導者も不足しており、手技に対する習熟方法やサポートが今後の課題となっている。 また、現状のままでは、従来の業務負担が大きいにも関らず、更なる業務や責任を強いられる可能性が高い。これらを解決するために、医療現場での効率化やICT等の活用、医療クラークや看護補助等の一般職への更なる分業化をするための環境整備などの解決策を模索する必要がある。医療に関わる職種の業務が大きく変化する中で、アンメットニーズに答えた何らかの助力が得られれば、各医療関係職種の専門性の活用や地域の実情に応じた医療提供体制の確保に繋がり、質・安全が確保された医療を持続可能な形で提供していけるのではないだろうか。
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土井根 礼音
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
107_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
医師の業務負担を軽減し,良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保するために,医師の業務の内,医師免許を保有していなくとも実施可能な業務を,他職種に移管するタスクシフトが推進されている.本演題では,生命維持管理装置の操作,保守,点検を担う臨床工学技士に焦点をあて,医師の業務のタスクシフトによる臨床工学技士の業務拡大の現状と課題を紹介する.臨床工学技士の業務拡大に伴い臨床工学技士法が改正され,2021年10月より生命維持管理装置等を接続するための静脈路の確保や装置の接続,静脈路の抜針や止血,内視鏡ビデオカメラの保持や操作等を,臨床工学技士が医師と協働して行うことが可能となった.業務拡大により,医療機関での臨床工学技士の需要の増加が期待できる一方,新たに認められた業務におけるトラブル発生時の責任の所在が法的に不明確であること,また研修だけでは新たに認められた業務の実践が困難といった課題がある.教育の面では,臨床工学技士の養成に必要な教育内容と目標を定めた臨床工学技士学校養成所指定規則が見直された.これに伴い,養成校では新たに認められた業務の実践的知識・技術を教育するためのトレーニングキットの整備が求められる一方,トレーニングキットが高価であるため整備に苦慮している.本演題では,臨床工学技士の業務拡大の現状と課題を参加者と共有し,医用工学の視点から課題の解決策を議論することを目指す.
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板井 駿, 前田 祐佳
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
108_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
2021年Facebook社の「Meta」への社名変更を皮切りに、大きな注目を集める存在となっているメタバース。利用者がそれぞれアバターを作成し仮想空間で生活するこの世界は、ゲームやSNSにとどまらず、経済活動や医療にも活用され始めている。そしてVRやAR、モーショントラッキングといった技術の発達により世界の解像度やアバターの操作性が飛躍的に向上したことも相まって、仮想空間・アバターは仮想にとどまらずもう一つの現実としての側面を持ち始めている。例として、2023年2月には大手事務所に所属するVTuber(バーチャルYoutuber)と呼ばれる仮想アバターで活動するタレントが東京都の観光大使に就任したほか、アバターのまま現実でコンサートライブ等を行うタレントも増えてきた。この事実の特筆すべき点は、これらのタレントは戸籍上の個人が公には特定されていない点である。個人と結びつかない独立したアバターで現実の経済活動が行われている今、医療面でもその影響や活用先を真剣に議論する必要がある。精神科医療では、メタバースを利用し匿名で相談が可能な「メタバースクリニック」や「こころの保健室」といった仕組みが既に実現されているが、これにとどまらず、アバターをもう一人の自分と考えた上での治療や緩和ケアへの活用、新たな教育方法など、一歩先の活用方法についてその危険性も交えながら議論する。
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荒船 龍彦
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
109_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
2012年からin silico技術を医療機器評価,そして医療機器開発にも活用できるよう,標準化について米国FDAおよび欧州Avicienna Allianceの活動が活発化し,2016年のガイダンス発出で1つの到達点をみた.それと並行するように,米国機械学会ASMEより2018年に技術規格 ASME V&V 40-2018 "Assessing Credibility of Computational Modeling through Verification and Validation: Application to Medical Devices" が発出された.2021年からin silico技術を用いた医療機器のFDA承認申請が急増しており,スムーズな承認にはVV-40-2018規格とEMAガイドラインに沿った評価プロセス構築と,その評価環境におけるin silicoを用いた結果について,一定の合意を規制当局と持つことが推奨されている.VV-40-2018に基づくin silicoの適格性を規制当局に認めさせるステップを,Avicienna AllianceとIn Signeoを率いるProf. Vicecontiらの提案を紐解きながら,わが国におけるin silico医療機器研究,開発の新たな支援と推進の糸口を探る.
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原口 亮
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
109_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
生体医工学領域におけるコンピュータモデリング・シミュレーション (CM&S)は,生体現象の解明のみならず診断・治療を目指した様々な医療機器の開発や研究領域で用いられている.心臓不整脈領域を中心にモデリング・ツール・データシェアリングや “Digital Twin” の動向について概観する.
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鷲尾 利克, 鈴木 志歩, 荒船 龍彦
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
110_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
有限要素法、差分法に代表される数値計算技術(in silico)が、医療機器開発・評価にも用いられるのは当たり前となっている。医療機器開発・評価では生体組織との相互作用を確認することが必要で、その際生体組織に設定するin silico用のパラメータ値、初期条件、境界条件は工業製品のそれらと比べてばらつきが大きく、計算結果の受け入れには慎重さが必要なのは周知のことである。
このin silicoの課題に対応することを目的に現在、国内外においてin silicoに関する複数のガイダンスもしくは学会標準が確認できる。医療機器の承認申請においてはUS FDAからガイダンスとして「Reporting of Computational Modeling Studies in Medical Device(2016)」の後、Draft版として 「Assessing the Credibility of Computational Modeling and Simulation in Medical Device Submissions(2021)」が公開されている。PMDAからは「コンピューターシミュレーションを活用した医療機器ソフトウエアの審査の考え方に関する専門部会 報告書(2021)」が公開されている。
US FDAとPMDAのそれぞれの文書は、in silicoで機器評価を行うことのほか、機器内のin silicoに関しても言及している。
今回は既存の文書をもとに機器評価におけるin silicoの留意点を明らかにし、それらの観点からユースケースとして血管内のLDL蓄積、レーザを用いた組織の熱変性のそれぞれについて何がピットフォールとなりうるのか、そのピットフォールを回避するために必要なことはなにか、について検討した結果を示す。
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朔 啓太
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
110_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
In clinical practice, cardiologists detect various hemodynamic parameters such as blood pressure, cardiac output, and pulmonary artery wedge pressure to treat patients. These parameters are a result of the input of blood flow into the circulatory system. We have developed simulation software that enables the instant visualization of the circulatory system using the obtained hemodynamic parameters. With the simulator, we can reproduce hemodynamics in real-time, estimate the pressure and flow waveforms at each cardiovascular site, and predict the patient's hemodynamic condition. In this session, we introduce our ongoing simulation projects aimed at optimizing clinical practice and device development.
