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遠藤 達郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
133_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
生体の化学情報を取得することが可能なバイオセンサは、将来の医療・創薬・看護等様々な分野において応用が期待されるデバイスであり、我々は、ナノメートルの構造より観察される光学特性を利活用する学術領域である「ナノフォトニクス」を基盤としたバイオセンサ開発を行っている。ナノメートルの構造より発現される光学特性は、バルク状態とは異なり、特定波長の光吸収・回折・干渉等を観察することができる。加えて観察される光学特性は、周辺の屈折率変化に対して鋭敏であるため、抗原抗体反応やDNAハイブリダイゼーション等種々の生化学反応によって誘起される屈折率変化を高感度に検出、生体の化学情報を取得可能なバイオセンサ開発が期待できる。我々は、ナノメートルサイズの構造が結晶様に周期的に配列した光学素子であるフォトニック結晶やプラズモニック結晶を用いたバイオセンサ開発を行ってきた。本発表では、前述したバイオセンサを用いた生体の化学情報取得への応用について紹介する。
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横田 秀夫, 中村 佐紀子, 蛭川 英男, 辻村 有紀, 王 軍峰, 前田 英次郎, 松本 健郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
134_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
血管は血流により動的な圧力に適応するために、複雑な組織構造を有している。血管を構成する組織は、血管内皮細胞,平滑筋細胞に加えて、弾性板などの結合組織から構成され、これらの構造は、発生学的な部位特異的な構造に加えて、血管のおかれた環境に応じて動的にリモデリングしている。血管の力学的な特性は、これらの構造と関連することから、血圧や流速とその構造について検討することが必要である。血管の3次元構造の観察には、マイクロCTや共焦点レーザー顕微鏡を用いた方法が報告されているが、血管全周の大きな範囲に対して、マイクロメータ精度での3次元観察は実現されていない。そこで、観察対象を凍結包埋し、試料上端を切削除去して、その断面を観察することを自動的に繰り返す3次元内部構造顕微鏡を開発し、血管の詳細な3次元構造を解析した。観察対象の血管内皮細胞は、生細胞核染色液DRAQ5を用いて蛍光染色し、弾性板の局在は自家蛍光を利用して蛍光観察した。これらの試料を、2波長のレーザーを同時に照射し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて得られた蛍光を2台のカメラで同時観察する顕微鏡を開発してその内部構造を撮影した。観察した画像はボリュームデータ解析ソフトVCAT5(Riken)を用いて、核と弾性板を領域抽出し、核の主方向と血管の向き、弾性板の走行を解析した。さらに、血管固定時の内圧、伸張長さによる構造の差異について比較した。
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松本 健郎, 範 勇, 王 軍鋒, キム ジョンヒョン, 前田 英次郎
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
134_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
高血圧に曝されると動脈壁は肥厚し,生理状態における円周方向応力が一定に保たれることが知られている.一方,軸方向応力についてはこのような応答は見られず,生理状態の軸方向応力は高血圧血管では低くなる.この原因の一つとして,血管壁内で円周方向に配向する平滑筋細胞が細胞長軸方向の張力には応答するが,短軸方向の力には応答しない可能性が指摘されていたが,詳細は明らかでなかった.ところで最近,血管壁の肥厚には核の変形が関与する可能性が指摘されている.すなわち,高血圧に曝されることで組織の変形,ひいては細胞核の変形が増加し,これが核内のクロマチンの分散を引き起こし,転写・翻訳が盛んになり,最終的にタンパク質産生を促進され,壁が肥厚する可能性が指摘されている.そこで,家兎胸大動脈から厚さ0.2 mmの薄切片を軸方向と円周方向に垂直な面内から切出し,円周方向と軸方向にそれぞれ引張り,核とアクチンフィラメント(AF)ネットワークの変形を調べた.AFの変形は組織全体の変形と同様であったが,核の変形はそれらよりも有意に小さかった.特に組織を軸方向に引張った場合,核は殆ど変形しなかった.核がAFを介して細胞外マトリックスと繋がっていると仮定するとこの現象を上手く説明することができた.血管壁の軸方向引張りに対し平滑筋細胞核が殆ど変形しないことは,高血圧に対し軸方向応力が保たれないことの理由のひとつかも知れない.
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杉田 修啓, 川合 凛太朗, 水野 尚登, 氏原 嘉洋, 中村 匡徳
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
135_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
高血圧では大動脈壁が肥厚する.これは,円周方向応力を一定に保つためとされるが,応答の機序詳細は不明である.血圧増加による周方向応力増加が平滑筋細胞に加わり,細胞骨格のストレスファイバ (SF) を通して細胞核に力が伝えられて肥厚応答が開始する,との説がある.この機序で肥厚完了後に応答が終了するためには,内圧増加時にはSF方向ひずみが増加し,肥厚完了後にはSF方向ひずみが元に戻ることが必要なため,我々はこれを検証した.正常血圧であるラットから摘出した大動脈に対し,最低血圧,最高血圧に加えて高血圧の3圧力条件に相当する周方向ひずみを負荷し,各SF方向ひずみを計測した.結果,最低血圧から最高血圧の脈圧変化時のSF方向ひずみはほぼ0であり,正常時の脈圧変化ではSF内の力は変化しないと考えられた.一方,高血圧相当の周方向ひずみを加えるとSF方向ひずみが増加し,高血圧になった直後ではSF内の力が増加することが示唆された.一方,壁肥厚応答が完了した状態とした高血圧自然発症ラットに対し,最低血圧から最高血圧時の脈圧相当の周方向ひずみを負荷すると,SF方向ひずみはほぼ0になった.よって,壁肥厚応答完了後には,高血圧であっても脈圧変化時のSF内の力は小さいと考えられる.これは,SFの力伝達を介した肥厚応答が存在することを支持する結果であった.
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長山 和亮, 綿谷 直樹
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
135_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
高血圧に起因する様々な血管疾患の発生機序を明らかにするという観点から,これまでに血管組織から細胞を摘出し,培養皿などで平面培養して用いるin vitro研究が数多く進められてきている.しかし,一般的な平面培養系では細胞の脱分化が促進され,細胞の形や向きがバラバラで細胞の移動性も高まり,生体内の力学的な構造を考慮した培養環境とはほど遠いと言わざるを得ない.そこで本研究では,実際の動脈壁内の力学的環境(エラスチンを主体とする弾性板に平滑筋細胞が挟まれながら円周方向に配列している)を考慮して,細胞の配列組織化を誘導するためのマイクロ溝基板を作製した.この基板の溝凹部のみに細胞接着タンパク質をコートして血管平滑筋細胞を培養すると,溝の凹部に細胞が拘束され,著しく伸長した細胞配列組織が形成された.このとき,細胞核も実際の動脈壁内で観察される血管平滑筋細胞と同様に極めて細長い形態となり,核の体積も平面培養時の1/4程度まで減少した.最終的には過剰な細胞運動および細胞増殖が有意に抑制され,血管平滑筋分化が効率良く促進された.本研究のマイクロ溝基板および細胞接着領域の制御手法を使った培養法は,実際の動脈壁内の組織構造を考慮しつつ,平滑筋分化のメカノトランスダクション機構を調べるための有効なモデル培養系となり得る.
