日本デザイン学会研究発表大会概要集
日本デザイン学会 第56回研究発表大会
選択された号の論文の194件中51~100を表示しています
  • 永井 由美子, 野島 久雄, 小早川 真衣子, 須永 剛司
    セッションID: C07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    私たちは写真を撮ったり日記を書いたりといった個人での表現活動を普段からしている。これらを地域の知として集積する試みとして、成城大学コミュニティ・カレッジの「思い出を記録する」表現ワークショップを行って来ている。ここではA他者に「思い出」を語る、B表現方法を考える、といった行為が生成していた。C参加者が得たものは、C-1自分の思い出を俯瞰すること、C-2他者の思い出を地域の知として得ること、C-32種類の表現:持ち帰るものと全員で作るものだった。主催者はiプログラム、iiワークショップの空間、iii表現の検討、iv参加者の背景を活動の要素として重視した。活動の枠組みとして「計画される物事・容器」には「計画される行為:iプログラム」、「道具・空間:iiワークショップの空間」、「計画される表現課題:iii表現の検討」「参加者:iv参加者の背景」が該当し「生成される物事・内容」には「生成される表現物:C-3表現をおみやげとして持ち帰る」「生成される行為:C-1自分の思い出を俯瞰する、C-2他者の思い出を地域の知として得る」がそれぞれ該当することがわかった。
  • 多摩ニュータウンにおけるコミュニティバスを巡るフィールドワークとデザイン
    小池 星多, 山田 花澄, 小島 洋平
    セッションID: C08
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    東京都多摩市の多摩ニュータウンにおいて、住民がコミュニティバスを通したい地域をフィールドに、自治体、小池研究室が共同して、コミュニティバスを開通させるための地域住民の活動を支援している。小池研究室は住民に、デザインの技術や、大学という組織であることを評価され、住民活動に参加を許され、バスルートマップや、バスのカラーリング、バス停のデザインを提案し、住民にコミュニティバスに関心を持ってもらうためにリソースを配置している。コミュニティバスを取り巻くモノと人間のネットワークを小池研究室も加わり、デザインすることで、コミュニティも研究室も相互変容していくことを明らかにした。
  • デザイン探索プロトタイプによるデザイン検討
    堀江 政広, 横川 耕二, 須永 剛司
    セッションID: C09
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    コンピュータを使った情報機器のソフトウェアの開発では、デザイナーがデザイン作業をし、エンジニアがソフトウェア開発作業を行うことが一般的であるが、両者の足並みをそろえるのは容易ではない。この報告では、アジャイルソフトウェア開発手法を参考にして、デザインの探索に特化したプロトタイプの作成とそれを使ったワークショップ開催によって、デザイニングとエンジニアリングとの協調の場を積極的に設けて、より良いデザインを得ることを目指す試みを紹介する。
  • 元 哉盛, 須永 剛司, 横川 耕二
    セッションID: C10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    本研究は、一般の人々の表現を公開・共有する場のづくりにおいて結果物だけではなく、そのプロセスも一緒に提示する道具づくりを目的としている。  前回の研究発表では表現者が授業記録作品を制作するために、選択したプロセス記録(以後、写真と表記)に写っている内容、選ぶ過程で見られた行動を観察したことを報告した。  本稿は、表現活動のプロセスを図解化する基本構造の概要と、デジタル道具上で「プロセス図解」を表現活動の中で制作し、表現者に提示すること可能有無の検討することについて述べる。
  • 高宮 浩平, 岡本 誠
    セッションID: C11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    私達聴者は,視覚や聴覚をはじめとした様々な感覚を用いて環境認識を行っている.ところが,聴覚情報を得る事が出来ないろう者は環境認識を行う際に視覚情報に頼らざるを得ず,視覚情報が得られない状況では環境認識を行う事が困難である.そのため,これまで数多くの聴覚障害者の支援を目的とした研究が行われてきた.これらの研究の多くは,コンピュータが音を認識し,聴覚障害者に音源の名称を伝達するものである.ところが聴者が環境認識を行う際には,「何が鳴ったか」以外にも聴覚情報から様々な情報を得ている.そこで本研究では,ろう者が視覚情報と聴覚情報を対応付ける事ができる,聴覚情報を視覚化し伝達する「Circum」を提案する.Circumは,音源の「方向」「移動」「距離感」の情報を視覚表現した.これらの情報は,WorkingPrototypeを用いたろう者への調査によって導き出した,ろう者が要求する情報である.ろう者に対するCircumの評価実験を行った結果,Circumの可視化インタフェースがろう者にとって有効であり,またこれらの情報は視覚情報と対応付け易い情報である事が確認された.
  • 土屋 雅人
    セッションID: C12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    2007年度の防災カード研究では,防災カードの認知度に比較して所持している人の割外が非常に低いことから,普段から防災カードに触れ親しむ工夫が必要であることが明らかになった.そこで今年度は,ポップアップカードの立体的な動きに着目して,その有効性と適用の可能性を探った.ポップアップカードの動きの分類を元に,今回は,四角返し型,六角返し型,カライドサイクルの3タイプと,4枚(両面使用の8ページ)構成の従来型の計4種類の防災カードを試作し,アンケート調査を実施した.その結果,実使用を考えると従来型の評価が高いが,興味を抱かせる魅力の点では,ユニークな動きが特徴的なカライドサイクルの評価が上がり,立体的な動きが効果的であることがわかった.しかしながら,四角返し,六角返し共に,グラフィックデザインの仕上がりが評価に影響していることも考えられるため,それらについては今後の再評価,考察が期待される.