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小野 鴻希, 吉村 拓巳, 前田 祐佳, 田村 俊世
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
111_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
光電脈波法による光電容積脈波(PPG)と心電図から得られる脈波伝搬時間(PAT)から血圧を推定する方法は、カフを使用しない血圧測定手法として期待され、研究が進められている。 先行研究では主に安静時のPATと血圧を測定し、二つの間に相関関係があることが確認されている。一方で、運動時の関係を調査したものは少なく、十分な検証が行われていない。そこで本研究では一拍ごとに血圧を測定可能な連続血圧計(非観血式連続血圧計 CNAP 500)を用いて運動中のPAT、血圧変動について検証を行った。また、運動環境下においては被験者の心拍間隔(RRI)も大きく変動するため、PATと血圧に対するRRIの関係性についても検証した。 循環器疾患が無い、19.9±1.10歳の男性16人に対して20分間エルゴメータによりカルボーネン法に基づく運動強度50%の運動負荷を加え、その後20分間安静時間を取った。この際の指と耳のPPG、心電図からPATとRRIを算出した。また、連続血圧計により最高血圧(SYS)を測定しPATとSYS、RRIとSYSの相関係数を算出した。 実験の結果、運動中でもPATとSYSの間に0.6程度の相関が得られることを確認した。一方でRRIとSYSの相関も0.6程度であり、運動中の血圧推定においてPATとRRIは同程度の精度を示した。今後の検証ではRRIが血圧推定において持つ意味を検証する必要がある。
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前田 祐佳, 林 健太, 吉村 拓巳, 田村 俊世
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
111_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Hypertension increases the risk of a sharp rise in blood pressure during exercise. Common blood pressure measurement methods using a cuff cannot detect a sharp rise because of intermittent measurements. In previous studies, methods for estimating continuous blood pressure, such as pulse arrival time and waveform shape, have been examined. However, it is difficult to apply these resting-state studies to photoplethysmography during exercise because of superimposed body motion artifacts. Therefore, the purpose of this study is to develop a blood pressure estimation system during exercise. Skewness Signal Quality Index (SSQI) was used as index of signal quality. Then, blood pressure estimated by LSTM was compared to blood pressure measured by a continuous sphygmomanometer. The results of blood pressure estimation during exercise indicated a mean error of 0.32 mmHg and a standard deviation of 7.76 mmHg. These results showed the usefulness of the proposed method in estimating blood pressure during exercise.
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工藤 創大, 黄 銘
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
112_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
光電脈波法(PPG)による信号は、心電図(ECG)と生理的な起源が類似していることから心房細動の検出に適している可能性がある。このことから光電脈波法のピーク間隔を心房細動検出に利用できる可能性を示した先行研究がいくつかある。しかし、実用においては心房細動検出器の精度を追求するだけでなく、同じ不整脈でも脈波の現れ方に個人差があり、サブタイプが存在することから、その汎化性能に留意する必要がある。また、心房細動と正常洞調律の2値分類では、心房細動と異所性拍動の類似性を考慮していない。本研究は、心房細動検出を複数クラス分類問題として設定し、入力形式、ハイパーパラメータ最適化を含む深層学習モデル、転移学習のスキームの観点から、分類器の精度と汎化性能の両方に有利な学習パイプラインを提案するものである。パイプラインの構成要素の可能な組み合わせを厳密に比較した結果、入力形式として心拍シーケンスの一次差分、学習モデルとして2層CNNと1層Transformer からなるモデル、転移学習の実装方式としてモデル全体のファインチューニングがパイプラインの最適解であることを確認した。またこれにより心房細動、異所性拍動、正常洞調律の3クラス分類においてマクロF1値0.80、精度0.87を達成した。
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Xue Zhou, Xin Zhu, 中村 啓二郎, 中村 正人
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
112_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Recently, the landscape of medical machine learning (ML) has shown considerable progress. This study focused on the use of ML to predict prognosis for patients with heart failure (HF) at group- and individual-level, respectively. In detail, a system combining unsupervised and supervised methods was proposed to explore and identify distinct prognostic phenotypes of patients with HF based on their medical record data. Simultaneously, the importance of predictors and their exact effects on outcome were interpreted. Furthermore, to quantify the exact individual-level survival situation, a recurrent neural network model cooperating with traditional Cox proportional hazard model was developed. Results of this study indicated ML approach could be a powerful tool in the prognosis prediction and assist with a personalized strategy to HF treatment and management in clinical practice.
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Ruixuan Chen, 唐 柯, 李 博寧, 曹 建庭
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
113_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Epilepsy is a neurological disorder characterized by abnormal brain activity and recurrent seizures. The diagnosis of epileptic seizures typically involves experts visually examining the EEG (Electroencephalogram) signals of patients. The noise present in EEG signals can significantly disrupt the diagnosis process for experts, requiring more time and effort and placing a heavy burden. To alleviate the burden, this study developed software for pre-processing EEG signals of epileptic patients and used a pre-trained 1D-CNN model to classify the EEG signals. Our epileptic EEG pre-processing software, which named EEGreader, was designed and developed by using Qt Designer. It includes time scale adjustment, amplitude adjustment, and filter-based noise removal to facilitate epileptic EEG signal display. We pre-trained a 1D-CNN (One Dimensional Convolutional Neural Network) model by using the CHB-MIT dataset and implemented real-time classification of EEG signals. The test accuracy of the model achieved 82% which means the model could successfully detecting epileptic seizures. Our developed software for pre-processing epileptic EEG signals and the epileptic seizure detection system can effectively help experts reduce the difficulty in reading EEG signals and the burden of diagnosing epileptic seizures, making it of great practical significance.
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劉 金莎, 李 博寧, 曹 建庭
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
113_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Electroencephalography (EEG) is a physiological technique used to measure human or animal brain activity. Typically, electrodes are placed on the scalp to record the electrical signals produced by neural activity in the brain's cortical surface. EEG is an important signal source for Brain-Computer Interfaces (BCIs) and provides a reliable basis for implementing human-machine interaction based on BCIs. Additionally, BCIs have provided new application scenarios for EEG signal research. Steady-State Visual Evoked Potential (SSVEP) is a stable, frequency-specific oscillating EEG signal produced under visual stimulation from a flickering light source. It is commonly used as an input signal for BCI technology due to its stable signal strength, easy detectability and recognizability, and quick adaptability by users. In this study, we developed a BCI system for making phone calls using EEG signals based on SSVEP. We independently developed a 4x3 digit dial stimulator that flashes each digit at different frequencies. The stimulator can be operated on a smartphone or tablet. We acquired the subject's EEG signals with an OpenBCI 8-channel EEG device and classified the real-time collected EEG data containing SSVEP stimulation signals using a pre-trained LDA classifier. The classification results were transmitted via Bluetooth to the phone, which then made a phone call. Five subjects were involved in the experiment, and each subject was required to perform 120 trials. The LDA classifier achieved an average accuracy of 93%, which means that the BCI system we developed based on SSVEP can effectively make phone calls using EEG signals. This study has successfully developed a novel interaction method with high accuracy and stability, significantly advancing the realization of BCI systems in real-life scenarios.