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田村 篤敬, 松本 昂暉, 武田 颯希
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
136_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
生体外に摘出されるなど無負荷状態に置かれた大動脈血管は組織全体が収縮するとともに,微視的には壁内の弾性板がその円周方向に沿って圧縮され,座屈することが知られている.これは壁内の平滑筋層(smooth muscle layer: SML)と弾性板層(elastic lamina: EL)に作用する残留応力ならびに両者の複雑な力学的バランスに起因する現象であると考えられているが,その詳細なメカニズムは未だ明らかでない.そこで本研究では,大動脈血管壁をSMLとELが径方向に沿って交互に積層された層状構造を有するものと仮定し,リング状の有限要素モデルを構築した.なお,本物らしい血管壁挙動を数値モデルで再現するためには,適切な残留応力分布をモデルに導入する必要があることから,最適化計算を併用して入力パラメータの絞り込みと適切な初期条件の設定を行った.その結果,無負荷~加圧時に壁内の応力分布を一様に保つためには,初期のSML厚さを内側から外側に向けて薄くなるようにコントロールするのが有効であることがわかった.これは,実際の高血圧血管内腔面側でSMLが厚くなっている観察結果とも一致しており,血管壁そのものが力学的に合理的な構造となるよう周囲の環境に対して能動的に適応していることを裏付けているものと考えられる.また,このときの壁内応力分布は,内側から外側に向けて右肩上がりの傾向を示しており,径方向に沿って血管を切断するとリングが自然と開くように変形する様子も再現することができた.
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田邊 宏樹
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
137_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
ヒトの社会認知や社会性の脳機能イメージング研究は,今や認知神経科学の1つのサブカテゴリになるほど盛んにおこなわれている。近年,リアルタイムで相互作用する「わたし」と「あなた」を重視する研究者により,相互作用している複数人の脳活動を同時に計測する,いわゆるハイパースキャンによる神経メカニズム研究が増えてきた。そこで用いられる脳活動計測装置は,MRI,NIRS, MEG, EEGなどさまざまであるが,最近では装置が小さくまた複数人が相互作用する実験環境を構築しやすいNIRSやEEGを用いた研究が爆発的に増加している。現在のところ,二者(または複数人)の脳活動の同期を相互作用の指標として用いる研究が多いが,計測データの時空間特性が大きく異なる装置で得られた結果を,「脳活動の同期」という言葉で一括りにして解釈し議論するなど,さまざまな問題点が指摘されている。さらに,ほとんどの研究が,ターゲットにしている心理過程や行動において二者(あるいは複数人)の間に脳活動の同期が見られるかどうかという現象論にとどまり,その先の神経メカニズムに迫っていない。そしてこれらのことが,ハイパースキャン研究に混迷をきたし,批判される原因ともなっている。本発表では,上記のことを踏まえ,これまで行われたハイパースキャン研究のいくつかを紹介し,次にこの研究分野の進むべき方向性について議論したい。
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藤原 幸一
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
137_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
医療・ヘルスケア分野での機械学習・AI技術の活用は,他の分野と同様,深層学習の登場を契機に進展してきた.しかし,実際にはCT画像やMRI画像などに対する画像診断の事例が大半であり,それに比して心電図や脳波など生体信号への活用は取り残されてきた感がある.これには,(1) 対象信号の時空間パターンが複雑・非定常的で,対象現象の表現が特定困難であること,(2) サンプルとして取得できる生体信号の量が限定的であること,(3) 一定量の計測データが得られたとしても,しばしば対象とする現象の発生頻度が低く,強い不均衡となること,(4) 様々なアーチファクトが混入すること,(5) 明確なアーチファクトを取り除けた場合においてでもなお残存するノイズによって生体信号の信号対雑音比は高くないこと,(6) 入力となる生体信号がしばしば高次元となること,(7) 個人差が強く対象者間での汎化が難しいこと,など機械学習における様々な課題が凝縮されたようなケースとなっていることによると考えられる.このような状況に対して,我々はウェアラブルセンサや専用アプリを開発し,データ取得の自動化・効率化を目指すなど,独自の取り組みを通じて生体信号を活用した医療AI開発の垣根を下げる努力をしてきた.本講演では,我々まてんかん発作予知AIおよび睡眠紡錘波検出AI開発の実例を通じて,生体信号を活用した医療AI開発について紹介する.
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船瀬 新王
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
138_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
神経工学とはニューロサイエンスの工学的な応用を目指すものである.しかしながら別の視点もあり,ニューロサイエンスのデータを工学的な手法で解析する,工学的な観点からそのデータを理解するというものである.
本発表は,神経工学とはなにかという話及びその神経工学が目指している工学的な応用先について示す.さらに,神経工学を構成している主要な要素技術である電気生理分野,イメージング分野,細胞刺激分野,それらのデータ等を解析するための理論分野について,その一線で活躍している方々に発表をしてもらうための呼び水的な内容について示すものである.最後にこれらの要素をまとめることによりどのような未来があるのかを示すものである.
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八木 透, 宮本 義孝, 榛葉 健太, ホウ ソキ, 菅野 翔一朗
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
138_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
当研究グループは,ブレインマシンインタフェース(BMI)向けの,高い生体適合性を有する刺激電極の開発を目指している.より高性能なBMIを実現するには電極を微小化・高集積化する必要がある.そこで我々は,人工細胞膜に埋め込んだDNAナノチューブやカーボンナノチューブなどの管状ナノ構造体(ナノチューブ)を電気シナプスとして利用し,神経細胞を細胞内刺激する電極を提案している.この電極では,人工細胞膜の安定化の目的でボール形状のゲル物質周りに脂質二重膜を構成し,ナノチューブを配置する.これまでに,脂質二重膜への管状膜タンパク質導入と光学的評価,マイクロチャンバアレイへの脂質二重膜一括生成法の開発,ゲルボール上への脂質二重膜形成と電気特性の評価実験等において有益な成果を得た.現在はDNAナノチューブまたはカーボンナノチューブを脂質二重膜に導入して,その物質輸送機能について評価している.このように神経組織と電極を電気シナプスを介してソフトに接続することで高い生体適合性を実現する細胞内刺激電極は,神経接続技術の新たなブレイクスルーをもたらすと考えられる.
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小山内 実
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
139_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
カルシウム (Ca2+) イメージングは、カルシウム感受性蛍光色素の蛍光量変化を光学イメージングにより計測することで、細胞内カルシウム濃度を計測する手法である。このCa2+イメージングによる神経活動計測が最初に行われたのは 1980 年代後半だと思われるが、その勃興期は、神経活動計測の基本である電気生理学にも精通し、技術力及び計測科学に造詣が深い研究者が開発・利用してきた計測手段であった。しかし、近年では、イメージング装置も使いやすくなり、解析のツールも多く出回るようになってきたため、多くの研究者が用いるようになってきた。また、20 世紀のCa2+イメージングの主流は、シナプスから単一細胞をターゲットにしたものが多かったが、近年では、多細胞イメージングや、広域バルクCa2+イメージング、MRI を用いた擬似カルシウムイメージング法、などのマルチスケール・マルチモーダルCa2+イメージングとして発展している。しかし、Ca2+イメージングは神経活動を直接計測しているのではなく、あくまで Ca2+濃度変化を計測していること、イメージングの方法によっては、時間情報の取扱いに注意が必要であること、など、その計測法の特徴を考慮に入れていない研究報告が多数なされている。そこで、本講演では、 Ca2+イメージングの原理及びその利点と注意点をお話しすると共に、マルチスケール・マルチモーダル Ca2+イメージングの例を紹介する。
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髙橋 宏知
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
139_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
音楽が脳活動へ与える影響は,しばしば医療としても注目されるが,そのメカニズムは明らかにされていない.本研究では,ラットを実験対象として,音楽を提示した時の運動と脳活動を調べた.音楽には,モーツアルト作曲「2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448 (375a)」(テンポは132 BPM) を用いた.その結果,ラットは原曲で最も顕著なビート同期を示すこと,早いテンポではビート同期運動を示さないこと,楽曲中のビート同期運動の変化は,ラットとヒトで似ていることを明らかにした.また,ラットの聴覚野は,モーツアルトの原曲 (132 BPM) に対して,最も明確なビート同期を示した.次に単純なリズミックな音刺激に対する聴覚野の活動も調べたところ,やはり120 BPM付近で最も明確なビート同期を示した.120 BPMへの同期を生むメカニズムとして,脳の順応特性を考え,その数理モデルを作り,実験データの説明をした.ラットの脳活動から推定した順応特性は,120 BPM付近への同期を生むだけでなく,音楽の鑑賞や創作に関連している可能性を示した.これらの結果から,ビート同期を生む脳のダイナミクスは,少なくともげっ歯類の脳からヒトの脳に受け継がれてきたと言える.また逆に,長い年月をかけて,人間社会で発展してきた音楽は,動物種を超えて,脳へ強い訴求力を発揮する可能性も考えられる.したがって,脳のダイナミクスを考慮すれば,音楽は,脳活動を調整するツールとして医療にも利用できると考える.
