移植
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55 巻, Supplement 号
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  • 磯部 伸介, 佐藤 太一, 藤倉 知行, 大橋 温, 本山 大輔, 伊藤 寿樹, 杉山 貴之, 大塚 篤史, 三宅 秀明, 安田 日出夫
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 361_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】単一糸球体ろ過量(SN-GFR)は個人差が大きい。SN-GFRが高い生体腎移植ドナーは腎提供後の腎機能の代償が乏しいと仮説を立て検証した。【方法】対象は当院で腎提供を行った生体腎移植ドナー(年齢58.1±11.7歳, 男女比8:9, イヌリンクリアランス(Cin) 89.1±13.6ml/min/1.73m2)において、腎提供1年後にもCinが評価できた17人。Denic A等の方法を用いてSN-GFRを算出。提供腎と残腎の皮質体積の割合から腎提供直後のGFRを算出(術前Cin×残腎皮質体積/(提供腎皮質体積+残腎皮質体積))。GFR代償率(1年時Cin/腎提供直後GFR)を求め、術前SN-GFRとの関係を後方視的に検討した。【結果】術前SN-GFRは87.1±41.2nl/min, 年齢と正の相関を認めたが、身長、体重、BMIとは相関を認めなかった。腎提供直後のGFR 40.8±8.5ml/min/1.73m2であるが、1年時Cin 61.1±12.0ml/min/1.73m2, SN-GFR 119.1±52.4nl/minであった。術前SN-GFR高値は腎提供1年時Cinが低い傾向にあった(r=-0.43, p=0.086)が、GFR代償率との相関は認めなかった(r=-0.27, p=0.30)。【結論】腎提供前のSN-GFRは腎提供1年後のGFR代償率と関連しない。

  • 髙橋 一広, 金子 修三, 臼井 丈一, 木村 友和, 福田 将一, 星 昭夫, 西山 博之, 山縣 邦弘, 小田 竜也, 古屋 欽司
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 361_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    生体腎移植術後早期腎機能はsize mismatchの影響が大きい。本研究では、グラフトnephron massをCTvolumetryで定量し、レシピエント体重で計算されるcortex recipient weight ratio (CRWR)が、術後早期腎機能を予測できるか検討した。2013年12月~2020年2月に当院で生体腎移植を施行した62名を対象にした。体重比(WR)、BMI比(BMIR)、体表面積比(BSAR)、グラフト実腎重量/レシピエント体重(GRWR-Act)、volumetryで測定したグラフ腎重量/レシピエント体重(GRWR-Syn)およびCRWRと移植後1か月eGFRとの相関を比較した。また、術後1か月低腎機能となる独立因子を多変量解析で検討した。移植後1か月腎機能に対するWR, BMIR, BSAR, GRWR-Act, GRWR-Syn, CRWRの相関係数はr=0.30(p=0.02),0.13(p=0.34),0.35(p=0.007),0.32(p=0.02),0.59(p<0.001),0.63(p<0.001)であり、CRWRが最も相関した。多変量解析では、CRWRは術後1か月低腎機能に対する独立変数となった(Odds ratio=0.04, p=0.03)。本研究の結果、術後早期腎機能に予測する上でCRWRが最も有用であった。

  • 藤原 拓造, 太田 康介, 高橋 雄介
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 361_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】献腎移植後1年目の腎機能に影響を及ぼす臨床因子の検討を行った。【対象・方法】2001年7月より2018年8月までに当院で施行し、転院、小児例などを除いた20歳以上の献腎移植35例(心停止下23例、脳死下提供12例)を対象とした。2020年4月30日時点での当院診療録及び日本臓器移植ネットワークからのドナー情報より評価し、名義変数に関しては平均値の比較、連続変数は1年目のeGFR 値を従属変数とした単回帰分析を行った。単変量解析で有意差を認めた項目で多変量解析にて検討した。【結果】対象症例の移植後1年目のeGFRは平均45.4 ± 14.9、中央値44.2 ml/min/1.73 m2であった。単変量解析で有意差を認めた因子はレシピエント年齢、レシピエントBMI、ドナー年齢、提供前ドナー血清クレアチニン値、提供病院搬入より臓器提供までの時間、移植後透析日数、移植後1年以内のサイトメガロウイルス感染、急性拒絶の発症であった。これらの項目で行ったステップワイズ法による重回帰分析で有意差を認めた因子は急性拒絶の発症とドナー年齢であった。また、ドナーに関する因子のみで行った多変量解析でもドナー年齢が移植後1年の腎機能に有意に影響していた。【考察・結語】症例数が少なく充分な統計学的解析ではないが、献腎移植においてドナー年齢は移植腎機能を反映しているものと考えられた。