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竹下 修由, 北口 大地, 長谷川 寛, 竹中 慎, 古澤 悠貴, 杵淵 裕美, 伊藤 雅昭
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
114_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
国⽴がん研究センター東病院では、2017年度に開設されたNEXT医療機器開発センターにおいて医療機
器開発が⾏われ、2022年度より医療機器開発推進部⾨が発⾜し、さらなる推進を進めている。臨床現場
発の医療機器開発のアドバンテージとして、臨床ニーズへのアクセス、臨床データへのアクセスが挙げ
られるが。特に今回は臨床データを活⽤したAI開発の取り組み事例と、そのインフラ‧体制について共
有させていただく。
学術研究の範囲に留まるプロジェクトにおいては、臨床医主導でプロジェクト提案(ニーズ‧ペイン‧
コンセプトを含む)が⾏われることが多く、臨床側が探索的に準備したデータセット(必要時アノテー
ション実施済)を⽤い、まずは数⼗〜数百症例でのパイロット的なAI解析を実施し、フィジビリティや
必要なデータ量の⾒積もりを試みる。院内に常駐する⼯学系の研究員が担当することが多いが、近年で
はAI解析のスキルを独学で有する医師が⾃⾝で⾏うプロジェクトも散⾒される。
次ステップとして、さらなる精度向上やグラント取得などに向けたブラッシュアップに際しては、院内
に常駐する⼯学系の研究員が担当しつつ、社会実装や製品化を⽬指すプロジェクトについては、医療機
器開発推進部⾨として外部企業との共同研究の探索や、国⽴がん研究センター発ベンチャーの⽴ち上げ
などに繋げている。成功例や課題を共有しながら有意義なディスカッションをさせていただきたい。
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上村 圭亮, 大竹 義人, 谷 懿, 高嶋 和磨, 濱田 英敏, 高尾 正樹, 佐藤 嘉伸, 菅野 伸彦, 岡田 誠司
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
114_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
AIの発展により、以前では困難であった様々な解析が近年可能となってきた。整形外科分野では骨折の有無、腫瘍の良悪性、骨粗鬆症の有無などの画像診断とともに、術後の予後予測、コストの予測、インプラント種類の同定、歩行解析など様々な領域にAIは応用されており、その論文数も飛躍的に向上している。当初は工学者でないと困難であったAIモデル開発などもオープンプラットフォームの発展により、医師自らで作成、運用することも可能になりつつある。しかし、既存のAIシステムを使用し解析を行うことが可能であっても「新しいAI、画期的なAI」を生み出すのは医師単独では困難を伴う。また、AIが日進月歩であることから日常業務を行いながらその発展速度についていくには困難を伴うのが現状である。我々はこれまで工学研究者と協力し、AIを用いた画像解析の研究を行ってきた。本発表では我々が医工連携で行っている研究、および今後のAIを用いた研究の医工連携の展望に関して述べる。
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鈴木 一史
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
115_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
COVID-19肺炎の拡大において、医療機関では予期せぬ院内感染の防止のため様々な対策が必要となった。当院では入院患者の全員に肺CT検査とPCR検査を行い、放射線診断専門医がCOVID-19肺炎に特有の画像所見について読影レポートを作成し、COVID-19肺炎のリスクについて5段階のカテゴリー分類を行い、高リスクのカテゴリーの患者はPCR検査の結果が出るまで個室対応とした。CoreMLフレームワークを使用して自然言語処理による機械学習を行い、画像診断レポートの所見文からカテゴリー分類とPCR検査の予測を行う機械学習モデルを作成した。データの準備はエクセルで表データを作成するだけでよく、機械学習の処理にPython等は用いていない。SwiftでiOSおよびmacOS用のアプリケーションを作成した。放射線科医によるPCR判定のF値は0.54、機械学習によるPCR判定のF値は0.38であった。機械学習による読影結果の予測のミクロ平均は0.60であった。作成したモデルの精度は放射線診断専門医には及ばなかったが、機械学習により画像診断の所見文から診断カテゴリーを評価することがある程度は可能であった。技術の進歩により、臨床医による機械学習の利用の敷居が低くなりつつある。
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楠田 佳緒, 村垣 善浩, 正宗 賢
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
115_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
脳神経外科手術では,手術前の治療方針決定に加えて,手術中にも様々な意思決定が行われる.術中の医師は,その判断の質を向上するために患者状態や電子カルテの診療情報だけでなく,手術室内にある生体情報,診療情報,手術経過,病理結果などの様々な情報を収集している.本研究では術中意思決定支援を目的とし,これらの情報を蓄積・解析・フィードバック可能な臨床情報解析システム(Clinical Information Analyzer : C.I.A.)を構築した.方法として,臨床研究データベースの診療情報から抽出される医療機器情報を解析し,患者の予後予測モデル(生存予後,機能予後)のプロトタイプを開発した.モデル開発における課題として,患者情報や治療情報は複数の部署や人が保管しており,様々なファイル形式で保存されている点が挙げられる.予後予測モデルを開発するためには,これらデータの存在確認,収集,および統合作業をする必要があった.さらに,日常臨床中に収集されたリアルワールド・データを使用するため,クレンジング作業における課題解決のために多くの時間を要した.例えば,データの欠落が散見されたり,一定期間の検査値が得られないなど,データの質に関連する調整が発生した.今後は,実臨床での応用を前提とした結果の提示方法を検討するとともに,予測精度の向上を目指す.
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富井 直輝, 瀬野 宏, 山崎 正俊, 佐久間 一郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
116_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
開発環境のオープン化、モデル選択の自動化がすすむAI開発において、良質な学習データの収集は一層中心的な課題であると同時に、差別化の要素でもある。今日の医療現場では、医療機器から日々大量のデジタルデータが生み出されており、大量の学習データ収集は一見容易に見えるが、医療者間・機器間・施設間の計測データおよびラベルデータのゆらぎにより、十分な汎化性能を持つ学習モデルを訓練するための、良質な学習データセットの構築はいまだ容易ではない。このようなデータのゆらぎは結局の所、侵襲性の壁に阻まれ、内部の直接的な観察が困難であるという生体特有の問題に起因している。一方でさまざまなAI開発においても注目されている、効率的な学習データ収集に数値シミュレーションを応用するin silico学習のアプローチは、生体信号の解釈のための学習データ構築においても有効であると考えられる。本発表では心臓電気生理シミュレーションと深層学習を組み合わせて我々が開発した、心電図信号にもとづく心臓膜電位マッピング技術を紹介し、生体信号解釈のためのAIと数値シミュレーションの組み合わせの有用性について議論する。
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津村 遼介
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
116_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
2060年頃には高齢化率が4割に到達すると推定される日本において、医療のタスクシフティングの需要は今後顕著に高まっていくことが想定される。医用画像など既にデータ化されているものに対して、AIは有用な実績を残しているが、実空間でのインタラクションを伴う作業(治療、検査、手術など)の場面ではまだまだ研究が不十分である。著者らは超音波検査を対象にAIとロボットを用いた検査の自動化に取り組んでおり、本発表ではディープニューラルネットワーク(DNN)を用いたスキャン動作の模倣学習モデルについて紹介する。本研究では胎児エコーを想定し、異なる大きさの腹部におけるスキャン動作を学習させ、未知の形状の腹部に対して欠損のない画像を取得できるようプローブの位置を調整しながら自律的に軌道を生成することを目標とした。DNNモデルの潜在空間は腹部形状情報を表現するように設計し、腹部の高さと幅を潜在空間にマッピングすることで適切なスキャン軌道を予測する。さらに取得画像の画素値をベースとした誤差関数を用いた重み付けを行うことで、正しい軌道からの逸脱を検知することが可能である。本モデルはファントムを用いて検証を行い、未学習の対象に対して、体表面にマークした理想軌道上のドットを91.7%スキャンすることに成功した。
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山崎 正俊
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
117_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Electrical storm(ES)は心室頻拍・細動(VT/VF)が繰り返し発生することにより植え込み型除細動器(ICD)が頻回作動する事で発生する極めて重篤な病態であるが、その機序の詳細は未だ解明されていない。本研究では、家兎VFストームモデルにおける駆動源Rotorの役割と不整脈基質との関係性を明らかにする。家兎VFストームモデルは、家兎完全房室ブロックモデルにICDを挿入することで作成する。ES発生時に心臓を摘出し高解像度光学マッピングシステムを用いてVT/VF中の興奮様式を解明した。ES発生時の左心室にはisland状に活動電位持続時間(APD)が延長する領域が存在し、その領域サイズとAPDのバラツキの大きさがVT/VFの発生数と相関していた。QRSの捻れを伴う特徴的な多形性心室頻拍波形を呈するTorsades de Pointesはisland周囲をさまよい運動する駆動源Rotorにて維持されていることが判明した。神経型Naチャネル蛋白Nav1.8拮抗薬が不整脈基質を改善し、ESを抑制する可能性が示された。
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山内 治雄, 青山 岳人, 月原 弘之, 井野 賢司, 富井 直輝, 高木 周, 坂口 卓弥, 藤本 克彦, 佐久間 一郎, 小野 稔