  • 古屋 繁
    セッションID: C13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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     『経済成長戦略大綱』において「サービス産業の生産性を抜本的に向上させることにより、製造業と並ぶ双発の成長エンジンを創る」ことが提言されるなど,「経験と勘」に頼ったサービスから科学的・工学的アプローチを視野に入れたものへの転換が求められてきている。しかし,サービスはユーザに何らかの価値を提供する行為と考えられるが,近年までその無形性から今まで工学や科学の対象となるものではなく,設計対象として考えられることもなかった。  デザインでも,サービスを視野に入れたモノやコトのデザインが考えられてきたが,サービスデザインの枠組みや具体的な手法など,さらに議論を進めていかなければならない研究課題も考えられる。 そこで,本研究では,高い付加価値を有するサービスをデザインするだけでなく,サービスからモノのデザインを発想することも視野に入れたサービスデザインの枠組みならびにそのデザイン方法について,具体的な事例を通して考えた。
  • 山岡 俊樹
    セッションID: C14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    ヒューマンデザインテクノロジー(HDT)は論理的,システム・製品開発方法である.この方法は,1.ユーザ要求事項抽出ステップ,2.状況把握ステップ,3.製品コンセプト構築ステップ,4.デザイン(総合化)ステップ,5.デザイン評価ステップ,6.ユーザ使用実態調査のプロセスからなるが,特にこの製品コンセプト構築ステップとデザイン(総合化)ステップに着目して,サービス設計コンセプトを構築後,サービス設計項目を活用してサービスの可視化をする方法を考案した.サービス設計項目の上位項目として,1.機械(設備)の機能が良い,2.機械(設備)の性能が良い,3.機械(設備)の利便性が良い,4.スタッフのパフォーマンス,5.スタッフの人間性,6.おもてなし,7.共同作業がある,の7項目,下位の設計項目として,1.態度が良い,2.柔軟な対応,3.信頼性がある,4.明確な情報提示をする,5.ミスに対して寛容である,6.負荷の軽減,7.適切な時間で対応,8.ユーザに平等に対応,9.ユーザの期待(目的)を達成,10.配慮・気配り,11.形として残るサービスの提供,12.付加的なサービスがある,の12項目である.
  • 山崎 和彦
    セッションID: C15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    UCD手法は,ユーザーが見たり触ったりするものを対象に,統合的なユーザー体験をデザイン対象とする。また,プロトタイプとユーザー評価を繰り返えす事がUCDの重要な原則の一つになっている。ここでは,プロトタイピング手法の中でも,効率よくユーザー評価する手法としてペーパープロトタイピング手法に着目した。Snyderはペーパープロトタイピングをユーザー評価の一つの手法として「ペーパープロトタイピングとは,ユーザビリティテスティングの一種である。ペーパープロトタイピングでは,ユーザーを代表する人物が,現実に想定される課題を紙製のインタフェース上で実行する。この紙製のインタフェースは「コンピュータ役」の人によって操作されるが,コンピュータ役はそのインタフェースがどのような働きをするかを説明しない。」と定義している。ここでは,ペーパープロトタイピングを評価だけではなくデザインの各段階でも活用できることを考慮したペーパープロトタイピングの段階的な活用方法を提案する。
  • 生活情報の可視化による無形の価値創造
    石垣 陽, 茅野 貢
    セッションID: C16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    セキュリティシステムを応用した社会サービスのデザインによって利用者と製品の間にユニバーサルな相互作用を生み、また製品を通じて利用者と社会のコミュニケーションを深めることができる。本研究では、ブログやWikiなどのネットワークサービスがもたらす情報格差や思考の外在化といった問題を無くし、新たな社会サービスを生み出すためのデザインアプローチを提案する。また現実的なアプリケーションとして、(1)ANDON:離ればなれの人々が照明を通じて互いの存在を感じとるための、セキュリティシステムを利用したプラットフォーム、及び(2)PastelCamera:監視カメラ画像を利用した見守り意識向上のためアプリケーション、の2つを示す。
  • 竹末 俊昭
    セッションID: C17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    デザインの領域が「モノ」から「コト」「サービス」へと拡大し、扱う対象が目に見えるものから目に見えないものへと変化してきている。本稿では「クラウドソーシング」に的を絞って北米と日本の実態を調査した結果を報告する。  1990年代後半からの急激なインターネットの普及に伴い、世界中の知恵を集めてビジネスやマーケティングに活用することが簡単に行えるようになってきた。背景として、One to one marketingに始まり、Longtail現象、Wisdom of crowds、Wikipediaに代表されるWikinomics、そして商品開発から生産の仕組み、販売のプロセスを変えるDesign to orderなどの台頭が挙げられる。インターネットの普及以前では収集が非常に困難であった「群集の知恵」を活用することによって新しいサービスビジネスの展開が始まってきており、その現象を2006年頃からクラウドソーシングと称するようになった。  そこで、このクラウドソーシングにおける北米と日本の事例を調査することによって、今後サービスデザインを進める上でどのように活用できるかを探ることとした。
  • 此川 祐樹
    セッションID: C18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     近年、日本で親子のコミュニケーションの時間が減っていることが問題になっている。親が共働きやシングルマザーのケースが増えている背景が影響だと言われている。研究目的として3才~5才を対象とした親子で学ぶ新しい教材デザインの提案を行う。今回、教材として「絵本」を対象とする。理由として日本で絵本は親子のコミュニケーションと学習の道具として一般的に使用されているからだ。  関連研究では、1)「ワークショップ手法を活用した子どものためのデザイン教育」から幼児教育における教育方法として「1人で学ばせるのではなく誰かと共に学ぶことに意味がある」ことが知られている。 研究の手順  本研究では、親子で学ぶ幼児教材を提案するにあたって、現在の親と子の関わりと親子と絵本の関わりの2つの観点から、現状調査、ブレインストーミング、観察実験調査・5つのワークモデルを使った分析などを行った。結果から仮説を定義し、仮説から幼児教材のプロトタイプを制作するにあたってエクスペリエンスシナリオ、バリューマップによる幼児教育の価値の抽出などを基に5家族のキャストを用い、2つのペルソナの決定を行った。ペルソナから個々にアイディア検討を行い最終的なプロトタイプの決定を行った。
  • 柳井 謙一