  • 提箸 隆一郎, 齋藤 満, 齋藤 拓郎, 嘉島 相輝, 山本 竜平, 小泉 淳, 奈良 健平, 沼倉 一幸, 成田 伸太郎, 藤山 信弘, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 362_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言】高齢者では免疫応答が低下するため過剰免疫抑制に注意が必要とされる。【方法】2009年11月から2019年4月に当院で腎移植を受けたレシピエントを、移植時年齢55歳未満(若年群:97例)、55歳以上65歳未満(中年群:54例)、65歳以上(高齢群:27例)に分け、薬物動態を比較し臨床結果を後方視的に検討した。免疫抑制法はTAC、MMF、PSL、Bxで導入し2013年10月以降は移植2週後からEVRを追加した。免疫学的ハイリスク症例ではリツキシマブ投与や抗体除去を行った。高齢を理由に免疫抑制プロトコルの変更は行わなかった。【結果】夫婦間移植の割合は若年群で有意に低かった。各群間でリツキシマブ使用例や拒絶治療例の割合、移植後1年までの各免疫抑制薬の薬物動態、移植後5年までのeGFRに有意差を認めなかった。観察期間中に感染症で入院を要した症例は各群で26%、18%、14%発癌は2%、8%、11%に認められ、いずれも有意差はなかった。移植後5年正着率はそれぞれ95%、82%、87%であったがdeath censoredでは95%、96%、100%であった。【結語】65歳以上の腎移植レシピエントでは薬物動態が若年者と同等にもかかわらず、免疫抑制療法に伴う有害事象や拒絶反応の発症率が若年者と同程度であり、免疫抑制薬の過度な減量には注意が必要である。

  • 河村 毅, 濱崎 祐子, 橋本 淳也, 久保田 舞, 村松 真樹, 板橋 淑裕, 篠田 和伸, 青木 裕次郎, 二瓶 大, 米倉 尚志, 櫻 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 362_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    緒言:5歳未満の腎不全患児は、脾摘による重症感染症の懸念から血液型不適合生体腎移植(ABOiLDKT)を受けられなかった。当院では‘13年以来、リツキシマブ(RTX)を使用し脾摘を回避する事でABOiLDKTの適応を5歳未満に拡大した。対象・方法:'13年3月から'19年3月に脾摘せずに行った5歳未満のABOiLDKT 8例について後方視的に検討した。脱感作としてRTXを10㎎x2回使用し、抗血液型抗体価がx128倍以上の2例は血漿交換を行った。維持免疫抑制剤はCNI/メドロール/MMFを基本とした。結果:レシピエントは平均4.3歳(3.4-4.9)女児4例。ドナーは全例両親(母3例)で平均38.4歳(31.9-45.0)。A/O:3例,B/O:1例,AB/A:3例,AB/B:1例。3か月生検で3例に急性拒絶反応(AR)を認めたが、1年生検では、Subclinical ARは認ず。1年目で生着率は100%、移植腎機能(eGFR)は77.7ml/min/1.73m2であった。4例にRITによる遅発性好中球減少症(LON)を認め、1例で有熱性好中球減少症を発症したが、GCSFと抗生物質治療等で改善。【考察】5歳未満8例にABOiLDKTを安全に行う事ができた。LONに対する注意は必要であるが、成績は良好であった。【結語】5歳未満の患児にもABOiLDKTは安全に施行可能である。

  • 阿南 剛, 佐竹 雅史, 室谷 嘉一, 矢花 郁子, 遠藤 明里, 冨山 晴太郎, 田島 亮, 関 敬之, 廣瀬 卓男, 中村 はな, 谷 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 362_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】当院における腹膜透析施行後の生体腎移植患者を検討した。【対象・方法】2016/4~2020/3において、腹膜透析施行後に生体腎移植施行した7人を後方視的に検討した。当院では、生体腎移植希望時は腎移植可能な施設を紹介の上、腎移植後の管理を当院で施行している。【結果】年齢平均48歳(38-62)、男性4人、女性3人、腎移植前は全例腹膜透析(平均39カ月)を施行していた。現在、腎移植後平均28カ月(8-47)、平均Cre1.4 mg/dlで全例移植腎は生着している。腎移植後の主な合併症は、サイトメガロウィルス感染症1例、移植後IgA腎症1例、移植腎水腎症1例であった。移植後IgA腎症に関しては、移植後腎機能悪化に対して当院で移植腎生検施行し、移植腎IgA腎症の診断の上、ステロイドパルスならびに扁桃摘除術施行した。移植腎水腎症に対しては尿管カテーテルを一定期間留置の後抜去し、現在は移植腎水腎症改善している。当院の特徴である腹膜透析からの生体腎移植症例であるが、経過観察期間は短いものの移植後被嚢性腹膜硬化症は現在まで認めなかった。【結語】当院における腹膜透析施行後の生体腎移植患者を検討した。症例数は少ないものの、腹膜透析からの生体腎移植症例の移植後経過は良好であった。