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
117_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
【背景・目的】高齢化社会において大動脈弁狭窄症に対する低侵襲な経カテーテル的大動脈弁置換術が普及しているが、人工弁サイズの選択および安全な手技を実施する上で、術前に心電図同期CT検査による詳細な評価が重要である。一方で、大動脈弁閉鎖不全症に対する弁形成術を行う際にもCTによる客観的評価は手術プランを立てる上で有用と考えられる。我々はキャノンメディカルシステムズ社製Vitrea®を基盤とした、深層学習を用いた完全自動化CT画像セグメンテーションおよび測定アルゴリズムを開発し、その精度を検証した。
【方法】20例の大動脈弁狭窄症(AS)および20例の大動脈基部拡張を伴う大動脈弁閉鎖不全症(AR)のCTデータを自動解析・計測し、3名の手動測定結果の平均値と比較し相関係数(r)を求めた。
【結果】全症例で3D-CT再構築像により大動脈弁石灰化の分布および基部の不均等拡張を視覚化できた。AS、AR症例各々の大動脈弁測定値の相関は大動脈弁輪面積(r=0.98、0.94)、バルサルバ洞径(r=0.98、0.94)、冠動脈高(右r=0.97、0.99 左r=0.89、0.95)、弁尖geometric height(r=0.85、0.76)、弁尖effective height(r=0.69、0.72)と、手動計測値のばらつきと比べ高い相関が得られた。測定時間は手動計測で平均618~1126秒に対して自動計測は122秒と大幅に短縮した。
【結語】心電図同期CT画像を用いた大動脈弁自動解析の精度は手動計測と遜色なかった。短時間で高精度な評価を可能とし、大動脈弁治療プランのチーム内共有および治療の標準化に貢献が期待される。
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高田 淳平, 森村 隼人, 岡本 裕成, 峰田 紫帆, 尾嶋 浩太, 服部 薫, 岩﨑 清隆
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
118_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
治療機器の開発にはアイデア創出から試作、仕様決定、臨床前試験、治験と長い年月と多くのコストが必要となる。また疾患状態は患者毎に特徴が異なり、開発した治療機器の適応範囲を見極めるには開発後もさらに多くの期間が必要となる。既存の性能評価法は臨床データの蓄積と動物実験に大きく依存しており、任意の疾患状態に対する治療効果を適切に評価・確立することが困難であった。そこで本施設では工学的知見・技術に基づいて疾患状態を任意に創出することにより、治療機器開発を迅速化する試験システムの構築を推進している。本施設では心不全症、冠動脈疾患、弁膜症、大動脈解離を始めとした多岐に渡る心臓における疾患状態を模擬した効果的非臨床試験法の構築に着手している。特に心臓弁膜症患者は75歳以上で15%程度いるとされており超高齢者社会を迎えた本邦において、より効果的かつ安全な治療法・治療デバイスの確立が重要となる。本発表では長年着目されていなかったが、近年になり積極的な治療介入が必要と認識されるようになった一方で現状明確な治療介入タイミングや治療法が明確化されていない三尖弁閉鎖不全症について、①三尖弁疾患状態を模擬する右心室組織-シリコンハイブリッド型モデルの開発、②閉鎖型拍動循環シミュレータの開発、③本試験法から得られた知見を基に進めているこれまでにない治療コンセプトを持つ弁形成デバイスの開発研究、について紹介する。
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中沢 一雄, 稲田 慎, 岸田 優作, 柴田 仁太郎, 富井 直輝, 高山 健志, 井尻 敬, 芦原 貴司
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
118_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
【はじめに】⼼房細動(AF)は⼼房の不整脈の一種であり、重篤な脳梗塞や⼼不全を引き起こす有病率の高い疾患である。発作性AF にはアブレーションによる肺静脈隔離術が有効な治療法である。⼀方、非発作性AF に対しては、いまだ有効な治療法が確⽴されていない。
【⽬的】ヒト3次元心房モデルを用いて、非発作性AF の典型的な症例再現を目指した大規模電気⽣理学的シミュレーションを実施し、興奮伝播様式の効果的可視化システムを開発する。
【⽅法】MRI データを元に3次元⼼心房形状モデルを作成した。さらに、⼼房形状モデルをボクセルモデルに変換し、各ボクセルを⼼筋細胞の集合であるユニットとした。各ユニットにヒト⼼房筋細胞の活動電位モデルを組み込み、活動電位モデルの特性変更や3次元形状に対する線維⾛向の変化を実装し、大規模な電気生理学的コンピュータシミュレーションを可能にした。加えて、3次元⼼房の興奮伝播ダイナミクスの可視化システムを作成した。
【結果・考察】AF の発端と考えられる旋回性興奮波の発⽣実験から、心房の興奮伝播ダイナミクスは複雑に変化することを確認した。結果として、発作性AF の再現には⾄ったが、⻑期に持続する⾮発作性AF の再現は不十分であった。
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脇坂 仁
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
119_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
AIによる自動認識は多くの医療現場で導入されつつある。これまでは画像を中心とした情報からの自動認識技術によるものがほとんどで、物体認識、顔認識、動作認識などが中心でカメラから得られた画像を元に学習させる方式として急速に進歩してきた。また音声や文字認識は医療の現場でも比較的長く利用されてきた経緯があり、活用の範囲も広がりつつある。一般的に自動認識に用いられる情報はなるべく多様な変数を入力した方が認識率は向上する。臨床的なAI予測のような研究を行う場合、患者のなるべく多面的なデータを入力する必要が生ずる。これらのデータは可能な限り定量化され、規格化されたものを要求される。すなわち、比較的手間のかからない画像データから、こういった臨床研究のために現場で人が入力すべきデータが標準化されたり、知らないうちにデータ集めに参加させられたりする可能性が増えると考えられる。これまではひとの経験と勘で判断していた部分を本当に自動認識で置き換えた方が現場の負荷が減るのか、また正しい判断が得られるのか、総合的に判断する視点が必要となる。
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奥田 厚子
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
119_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
手術部門は病院の収入に大きく貢献するとともに、安全な医療を実践する上で最も大きな役割を果たす部門の一つでもある。より多くの患者が手術を受けられるように合理的な手術運営を行う上でも、医師や看護師の個人のスキルだけに依存せず、組織的に安全を確保する仕組みを構築することはきわめて重要である。
そのような中で、RFIDを用いた手術器械の確認には大きなポテンシャルがあると考えている。手稲渓仁会病院では、従来からの手作業による手術器械の確認に自動認識技術を臨床で活用するための検討を行ってきた。実際に、RFIDのような技術を活用する利点があることを実感しているが、同時に、技術を上手く活用できても患者への様々なリスクの想定を考えていく必要がある。こうした取り組みの現状と課題を報告する。
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鈴木 充
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
120_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
弊社はリストバンドなど看護師に身近な自動認識メディアを長年にわたって提供してきた。基盤技術だけに、この間の進化は看護師など最前線の医療従事者にはわかりにくい面もあるかと思う。そこではリストバンドや採血管などのモノの進化を図りつつ、これらを自動認識する情報システムの発展も重要と考えて力を入れて取り組んできた。
こうした技術の活用が社会全体で広がる中で、自動認識の信頼性も考えていく必要があると考える。多くの人は、自動認識メディアの不具合で自動改札を通過できないような場面は想定しない。医療においても同様の状況が生まれつつある。しかし、そこは機械であるから、適切に設計し、適切に導入しなければ期待した通りの運用は実現できない。弊社が30年以上にわたって育んできた自動認識技術を、よりよく活用いただけれるよう今後も支援していきたい。
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平井 賢吾
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
120_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
離床センサーなど自動認識技術を用いて収集した情報は、ナースコールなどの通信機器を通じて看護師に伝達される。このため自動認識技術が発展すればするほど、看護師は判断すべき情報が増えて業務が多忙になるという逆説的な現象が発生する。とくにセンシング装置ごとに看護師に警報を発する仕組みを持つことは望ましくないし、だからといって看護師が多様な情報を頻繁に参照するようなシステムも看護業務とは合致しない。
そこで弊社はセンサーを用いて発報された情報やナースコールなどの情報を、いったん整理した上で看護師に伝えるという視点も重要と考えている。こうしたコミュニケーション自動化の議論はまだ黎明期ではあるが、パートナー企業とともに弊社が取り組んできた経緯と課題を共有したい。
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陳 延偉
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
121_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
臓器や腫瘍などのセグメンテーションは、計算機支援診断や計算機手術支援などにおいて重要なステップである。近年、深層学習による画像セグメンテーションは高い精度を達成している。一方、自然画像に比べ、医用画像のアノテーションコストが高く、学習に利用できるアノテーションされた画像の数が少ない。そこで、アノテーションされていないデータも学習に利用する半教師付きセグメンテーション法が注目されている。本講演では、講演者グループが開発した、最新の半教師付きセグメンテーション法1, 2について紹介する。
1. H. Huang, L. Lin, Y.-W. Chen, et. al. “Medical Image Segmentation with Deep Atlas Prior.” IEEE Trans. Medical Imaging, Vol.40, No.12, pp.3519-3530, 2021.