    セッションID: C19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    近年、日本では若者の孤立が社会問題としてあげられる。それを解消するために、本研究では自由度の高い身体活動に優れたダンスに注目した。ところで近年日本ではブレイクダンス等の新しいダンスが、若者の間で人気となっているが、実際に活動できているのは一握りであり様々な障壁があると考えられる。ダンスを推進することで若者が持つ心の問題をやわらげ、明るい未来につなげていくことができるのではないだろうか。本研究の目的は、日本人の若者が抱くダンスに対する問題点を明らかにし、それを解消する具体的な支援を提案することである。対象とするダンスは、若者に受け入れられやすいブレイクダンス、エレクトロダンス等の新しいものとする。手順として、まずインタビュー予備調査を行い有効な調査方法を検討する。次にダンスに馴染みのある国に及び馴染みの浅い国である日本の調査を行う。調査の上でカルチャーセンタードデザインという観点から、国の文化を考慮した有効な調査法も検討する。また既存のサービスや製品調査も行っていく。以上の調査から得られた情報を比較検討し、具体的なデザインの提案を行っていく。
  • 増田 英之
    セッションID: C20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    楽器演奏者にとって、作曲は音楽を楽しむ一つの要素であり、また録音機材や作曲ソフトの発達に伴って、作曲行為を楽しむ人が増えてきている。しかしながら、まだ楽器演奏者は作曲行為おいて問題を抱えており、このような現状からユーザー要求の理解不足や作曲方法手順の不明確さ、ソフトウェア操作の難しさ等の問題点が考えられる。 本研究は、ユーザエクスペリエンスの観点から、作曲初心者に向けた作曲支援システムを提案することを目的とする。同時に、本研究ではコンテキスチュアル・インクワイヤリーという結果にどのように反映されるのかを分析することによって、その有用性についても検証する。方法としては、作曲という行為をコンテキスチュアル・インクワイヤリーという観察法を用い分析、結果から抽出した問題をもとにプロトタイプを制作し、モニタによる評価実験を行ったうえで検証する。
  • 松田 大輔, 五十嵐 浩也, 木村 浩
    セッションID: C21
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    新型インフルエンザを代表とする大規模感染が想定される感染症の危惧が拡大している。この状況に対して感染拡大を阻止する目的を持つワクチンの大量かつ短期間の接種が検討されているが、従来からの注射システムでは十分に機能するかどうかという点に課題が残る。そこで従来からの注射システムをサービスの観点から抜本的に見直し、注射器のデザインからサービスのシステムまでを提案としてまとめた。現状の注射器に対してはその歴史を文献によって、現状をメーカーと医師からの事情聴取によって、それぞれ調査を行い、感染の予想に対しては政府発行の文献から情報を取得した。得られた情報を基にサービス案を仮説としていくつか抽出した。抽出された仮説に基づいてモデルを作成し、医師による検討を行った。結果、製造から注射、そして破棄に至る一連のシステムとして注射器を捉え直したサービス提案を行った。
  • 田崎 慎也, 岡崎 章, 山中 洋雄, 呉 起東, 内藤 茂幸, 吉川 佳孝
    セッションID: D01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    インフォームド・コンセントは,事前に行われる治療の目的・ 内容を十分に説明して,患者の納得を得ることであるが,主体 者は大人の患者である.子どもの場合は,理解し納得すること が難しいだろうという大人の勝手な判断で,なおざりになって きた経緯がある.しかし,子どもに対しても,無理やり治療を するのではなく,自分が受ける治療が容易に理解できるプレパ レーションが必要とされている.特に子どもの場合,自分の意 志を表現できない場合が多く,恐怖心や不安感を考慮したプレ パレーションが強く望まれている.そのためのツールとしてお もちゃを使ったり看護師の手作りツールを用いたり工夫が成さ れているが,これといった専用ツールは極めて少ない.
  • コンピュータの画面上でいつでも看護師と会えるツール
    柿沼 佐代子, 岡崎 章, 内藤 茂幸
    セッションID: D02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    患児は,入院という環境下では常に不安感と孤独感を抱えている.心を許した看護師の存在は大きく,処置室に付き添う看護師を選択する患児もいる.しかし,その看護師が非番でいなかった場合は不安感は増長してしまう.このとき,患児の不安感を軽減し処置や手術に対する気持ちを紛らわすことができるツールを開発した.
    本ツールは,患児が操作し看護師の写真や動画をコンピュータの画面上で再生できる機能を備えている.初期画面には,35人分の看護師の顔写真をアイコンで配置・表示した.患児は看護師のアイコンをクリックし,各コンテンツを楽しむことができる.本ツールには,看護師から処置や手術の前後に患児の心のケアを行うメッセージ動画や,画面上の看護師と遊ぶ写真を再生するコンテンツを備えている.
    本ツールを実験した結果,患児の気を紛らわすツールとしては大いに効果が見られた.初期画面に看護師全員のアイコンを表示することで,患児の興味が特定の看護師に固執せず,多くの看護師から励まされていることを認識させ安心感を与えることができた.また,患児に興味を持たれることで,看護師に患児との関係を見直す機会を与えることができると考える.
  • 山中 洋雄, 岡崎 章, 加藤 由香, 内藤 茂幸
    セッションID: D03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    この研究は、医師や看護師の知識に左右されずにプレパレーションが実行でき、「患児が感じる痛み」と「患児に伝える情報の真実味」のバランスを制御することを目的とした中心静脈カテーテル用プレパレーション・ツールの開発を目的としたものである。 この研究によって開発されたツール「kizuna」は、視線移動をスムーズに促す特長と、リアルさの異なる5段階の画像から一つを選択できる機能を備えている。 今後、看護師の意見などを取り入れて改良を施し、完成版を無料で提供する予定である。
  • 血液検査結果シートのリデザイン
    中村 昌平, 金谷 一朗, 川崎 和男
    セッションID: D04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    血液検査は我々にとって重要な検査である.医師は血液検査から得られる情報から,診断や治療効果判定,治療経過観察,予後推定などを行っている.血液検査は日常の診療活動に必要不可欠な基本的検査である.
    近年,日本でもインフォームド・コンセントの概念が広まっている.医師による情報公開とその情報を基にした患者の自己決定が重視されつつある.よって,日常的で基本的な血液検査の結果は,医師だけでなく,患者にとっても自らの健康状態を認識する上で有用な情報であるので,医師から適切に患者に伝えられるのが望ましい.この際メディアとして用いられているのが,血液検査結果シートである.しかし,現状のシートはデザインされておらず非常に見にくく分かりにくいものが多い.
    そこで,本研究では医師と患者の新たなコミュニケーションを誘導するために血液検査結果シートをデザインした.見やすく分かりやすいだけでなく,患者にとっては自分の健康状態を客観的に評価する指標として,医師にとっては検査の意図・方針・考察などを含む血液検査における医師の診断を患者に伝えるメディアとしてデザインした.