  • 縄野 貴明, 小林 傑, 田中 智視, 藤田 耕太郎, 渡部 紗由美, 荒海 光良, 工藤 光介, 渡辺 昌文, 西田 隼人, 福原 宏樹
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 363_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】腎代替療法の選択には医師-患者間におけるShared Decision Making(SDM)が重要である。しかし、時間の限られた外来業務の中では、適切なSDMを行うことが難しい場合がある。今回我々は通常の腎臓内科外来とは別に腎代替療法選択外来を新設し、SDMの実践が腎代替療法選択へ与える影響を検討した。【対象と方法】2018年7月~2020年4月に腎代替療法選択外来(腎代替療法に精通した看護師からの説明含む)を受診した42例について後ろ向きに検討を行った。また2017年4月~2020年3月までに当院にて腎代替療法の選択・導入を行った91例をコントロール群とした。【結果】腎代替療法外来を受診した全例を、後期研修医を含む卒後10年未満の若手腎臓内科医が担当した。一方、コントロール群での若手腎臓内科医による選択肢呈示は91例中62例であり、ほかは経験年数10年以上の腎臓専門医が担当した。コントロール群では、80例がHD(88%)を、6例がPD(7%)を、5例(5%)が腎移植を希望した。腎代替療法選択外来を受診した42例中、終了時点にて8例がHD(19%)、13例がPD(31%)、8例(19%)が腎移植を希望し、残りの13例は未定であった。【結論】若手腎臓内科医による腎代替療法選択外来によるSDMは、PDと腎移植希望者を増加させた。

  • 環 聡, 香野 日高, 谷川 実央, 伊藤 祐二郎, 萩生田 純, 坂巻 裕介, 中川 健
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 363_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】腎移植後の患者は免疫抑制下にあるため、通常の患者と比べて入院する機会が多いと考えられる。実際にどれくらいの割合で、何が理由で入院したかを、当院の腎移植レシピエント症例で検討した。【対象と方法】2014年7月から2019年5月までに当院で腎移植され、1年以上経過した39例を対象とした。術後退院した後、プロトコール生検以外での入院について検討した。【結果】腎移植後に入院した症例は26例で、その入院回数は88回であった。入院しなかったのは13例であった。10回以上入院したのが2例、6-9回が3例、5回が1例、4回が4例、3回が2例、2回が5例、1回が9例であった。一方で入院理由はUTIが26回、拒絶反応の治療が14回、手術目的が14回(シャント閉鎖術2回、腎癌手術1回、尿管ステント挿入・交換術・尿管拡張術で11回)、肺炎が5回、CMV感染が4回、消化器症状での入院が4回、帯状疱疹が2回、その他が19回であった。UTIで入院した症例は7例で、この7例だけで48回の入院をしていた。この7症例を検討すると、7例中6例(85.7%)が女性で、原病は糖尿病が5例(71.4%)であった。5回以上のUTIを繰り返す2例に関してはVCGを施行するも、膀胱尿管逆流症は認められなかった。【結語】腎移植後のレシピエントの入院理由および入院回数について検討した。

  • 中井 健太郎, 山岡 奈央, 佐藤 克樹, 石松 由季子, 井上 めぐみ, 古原 千明, 宿理 朋哉, 山本 恵美, 本山 健太郎, 満生 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 363_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    尿毒症性心外膜炎は透析導入期にみられる比較的稀な合併症であるが,腎移植後再導入に際して心タンポナーデを呈した2例を経験したので報告する.症例1は41歳男性.31歳時にIgA腎症を原疾患として腹膜透析導入し,7か月後に実父をドナーとして生体腎移植を施行した.36歳時にCr 1.3mg/dLであったが,腎機能の悪化を認め,40歳時にCr 5.1mg/dLまで悪化,体液コントロール困難となり,Cr 8.2mg/dLで血液透析を再導入した.導入2か月後より発熱,CRP上昇を認め,夜間に胸痛が出現,血圧低下し,心タンポナーデの診断で心嚢ドレナージを施行し血性排液を認めた.症例2は48歳男性.25歳時にIgA腎症を原疾患として血液透析を導入し,34歳時に献腎移植を施行した.44歳時にCr 3.7mg/dLであったが,内シャント作成後に肺炎を併発し,Cr 12.2mg/dLと増悪し血液透析を再導入した.再導入後10日目の透析中に血圧低下,呼吸困難感を呈し,心タンポナーデの診断で心嚢ドレナージを施行し血性排液を認めた.過去の報告によると,白血球>13,000/μLや発熱は予後不良因子とされるが,我々の症例はナファモスタットを使用して血液透析継続し,アスピリン,コルヒチンの内服にて再発なく経過した.心外膜炎は治療が遅れると致死的となる合併症であり,早期診断・治療に努めることが必要である.