2. H. Huang, L. Lin, Y.-W. Chen, et. al. ” Graph-BAS3Net: Boundary-Aware Semi-Supervised Segmentation Network with Bilateral Graph Convolution,” Proc. of International Conference on Computer Vision (ICCV2021), pp. 7386-7395 (2021).
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初谷 太郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
121_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
第三次AIブームの火付け役となった2012年の「AlexNet Paper」の登場から10年が経過した。この間、AI技術は飛躍的な進化を遂げ、日常生活のあらゆる場面で利用される基盤技術となった。
富士フイルムでは「REiLI」というAI技術ブランドのもと、医療従事者に新たな価値を提供するために、当社がこれまで培ってきた画像処理技術とAI技術を組み合わせた幅広いアプリケーションを開発している。
当社はこのAI技術開発を4つのステップで進めている。1つ目は低線量でも視認性の高い画像を実現するAIデノイズと高画質化。2つ目は、解剖学的構造の把握を支援する臓器セグメンテーション。3つ目は、病変の検出と計測を支援するコンピュータ支援検出(CAD; Computer-Aided Detection)。そして4つ目はレポート作成支援などのワークフロー効率化である。
商品としては2019年からAIプラットフォームとしての読影ビューア「SYNAPSE SAI viewer」をリリースし、臓器セグメンテーションや脊椎/肋骨ラベリング機能に始まり、肺結節CAD、肋骨骨折CAD、胸部単純X線CADなどの病変検出機能を搭載してきた。また、画像処理技術と自然言語処理技術を融合し、肺結節の性状を分析し、所見文候補を生成する所見文作成支援機能なども順次リリースしている。
現在、全身の診断ワークフローの効率化に向けて、臓器認識の対象拡大・精密化、MRIや様々な疾患や所見の認識技術、自然言語処理などの研究開発を行っている。本講演では、当社の取り組みの概要~最前線を紹介する。
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山田 茂樹, 伊藤 広貴, 松政 宏典, 伊井 仁志, 前田 修作, 武石 直樹, 大谷 智仁, 谷川 元紀, 渡邉 嘉之, 和田 成生, ...
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
122_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
【背景・目的】我が国では3D MRI画像から内側側頭部脳領域の萎縮度を評価するVSRADが脳ドック等で広く使われてきた。2020年に発売されたSYNAPSE VINCENTの脳区域解析アプリは脳と脳脊髄液をAIで26区域に自動分割できる。2022年より運用が始まったクラウド型AI開発支援サービスSYNAPSE Creative Space (CS)は特定関心領域を抽出し、病的所見の有無を自動判定するAIを医療者自らが作成できる。これらを活用した医療・脳ドックの未来を紹介する。【方法】健常成人133人に3T MRIで3D T1-MPRAGE画像を撮影。脳区域解析アプリで、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、海馬、小脳、脳幹等21領域と、各脳室、くも膜下腔の5区域に自動分割、体積割合を算出し、局所脳と髄液の加齢性変化を検証。SYNAPSE CSで特発性正常圧水頭症(iNPH) に特徴的な画像所見DESHを自動判別すべく、頭蓋内CSF、脳室とくも膜下腔2領域の領域分割と脳室拡大(VD)、高位円蓋部・正中くも膜下腔狭小化(THC)、シルビウス裂開大(SFD)の自動判定を推論。【結果】20歳以降加齢とともに大脳皮質灰白質は直線的に減少し、大脳辺縁系等の皮質下灰白質は維持され、白質は40代までわずかに増加後、急速に減少。一方、くも膜下腔は直線的に増加し、脳室は60代以降に増加。SYNAPSE CS によるiNPHのDESH、VD、THC、SFDの定量的自動判定は十分な精度であった。【結語】従来、「脳委縮」や「DESH」は医師の主観で評価されてきたが、今後はAIを活用した各脳区域の体積割合による脳委縮やDESHの自動判定など、数値で客観的に評価される。
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相宮 直紀
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
123_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
ヘルスケア・医療機器業界は、生体医工学を学んでいる学生の皆さまにとって、その学びを十分に活かして働くことのできる業界 の一つです。
よって、生体医工学を学んでいる学生の皆さまの中には、ヘルスケア・医療機器業界も進路の選択肢の一つとして入ってくる方もいることと思います。
本セッションでは、ヘルスケア・医療機器業界の概要や特徴などをご紹介し、まずはこの業界がどんな業界なのかについて知っていただきます。
その後ヘルスケア・医療機器業界で活躍する企業の話を聞いていただき、より深くこの業界について理解を深めていただける内容となってございます。
さて、簡単にヘルスケア・医療機器業界の特徴についてご説明しますと、主に以下のような特徴を持っております。
<主な特徴>
・成長産業である
・社会貢献度の高い仕事である
・グローバルに活躍ができる
・多様な人材が活躍できる
・様々な企業が活躍している
・国が支援している業界である
ヘルスケア・医療機器業界は働くうえで魅力ある特徴をたくさん持つ業界 です。
少しでも興味がございましたら、ぜひ本セッションにご参加いただき、今後の業界・企業研究や就職活動にお役立ていただければと思います。
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出雲 武宏
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
123_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
人々の健康をサポートする医療用電子機器の開発、製造、販売、輸出入を行っています。
医療機器、在宅医療、AEDという3つの重点事業を軸に、全国200拠点以上の販売ネットワークで地域密着のダイレクトサービスを実現しています。
国産第1号の心電計をはじめ、ホルター心電計、生体情報モニタ、AED、心臓ペースメーカ、カテーテル、人工呼吸器、超音波画像診断装置、血圧脈波検査装置、在宅用酸素濃縮器など画期的な医療用電子機器の開発と販売を通じて、
医学の進歩に寄与し、社会に貢献しています。
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田川 圭
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
124_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
日本光電は1951年の創立以来、経営理念「病魔の克服と健康増進に先端技術で挑戦することにより世界に貢献すると共に社員の豊かな生活を創造する」の実現を目指し、革新的で高品質な医療機器を数多く世界に送り出してきました。日本光電がこれまで開発した製品は、世界120カ国以上に輸出され、世界各国の医療現場で使用され、多くの患者さんを救ってきました。日本光電は、一人でも多くの患者さんを救うために、技術革新とより高品質な製品を生み出すことに挑戦し続けています。近年、国境を越えた様々な社会課題に対応するためSDGsが推進されています。医療では、先進国における高齢社会の進展や医療費の増大、新興国における基礎医療の不足や医療格差の拡大等、様々な課題が生まれ、複雑化しています。こうした背景の中、日本光電は医療機器メーカとしてこれまでに培ってきたHMI※技術や医療機器開発の知見に加え、データを中心とした新たなデジタルテクノロジーを活用しながら、これまで以上に人に寄り添った独自のソリューションを創造していきます。本セッションでは当社の創業時の話と事業概要、今後の当社が目指している姿についてご紹介し、当社の理解をより深めていただきたいと考えています。※ HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース): 人間と機械との接点。当社の場合、センサ技術、信号処理技術、 データ解析技術の総称。
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廣瀬 美緒, 今泉 夏香
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