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深山 理
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
140_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
本OSでも諸先生方が紹介されているように、神経活動は様々な方法・条件の下で計測・刺激が行われている。工学的観点からの神経系の利用を実現するためには、これらを統一的に扱う枠組みが存在することが望ましい。本研究では、脳内外の電位分布を「真値」として、様々な計測・刺激における計測値・設定値との関係をガウス過程を用いて結びつけ、異なる測定量を互換させるとともに、確率変数としての真値を推定することを試みる。方法・条件の違いによる知見の垣根を取り払うとともに、電位分布の直観的な可視化を通じて、まだ見ぬ神経工学の可能性について議論したい。
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Yongxin Zhang, Taishin Nomura, Toru Nakamura
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
141_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Recently, Affective Computing (AC) based physiological signals has been attracted enormous researchers’ attention and obtained significant achievement. However, datasets are usually collected in laboratory environments, and ecological aspects have not been comprehensively considered. This leads to models that can not provide reliable and satisfactory performance in the realistic world. Therefore, we recently collected emotional and physiological data, including physical activity, heart rate and voice data, from about 300 office workers’ daily life, using the Ecological Momentary Assessment (EMA). In this presentation, we will introduce our recent progress on Ecological AC research, especially in emotion estimation based on human behavioral data assessed by EMA.
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Meishu Song, Yoshiharu Yamamoto
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
141_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Translating mental health recognition from clinical research into real-world application requires extensive data, yet existing emotion datasets are impoverished in terms of daily mental health monitoring, especially when aiming for self-reported anxiety and depression recognition. We introduce the Japanese Daily Speech Dataset (JDSD), a large in-the-wild daily speech emotion dataset consisting of 20,827 speech samples from 342 speakersand 54 hours of total duration. The data is annotated on the Depression and Anxiety Mood Scale (DAMS) -- 9 self-reported emotions to evaluate mood state including ``vigorous'', ``gloomy'', ``concerned'', ``happy'', ``unpleasant'', ``anxious'', ``cheerful'', ``depressed'', and ``worried''. Our dataset possesses emotional states, activity, and time diversity, making it useful for training models to track daily emotional states for healthcare purposes. We partition our corpus and provide a multi-task benchmark across nine emotions, demonstrating that mental health states can be predicted reliably from self-reports with a Concordance Correlation Coefficient value of .547 on average.
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内匠 透
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
142_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
感情を含むこころの状態を客観的に評価することはチェレンジングな課題である。我々はマウスを用いて、こころ、感情、行動に関わる脳機能ネットワークを明らかにするために、VR(バーチャルリアリティー)空間における大脳皮質の神経ネットワーク動態を行動とリアルタイムで可視化できるシステムを構築した。このマウスVRシステムを用いて、脳機能ネットワークの可視化を行い、またネットワークを定量化し、さらには光遺伝学的手法を用いてネットワーク操作を可能にする系を立ち上げる。簡単な行動のネットワークの解明とその画像解析による表現型のデコーディングの成功例を含めて、VRシステムを紹介する。
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吉内 一浩
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
142_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
ストレス社会と言われて久しい現代においては、心身症、うつ病・不安症、あるいは適応障害など、ストレス関連疾患が社会的問題となっている。ストレス関連疾患と関連の深い学問領域としては、行動医学・心身医学があるが、行動医学において、日常生活環境下における評価手法して、ecological momentary assessment(EMA)が発展してきた。「ecological」は、「生態学的な」という意味で、測定対象の「本来の姿を測定すること」を意味する。ストレス関連疾患は、日常生活における心理的ストレスの評価が重要であるが、現在でも、診察場面での「問診」や「心理テスト」など、患者の記憶に頼る方法が主たるものであるという問題が存在する。このような問題の解決方法の一つとして、EMAを用いることにより、日常生活環境下におけるストレス因との関連の評価や、症状の推移・治療効果の評価を行うことが可能であると考えられる。さらに、従来のEMAでは、1日に数回、患者自身に質問項目への回答を求めるしか、症状の評価方法がなかったが、患者の負担が大きく、潜在的に入力アドヒアランスを下げるという問題が存在する。そこで、現在、取り組んでいるecological affective computingにより、従来のEMAの問題を解決することが期待でき、さらに、患者の状態の評価を元に、日常生活環境下で治療介入を行うjust-in-time adaptive intervention(JITAI)への応用も期待でき、本発表では、現在までの取り組みを紹介したい。
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山下 和彦, 山下 知子, 佐藤 満
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
143_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
6割以上の高齢者の足部や足爪には外反母趾,回内足,巻き爪,肥厚などの様々な問題が発生している.要介護2では50%,要介護3以上では90%以上の対象者が爪や足指の変形により爪切りができない状況にある.これが外出を阻害し,身体機能や認知機能の低下につながり,睡眠障害と要介護の重症化リスクを高めている. 本研究ではスマートフォンを用いて足部の外観から骨格を評価するシステムを開発し,2,000人の大規模調査から外反母趾や回内足,変形性膝関節症のリスクを評価してきた.さらに,ICT活動量計を用いた歩数,活動度モニタリングシステムを開発し,5,000人を対象に大規模コホート研究を実施している.ここでは足部や足爪ケアを指導し,足部の健康維持・向上を図りながらウォーキングを進めている.評価項目は下肢筋力や足部骨格などの身体機能,歩数や外出頻度などの活動度,レセプト分析による医療費と疾病構造の変化,アンケートによる自覚的健康度の変化である. 成果の一例として,75歳以上を5年間追跡した介入群(257人,介入開始時:79.7±2.7歳)と対照群(641人,79.5±2.7歳)のアルツハイマー病の新規疾病発症率を調べた.その結果,Risk Ratioが6.13であり,足部のケアを進め,本システムを実施することでアルツハイマー病の発症予防の効果が推察された.
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佐藤 満, 山下 和彦, 山下 知子
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
143_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
[背景] 高齢者の転倒予測に寄与する測定変数の多くは,運動介入の継続によって成績が向上し,予測能力を低下させる恐れがありながら,その影響は十分に解明されていない.自立支援や介護予防事業で計画的な運動プログラムに参加している地域在住高齢者の将来の転倒を予測する身体的・心理的要因を明らかにすることを研究目的とした.[方法] 介護保険もしくは総合事業で通所介護施設を利用している地域居住の高齢者124名を対象に,転倒リスクをいくつかの身体的・認知的な評価手段を用いて評価した.12ヶ月のフォローアップ期間中の転倒者と非転倒者の間で,測定されたすべての変数を比較した.それぞれの変数と転倒の関係は,転倒事象の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析により決定されたオッズ比により検討された.[結果] 測定後12ヶ月まで継続してサービスを利用した87名が最終解析に含まれ,そのうち50.6%が転倒者であった.足底触覚閾値(PTT)は非転倒者と比較して転倒者で有意に高かった.さらに,PTTは12ヶ月後までの転倒を説明する最も強い予測因子であった(オッズ比,1.20;95%信頼区間,1.02-1.42).この結果は神経疾患の既往の有無で調整しても同様であった.[考察] PTTは継続的な身体運動介入に参加する高齢者にとって有効な転倒予測因子であり,転倒リスクを判断するための既存の評価戦略の有用性を高める可能性がある.