  • 若井 陽希, 阿部 奈津美, 兵藤 透, 石井 大輔, 吉田 一成
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 364_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】移植腎機能が低下し、透析再導入が必要となった患者に対する腎代替療法には様々な選択肢がある。在宅血液透析(Home Hemodialysis: HHD)は、本邦では導入例が少ない腎代替療法であるが、患者のQOLや予後が良好であることが報告されている。今回、移植腎機能廃絶後にHHDを導入した11症例について検討を行った。【方法】HHD導入の契機、導入後合併症、QOL等について検討を行った。【対象】男性6名、女性5名、HHD導入時の平均年齢43.6才(22才~62才)【結果・考察】廃絶後にHHD導入を決めた契機は、移植医からのHHDについての情報提供が最も多かった。廃絶後の患者では、研修期間が他患者に比べて短く、自己管理能力が高い症例が多く見られた。また、HHD導入後の合併症管理についても容易である傾向が見られた。また、HHD導入後のQOLは相対的に高く、良好であった。但し、HHD導入後に移植腎に関連した合併症を発症した症例が2例あり、移植腎についてのフォローが重要であると思われた。なお、当院でのHHD導入例の内26.2%が腎移植経験例であり、腎移植経験例はHHDに対する受け入れがよいと推察された。【結論】HHDは移植腎機能廃絶後の腎代替療法として有用な選択肢である。移植腎機能廃絶後患者への腎代替療法の選択肢を提示する際に、HHDについての情報提供を十分に行うべきである。

  • 小玉 寛健, 畠山 真吾, 村澤 洋美, 杉山 尚樹, 岡本 亜希子, 山本 勇人, 北原 竜次, 米山 高弘, 橋本 安弘, 齋藤 久夫, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 365_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    緒言ヌーナン 症候群は低身長、思春期遅発、心奇形、特徴的外表奇形(眼間乖離、翼状頚、外反肘など)により特徴づけられる先天奇形症候群である。知能低下、難聴、男児外性器形成障害もしばしば認められ、白血病や固形腫瘍を合併することがある。発症頻度は出生1000-2500人に1人とされている。本疾患への腎移植報告例は不幸な転帰をたどった4歳男児の1例報告しかない。今回、ヌーナン症候群の患者に対し献腎移植を行った症例を経験したので報告する。 症例31歳男性。幼少時に特異的顔貌、低身長、停留精巣を認めヌーナンヌーナン症候群の診断となった。17歳時に巣状糸球体硬化症を発症し、血液透析導入された。2020年、献腎移植第一候補となり献腎移植した。経過免疫抑制剤はFK506+MMF+Basiliximab+PSLを使用した。術翌日は尿量が少なく、K: 6.4に上昇したため血液透析1度施行したが、その後は採血値、尿量も安定した。クレアチニン値も1.3前後で安定し、術後19日目に退院した。 考察ヌーナン症候群は悪性腫瘍発生のリスクがあるため、術後は免疫抑制剤の厳密なコントロールが必要である。

  • 筒井 貴朗, 添野 正嗣, 有吉 勇一, 久保 隆史, 山崎 郁郎, 安藤 哲郎
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 365_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【症例】70歳代、男性【主訴】右側腹部痛【現病歴】X-9年、糖尿病性腎症を原疾患とする末期腎不全のため血液透析療法導入となり、X-8年、妻をドナーに生体腎移植が実施された。その後、虚血性心疾患、心原性脳塞栓のため、アスピリン、ワルファリンを内服中であった。X年1月;自宅で入浴中に右側腹部痛が生じ、嘔吐、眩暈も出現したため当院救急外来を受診された。【経過】単純CTで右自己腎からの出血が見られ、造影CTでは仮性瘤が疑われた。第5病日、経皮的右腎動脈塞栓術を施行し、仮性瘤以外にも複数の微小動脈瘤を認めたため、右腎動脈全体を塞栓した。その後、右自己尿管より軽度の肉眼的血尿がみられたが3週間ほどで消失した。肺炎が続発したものの経過良好で、第44病日退院となった。【考察】末期腎不全の腎出血は、維持透析例での報告が多く、後天性腎嚢胞と抗凝固療法が要因として挙げられている。本例の自己腎には高度萎縮と小嚢胞があり、腎出血は嚢胞由来の可能性も想定されるが、微小動脈瘤破裂の可能性も残された。腎動脈塞栓術は、将来の腎出血再発リスクの低減に寄与すると期待される。