124_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
生体医工学を学ばれている皆様の活躍できる場がテルモにはあります。医療に進化を 患者さんにより良い人生を さあ、ともに医療の未来へテルモは、「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ、日本発のグローバル医療機器メーカーです。世界160以上の国と地域で事業を展開し、28,000人以上のアソシエイトが革新的なソリューションを届けるために日々活躍しています。体温計の国産化から始まり、設立以来、医療の基盤を支え続けてきました。現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供し、患者さんと多様な医療現場、製薬企業などに50,000点を超える製品やサービスをお届けしています。患者さんに負担の少ない治療を提供し、より良い治療効果を提供するのはもちろん、医療従事者が安全・安心のもとケアに専念できるようにすることや、未来の医療を生み出す研究の現場を支えることも、テルモの重要な使命です。医療の現場に存在する課題と真正面から向き合いながら、新たな価値創出に取り組みます。会社案内 https://terumo.meclib.jp/TerumoCorporateGuide2022JulyJP/book/index.html#target/page_no=1会社紹介映像 https://youtu.be/YDAEuqlCK8w
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大井 隆之
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
125_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
コロナ社は理工系の学術出版社である。日本生体医工学会とコロナ社とは、前身にあたる日本ME学会設立時において会長であった坂本捷房先生と弊社(の当時の社長)が懇意にしていた縁で、日本ME学会雑誌(医用電子と生体工学)の創刊号から発行をしていた関係もあり、設立当時から現在に至るまで賛助会員である。その間「ME選書」「ME教科書シリーズ」「ME用語辞典」など学会監修・編集の書籍も出版している。
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相原 輝夫
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
125_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
可能性あふれる生体データの研究と医工ビジネス
株式会社ファインデックスは大学病院をはじめ多くの大規模病院に対して、電子カルテや部門システムを提供する病院情報システム事業と、ヘルステック事業を展開している。ヘルステック領域では生体電位計測を用いたウェアラブルモニタや、眼球運動分析による視野解析装置と同技術を使った認知症検査装置の開発を行っている。
昨今様々なセンサーが小型高機能化されると同時にPCのCPU/GPUも高速化が進んだことにより、新しい技術を利用した医療機器の開発が可能になってきた。今回、当社の視野検査装置GAP(Gaze Analyzing Perimeter)の開発ストーリーとその精細な分析技術について解説を行う。これは生理学的な知見とエレクトロニクスデザインに加えて極めて難易度の高いプログラミングからなる機能であり、複合的な知識欲の高い医工若手研究者の好奇心を大いに刺激するものと期待している。
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望月 修一
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
126_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
「生体医工学」は基礎科学ではなく応用科学(実学)です。実学である以上、社会実装することが大きな目的となります。皆さんも医療をよりよくするための研究に日々取り組んでいることと思います。では皆さんの優れた研究成果(イノベーション)を患者さんに届けるためにはどのようなことが必要でしょうか?
イノベーションを医療現場に届けるためには研究し論文を書くだけでなく、それを社会実装するために必要な手続きを踏む必要があります。そのひとつが医療機器の承認です。承認などの規制をクリアして初めて医療機器は製造販売することができます。そして製造販売することにより、永続的に多くの患者さんにイノベーションを届けることができます。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の役割の一つがこの承認審査です。
承認審査においてはイノベーションの効果(ベネフィット)と副作用(リスク)のバランスを評価しどのように医療現場に届けるか、届けたあともどのように安全性を保っていくのか、を判断する必要があります。PMDAはまさにこの評価と判断を科学に基づき行う機関です。日々病気と闘っている患者さんとその家族の笑顔のために、イノベーションを医療現場に届ける評価判断をすることが私たちの仕事です。また副作用が起きてしまった場合には救済をする役割も担っています。
直接ではありませんが多くの患者さんを救うことができる、このやりがいのある仕事をぜひ一緒にやってみませんか?
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竹下 修由, 竹中 慎, 北口 大地, 長谷川 寛, 古澤 悠貴, 龍 喬子, 伊藤 雅昭
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
127_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
内視鏡手術は、手術の質が治療成績に影響することが報告されており、外科医の技術の担保が課題とされてきた。手術技能の向上には手技の客観的な評価が重要となるが、従来の内視鏡手術において、普遍的かつ客観的で再現性のある評価指標は確立されていない。本邦においても、日本内視鏡外科学会(JSES)が評価基準を設け、手術手技の評価を行っているが、評価者の労務負担や評価自体のばらつきが課題として認識されている。
我々はこれまで、日本医療研究開発機構(AMED)メディカルアーツ研究事業「内視鏡外科手術におけるAI自動技術評価システムの開発」において、手術技能の評価カテゴリーを明確に定義し、①術野展開(Exposure quality)、②剥離操作(Dissection quality)、③組織愛護(Tissue handling)、④手術効率(Efficiency)、⑤器具操作(Psychomotor skill)、をいかに高いレベルで実現するかが「質の高い手術」の提供に必要不可欠であることを明らかにした。これら評価カテゴリーの中で、出血ピクセル数、通電効率、組織牽引、術野定型度、工程移行回数、など計15個の技術評価パラメータの探索とAI画像認識モデル構築を行った。これらは、JSES技術認定審査における高得点群、低得点群、別で収集した当該術式の経験症例数5例以下のNovice群の3コホート比較においていずれも有意差を認め、技術評価パラメータとして有用と評価された。
今後は術式横断的なAI手術技能評価システムの構築を目指すともに、リアルワールドでの臨床的価値を検証していく。
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安井 昭洋, 内田 広夫, 森 健策, 石田 昇平, 出家 亨一, 檜 顕成, 城田 千代栄, 小田 昌宏, 林 雄一郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
127_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
【はじめに】術後成長発達する小児患者にとって、低侵襲手術は非常に重要である。しかし患者数は限られているため、しっかりとした手術を行うためにoff the job-training(OJT)が重要である。さらにOJTでの効率的な手技獲得には、手技を客観的に評価しfeed backを行うシステムが必須である。また安全で効率的な内視鏡手術を行うためには、臓器の位置関係の把握が必要であるため、術中ナビゲーションは重要な要件となる。これらの課題に対して、AIを用いた内視鏡手技評価および手術支援システムの構築に着手しており現状の成果を報告する。【方法と結果】食道閉鎖症モデルを用いた吻合手技を被験者に課し、各被験者の手技を最初に人の目で「check 表」「エラー項目」「時間」を用いて評価した。次にビデオから検出した鉗子の動きと人が判定した手技優劣の関係性をAIで学習させ、上位88%・下位95%の精度で手技優劣が自動判定可能となった。この結果を解析することで今まで必要だった50項目以上の肉眼チェックが、わずか7項目チェックするだけで手技の優劣を判断できることが明らかになった。現在食道閉鎖症の手術画像を用いて、食道・迷走神経・気管を深層学習させ、各種構造物の自動認識を進めている。【まとめ】AI画像解析により内視鏡手技の優劣をビデオで判定可能となった。この結果から新たに効率的な手技判断基準を定めることができた。術中ナビゲーションは現在精度のさらなる向上を目指している。