  • 嶋野 宇一郎, 國本 桂史
    セッションID: D05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    口蓋裂とは、口腔顎顔面領域において最も多い体表先天異常であり、口蓋に裂のみられる疾患の総称であり、その発生頻度は、一般に日本人新生児の500人に1人といわれている。口蓋床とは、口蓋裂の治療装置である。本研究では、光造形法によるラピッドプロダクトの口蓋床制作における応用を目指し、口腔内粘膜表面の形状抽出を行い、光造形モデル化することで、ラピッドモールディングによる口蓋床の制作を可能にすることの達成を目的とした。
  • デザインの定義とその研究方法論
    田浦 俊春
    セッションID: D06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本論文では,デザイン学の考え方について考察している.まず,デザインを,(1)図案表現型,(2)問題解決型,(3)理想追求型,の3つのタイプに分類している.その分類の基づいて,デザインを,「未来に向って,あるべき姿を構成すること」と定義し,それに関する考察を行なっている.次に,デザイン学の研究方法論について,実際のデザインにその根拠を置く方法と,デザインの理想を追求する方法があることを述べ,その具体的な方法について議論している.最後に,創造性との関係について考察している.
  • 山本 英子, Nor Fasiha Mohd Yusef, 田浦 俊春, 永井 由佳里
    セッションID: D07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    新しいデザインを生み出すには,創造性が必要であることが議論し続けられている.そして,創造的デザインを支援することを目的とした研究が多くなされている.本研究では,デザイン過程における重要な工程として,概念生成プロセスに焦点をあて,創造性について考える.概念生成プロセスは新しいデザインアイデアを生み出すことに深く関わっていることは議論されているが,その生成メカニズムはまだ明らかにされていない.そこで,本研究では,概念生成プロセスにおける創造性に関する効果的な思考パターンを見つけることを試みる.具体的には,概念生成プロセスの一つである,2概念統合プロセスについて,概念連鎖で構成される空間を思考空間と定義し,この思考空間を仮想的にモデル化する方法を提案する.
  • 季節感ユニフォームの感性評価の事
    周 豊, 永井 由佳里, 田浦 俊春
    セッションID: D08
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は人の印象とその生成に寄与する連想によるイメージ形成過程に着目する.人の心に生じる無意識の想起は連想として連想された概念間のネットワークの構造として説明することができる.これに基づき,本研究はデザインの印象について評定者から得られた印象単語から,より深層に存在するイメージを探り,デザイン評価としてとらえる質的分析手法を示すことを目的とする.デザインについてその印象を評定者に記述させる実験を行い,調査対象の印象として現されることば(印象語)を収集する.それらのことばから連想関係の分析を行い,総合的な評価としてデザイン印象が生成されたと推定される連想関係構造を求める.分析においては,印象語からその深層にあると推定されるイメージを探るために,連想概念辞書を用い刺激語と連想語の関係を基本とした連想概念ネットワーク分析を行う.
  • 阪山 由衣子, 山本 英子, 田浦 俊春, 永井 由佳里
    セッションID: D09
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    デザイナーはユーザの感性にあった,多くの人に良い印象を持たれるモノを生み出すことが常に求められる.この要求に応えるため,ユーザの印象を分析し良い製品につなげることが試みられている.これが感性工学である.感性を測る方法として,感最も一般的な方法がSD法であるが,あらかじめユーザの印象を測るための言葉と尺度を用意しなければならない.つまり,人が何かを見て評価を行う際,SD法による分析では抱いた印象を直接反映できないのである. 本研究ではユーザが明示できた印象の奥にその印象を生じさせる源が存在し,それが本当に良い製品を設計するために役立つ印象ではないかと考える.これを「印象の源」と名付け,それを捉える方法の提案を目的とする.実際に実験を行い,得られた印象語を手がかりに意味ネットワークの構築を行い,ネットワークの中心となる語を抽出した.そして,印象実験から得た被験者の印象を明示された印象語による分析結果と「印象の源」の近似による分析結果とを比較したところ,「印象の源」の近似は印象語により分析能力が高いことを確認できた.この結果より,本研究の「印象の源」を捉えるための考え方の妥当性を示すことができた.
  • 山田 香織, 欅田 雄輝, 永井 由佳里, 田浦 俊春
    セッションID: D10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    デザインプロセスを検討する際に,受け手となる人間がそのデザインからどのような印象をうけるかを最も重要な問題として考慮する必要がある.今日,感性デザインのために人間の感情や情動がデザインの領域でも研究されているが,人間の印象は複雑な構造により生じる認知プロセスと考えられる.本研究は,印象についてのより深い理解に基づき,デザインの方法を検討することを目的とする.そのために,光によるデザインから印象が生成されるプロセスについて議論する.光に着目した理由は,先行研究で,光からの連想が検討されており,想起や連想を促すことが指摘されているからである.ここでは,光の照明としての機能より,見る人の連想プロセスにより光の印象が生成されていくことに焦点を絞る.先行研究から,刺激によってことなる連想プロセスの存在の可能性が示唆された.そこで本研究は,光からの連想について実験により調査する.実験では机上の光を想定したオブジェクトから生起された印象を分析した.分析結果より,連想のプロセスは二つの系が存在すること,それらが相互に関係し合い,デザインの印象が形成されることが示唆された.このことからデザインの印象をより動的な構造で捉えることで,従来の感性評価ではとらえきれなかった印象生成プロセスを検討しうる可能性が示唆された.