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山下 知子, 山下 和彦, 佐藤 満, 阿多 信吾
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
144_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
小学生の足部において外反母趾や扁平足などの足部変形が増加している.外反母趾が発生するメカニズムに着目すると,扁平足や踵の変形などの筋骨格系の身体的要因に加え,運動特性が関係している.そのため,発達状況の経時的な評価が求められるが,足部の発達状況および外反母趾の発生メカニズムは十分に解明されていない.そこで本研究では,足部骨格3D計測システムを開発し,足部3D計測データと,足底部の接地状態から小学生の足部の発達特性,外反母趾に関連する足部骨格の特徴を明らかにすることを目的とした. 研究デザインは縦断的追跡研究である.小学生124名を対象に4年時と6年時に足部計測を行った.開発システムは,スマートフォンを用いて足部周囲を撮影し,足部の3次元再構成を行い,特徴量を抽出することで評価を行う.本研究では足部高,舟状骨高・横方向角度,踵幅,M1M2角,拇指角を含めた計10項目に着目した. その結果,成長に伴い足長,足部高,前足部幅,踵幅は増加したが,舟状骨高は低下していた.また,舟状骨の横方向変位が大きいほど,M1M2角が有意に増大していた.以上より,内側楔状骨,中間楔状骨周辺の可動性の増大によるM1M2角の増大から,前足部への荷重につながり,歩行の中で第1中足骨のねじれが発生する可能性が推察された.
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宮下 佳以, 井野 秀一, 山下 和彦, 山下 知子, 大西 忠輔
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
144_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
高齢者の多くが抱える変形性膝関節症はQOL(Quality of Life)を低下させる要因として挙げられる.その予防を目的として,健常な歩行を維持するための足底装具による歩行支援は広く行われている.その中で,インソールなどの足底装具の製作は義肢装具士の経験に頼る部分が大きく,一律な処置にするには歩行様式の形式的な評価が必要である.特に,足部で生じる変形である回内足の歩行中の評価方法は未確立のため,動的な回内運動を含めた歩行評価が難しいという問題がある.本研究では,その評価のために歩行時のCOP(Center of Pressure)と中足部回内を同時に計測し,歩行相と回内運動を同期させることで歩行中の回内運動を知る一助となるようなデバイス開発を行った.この試作デバイスは,COPの計測のために足底の5か所の圧力を測定する感圧導電性センサと歩行中の回内運動の計測のための空気圧センサ付きの小型エアバッグを靴の内側に装着し,計測データは無線で収録できる.また,装着性の観点から,サイズは手のひらに収まり,重さは100g以下とし,歩行中の足底圧と回内運動の計測に支障のない形状に仕上げた.予備実験による試作デバイスの動作確認では,歩行時のCOPの軌跡と回内運動の経時的な変化パターンを推定できることがわかった.今後は,臨床フィールド等で評価実験を行い,変形性膝関節症の予防を含め,歩行機能の改善のための足底装具製作に役立つ簡便な歩行評価デバイスとしての実用化を目指したい.
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小川 良磨, 秋田 新介, 武居 昌宏
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
146_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
電気インピーダンストモグラフィ(EIT)は,外周に多数配置した電極から電流を印加し,測定したインピーダンスZから導電率分布σを画像再構成する方法である。近年、主にがん治療の晩期障害として発症するリンパ浮腫などの皮下細胞外液のσに局所的空間変化が生じる疾患を非侵襲かつ高速に可視化する診断技術として期待されている。近年、EITとスパースベイズ学習(SBL)との融合が検討されており、σの局所的空間変化の高精度な可視化が取り組まれている。
そこで本研究では、SBLを用いた周波数差EIT(fdEIT)を提案し、その提案手法のリンパ浮腫への適応を検証する。提案手法は、ステップ1: ブロック化列ベクトルの形成、ステップ2: σの先験情報を用いた皮下脂肪識別、ステップ3:時間相関抽出から構成される。尚、本研究は千葉大学大学院医学研究院倫理審査委員会の承認を得て実施した(M10243)。
EITにより皮下組織周辺の局所変化が画像再構成され、リンパシンチグラフィによる重症度と導電率変化の相関が確認された。皮下組織層における導電率分布は一様ではなく、リンパ鬱滞が顕著な部位の導電率変化が大きかった。また、重症例のEIT画像による所見は、コンピュータ断層撮影(CT)画像・超音波画像の敷石状所見ともよく一致した。一方で、生体インピーダンス(BIA)による所見とは一致しない例も確認され、線維化によるインピーダンス値低下が原因と考えられる。
EITによるリンパ浮腫への適応の可能性は示唆されたものの、さらなる検討が必要である。
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Prima Asmara Sejati, Ryoma Ogawa, Masahiro Takei
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
146_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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A synchronized measurement and time-varying noise cancellation in multi-node electrical impedance tomography (mnEIT) has been proposed for muscle compartment visualization under electrical muscle stimulation (EMS). mnEIT has two features which are 1) network hardware for synchronized multi-node measurement and 2) embedded nodal fast Fourier transform (enFFT) for cancelling time-varying noise. Under the experiments protocol, the muscle compartments response in the upper-arm and thigh of eight healthy subjects are imaged by mnEIT under four voltage intensity levels of EMS 𝑙. According to the result of pre- and during EMS training, the reconstructed images of conductivity distribution 𝛔 trend of the upper arm 𝛔𝑎𝑟𝑚 and thigh 𝛔𝑡ℎ𝑖𝑔ℎ are enlarged along to the increment of 𝑙. Here, it is shown that, during EMS training the magnitude of 𝛔𝑎𝑟𝑚 response in the biceps is stronger than triceps in particular. This phenomenon occurs because the upper arm’s biceps are dominated by white muscle fibers. On the other hand, the 𝛔𝑡ℎ𝑖𝑔ℎ at biceps was equivalent to the hamstrings compartment. Further, as the hardware error evaluation of the mnEIT, the normalized mean impedance error 𝜀𝑓 is
relatively proportional to the frequency increment, while the average error 〈𝜀⟩ is 7. 521% respectively. In this case, the mnEIT has the best result at 𝜀𝑓<〈𝜀⟩ which occurred at 𝑓≤ 2500 Hz that agreed the frequency selection 𝑓1 = 500 Hz and 𝑓2 = 1000 Hz to obtain the best visualization of 𝛔.
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小林 公一, 髙橋 雄也, 坂本 信, 渡邊 聡
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
147_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament,ACL)は,膝関節において大腿骨と脛骨を結ぶ主要四靱帯の一つであり,脛骨内側顆間隆起部と大腿骨顆間窩外側壁に付着している.ACLは主に前内側線維束(AM束)と後外側線維束(PL束)の2つの線維束から構成され,両線維束が適切な張力を維持することで,大腿骨に対する脛骨の前後移動や回旋の安定性を保つ機能を果たしている.一方,ACLの外傷頻度は高く,ジャンプ着地や急激な方向転換により膝関節が外反・内旋した場合に損傷・断裂することが多い.ACL不全膝では大腿骨に対する脛骨の内旋制動作用が低下することが知られており,ACLの再建手術時にはこの回旋制動作用を再獲得する必要があると考えられるが,実際にACL不全膝でどのように回旋挙動が変化しているか詳細は不明である.本研究では内旋および外旋トルク(2.9 Nm)負荷時のACL不全膝と対側健常膝の回旋量を,伸展位から屈曲40°までの範囲で比較することでACLの回旋制動作用について検討した.その結果,回旋量はACL不全膝,健常膝ともに屈曲に伴い増加した.全ての屈曲角度において,ACL不全膝の回旋量は健常膝と比較して増加せず,屈曲20°において有意に減少した.脛骨に対し,大腿骨は伸展位で内旋トルクを加えた場合のみ,ACL不全膝が有意に後方に位置した.