  • 緒方 彩人, 古賀 祥嗣, 林田 迪剛
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 365_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は57歳男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全のため55歳で腹膜透析を導入した.2019年8月母親をドナーとしてA型からAB型への不一致適合生体腎移植を行った.術後,急性拒絶反応を認めたため,血漿交換療法・ステロイドパルス療法・免疫グロブリン製剤投与・リツキシマブ投与を行い腎機能改善し,経過良好となっていた.術後16日で全抜鉤したが創部脆弱で治癒が遅れていた.術後23日未明に嘔吐があり,腹圧上昇によって腎移植創部は完全に離開し,腹膜破裂及び体外への腸管脱出を認めた.同時刻に東京では大型台風が直撃していたため,都内では台風災害が相次ぎ,当院も停電と断水が起こっていた.採血や画像検査,電子カルテは使用不可の状態で,院内の医師は外科当直医1名がいるのみであった.緊急手術の必要があり,外科医及び麻酔科医の確保と院内自家発電の調整を行い,発生から3時間後に手術可能となったため,全身麻酔下で創閉鎖術及び洗浄ドレナージ術を施行した.術後は経過良好で4日後に食事を開始.創閉鎖術後3週間で抜糸行い創部離開なく経過した.腎機能も問題なく腎移植術後58日で退院となった. 嘔吐による腹圧上昇で腹膜破裂と腸管脱出を生じた原因は創治癒の遅延であり,ステロイドパルスや患者本人の間食,ストレスによる高血糖が創治癒遅延の要因の一つと考えられた.今回災害下での緊急手術により救命できた腎移植症例を経過したため報告する.

  • 高橋 遼平, 森田 伸也, 環 聡, 篠田 和伸, 鶴田 雅士, 香野 日高, 林 雄一郎, 浅沼 宏, 中川 健, 北川 雄光, 大家 基 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 366_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は48歳男性。原因不明の末期腎不全に対してX年1月より腹膜透析導入された。X+1年12月腹膜炎を合併したことで生体腎移植を希望されて当院紹介受診された。X+2年4月兄をドナーとしたABO不一致生体腎移植術を施行した。CyA、MIZ、MP、Baxによる免疫導入療法を行った。以後は血清Cr1.1mg/dl程度で良好に経過していた。X+8年血清Cr1.6mg/dlと上昇傾向を認めたため移植腎生検を施行した。病理結果からはIgA腎症の再燃の診断でありステロイドパルスにて腎機能は改善した。X+11年7月定期スクリーニングの便潜検査で3+と陽性であった。同年8月大腸内視鏡でS状結腸に腫瘤性病変あり、生検結果からAdenocarcinomaの診断となった。消化器外科にコンサルトしPET-CTでは下行結腸癌cT1-2N0M0の診断となった。同年11月腹腔鏡下結腸部分切除術を施行した。今回定期検診の便潜血検査から、結腸癌の発見・治療まで行うことが可能であった。当院でのこれまでの症例と若干の文献的考察をふまえて報告する。

  • 井上 勉, 岡田 克也, 梅木 恵理, 田丸 俊輔, 岡田 浩一, 小山 勇
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 366_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【症例提示】31歳、女性。原因不明(慢性腎炎症候群の疑い)の末期腎不全で23歳時に当センターで母親をドナーとする血液型適合生体腎移植を受けた。29歳時に結婚、挙児希望があり、CKD G2TA1、降圧薬単剤使用下で血圧 120 mmHg前後と安定しており可能と判断した。タクロリムス(グラセプター)4 mg/日は継続、ミコフェノール酸モフェチルはアザチオプリン 50 mg/日に変更、9か月後に一度の自然妊娠と流産を経たが再度自然妊娠し、その後の妊娠経過は順調であった。20週を超えても血圧上昇や蛋白尿を認めず移植腎機能は安定、胎児発育も正常であったが、37週4日目の移植センター定期受診時、血清Crが上昇(0.83 → 1.65、eGFR 65.6 → 30.9)した。超音波検査で移植腎に水腎症を認め、妊娠に関連した尿管狭窄による腎後性急性腎障害の診断で同日産科に緊急入院となり、翌日帝王切開で3100gの元気な男児を出産した。出産後、腎機能の回復が遅れCTでの確認を要したが、子宮復古と水腎症の消失に伴い腎機能も改善傾向となった。【考察】自己腎と同様に移植腎でも妊娠中には軽度から中程度の腎盂拡張所見を認めることは稀ではなく、一部は腎機能障害を生じる。単腎であるレシピエントは容易に急性腎障害となるため、尿管ステントや腎瘻が必要となる場合も報告されており十分な注意が必要である。

  • 森田 伸也, 高橋 遼平, 環 聡, 松本 一宏, 篠田 和伸, 香野 日高, 吉田 理, 浅沼 宏, 中川 健, 大家 基嗣
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 366_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は、54歳男性。腎硬化症による慢性腎不全にて20XX年に血液透析導入となった。同年弟をドナーとしたABO血液型適合腎移植術を希望された。フローサイトクロスマッチはT細胞B細胞ともに陰性、HLAはフルマッチであった。導入免疫抑制剤は、CyA、MMF、MP、BAXの4剤を使用する予定であった。2年前より原因不明の関節痛が時々あり、1週間ほどで軽快することがあった。腎移植予定の1週間前よりMMFを開始しその後CyAを開始したところ、4日目より右肘部腫脹、右足関節軽度違和感、38℃の発熱を認め、WBC 14700/mlと上昇したため、腎移植予定を中止した。CRPは6.86mg/dlまで上昇、MRIにて上腕三頭筋腱付着部炎を認めた。免疫抑制剤を中止後軽快した。膠原病マーカーは陰性、尿酸値は4.2mg/dlであったが、代謝性疾患が考えられた。再度同様に免疫抑制剤を投与したが、その際は無症状で、WBC、CRPの上昇はなかった。再度腎移植を予定、同様に免疫抑制剤を投与したところ、4日目より左足外顆、両足趾MTP関節に腫脹、左膝関節に違和感が出現した。WBC12900/ml、CRP3.25mg/dlまで上昇したが、発熱はなかった。感染ではなく代謝性疾患と考え、WBC、CRPも減少傾向であり、血液培養陰性を確認し腎移植を施行した。術後症状も消失した。移植後経過は良好であった。