  • タイムナビゲーションの開発と教育への試み
    田中 隆充
    セッションID: D11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    地域には観光ガイドブックやインターネットの情報等にはない、地元の人にしか分からない由来や体験的な歴史がある。それらの情報は現場にいかなければ分からないことや住んでいなければ分からない情報も多々ある。これらの情報は本来、代々伝えていくことが重要であるが、これらをアーカイブ化し、共有することも大切な要素と考えた。また、その情報の貴重性を伝えるために、情報の演出の仕方を考える必要がある。そこで、その場にいてその場の過去の映像や音声を体感することで、その地域の特色や本質的な歴史観を見いだすことができるのではないかと考えた。そこで、それらを具体的に示す方法の一つとして、携帯電話のQRコード読み取り機能を用いて、使い手がインターネットに手軽にアクセスし、そこから過去の画像等を携帯電話側に読み込ませることで、携帯電話の画面やイヤホンから表示できるコンテンツを実験的に制作した。本研究においては岩手大学構内に4カ所のQRコードパネルを2006年度から2007年度の2年間に設置し基礎的な実験を行った。そして、2008年度は国立公園に指定されている岩手県浄土ケ浜に設置することで、観光の最前線での試みを行い始めた。
  • 石井 成郎, 長尾 祐樹, 鈴木 裕利, 藤吉 弘亘, 藤井 隆司
    セッションID: D12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では「創造性教育における社会的スキルの学習」に焦点をあて、工学教育における創造性教育の実践において、(1)授業後の社会的スキルの変化、(2) 社会的スキルの変化と作業スタイルとの関係を明らかにすることを目的とした検討を行った。ロボット製作を題材とした創造性教育の実践を通して、学習者は問題解決、トラブル対処、コミュニケーションといったグループワークに必要な社会的スキルを学習したことが確認された。また、作業のスタイルとして、学習者の作業量や役割に偏りがないペアのほうが効果的に社会的スキルを学習していたことがあわせて示唆された。
  • コミュニティデザインマネジメントのためのビジュアルコミュニケーション手法の研究
    熊澤 貴之, 齋藤 美絵子
    セッションID: D13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    コミュニティデザインマネジメントのためのビジュアルコミュニケーション手法の構築 コミュニティデザインマネジメントのためのビジュアルコミュニケーション手法の一つとして,デザインプロセスの「振り返り情報」と「リアルタイム情報」に基づく情報交流プログラムが提案された.社会実験を行うために,そのプログラムはウエブサイトに構築された.また,アンケート調査によって効果が検証された.その結果,情報交流プログラムによって信頼性と愛着,親しみが形成され,「振り返り情報」と「リアルタイム情報」がデザインプロジェクトの信頼性の向上に効果を持つことが明らかになった.
  • 永井 由佳里, キャンディ リンダ, エドモンズ アーネスト
    セッションID: D14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    理論と実践をデザイン研究においてどのように位置づけるか,それ自体が重要な問題である.本研究は,デザインと創造性の研究における実践に基づいた理論の道筋を議論する. 創造と認知研究における理論と実践は双方向の二つの軌跡で示される. ここでは実践者の立場でデザインと創造性の新しい研究方法の枠組みを提案する.
  • —古九谷の事例研
    佐野 孝太郎, 永井 由佳里, 市村 由貴恵
    セッションID: D15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    空間構造においては,図と地の関係に基づく多義性が人間の心的な構成において重要な役割を果たすと指摘されている.本研究は「古九谷青手 」の装飾的空間の構造における多義性から,空間の構造化の方法とその背後にある造形の考え方を追及する.研究の方法は,古九谷青手の様式の一作品の図像をもとに,図と地の関 係の多義性に基づくレイヤーによる分割手法により「空間の構造化」を画像情報の分析を行う..本研究で取り上げた「空間の構造化」のあり様は,造形表現において平面に対しての_丸1_複数の空間のコラージュと_丸2_装飾パターンの増殖(くり返し)に集約することができた.
  • 落合 太郎
    セッションID: D16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】100mの距離で信号灯の色の識別が可能であることが、国際照明委員会(CIE)の求める基準であり、黄のLED輝度を他の1.5(日本)~2.5(CIE)倍にして区別することが世界的に行われている。しかし赤が最も重要な信号灯であるという一般認識と食い違うため、本研究では色覚異常者が識別可能となる×を赤色灯に施して健常者にはその仕掛けたる×が見分けられない(見える必要がない)赤色信号灯を開発した。【方法】現実の交差点で設置されているLED信号機と同じ性能を有するものを製作し、赤色パネル内の×の色度を様々に変化させて、最適な色度を探索した。色覚異常者と健常者で差が現れるかを実験を行い評価した。【結果】色覚異常者は健常者よりもある一定の色度の差に敏感であることが判明した。視認距離の比率は1.5~2.0倍と判明した。【考察】CIEは本方式を世界基準のひとつとすることを決定した。
  • 脳性麻痺により上肢に障害をもつA氏を対象として
    郷内 義浩, 河原林 考輔, 三橋 俊雄
    セッションID: D17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
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    上肢に障害をもつ人にとって、自らの力で食器を持ち食事をすることは困難である場合がある。障害があっても自分の力で食器を持って食事をしたいと願うことは、人間として当然である。本研究では、この動作をサポートするための補助具の開発を行った。本研究では脳性麻痺により四肢及び体幹機能に障害をもつA氏を対象として補助具の制作を行った。制作のプロセスは、試作品の制作とA氏による主観評価を繰り返し行い、そこから使いやすさの条件・要素を導出し、それをもとに補助具の最終的な実働モデルを検討する方法で行った。このプロセスを経て完成した補助具を用いることで、これまで食器を水平に保つことが困難だったA氏でも、食事を「かきこむ」動作ができるようになった。これまでの「ユニバーサルデザイン食器」とは異なる補助具を制作したことで、上肢に障害をもつユーザーが使用する食事用具の選択肢に新たな可能性を追加できたと言える。しかし、対応する食器やユーザーへの汎用性が限られているなどの課題も残されている。
  • UD視点による重要視する食品パッケージの表示研究