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花之内 健仁
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
147_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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近年超⾼齢化社会である我国おいて、平均寿命よりも健康な⽣活を送るという“健康寿命”への注⽬が⾼まっている。健康寿命向上には筋⾻格系疾患への対策は必須であり、その代表的な疾患に変形性股関節症がある。これは、⾻盤の寛⾻⾅辺縁にある関節唇の損傷がその原因の1つであることが最近になってわかってきた。本発表では病態の解明が不⼗分なこの股関節唇に対して、新規に独⾃開発した⼒学センサ機器、プロビング・センサ-(有限会社たくみ)を用いて、どこまで明らかにすることができたのかについて報告する。
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石原 稚子, 石井 亮輔, 佐伯 壮一
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
148_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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糖尿病とは,インスリン分泌等の破綻により血糖値が高く維持され,多くの合併症を引き起こす疾患である.これまでに,血糖値変化による微視的なバイオメカニクス反応を非侵襲かつin vivoに捉えることはできていない.本研究では,多機能OCTを用いたヒト皮膚バイオメカニクス糖尿病断層診断システムを提案する.本システムは,ヒト皮膚に荷重負荷するPZTアクチュエーターをドップラーOCTに導入した装置であり,赤血球移動によるドップラー変調から毛細血管網を断層可視化する.更に,画像相関解析(OCSA)に基づき皮膚組織のひずみ速度分布を求め,粘弾性力学特性のマイクロ断層可視化を実現する.20代被験者の前腕屈側部内側を静置安定させ,血管拡張剤塗布有無のヒト皮膚に荷重負荷を加え計測を行った.その結果,塗布有無で表皮ひずみ速度の振幅は同程度であるが,真皮では塗布有無によって振幅が小さくなることが確認できた.これは,血管拡張に伴い毛細血管からの血漿漏出が関与していると考えられる.さらに,糖負荷前後における3次元毛細血管網の断層可視化も行った.その結果,糖負荷後では毛細血管の拡張が検出され,血糖上昇によるバイオメカニクス反応が検出されたと考えられる.これより,皮膚内部の力学特性をマイクロスケール断層可視化でき,バイオメカニクス糖尿病診断可能であることが示唆された.
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佐伯 壮一, 岩井 愛弥, 福山 裕人, 塚原 義人
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
148_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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近年,OAの治療法の一つとして自家培養軟骨の移植手術が注目されているが,移植手術後の経過観察における診断評価がMRIや関節内視鏡による目視検査にとどまっており,組織生着性などの力学的評価方法に課題がある.このため軟骨組織内におけるマイクロメカニクスを非侵襲断層評価する診断法の確立が望まれている.著者らは,荷重負荷による軟骨組織のひずみ速度の時空間分布をマイクロ断層検出するOCDSシステムを構築している.これは軟骨内部の組織変形及び関節液流動をドップラー速度として検出する,ドップラーOCTに基づいている.しかし,高感度検出能力を有するため,体動ノイズに対するロバスト性が低く臨床適用が難しいことが知られている.本研究では,ロボットマニピュレータを実装した関節内視鏡型ドップラーOCTシステム(RMA-OCDV)を提案し,軟骨組織内のひずみ速度分布をマイクロ断層検出するバイオメカニクス診断法の確立を行う.酵素処理によって粘弾性を変化させたブタ関節軟骨をサンプルとして用い,提案手法の初期OA診断能について検証を行う.ブタ正常軟骨に加え,ヒアルロニダーゼ,コラゲナーゼ,の酵素処理による微弱変性軟骨に適用した.その結果,荷重負荷における軟骨組織変位及び関節液流動をひずみ速度として断層可視化可能であることが分かり,RMA-OCDSシステムの臨床診断の有効性を示唆された.
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吉田 豊, 湯田 恵美
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
149_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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時代の流れのともに経済状況や社会的情勢の変化によってヒトの行動習慣が変化していく。それに伴い自律神経活動も変化していくことが考えられる。本研究では日本全国で記録された約70万例規模のホルター心電図ビッグデータから生成された時系列データベース(Allostatic State Mapping by Ambulatory ECG Repository, ALLSTAR)のうち,2015年から2021年迄のデータを解析対象として,20代から80代の年齢層別に心拍変動指標(RRI,SDRR,ULF,VLF,LF,HF,LF/HF,HFpeak freq.)の推移を調査した.その結果,各年齢層ともSDRRとHFの減少とLF/HFの増加が有意に認められた.従って,2010年代中盤から後半にかけて心拍変動の減少と交感神経活動の促進が示唆される。
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植田 琢也
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
149_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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デザイン思考にもとづく医療AI研究のための人材育成医療分野はAIを用いた技術開発が期待できる分野として期待をあつめる一方、データの構築・医療倫理や安全性の担保など、他の産業分野と一線を画した様々なロードブロックがあります。医療的・技術的な視点の双方向から医療課題をとらえ、実践的にAI技術を応用できる人材の育成が求められています。東北大学では、これまで培ってきたデザイン思考に基づく医療開発のノウハウを生かし、医療的価値と技術革新が交わる場所を探し、AI技術を医療現場での実課題解決に活用できる人材育成のとり組みを進めています。東北大学病院では、2022年より医療情報利活用委員会を設置し、医療データ利活用のための環境を整備することで産官学連携の推進を行っています。本セッションでは、東北大学病院のとり組みについてご紹介します。
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西田 健太郎, 盛田 健人, 真川 祥一, 池田 智明, 二井 理文, 若林 哲史
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
150_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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妊娠中に胎児の成長が遅延または停止し,妊娠週数における胎児の体重が小さい状態を胎児発育不全という.胎児発育不全は出生前の診断が困難であるため,血中酸素濃度変化を撮影するBOLD-MRIを用いて胎盤における酸素濃度変化から画像診断を行う方法が検討されている.ここで手作業による全フレームへのアノテーションは専門医に多大な労力がかかるため,胎盤領域抽出を支援する手法の検討が必要とされている.近年,臓器抽出には深層学習による全自動抽出が用いられつつあるが,胎盤は位置や形状に個人差が大きく深層学習による全自動抽出は困難である. 本研究では,BOLD-MRI動画像から胎盤領域を半自動抽出する手法を提案する.提案する手法では,画像を距離・画素値が近い画素をまとめたスーパーピクセルに分割するアルゴリズムSLICを用いて画像全体を領域分割し,その1フレーム前の胎盤領域マスクと重ねる.各スーパーピクセルにおける胎盤領域マスク含有率に対して閾値処理を行い,手作業で作成した1フレーム目の胎盤領域マスクを時系列方向に伝播させ胎盤抽出を行う. 提案手法を実装し,被験者23名分のBOLD-MRI動画像に対し半自動抽出を行った.複数回の伝播により精度が最も低いと予想される最終フレームに対する胎盤領域抽出精度がDice係数0.774となり,提案手法がBOLD-MRI動画像の胎盤領域抽出に有効であることが示された.
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小橋 昌司, 小林 壯哉, 藤田 大輔, 澁谷 浩伸, 郷原 真輔
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
150_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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現在,尿管結石の破砕治療として主に体外衝撃波結石破砕術(Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy:ESWL),経尿道的結石破砕術(Transurethral Lithotripsy:TUL)が主要である.ESWLはTULに比べ侵襲性が低いが,結石の破砕に失敗する場合がある.そのため,医師は結石のCT画像や臨床所見に基づいてESWLとTULの適用を決定しなければならない.治療方針決定の際に,ESWLの成否を予測することが有用である.本研究では,従来の臨床所見の因子と結石のCT画像に加えて,より解像度が高いX線画像から抽出した画像特徴量を組み合わせた,機械学習によるESWLの成功・失敗(アウトカム)の予測を提案した.アウトカムの成功をESWL後の残石の長径が4mm未満として,2クラス分類の予測精度検証の結果,最大でAccuracy: 0.897,AUC: 0.890が得られた.