  • 宮澤 克人, 田中 達朗, 近沢 逸平, 森田 展代, 菅 幸大, 中澤 佑介, 井上 慎也, 牛本 千春子, 國井 建司郎
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 367_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【症例】60歳代、男性。48歳時に50歳代男性をドナー(心臓死)として献腎移植を受けた。移植時に左腎腫瘍を認め同時に摘除され、腫瘍は52mm径で、全身に転移は認めなかった。(病理:clear cell carcinoma, G2, pT1b, expansive type, INFα)免疫抑制薬はMMF、Tac、MPで導入され、術後4年目に転居に伴い当施設紹介となり、以後現在まで変更されていない。腎機能は一貫して良好で血清クレアチニン値は1.7mg/dl前後で安定している。経過中、左肺、前縦郭、右副腎、右腎、左副腎に転移を認めた。前縦郭腫瘍は術後12年目に、肺転移は、術後13年目に手術を施行した。右副腎は、術後13年目に初めて腫大を認め、術後14年目に右腎とともに摘除した。同時に右腎転移(30mm径)も診断された。また術後13年目には左副腎の腫大も指摘され増大傾向にある。現在手術療法を優先し、補充療法は施行していない。【考察】一般的に担癌患者は腎移植の禁忌とされ、癌治療後であっても一定の無癌経過観察期間が必要とされているが、本邦での確立したガイドラインはない。Danovitchら(2010)は腎癌の場合、incidental tumorであれば待機期間の必要はないとしている。腎移植の適応の有無、手術方法として同側副腎摘除必要性の有無、免疫抑制薬の選択につき考察する。

  • 前之園 良一, 松永 知久, 平野 一, 能見 勇人, 谷口 俊理, 南 幸一郎, 上原 博史, 稲元 輝生, 東 治人
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 367_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    移植技術の進歩にも関わらず泌尿器系の合併症は一般的であり、結果移植片の喪失を引き起こす事はよく知られている。我々は今回、二卵性双生児のドナーからの生体腎移植後に尿漏を発症し、その後に腎盂尿管吻合術と尿管ステント留置したにも関わらず、継続的な尿漏が持続した57歳の男性の症例を報告する。糖尿病性腎症による慢性腎不全に対してpreemptiveに右腸骨窩生体腎移植を施行した。術中は尿管ステントの留置は行わず、術後の尿の流出は良好であった。移植術後5日目尿量が低下し画像検査にて移植尿管からの尿漏出を認めた。腎移植8日目に固有右尿管と移植腎盂を利用して腎盂尿管新吻合術を施行したが、尿漏は術後も持続した。その際の血液検査で血漿第XIII因子レベルが48%と低下していた為、第XIII因子製品を投与を行った。腎不全または移植患者における第XIII因子製品の有用性と安全性は不明であるが、副作用を呈することなく第XIII因子製品を投与後に尿漏が改善した。さらなる追加調査が必要であるが、第XIII因子製品の投与は、移植後の難治性尿漏の1つの選択肢となる可能性がある。

  • 椛 朱梨, 日髙 悠嗣, 田中 康介, 川端 知晶, 山永 成美, 豊田 麻理子, 稲留 彰人, 横溝 博, 宮田 昭
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 367_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    今回我々は血液型適合生体腎移植後早期に移植腎尿管結石による水腎症をきたした一例を経験した。症例は47歳女性、IgA腎症を原疾患とする末期腎不全に対して夫をドナーとした透析未導入の血液型適合生体腎移植を施行。ドナーの左腎を完全後腹膜鏡下に摘出し、レシピエントの右腸骨窩に移植した。移植腎の尿管は1本で、4㎝の粘膜下トンネルを形成し膀胱尿管新吻合を行った。術後経過は問題なく、Cr 3.94→0.81 mg/dlまで改善し術後14日目に退院となったが、術後約1か月でCr 1.38 mg/dlまで上昇し、腹部エコー検査と腹部CTにて移植腎の腎盂・尿管の拡張と膀胱尿管新吻合部近傍の石灰化を認めた。移植腎尿管結石による水腎症と判断し、尿管ステントを留置したところ水腎は消失し、Cr 0.99 mg/dlまで速やかに改善した。その2か月後には結石は完全に消失しており、ステントを抜去したが、再度水腎の出現とCr上昇を認め、尿管ステントを再挿入した。石灰化は消失していたが、膀胱尿管吻合部に狭窄を認めたことから、後日バルーン拡張を施行した。その後、水腎の再燃もなく、Cr 1.00 mg/dl前後で腎機能は安定している。本症例は吻合部狭窄を原因とした結石形成であった可能性があるが、稀な病態である移植尿管結石について文献的考察を加えて報告する。移植後の膀胱尿管吻合部の結石について報告する。