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三宅 正裕, 川崎 良, 田淵 仁志, 大鹿 哲郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
128_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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フリー
すでに人口減少局面にある我が国だが、高齢者人口は2045年がピークとなると推定されている。一方で、外科系医師の減少・大都市偏在・働き方改革等が進むことにより、術者や医療従事者の不足が見込まれている。手術が必要な患者と熟練した技術を備えた外科医のアンバランスな配置という課題がより明確になりつつある。近年、ロボット手術においてはda Vinciシステムに代表される外科手術、医療用ナビゲーションシステムに代表される脳神経外科手術・整形外科手術などに大きな進歩がある。将来的にはさらにロボット手術が進展することが予想されるが、ロボットによるアシスト性能を高めると同時に、術者への技能継承も極めて重要である。手術技能評価は上級医師の経験に基づきナラティブな指導によって行われてきた。「熟練の技」を次の世代の術者に教育するには時間がかかる一方、高度な医療を求める国民の期待は高まり、経験の浅い術者に執刀されることを極端に恐れる風潮もある。理想的には、熟練した医師がAI・ロボット技術によりいち早く熟練の域に到達することである。我々は、術式が標準的かつ手術件数が極めて多い白内障手術を対象として人工知能による手術動画等解析を行った。令和2年度から4年度のメディカルアーツ研究事業での成果を共有する。
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芳川 豊史, 中尾 恵
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
128_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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目的:低侵襲化の道を進む、匠の技である、無形の呼吸器外科手術手技について、可変形3次元画像と大規模なバーチャル手術手技アトラスを用いて有形化する。さらに、呼吸器外科手術ガイドシステムの創出により、呼吸器外科手術の高位平準化を図る。方法:本研究は、現有のシーズである画像変形推定技術と切離プロセスマッピングという技術を用いて、患者個人のCT情報をもとに、可変形3次元バーチャル画像を作成し研究開発を行う。結果:これまでの開発において達成し得たものを紹介する。まず、種々の手術術式において、可変形3次元バーチャル画像を作成し実際の手術画像と対比させたバーチャル手術手技アトラスを作成できた。次に、肺切除で最も肝要な、肺門や葉間というレベルでの血管や気管支という脈管構造の剥離のシミュレーションを、患者個人のCT情報をもとに、可変形3次元バーチャル画像を用いて行い得た。その際に、肺内を透見できる画像技術や手前の構造物を消去する技術を導入した。実際の手術において、患者個人のCT情報をもとに作成した可変形3次元バーチャル画像を自由に動かし、実際の手術における手術ガイドを10数例の解剖学的肺切除で行い得た。結語:我々が手掛けている可変形3次元バーチャル画像による手術ガイドについて進捗を紹介した。
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建部 将広, 大山 慎太郎, 藤田 明子, 下田 真吾
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
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発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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外科手技の習得には、反復した一定の訓練などにより“自動化”した手技を行えるよう、徒弟制度的な訓練が必要とされる。外傷などでの損傷による微小な血管や神経を縫合するには手術用顕微鏡を用いたマイクロサージャリーは広く行われているが、その技術取得には一定のトレーニングが必須となる。一方、実臨床の場では近年術野を3Dでモニターに表示する外視鏡が利用可能となった。外視鏡を使用することで術者の頭部周囲が自由になり、映像の共有が可能となる。これを用いることで、頭部周辺に各種センサーを使用でき、“自動化”した“無意識下”の運動制御による手術手技を解析し、分析結果から人材育成、そして新規医療技術開発につながると考えた。実験として、熟練者・初心者を対象とし、外科手技用トレーニング血管を用いて6針縫合する手技を行った。初心者と熟練者、およびトレーニング後の初心者の視線・姿勢・器具の動きに関して解析した。作業全体で縫合時間・視線/器具の動き・瞳孔が初心者で大きくなっていた。自然災害が頻発する日本では重度外傷患者が多数発生する可能性は否定できず、マイクロサージャリーにも対応可能な医師を育成することは重要となる。今回の結果から、初心者と熟練者の手技に対する習熟度の違いは視線運動などに関連していた。これらの違いを医師育成・手術用ロボット開発に活かせられると考えられた。
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安部 崇重, 近野 敦, 海老名 光希, 晏 凌波, 今 雅史, 小水内 俊介, 堀田 記世彦, 渡辺 雅彦, 七戸 俊明, 倉島 庸, ...
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
129_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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我々の研究グループでは、鉗子動態解析により腹腔鏡手術熟練者の特徴を抽出し、学習者の技術レベルのさらなる向上とラーニングカーブの短縮を目標に、2018年12月よりブタ臓器を用いた腹腔鏡手術ウェットラボにおいて、赤外線モーションキャプチャー装置を用いた腹腔鏡手術鉗子の動態解析を行ってきた (Ebina K, Abe T et al. Surg Endosc 2021)。本モデルは、鉗子に取り付ける赤外線マーカーのパターンを変えることで、複数の手術鉗子の動態を同時に測定可能で、複雑な手術手技においても、すべての鉗子の動態測定が可能な利点を有している。 今回のAMED採択課題では、カダバートレーニングにも研究対象を拡張し、より複雑な術式での熟練者の特徴抽出と、術中の鉗子位置情報と術前のCT画像情報の統合に挑戦中である。具体的には、①手術鉗子動態解析データと機械学習を用いることで、熟練者の特徴を言語化・見える化する、②学習者が鉗子動態結果に基づいた技量評価・定量的フィードバックをオンサイトで得られる腹腔鏡トレーニングモデルを確立する、③術中の鉗子位置情報を、術前画像データから構築したデジタルツイン上にリアルタイムに提示することで、解剖学的誤認のリスクを最小化する新しい手術支援方法を開発することを目指している。当日の発表では、現在の進捗を紹介する。
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武田 湖太郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
130_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy, fNIRS)は,脳活動に由来した血流・ヘモグロビン濃度の変化を測定する脳機能計測法である.他の脳機能計測法に比べて簡便で安全性が高く,静音環境下での計測も可能であることから,2000年前後から幼小児の脳機能計測,心理学研究や聴覚研究などで活発に用いられてきた.さらには拘束性が低いという利点もあり,リハビリテーション領域や精神神経科領域をはじめとした臨床での応用が試みられてきた.一方で,脳活動を直接的には反映しない頭皮血流変化がfNIRS計測信号に混入すること,その変化が体幹をはじめとした体の動きに依存すること,そしてその量が無視できない比率であることが広く知られるようになった.この頭皮血流の問題はfNIRS計測結果と解釈に大きく関わるため,リハビリテーションの臨床においてfNIRS計測を応用しようとする研究の発展がやや停滞する要因のひとつにもなった.現在ではいくつかの頭皮血流成分の除去法が提案され,一部は販売されている計測装置に組み込まれている.本講演では,頭皮血流成分と体動の関係についてこれまでの実験結果を用いて解説するとともに,リハビリテーションに関わる脳機能計測結果の解釈に頭皮血流成分がどのように関わるのか,および,その成分除去方法について概説する.