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赤澤 堅造, 前田 義信, 一ノ瀬 智子, 奥野 竜平
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
151_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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世界保健機構WHO(2020年)は,「身体活動による介入は 認知機能正常の成人に対して認知機能低下のリスクの低減のために推奨される(エビデンスの質 中;推奨の強さ,強い)」とし,1週間で150分~300分の中強度(もしくは75分~150分の高強度)の有酸素運動を行うことを推奨した(7.5~15METs・時/週に相当する).座位行動は最小限にとどめて、代わりに低強度でも問題ないので運動を取り入れる,としている.健常成人の認知症予防のため,手軽に利用できる様々なツールがあることが望ましいと考える.筆者らは,足踏み運動によって自分の好きな楽曲が演奏できるシステムを1つの候補と捉え,魅力的なツールとなるように,どのように具体的に構築するのか,検討を継続している.基本的な考えは次の通りである.(a)認知症予防に関して身体運動,楽器演奏の効果のエビデンスがあり,この先行研究に基づく.(b)演奏初心者が容易に演奏できる電子楽器Cymisを開発しており,それを基本にして実行可能なシステムの枠組みを作成する.(c)解決すべき課題を明確にし,その具体的な解決法を策定する.本報告の目的は,システム構築のための概要を説明し,オーガナイズドセッションにおける意見交換の資料とすることである.
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鈴木 みずえ, 伊藤 友孝, 金盛 琢也, 稲垣 圭吾, 御室 総一郎, 山川 みやえ, 滝上 恵吾, 澤木 圭介
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
151_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
急性期病院に入院する認知症高齢者におけるせん妄の発症率は高く、せん妄に伴って転倒や治療・ケアへの拒否等が生じやすい。超高齢化社会における認知症高齢者の治療・ケアにおいては、入院に伴うせん妄をいかに予防するかが重要である。国内外における研究においても、専門職の卒後教育用のVirtual Reality(VR)とAugmented Reality(AR)を用いたせん妄を発症した認知症高齢者に対する治療・ケアに関するシミュレーションプログラムは開発されていない。 VR・ARを活用したシミュレーションプログラムの開発は短時間で専門知識・技術の習得が可能となり、多職種協働によるせん妄予防の推進が期待できる。本研究の目的は、医師、看護師を対象にせん妄を発症した認知症高齢者・医師・看護師体験をVR・ARで学習する多職種協働強化型プログラムを開発することである。本プログラムは、①せん妄を発症した認知症高齢者の一人称体験VR、高齢者を治療・ケアする②医師、③看護師のぞれぞれの1人称VR体験、④せん妄体験AR体験で構成した。 臨場感のあるVR・ARを活用して認知症高齢者のせん妄リスクの増大と軽減、せん妄の直接・間接因子の増減とせん妄リスクの対応によるプロセスを体験できるように認知症看護認定看護師、老人看護専門看護師、医師等の認知症医療のエキスパートの検討した。プログラムを用いた研修では通常の対応とエキスパートの対応を比較体験することで治療・ケアの違いによる影響も実感できるよう開発した。
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伊藤 友孝, 田邉 健, 玉置 太一, 鈴木 みずえ, 金盛 琢也, 稲垣 圭吾, 谷 重喜
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
152_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
近年の高齢化の進行に伴い,高齢者の転倒が大きな問題となっている.転倒は寝たきりに繋がる大きな要因の一つであるため,最初の転倒を引き起こす前に未然に防ぐことが大切である.本研究室では,地域の高齢者の歩行の様子を装着型の小型センサで計測して歩行特徴量を算出し,歩き方の分類や転倒リスクとの関連などの分析を行ってきた.その結果,高齢者にはすり足歩行や膝の引き上げ歩行などの複数の歩行タイプが存在することや,中には底屈状態で地面との間のクリアランスの小さいケースが含まれることなどが判明している.コロナ禍を経て日頃からの歩行状態のチェックや見守りがより重要視される中で,今回は,地域の福祉施設などに設置したり普段身に付けたりして気軽に自身の歩行状態やバランスをチェックできるシステムを目指して,施設設置型歩行トレーニング装置とスマートフォン連携型の歩行見守り装置を試験開発したので,令和4年度に実施した福祉施設での歩行計測実験の結果と併せて,その内容を報告する.また,施設設置型歩行トレーニング装置を用いて福祉施設でバランス計測を行ったところ,自身の歩行状態に関する気付きが転倒予防のために重要であると思われる結果が得られたので,それについても報告する.
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池谷 英悟
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
152_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
This paper presents the VR Locomotion Chair, a chair-like device for moving around in virtual reality environments. The chair, which is equipped with leg, back, and rotation sensors, allows the user to move freely in virtual spaces by pseudo-walking while sitting in the chair. In a demonstration of the first prototype to about 30 participants, the chair appeared to be intuitive and fun to use, regardless of age or gender. The VR Locomotion Chair can be used not only for any VR game, but also for healthcare activities such as Cognicise, which combines cognitive training and physical exercise simultaneously and is considered effective in improving the physical and cognitive function in the elderly.
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久保田 幹也, 清水 大海, 仁内 はるか, 伊藤 友孝, 鈴木 みずえ, 志村 孚城, 高柳 佳世子, 奥山 恵理子
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
153_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
本研究では,高齢者の運動機能及び認知機能の維持を支援するために,手首・指・腕を複合的にトレーニングできるシステムの開発を行った.近年,国際的に高齢化が進み,機能維持を目的としたリハビリテーションの重要性が増加している.それに伴い,四肢の大きな動きを対象としたリハビリテーション支援装置が多く開発されている.しかし,実生活においては指先の細かな動きも重要であり,これが衰えると生活の質(QOL)の低下に大きく影響する.そこで本研究では,上肢の大きな動きと指先の細かな動きを複合的に訓練できるシステムの開発を行った.このシステムは訓練アプリ(ゲーム)とそのコントローラであるトレーニング装置で構成されている.このトレーニング装置は入力装置としてだけでなく,操作時の負荷や握った時のフィーリングを変化させる出力装置としての役割も担っている.これらは磁気粘性流体(磁界によって粘性が変化する流体)を用いて独自に構成したデバイスで発生させているため,モータ等を使わないパッシブな装置となっており,安全性が高いことが特長である.また,ゲーム中の動作データを活用し,見守り機能を実装することで日々のトレーニングのサポートが可能になると考える.今回の発表ではこのトレーニング装置の構造と作成した訓練アプリについて紹介し,1月に行った高齢者介護福祉施設での実験結果について報告する.
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小崎 慶介
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
154_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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演者の所属施設の前身である日本初の肢体不自由児施設「整肢療護園」を開設した高木憲次博士は、運動器の障害のある小児に対して医学的治療・学校教育・職業教育を融合させた「療育」という小児の総合的なリハビリテーション体系を提唱した。そして、療育の実践にあたっては「時代の科学を総動員すべきこと」を主張した。 小児を対象とする医学及び関連学術領域の知見と技術の蓄積により、従前は治療や対応が困難であった重度重複障害のある小児について、生命予後の改善にとどまらず生活の質の向上にも結びつくような対応が可能となってきた。その一部は、デバイス開発など生体医工学の「時代の科学」を動員した研究成果によるものであり、「医療的ケア」を要する小児であっても家族と共に在宅生活を送ることが可能となっている。しかし、それでも尚、家族を中心とする養育者には大きな負担がかかることが少なくない現状であり、障害のあるこどもを育てる家庭に対するサポート体制の充実は、子育てを社会で支えるセーフティネットとしても重要であると言える。折りしも令和5年度より、「こども家庭庁」が発足することとなり、さまざまな状況にあるこどもたちへ漏れのない支援の必要性が以前にも増して謳われている。 本発表では重度障害のあるこどもとその家族へ求められる支援について概観することにより、生体医工学の一分野として育児工学が果たしうる機能について考察する。
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近藤 和泉
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
154_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
Virtual reality (VR)技術は、現在ではセキュリティ、訓練、医療および芸術など広い範囲で使われており、最近、脳性麻痺および成人の中枢神経疾患による歩行障害を改善させる可能性が示唆されている。またトレッドミルは天候に左右されない、管理された環境での利用が可能である、速度の調整が自由にできる、屋外を移動する事に比べれば事故のリスクが少ないなどの利点があり、医療で広く使われるようになっている。このトレッドミルにVRを組み合わせた機器の一つにオランダのMotek社で開発されたGRAIL(Gait Real-Time Analysis Interactive Lab)があり、前後傾斜と横方向へのシフトが可能なデュアルベルト・トレッドミルと三次元動作解析装置VICON(VICON Motion System)とを同期し,歩行速度・歩幅・歩隔・関節角度・関節モーメント・筋張力・筋活動といった様々な歩行パラメータを,多面的かつリアルタイムに分析しフィードバックすることが可能である。当センターは本邦で初めての180°VRシステムを装備したGRAILを保有しており、この機器を利用した様々な取り組みを開始している。この中でlight touch effect を期待して開発された杖ロボットの歩行の安定性に対する寄与およびバランス訓練ロボットについて紹介しようと考えている。
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中川 誠司
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
155_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
フリー
聴覚は視覚と並んでコミュニケーションに重要な感覚であり,特に言語コミュニケーションにおいては主要な役割を果たす.とりわけ乳幼児期の聴覚環境は言語能力の発達に重要であり,乳幼児期に十分な聴覚情報が入力されない場合は,発話能力も十分に形成されないことが多い.一方,乳幼児においては成人と同様の手法による聴覚検査や聴覚補償が困難であり,独特の技術やノウハウが必要となる.本発表では,新生児や乳幼児を対象とした聴力スクリーニングや聴力検査の手法や聴覚補償技術の現状と課題を紹介し,今後の研究開発を展望する.