  • 土肥 洋一郎, 小橋口 佳な, 三浦 高慶, 宮内 康行, 松岡 祐貴, 加藤 琢磨, 田岡 利宜也, 常森 寛行, 上田 修史, 祖父江 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 368_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植後妊娠・出産に至った3症例を報告する。【症例1】移植時34歳。原疾患は慢性糸球体腎炎。未透析生体腎移植後1年目ミコフェノール酸モフェチル(MMF)をアザチオプリン(AZT)に変更。移植後4年目に帝王切開で出産(妊娠37週)。腎機能は妊娠前eGFR(ml/min1.73m2)59.1、出産直前eGFR34.4、出産1ヶ月後eGFR51.2、出産5年後eGFR48.5。【症例2】移植時34歳。原疾患は1型糖尿病。31歳時に未透析生体腎移植を受けたが慢性抗体関連型拒絶で血液透析導入。脳死下膵腎同時移植施行後1年目MMFをAZTに変更。移植後1.5年に自然流産するも移植後4年目に妊娠。軽症妊娠高血圧症候群を発症したが帝王切開で出産(妊娠36週)。腎機能は妊娠前eGFR58、出産直前eGFR37.9、出産後1ヶ月eGFR47.8、出産後4ヶ月eGFR53.4。【症例3】移植時31歳。原疾患は巣状分節性糸球体硬化症。移植後2年目MMFをAZTに変更。移植後5年目に帝王切開で第1子出産(妊娠38週)。移植後7年目に第2子妊娠。妊娠17週、発熱と移植腎水腎症で閉塞性腎盂腎炎の診断、eGFR22.2と腎機能は悪化(妊娠前eGFR42)。エコーガイド下に尿管ステント留置。妊娠38週に帝王切開で出産。腎機能は出産直前eGFR41、出産後1ヶ月eGFR47.8、出産後3ヶ月eGFR45.5。

  • 深見 晴恵, 末次 王卓, 阿知波 雅人, 友杉 俊英, 二村 健太, 岡田 学, 平光 高久, 後藤 憲彦, 鳴海 俊治, 増田 智先, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 369_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】EVRは基準範囲が狭くTDMが必要な薬剤である。現在の主な測定法はラテックス免疫比濁法(LA)と電気化学発光免疫測定法(ECLIA)であり、この2法の測定値には差がみられるため、測定法変更時には注意が必要である。今回我々は、臨床検体を用いてLC-MS/MS法と免疫測定法2法の比較を行なった。測定法を変更する時、どのように考えれば安全に切り替えられるのか提案したい。【方法】対象は、2019年5月に当院でEVRの検査依頼のあった患者検体99件。LAはTBA-FX8でナノピア試薬、ECLIAはcobas e801でエクルーシス試薬で測定。LC-MS/MSは九州大学病院薬剤部に測定依頼した。【結果】免疫測定法2法の相関は、ECLIA=1.1061×LA+0.9051(R=0.9892)、LC-MS/MSと免疫測定法の相関は、ECLIA=0.9303×LC-MS/MS+1.6437(R=0.9895)、LA=0.8268×LC-MS/MS+0.7831(R=0.9833)であった。【考察】基準範囲内では、ECLIAがLAより1.2~1.7ng/mL高値傾向の結果となった。しかし、すべての患者に該当しないため、測定法変更時に臨床症状と合わない場合、可能なら旧測定法で確認した方がよい。そしてそれぞれの測定法とLC-MS/MSの測定値の相関関係を考慮して投与量設定を行うことが重要と考える。