    久保 雅義, 矢代 圭祐
    セッションID: D18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では食品パッケージにUDを取り入れることで食の信頼回復が期待できると考え、調査を行った。  はじめに、少人数の視覚障がい者・高齢者・若者を対象に被験者調査を行ったところ、高齢者・若者間では結果に明確な違いは見られず、両者ともほとんどの項目で視覚障がい者より評価が高かった。これより視覚障がい者を対象とした食品パッケージのデザインは、全ての人にとって食の信頼回復に繋がるデザインであると考えられた。  次に高齢者・若者間での明確な違いがみられなかった被験者調査を検証するため、高齢者100人・若者100人に対して調査票調査を行ったところ、「UDパッケージの受け入れに対し、高齢者・若者間で差はない」「食品購入時・食前において高齢者は若者より、UDに関する項目を重要視する」こと、また、男女間での比較より「男性は同年代の女性に比べパッケージ表示項目・使用性共に関心が少ない」ことが明らかとなった。  以上より、食の信頼回復に繋がるデザインは視覚障がい者を対象とした食品パッケージのデザインであると考えられたが、高齢者・若者間、またその男女間では重要視する項目や関心を示す項目が異なることが示された。
  • 尹 興淳, 荒井 利春
    セッションID: D19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    現在、室内で使われている自走用車いすは、車いすユーザーの日常生活における主要な移動手段であるとともに、様々な生活行為に対応する道具である。したがって、自走用車いすの使い勝手は、車いすユーザーの生活形態や生活の質に大きく影響を及ぼす。特に室内で使う車いすには、住生活に応じた機能を丁寧に満たすことが常に求められる。 例えば、韓国や日本の住宅のように靴を脱いで生活する空間において、現在の室内・室外の区別がない自走用車いすでは衛生上の問題が生じている。これは、靴を脱いで生活する文化圏での車いすユーザーにとって共通の問題と言ってよいだろう。車いすユーザーの生活現場から求められる自走用車いすの機能的条件をとらえ直すことや、それらを内包した車いすの開発はユーザーの室内空間における生活動作の可能性を拡大したり、生活の質を高めることにつながるであろう。  本研究は車いすユーザーの生活形態や生活文化的側面から室内空間における車いすの問題点を把握し、車いすに求められる機能や生活道具としての概念について考察することを目的としている。
  • 車いすの開発・生産・供給・介護支援システムに関するデザイン学的研究 第3報
    吉田 泰三, 梨原 宏
    セッションID: D20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    第1報及び第2報では、中間ユーザーの車いすに対する要求内容と、デザイン・開発、製造、医療・リハビリテーションの各立場からの要求内容、そして健全な社会形成からの要求内容を踏まえ、開発、製造、提供、使用、介護サービスまでを包含し、車いすに関係する誰もが理解し共有できる総合的なデザイン評価項目の構築を行い、その成果を発表した。本発表では第2報で得られた大項目7と中項目17、それに対応した120のデザイン評価項目を使用して、市販されている機能・形態の異なる5機種の車いすを事例に、車いすに対する知識が豊富な8名の評価者によってその有効性を検証した。その結果、5機種を比較分析することができ、評価項目の妥当性を検証することができた。本デザイン総合評価項目は、開発から介護支援サービスまで、車いすに関わる立場の異なる人々が協働して、車いすの在り方について総合的に評価し、検討することに一定の役割を果たせることが分かった。
  • 小宮 加容子
    セッションID: D21
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    障害者基本法に基づく障害者計画の調べによると,平成18年度の障害児(18歳未満)数は6,039人であり,平成14年度の5,010人から毎年200人ずつ増えている.車いすの利用は,身体障害者および身体障害児にとって自立するための欠かせない道具である.特に電動車いすは手動車いすに比べ,僅かな力でジョイスティック操作をするだけで自由に走行できるため体力への負担も少ない.しかし,その分,操作ミスのどがあれば事故につながる可能性も大きい.そのために,早期から電動車いすを利用し操作に慣れることが重要である.しかし,現在では,身体障害児への電動車いすの普及率は少ない.さらに,電動車いす等の補助具を購入する際の助成金制度(障害者自立支援法による補装具費交付制度)があるが,この制度の対象年齢は高学年以上となっている.その理由として,認知,技巧性の欠如のため危険性があることが考えられる.そのため,対象年齢以下の幼児は,全額負担で購入するか,対象年齢になるまで待つしかない.これらのことより,早期からの電動車いすの利用は稀である.そこで,本研究では障害児用ジョイスティック操作練習システムの開発をおこなう.
  • 佐伯 謙吾
    セッションID: E02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    昨年度の報告で、「天神まちづくりガイドライン」のまちづくり戦略を評価するための検討過程と試行結果を報告した。その後のプロジェクトでは、試行によって得られた意見に基づいてまちづくり戦略を評価するための指標を精査するとともに異なる立場の評価者による評価を行い、まちづくりに対する立場の違いに基づく評価のズレを導くことを試みた。 結果として、まちづくりへの立場の違いによって戦略への評価が異なることが明らかになった。ただしこの傾向は全ての戦略に対して当てはまるものではなく、天神地区への期待度に関する戦略では生活者の評価のほうが高い傾向にあった。この評価結果は生活者の無意識下にある天神地区へのイメージによるものであり、一方で実際の空間における調査では同様の傾向が見られなかったことから、実空間でも期待に応えられるような施策の必要性が示唆された。 今後は戦略評価の手法について精度と効率を高めるとともに、評価結果をまちづくりに関わる他のマーケティングデータと比較考察することによって、まちづくりのさらなる戦略的な推進とガイドラインに対する評価の反映を目指す。
  • 河川環境サインシステムデザインプロジェクト-1
    曽我部 春香, 森田 昌嗣, 佐伯 謙吾, 石橋 伸介, 石川 映子
    セッションID: E03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本プロジェクトでは、国土交通省九州地方整備局河川部の人々と共同で河川流域に設置されている標識について、現状の調査を行ない、課題分析および改善策の検討を行った。現状調査から、河川流域には河川管理者が利用者の安全や安心に配慮してさまざまな標識を設置しているが、結果的にはこの行為が、標識の乱立をまねき、表示内容にもルールが無いことから河川景観を乱す要因になっていることがわかった。そこで、情報の追加や削除に対応できる標識自体の基本デザイン案を作成し、表示内容のルール化を行った。また、表示に関しては、子どもや外国人にも理解できるよう、統一のピクトグラムを作成し明確な情報伝達が行えるよう努めた。そして、改善策として検討した内容を実施するために、モデル地区を定め、2008年12月から地域住民らで構成される川標検討協議会を設立し、地域特性に配慮に地域に愛される河川空間を形成するため河川標識のあり方について住民と協議をかさねている。現在、改善策として出されたデザイン案にもとづいて順次、モデル地区への施工が始まっている。