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馬場 一憲
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
155_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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分娩中は陣痛という繰り返される子宮の強い収縮によって胎児への酸素供給が障害され、脳が不可逆的な損傷を受けて脳性麻痺や精神発達遅滞を引き起こすことがある。そのため、分娩を無事に乗り切れるかどうかによって出生後の育児が大きく変わってくる。 低酸素による損傷を受けずに出生させるには、胎児の血中酸素を無侵襲的にリアルタイムに連続監視して低酸素状態が進行するようなら緊急帝王切開や鉗子などにより速やかに出生させればよいが、現在、そのような監視方法はない。そのため、分娩監視装置で得られる胎児心拍数陣痛図(CTG:cardiotocogram)から間接的に胎児血中酸素の状態を推定することが一般的である。また、脳が損傷を受けるのは分娩時だけでなく分娩開始前の妊娠中にも起こりうることが分かってきており、ハイリスクのケースでは分娩監視装置を妊娠中に使用することも広く行われている。 しかし、ローリスクでも胎児が低酸素状態に陥ることがあり、ローリスクでも自宅や職場等で簡便にCTGが得られる装置が必要である。また、CTGは正常と緊急性の高い異常とが容易に判断できるパターンだけでなく、大半は中間のパターンであり判断に迷うことも少なくない。そこで期待されるのが、AI技術を用いた自動判別である。 胎児の血中酸素のモニタリングを考えた場合、究極的には無侵襲的にリアルタイムに連続して”直接”血中酸素をモニタリングできる装置の開発が望まれる。
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小谷 博子
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
156_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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周産期医療の技術向上により、高度な医療機器を装着しながら在宅で家族と共に過ごす医療的ケア児が約2万人と増加しており、特に人工呼吸器が必要な子どもの数は、ここ10 年で約10 倍に急増している。また0~4歳までの増加が顕著であり、乳幼児期であるほど、数も重症度も高い傾向にある。 2021年に「医療的ケア児支援法」が施行され、医療的ケアの有無に関わらず、子どもたちが共に教育を受けられるよう最大限に配慮すること、そして個々の状況に応じて関係機関が密に連携し、医療・保健・福祉・教育・労働について切れ目なく支援することが、国の責務とされた。本法の施行により、学校や保育園への通園(学)において医療的ケア児の受け入れ体制が拡充され、日常的に酸素吸入や人工呼吸器の操作などの医療的ケアが必要な子どもたちが、訪問教育だけでなく、学校に通学するケースも見られるようになっている。今後は看護師だけでなく、医療機器を扱う非医療者(研修を受けた教員や保育士など)が増加していくと予想される。 また、災害対策として、人工呼吸器等の医療機器を使用する医療的ケア児が在籍する学校や園においては、電源の確保や日頃から必要とする医療機器のバッテリー作動時間の確認等の点検が重要である。医療的ケア児とその家族が、就園・就学という新たな社会参加に踏み出すためには、多職種による支援体制の構築が必要であろう。
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磯山 隆, 菊田 雅宏, 小林 博子, 小谷 博子
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
156_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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医療的ケア児とは日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為)を受けることが不可欠である児童であり、全国に約2万人を数える。さらにその1/4である約5千人が人工呼吸器をつけており年々増加傾向にある。 在宅用医療機器は在宅専用機や病院用など多品種・高機能化が進む中で、定常運転時にはご家族のご負担を軽減する頼りになる機器である一方、トラブル時にはご家族では対処に難渋することなどが解決すべき課題となっている。 臨床工学技士は医療機器全般の知識と運用スキルを持つ医療職として病院内では必要不可欠な存在となっている中で、在宅で稼動する人工呼吸器などのメンテナンスやトラブルシューティング等で今後の活躍が在宅医療現場からも期待されている。 本稿では臨床工学技士の養成校としての立場から今後の活動の場としての在宅医療と臨床工学技士の役割を展望したい。
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片山 統裕, 外川 龍之介, 中尾 光之
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
157_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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⼤脳⽪質の視覚野には、網膜との間にトポグラフィックな神経投射が存在し、その構造は網膜地図と呼ばれる。網膜地図は、視野⽋損の診断や、⼈⼯網膜や光遺伝学等を⽤いた視覚再建術の評価などにおいて重要な役割を果たす。これまで、網膜地図の推定アルゴリズムが複数提案されてきたが、⽪質応答の定量化過程で同期平均法の利⽤を必須としていた。そのため、測定中に眼位が変動しないことが前提となっていた。動物実験でこの条件を満たすためには、眼球の固定と⿇酔が必要となる。しかし、動物にとってストレスとなり、また⿇酔による⽪質応答の減弱や変容による問題がある。これらの問題を解決するために、我々は単純化した網膜‧視覚野系モデルに基づいた新規網膜地図推定法を開発した。この⽅法は同期平均法を⽤いないため、原理的には応答測定中における間⽋的な眼位変動に対してロバストに網膜地図を推定できるという特⻑がある。本発表では提案法の概要を紹介するとともに、⾃発眼位変動がある安静覚醒状態マウスの網膜地図を推定した結果を示す。他手法との比較に基づき、本⼿法の有⽤性を明らかにする。
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三分一 史和, Andreas Galka, 尾家 慶彦
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
157_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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近年のバイオイメージング技術の進歩により、神経生理学の分野ではニューロン集団の領域レベルから単一ニューロンレベルまで様々なレベルにおける脳活動の様子を調べることが可能となった。イメージングデータは平面格子状に配置された計測点で多点同時連続記録されるため、従来の電気生理学的方法と比較して数万倍以上の高精度な空間的情報を得ることができ、ニューロン活動の時空間的な遷移を観察することが可能である。我々は、神経生理学者との共同研究において、呼吸性ニューロン間の活性化順序は呼吸サイクルごとに変化するが、同じニューロンタイプでは活性化順序に一定の規則性が存在するという重要な発見をした(Front. Physiol. 2018、Respir. Physiol. Neurobiol. 2016、 Neurosci. Lett. 2015)。しかし、複数のニューロンがどのような機能的ネットワーク構造を形成し、自励的に同期してリズムを生成しているのか、そのメカニズムは十分に解明されていない。本講演では多変量時系列に基づくGranger 因果性やインパルス応答解析を用いニューロン間の因果的結合性を定量評価し、統計的に有意なネットワーク構造の推定法について解説し適用範囲について議論する。
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Zhihua Wang, 山本 義春
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
158_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
ジャーナル
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The advantages of non-invasive, real-time and convenient, computer audition-based heart sound abnormality detection methods have increasingly attracted efforts among the community of cardiovascular diseases. Time-frequency analyses are crucial for computer audition-based applications. However, a comprehensive investigation on discovering an optimised way for extracting time-frequency representations from heart sounds is lacking until now. To this end, we propose a comprehensive investigation on time-frequency methods for analysing the heart sound, i. e., short-time Fourier transformation, Log-Mel transformation, Hilbert-Huang transformation, wavelet transformation, Mel transformation, and Stockwell transformation. The time-frequency representations are automatically learnt via pre-trained deep convolutional neural networks. Considering the urgent need of smart stethoscopes for high robust detection algorithms in real environment, the training, verification, and testing sets employed in the extensive evaluation are subject-independent. Finally, explainable artificial intelligence approaches are used to reveal the reasons for the performance differences of six time-frequency representations in heart sound abnormality detection.