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櫻田 武
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
130_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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健常者での運動学習や、運動機能障害に対するリハビリテーションにおいて,より高い訓練効果を得るための重要な要因の一つとして「注意の向け方」が指摘されている.この点について,身体動作に注意を向けるInternal focusと外部環境に注意を向けるExternal focusが比較される.さらに近年の研究では,どちらの注意戦略を採用すべきかについては個人差が大きいことも報告されている.このような脳機能個人差が無視できない場合,事前に個々人の注意適正を客観的に評価することが重要となる.本研究では,このような運動中における個々人の最適な注意戦略を反映する神経基盤を同定することを目指し,機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて健常若年者・健常高齢者・急性期脳卒中患者の前頭前野活動を計測した.結果,Internal focusが最適注意戦略となる群(Internal優位群:34名)と,External focusが最適注意戦略となる群(External優位群:30名)に分かれ,個々人の最適な注意戦略の下では,運動課題遂行中のパフォーマンスを維持しやすくなることが確認された.さらに,Internal優位群はExternal優位群に比べて,Internal focus条件下での左背外側前頭前野活動が有意に高くなった.以上より,運動中の注意適正を決定する神経基盤として,前頭前野が関与し,その領野における個々の身体感覚情報に対する処理能力がInternal focus優位を導く可能性が示唆された.これらの結果は,リハビリテーションなどにおけるテイラーメードな訓練プロトコルの提案に寄与することが期待される.
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大星 有美, 福司 康子, 田村 和輝, 山本 清二
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
131_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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リハビリテーションでは、対象者自身の意欲的な取り組みが重要である。作業療法では、対象者の興味や関心がある作業を治療に導入することによってリハビリテーションに対して意欲的に取り組むことを促す。しかしながら、対象者によっては、高齢による影響や認知機能低下、高次脳機能障害等で意思や感情の表出や伝達が難しいことがしばしば観察される。対象者の感情状態を客観的に把握することができれば、対象者の意欲を引き出す作業活動の決定に有用である。
これまでfNIRSを用いて前頭前野の脳血流変化から対象者の感情状態を推定することを行ってきた。感情を惹起する状況を想像した際に、前頭極を含む前頭前野の脳血流が上昇した。この際には、自分に関連するネガティブな感情を惹起する状況の想像でより大きな脳賦活が観察された。ポジティブまたはネガティブのいずれの感情価が脳血流を上昇させるかについては報告されている結果が様々であるが、感情によって前頭前野の血流が上昇することは一致した見解といえる。
また、楽しみを伴う創作作業と単純作業時の脳賦活について時間分解分光法を用いて調べた。主観的評価では創作作業時には、有意に楽しさや意欲が高まり、脳賦活は単純作業時と比べて創作作業時に大きいことがわかった。
これらのことから、fNIRSは、作業療法で重要となる興味・関心がある作業への取り組み意欲を客観的に把握する一助となる可能性があると推測された。
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片桐 誠, 中林 実輝絵, 松田 康宏, 一之瀬 真志, 小野 弓絵
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
131_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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近年、筋電気刺激療法は運動の代替、筋萎縮の予防、血流の促進などを目的として用いられている。しかし、筋電気刺激による不随意的筋収縮は筋線維の動員様式などが随意的筋収縮とは異なると考えられており、筋電気刺激療法の循環動態に対する有用性については未解明な部分が多い。本研究では拡散相関分光法と近赤外分光法の同時計測を用いて、筋電気刺激による不随意的筋収縮と随意的筋収縮における局所筋の血流動態と酸素動態の違いについて検討した。健常成人14名を対象とし、足関節の背屈運動を筋作用とする前脛骨筋に30 Hzの電気刺激を前脛骨筋に与えて発生した足関節の不随意的背屈運動と、筋電気刺激により得られた張力と同等の強度を発揮させる随意的背屈運動を行った場合の前脛骨筋の血流動態および酸素動態を計測した。筋電気刺激による不随意的筋収縮は随意的筋収縮と比較して運動中の酸素抽出率が有意に高く、運動後は血流量と酸素代謝率が有意に増加したことから、筋電気刺激は血流量および酸素代謝を促進させる運動の代替として有用であると考えられた。しかし、筋電気刺激による末梢筋の血流量や酸素代謝促進効果は性差や皮脂厚、電気刺激の周波数の違いによって異なる可能性がある。発表では、20、40、60、80 Hzの異なる周波数で筋電気刺激を行った場合の局所筋の血流量および酸素動態の違いについても述べ、筋電気刺激療法に適切な刺激周波数について検討した結果を報告する。
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桝田 浩禎, 赤澤 康裕, 石田 秀和, 成田 淳, 坂田 泰史, 宮川 繁
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
132_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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【背景】
高齢化に伴い、心筋梗塞や弁膜症によって慢性心不全に陥る患者が増加している。慢性心不全患者に対して、退院後も体重や血圧を測定して記録するように指導しているが、有効性は限定的であり、1年以内に約40%の患者が再入院を要している。現在、我々は在宅の慢性心不全患者のⅢ音と呼ばれる心不全に特異的な心雑音を検出するために、時計型ウェアラブルデバイスとソフトウェアを開発している。
【目的】
開発したデバイスとソフトウェアを実際の入院中患者に対して使用し、Ⅲ音の検出精度を検証すること
【方法】
2022年1月から4月に大阪大学医学部附属病院に心不全のため入院していた患者を対象とした。デバイスとスマートフォンを3日間貸し出し、1日3回ずつ心音を収録した。データはスマートフォンアプリとサーバーに送信された。 専門医のⅢ音判定結果を正解データとしながら、我々の解析アルゴリズムのⅢ音検出感度と特異度を算出した。
【結果】
11人の患者が本臨床研究に参加した。年齢の中央値は 65 歳。Ⅲ音は、専門医によって3人の患者で検出された。我々の解析アルゴリズムは、専門医の正解データに対して80%の感度と特異度を有していた。すべての参加者は、3 日目にデバイスを自力で操作できた。
【結論】
我々のデバイスとソフトウェアは、専門医と同等の精度でⅢ音を検出した。在宅患者の生体情報を集め解析することは、心不全治療の新しい選択肢となりうる。
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峰松 健夫
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
132_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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Skin blotting is a technique that is used to non-invasively collect molecules, such as proteins, nucleic acids, and other compounds, from the interstitial fluid of the skin. To date, our research group has attempted to develop self-monitoring methods using skin blotting for several skin disorders. In this lecture, I introduce a skin blot examination for tumor necrosis factor and adenosine triphosphate to identify latent skin inflammation due to ultraviolet irradiation and cellular damage of the skin due to pressure loading, respectively. These achievements contribute to developing self-monitoring methods for the early detection of skin abnormalities and their prevention.
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長島 優
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
133_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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ラマン顕微分光法は、非標識の生体組織を対象に、非破壊・非侵襲で脂質イメージングを行うことができる。しかし、生体組織中に集光した光源レーザーの焦点容積の内部は、数多くの分子が混在した複雑な環境であり、測定スペクトルは複数の分子由来の信号の重ね合わせとなる。ここで、測定信号を個別の分子由来の信号に分解することは一般に、陽に解くことのできない不定性のある問題となる。この問題を解くために、本研究では、光学的方法・統計学的解析手法・生化学的手法を組み合わせて、ラマン分光顕微鏡を用いたラベルフリー脂質イメージング技術を開発した。本技術は、測定信号の分子特異性を最大化するために、低波数領域のラマンスペクトル測定技術・独立成分分析を用いた線形信号分解手法・組織の脱脂を用いた検体前処理法の3つの要素技術を組み合わせて用いる。開発技術を用いて、ファブリー病患者の末梢神経組織のイメージングを行い、末梢神経の神経周膜組織に異常蓄積したglobotriaoslyceramide脂質の分子特異的な可視化を行った。本手法は、患者由来の生検組織や剖検組織など、あらかじめ脂質標識を施すことができない生体組織の脂質イメージングに適している。また、末梢神経以外の組織にも適用が可能であり、汎用の脂質イメージング技術としての応用が期待できる。
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