  • ―自然と共生する新潟県山北地域のつながりの文化
    大鋸 智, 植田 憲, 宮崎 清
    セッションID: E04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     本研究は、本来、日本の各地で行われていた資源循環型生活が、地域の中でどのような姿をしていたのかを、明らかにし、また、それらを構成した要素を抽出することによって、これから、資源循環型生活を創生していくために行っていくべき、地域づくりの指針を導出すことを目的としている。  本研究では、文献調査とともに、新潟県山北地域において、踏査活動を行い、伝統的な資源循環型生活の様相を、明らかにしている。本研究では、特に、山北の四季を活用して行われる「塩木伐り」、および、住民が協働して山を再生するために行う「山焼き」について、精細な読み取りを行い、その背景にある、自然と共生する人々の知恵や、協働する人々のつながりの文化について、詳しく述べている。  結論として、伝統的な資源循環型生活が、縮小していく要因は、社会の変容による人々のつながりの文化の喪失にあることを明らかにし、資源循環型生活の知恵に基づく地域づくりの指針は、この、人々のつながりの文化を、取り戻していくためのものでなければならないとした。本研究では、特に、人々のつながりを取り戻すための指針を4点、論述している。
  • 荘 心宜, 河相 彩, 三橋 俊雄
    セッションID: E05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    近年、日本中で地域アイデンティティが失われつつある。本研究は、城陽市のCI(コミュニティ・アイデンティティ)計画を住民とともに進めていくことで、住民主体の地域づくりへの意識を拡大させ、内発的地域づくりの一助となることを目的とした。地域の魅力を表現するイメージマーク作りのため、住民へのアンケート、聞き取り調査、及び現地でのフィールド調査を行い、重要となるイメージソースを抽出し、それらをもとに5種類のイメージマーク群をデザインした。また、イメージマークの、名刺、封筒などへのアプリケーションへの展開例、城陽市の魅力イメージマップなどを盛り込んだCI報告書を作成した。
  • 三橋 俊雄, 詫磨 紀子
    セッションID: E06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本稿は、内発的な地域づくりをめぐって、地域コミュニティではないキリスト教会が、地域活動の拠点としての可能性についての考察である。教会の従来の活動や地域への貢献などについて、教会への参加を通して調査・考察し、地域の拠点としての教会の役割・可能性について明らかにする。研究対象は京都市左京区下鴨にある8つのキリスト教会を研究対象とし、教会員、神父・牧師へのヒアリング調査、教会の規模・宗派・キリスト教としての活動・現在行われている地域との交流・特徴比較を行う。教会員にとっての教会の役割・意味、また外に向かっての関わり合いを、教会の中に入り、内状を客観的に見ていく。これまで、3つの教会に伺い、礼拝や聖書研究会に参加し、キリスト教としての活動を通じて普段の様子、教会ごとのこれまでの軌跡を辿った。そこから、今日、人々が教会を通じて求めているものは、精神の安定、友人づくり、集団に所属したいという思い、自分づくり、の4点が考えられる。今後も教会に通い、教会の持つ特徴・特色、活動内容を知る。
  • 李 艶, 宮崎 清, 植田 憲
    セッションID: E07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    景徳鎮は、古くから、世界でも有数の磁器産地として知られてきた。とくに、明時代(1368~1644年)に整備された官窯においては、徹底した管理体制の下、世界中から大量の注文を請負い、優れた技術が培われてきた。  しかしながら、近年では、急速な近代化・工業化のなかで、地域産業として根付いてきた景徳鎮の製磁産業は、弱体化の一途を辿っており、後継者不足や工房の消失の危機にある。 本稿は、文献調査に基づき、明清時代に景徳鎮の伝統的製磁産業において構築された工房における製磁製造システムの特質を明らかにすることを目的とする。 本研究の結論は、次のように要約される。 1)景徳鎮の伝統的製磁工房における磁器の生産方式の特徴は、きわめて?緻な分業が徹底されたことにあった。 2)製磁の工程が細かく分業され、個々の工匠・職人は、自分の技術の修練のみに専念した。そうしたなかで、はじめて「絶技」と称されるきわめて優れた技術を持った工匠・職人が育成され、卵殻磁、法瑯磁などの当該地域に特有の高度な新技術が生起した。 3)専門化された分業体制は、雇用体制にまでおよんでおり、各々の職種における技術の発展、製品の品質の維持はもとより、総体的な生産性の向上を図るのに有効であった。 4)細かく分業化がなされたため、当該地域の人びとは、何らかのかたちで磁器産業に関係しつつ生計をたてることができた。
  • 澤村 英子, 工藤 芳彰, 坪郷 英彦
    セッションID: E08
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、八王子旧市街上地区の祭礼にみる服飾デザインについて調査したものである。その理由は、服飾デザインが地域意識と密接に関わっているからである。その結果、その服飾デザインには、裃の導入がものがたる祭礼の演出や、揃いの浴衣や袢纏の減少が示す地域性の希薄化、登録袢纏にみられるデザインの実用性、伝統を伝える鳶職人の役割などを確認することができた。
  • 三枝 茂, 鈴木 泰仁, 上野 梅男
    セッションID: E09
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     スギ柱材を利用して土木・建築用製品に共通して利用できる汎用性の高い部材の開発を行った。部材の端部の形状は大別して4種類とした。部材同士の接合はボルトとタッピングを使用して行うが、これらを取り付ける穴の形状は3種類とした。部材同士の接合は8種類の方法で行った。これらの部材を利用して、テーブル・ベンチ、藤棚、進入防止柵、転落防止柵、ユニット式デッキの一部分、落ち葉入れなどが試作できた。これの部材を用いることによって、いろいろな土木・建築用製品を製作することが可能であることが実証できた。
  • 肇祖廟と皇帝陵廟及び世廟の家具配置比較
    赤松 明, 橋本 俊, 白井 裕泰, 中川 武