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松尾 朋也, 清野 健, 重松 大輝, 金子 美樹, 永山 悠, 吉武 理香子, 根岸 祐太朗, 麻見 直美, 緒形 ひとみ
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
158_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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口腔の状態を良好に保つことは全身的な健康の維持においても重要である.口腔の状態に悪影響をもたらす一因として,睡眠時ブラキシズム(SB)がある.SBとは睡眠中に起こる歯ぎしりやくいしばりであり,咬耗,歯の破折,歯周病の増悪などを引き起こす.SBの診断には咬筋筋電図を用いる方法があるが,歯科臨床の現場で用いられることはほとんどない.先行研究において,SB発生前には交感神経が優位になり,心拍数が上昇することが報告されている.そこで本研究では,SBの発生に関連した心拍変動特性を明らかにし,心拍変動を用いてSB発生の予測モデルを構築することを目的とした.ここでは,ウェアラブル心拍計を用いて計測された男性健常者20名(38±11歳)の睡眠時の心拍変動時系列,および,脳波を用いて評価された睡眠段階とSB発生時刻を解析した.5分ごとに心拍変動指標を計算し,それらを特徴量として入力するニューラルネットワークモデルを用いて,SB発生の有無を予測した.ニューラルネットワークモデルの予測精度を,PR (Precision-Recall)曲線を用いて評価した.PR曲線の平均AUCは0.91であったことから,心拍変動のみを用いても,SB発生を高い精度で予測できる可能性が示された.また,SB発生に伴いmeanNNの減少と,LFの増加傾向が見られたことから,SB発生と交感神経の過剰亢進の関連性が示唆された.
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山﨑 直, 西村 佳恵, 吉野 公三
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
159_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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感情は身体の状態に影響を及ぼす.故に感情を適切に評価することは重要である.心理的バイアスの影響を受けずに感情を客観的に評価する方法として,脳・自律神経生理信号を利用できる可能性がある.本研究は,「お笑い」により誘発されるポジティブな感情(面白い等)を反映する生理指標を同定することを目的とする.20代健常男性14名に6種類の漫才コンテンツを視聴させた.漫才間の平均音量の差は2dB未満に設定した.また視聴中に面白いと感じた瞬間にイベントボタンを押させた.さらに各漫才を視聴後にその漫才に対して,「斬新さ」,「面白い」等9つの質問項目にVAS法で主観評価させ,主成分分析により質問項目点数を合成した第1主成分得点(総合評価を反映)をもとめた.漫才視聴中の脳波,心電図,呼吸を計測し,脳波の各帯域パワーをもとめ,主観評価の第1主成分得点(主観評価総合点)の順位間で比較した.その結果,左右側頭部と前頭部の脳波β帯域パワーとγ帯域パワーについて,主観評価総合点が1~3位と4~6位間の全ての組み合わせにおいて,統計的有意差が認められた.次に視聴中の脳波β・γ帯域パワーを5秒ごとに計算して観察した結果,面白いと感じたタイミングにおいて脳波β・γ帯域パワーが上昇する傾向が見られた.これらの結果より,漫才視聴により誘発されるポジティブ感情は左右側頭部の脳波β帯域パワーとγ帯域パワーから評価できる可能性が示唆された.
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須藤 亮
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
160_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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三次元の血管形成を調べる培養アッセイには、ゲルの表面で血管内皮細胞を培養し、細胞がゲル内部に潜り込み血管スプラウトを形成する血管新生モデルと、ゲルの内部に血管内皮細胞を包埋し、細胞同士がゲル内部で互いに接続しながら血管ネットワークを形成する脈管形成モデルがある。これらの培養アッセイでは、血管内皮細胞が培養環境に応答し、自発的に血管を構築していくプロセスを解析することができる利点がある。しかし、構築される血管ネットワークの形状は細胞の自発的な形態形成に依存するため、人為的にコントロールすることは難しい。一方で、近年急速に研究が進められているバイオプリンティングの技術は、細胞の形態形成を人為的にコントロールすることに利用できる可能性がある。近年、光造形によって細胞培養の足場を形成する付加加工型の3Dバイオプリンティングが盛んに行われているが、ゲルインクの組成によって培養結果が大きく異なる。そこで、本研究では除去加工型の3Dバイオプリンティングに着目した。すなわち、これまでの研究で血管形成の培養アッセイに用いられてきたコラーゲンゲルやフィブリンゲルなどの素材を用いた除去加工型の3Dバイオプリンティングに着目し、血管動態アッセイの構築に関する試みについて紹介する。
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高橋 治子
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
160_2
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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がんの原因遺伝子や分子機構が次々と明らかにされ、これらを標的とした優れた治療薬が開発されているにも関わらず、未だにがんの根絶には至っていない。がんは、複数のゲノム変異の蓄積によってがん化した不均一ながん細胞が、周辺の細胞を巻き込んで複雑な組織化により腫瘍をつくる複雑系である。この不均一ながん組織形成の重要な要因として、がん間質中に多数存在する間葉系、免疫系、脈管系等の細胞や、細胞外基質等のがん微小環境(TME)を構成する因子が挙げられる。近年、一細胞レベルでの解析などにより、がんの不均一性の詳細は徐々に明らかになりつつあるが、がん細胞を移植したゼノグラフトモデルや患者由来の検体を用いた解析からのみでは、生体内のがんの様態を反映する一方で、その複雑な相互作用の全容を解き明かすことは難しい。
我々は、近年基盤技術が飛躍的に発展している3次元in vitro培養系を利用して、がん細胞とがん微小環境中に見られる種々の細胞を配置・培養することにより、培養皿上でがん微小環境を人為的に構成し、構成細胞間の相互作用の解析を試みている。特に、がん細胞と間葉系細胞や血管等の周辺細胞との相互作用及び、その時空間的な変化の様子の可視化や、イメージング技術との組み合わせによる変化量の定量的評価を行っている。本セッションでは、がん細胞と線維芽細胞との相互作用を中心に、最近の研究成果について発表する。
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Jeonghyun Kim, Takashi Inagaki, Eijiro Maeda, Taiji Adachi, Takeo Mats ...
2023 年Annual61 巻Abstract 号 p.
161_1
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/13
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Changes in multicellular behaviors and mechanical properties of three-dimensional (3D) culture models such as organoids are important to understand the mechanisms of the morphogenesis and functions of diverse organs in vivo cellular environment. Our group has developed 3D scaffold-free osteocytic culture models reconstructed by pre-osteoblast cells and mesenchymal stem cells (MSCs). In response to chemically induced osteogenesis supplements (OS), we investigated the multicellular behaviors of the osteocytic spheroids derived from human MSCs by conducting three experiments; 1) size change measurement, 2) fusion experiment, and 3) collagen embedding experiment of the spheroids. We also established an experimental system to measure the stiffness of the spheroids by a compression test using a glass plate controlled by a micromanipulator under the microscopy. This study will contribute to understanding the multicellular behaviors and measurement of the mechanical properties in the various organoid models.
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