    セッションID: E10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    2005年度から,ものつくり大学の海外学術調査(基盤A)として研究課題「阮朝・太廟・隆徳殿の修復計画-ヴィエトナムの文化遺産(建造物)の保存に関する技術移転の確立と国際協力」を実施している。その調査の一環として肇祖廟に配置されている家具について調査を行った。 肇祖廟の家具は,太祖廟の修復のために一時的に奉られているものであり,これらの家具配置が本来の配置であるか否かが問われている。そこで,代表的な皇帝陵における家具配置を調査し肇祖廟の家具配置と比較検討した。皇帝陵廟及び世廟における主な家具の配置は,位牌壇・ベッド・机(ベッドの上におかれた小机)・内祭壇・祭壇の順である。一方,肇祖廟においては,位牌壇の前にベッドが配置されておらず,玉座の次に机(ベッドの上に置かれた小机)が配置されている。さらに,内祭壇と祭壇の間に玉座が配されている。阮朝において,最も体制が安定し文化が華やぎ,戦禍を免れた明命帝期~嗣徳帝期の皇帝陵廟の家具配置が,本来の様式であると考えれば,本研究の対象である,肇祖廟における家具配置は特異な家具配置であることが認められた。
  • 名古屋市の緑被地の現状と課題
    伊藤 孝紀, 内木 智草, 坂井 大介
    セッションID: E11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     本研究の目的は、名古屋市の緑化状況を把握し、今後の課題を明確化することが目的である。そして、社会的により有効な 働きかけができるよう研究展開をさぐる。研究方法は、資料調査と行政へのヒアリング調査の2つを行った。  調査によると、名古屋市における緑被地は昭和22年から昭和58年にかけて細かく細分化していた。その要因としては、戦災 や伊勢湾台風などの被害を受け大規模な緑被地が失われた。そしてその復興から都市整備が進み、街路樹や公園などの緑被地 が増えたからだと考えられる。  現在では、公園が整備されたり緑化を義務づける緑化地域制度などが施行され、新しい緑被地が増加している。また、今あ る緑被地を保持していくための制度も施行されている。なので今後は、それら増える緑被地に対しての維持管理が必要にな る。 よって、維持管理が大切なテーマとなる。名古屋市によると、維持管理業務の中で大きな割合を閉めるのは剪定であっ た。その剪定により毎年大量の木材資源が出ている。そこで、この資源を有効活用することが課題であると考えた。
  • 名古屋市の剪定資源の再利用計画
    内木 智草, 伊藤 孝紀, 坂井 大介
    セッションID: E12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、剪定枝を木材資源として活用する団体の活動事例を紹介し、それらを製品化し利用することで都市サイクルの一部にしようとする再利用計画の指針を示すことである。名古屋市はバイオマスタウン構想により、産業廃棄物として捉えられていた剪定枝が、燃料チップにされるようになった。しかしエネルギー資源として捉えた試みであり、幹の大きい樹木の剪定枝であっても一様に処理されている。 ある団体はこの剪定肢を譲り受け学生や工芸家へ提供したり、製品化したり、ワークショップを行ったりと不要になった資源を必要な人に利用してもらうことで、身近な環境問題に取り組もうと働きかけている。現在、製品レンタルや、資源の利用が重複して見られるようになり、一部の需要が安定してきたが、個人の需要の安定や製品の販売には至っていない。 現在の問題点は、宣伝媒体の不足と認知度の低さから社会的価値が認められていない事であり、企業や研究室が共同で製品化に取り組むことで、製品と共に事業が社会的に認められる可能性がある。また、木材資源を用いた製品は環境教材になり得、学習教材としても有効と考えられる。
  • 原弘《観光日本》、山脇巌《観光日本》、亀倉雄策《楽しい日本》
    山本 佐恵
    セッションID: E13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    日本は1930年代の万博で、当時「写真壁画」と呼ばれた巨大な写真パネルを展示した。写真壁画の様式には、それぞれ独立した小テーマを持つ写真壁画を複数面連続してつなげ、全体として一つの大きなテーマを構成する「組写真」形式と、様々な写真や図案を同じ画面上に貼り込む「コラージュ」形式がある。本発表では、後者の「コラージュ」形式のものについて発表する。原弘が構成した《観光日本》(1937年パリ万博)、山脇巌が構成した《観光日本》(1939年ニューヨーク万博)、亀倉雄策が構成した《楽しい日本》(1940年サンフランシスコ万博)の3点を取り上げる。
    各写真壁画を構成する際、建築家の山脇の場合は会場の展示空間との兼ね合いを念頭におきながら、壁面装飾の一部として制作した。一方図案家の原は、写真壁画を「一枚の大きな観光ポスター」と捉え、広告としての役割を意識して制作した。同じく図案家の亀倉は、バウハウスやヘルベルト・バイヤーなどのフォトモンタージュ技法から多くの影響を受け、それらの技法を自身の写真壁画制作に取り入れた。本発表では、これらの写真壁画の制作の背景と、構成内容の特徴について報告する。
  • パナソニックエコシステムズに見るデザイン開発事例研究
    平野 聖
    セッションID: E14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本論の目的は,我が国家電製品のデザインの変遷を辿ることによって,我が国デザイン開発の特徴を見出すことにある。今回,パナソニックエコロジーシステムにおける昭和後期の扇風機のデザイン開発事例について調査した結果,下記のことが示された。それまでに各企業の扇風機の形状は、ほとんど同一となってしまったので,差異化のために同社は「風自体の品質向上」をめざした。 「自然な風」を再現するために、「リズム風」、および「ランダム風」を経,「1/fゆらぎの風」へと発展させ,その革新性をアピールするために、扇風機自体の形状を従来とは大きく変更した。
  • 東芝製ブラウン管テレビデザインの50年
    伊豆 裕一
    セッションID: E15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    わが国のブラウン管テレビには、1952年に発売が開始されて以来、2005年に液晶テレビなどフラットテレビに主役の座が入れ替わるまでの54年間の歴史がある。本研究は、東芝科学館に収蔵されている1950年代から70年代にかけて製造されたテレビの実機の分析等を実施し、その間のデザインの変遷について、市場やユーザーのライフスタイルの変化などに加え、材料や製造技術など工業デザインと関わりの大きな諸要素との関係を明らかにすることを目的としている。
    結果、デザインはさまざまな進化の過程をたどって現在に至っているが、外観デザインの特徴から4つの時代に分類することができる。また、デザイナーは、各時代において最新の加工技術を取り入れることで、コストダウンを図りながらユーザーニーズに適合した高品質なデザインを実現してきたことがわかる。
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