  • 加賀谷 英彰, 赤嶺 由美子, 佐藤 汐莉, 齊藤 満, 沼倉 一幸, 羽渕 友則, 佐藤 滋, 三浦 昌朋
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 369_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】mTOR阻害薬エベロリムス (EVR) の副作用に脂質異常症があるが、機序解明に繋がる臨床データは少ない。今回LDLコレステロールとその上昇に関与するPCSK9濃度に及ぼすEVRの影響と、mTORC1及びPCSK9遺伝子多型の影響について検討した。【方法】腎移植患者53名を対象に、患者背景、EVR血中濃度、PCSK9濃度を調査した。さらにmTORC1及びPCSK9遺伝子多型との関連を解析した。【結果】EVR投与後のPCSK9濃度は投与前に比べ有意に高く(214 vs 295ng/mL、P=0.004)、EVR AUC0-12とPCSK9濃度変化率との間に有意な相関が認められた (r=0.316、P=0.021)。加えてEVR投与後のPCSK9濃度変化率がmTORC1 rs2295080Gアレル保有患者で有意に高かった(P=0.006)。一方、PCSK9遺伝子多型およびLDLコレステロール濃度変化率は、PCSK9濃度変化率と相関しなかった。多変量解析よりmTORC1 rs2295080Gアレル保有患者、EVR AUC0-12、及び女性においてEVR投与後のPCSK9変化率の上昇に独立性が認められた。【考察】EVR誘発脂質異常症はPCSK9を介した機序が示唆された。さらにLDLコレステロール上昇は、PCSK9上昇と同時に起こるのではなく、その後徐々に上昇すると考える。

  • 西田 隼人, 福原 宏樹, 縄野 貴明, 菅野 秀典, 八木 真由, 山岸 敦史, 櫻井 俊彦, 内藤 整, 山辺 拓也, 加藤 智幸, 土 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 369_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植患者における外来での簡便なMMFのTDMを可能とするため、MMFの目標トラフ値の設定とAUC0-12予測式を確立することを試みた。【方法】2012年11月から2019年9月までに当科で腎移植を施行した66症例を対象とし、計262回AUC0-12の測定を行った。原則として移植と1週目、2週目、3ヶ月目、1年目に測定し、AUC0-12は計7回測定により計算した。MMF血中濃度はPETINIA法で測定した。【結果】C0とAUC0-12に良好な相関が得られた(P<0.0001、R=0.6736)。AUC0-12≧30となるC0は2.5μg/mlで感度76.9%、特異度92.3%であり、AUC0-12≧60となるC0は4.5μg/mlで感度42.1%、特異度93.1%であることから、C0を2.5~4.5μg/mlでモニタリングするのが妥当と考えた。次に重回帰モデルにてC0とC2によるAUC0-12の予測式をAUC0-12 =20.79+7.45×C0+2.35×C2と求めAUC0-12の実測値との相関をみたところ、R=0.7674 と良好な相関関係が認められた。【結論】MMFのC0を2.5~4.5μg/mlで目標とすることでAUC0-12の目標値が概ね得られ、2点採血によるAUC0-12 =20.79+7.45×C0+2.35×C2によりAUC0-12の予測が可能だった。

  • 井倉 恵, 中村 任, 宇野 貴哉, 中北 和樹, 竹中 裕美, 松田 紗知, 小田 亮介, 和田 恭一, 服部 雄司, 瀬口 理, 簗瀬 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 370_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】心臓移植(HTx)後の免疫抑制療法に伴う日和見感染予防として抗真菌薬が投与される。アゾール系抗真菌薬はカルシニュリン阻害薬との相互作用が報告されており、これまで国立循環器病研究センター(当センター)ではクロトリマゾールトローチを使用し、同薬の使用中止後にタクロリムス(TAC)薬物動態が有意に変動することからTAC血中濃度管理を入院下で慎重に行う必要があった。現在クロトリマゾールに代えてアムホテリシンB(AMPH-B)含嗽を使用しており、その併用前後でTACの体内動態を評価したので報告する。【対象】当センターにおいてHTx後、TACとAMPH-B含嗽を併用した患者14名(男性10名、女性4名)を対象とした。【方法】AMPH-B含嗽併用時(HTx術後6か月)と非併用時(同9か月)にTAC内服前および内服後12時間までの採血を行い、TAC血中濃度推移を比較した。【結果】AMPH-B含嗽併用下と非併用下におけるTACの投与量とトラフ値に有意な差はなかった。また、TAC血中濃度下面積(AUC0-12)はそれぞれ170.1±57.4と187.5±73.4 (ng・h/mL)であり、有意差を認めなかった。【考察】抗真菌薬をAMPH-B含嗽に変更し、その併用前後のTAC薬物動態が安定していたことから、HTx後6か月目の心生検時に同薬を中止する際に入院によるTAC血中濃度管理が不要となった。

  • 高根 真希, 金子 結, 田靡 晶深, 木村 茂樹, 前田 育宏, 日高 洋
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 370_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】血中濃度測定が推奨される免疫抑制剤シクロスポリン(CSA)、タクロリムス(TAC)、エベロリムス(EVR)の3剤は様々な測定法が用いられているが、前処理による測定者間差や測定法間差などの問題点が存在する。今回、島津製作所の液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS/MS)を原理とする測定者間差問題を解消した自動前処理システムCLAM-2030の性能評価を行った。【方法】大阪大学医学部附属病院倫理審査委員会承認番号:19483使用機器:CLAM-2030、LCMS-8060試薬:LC-MS/MS用免疫抑制剤分析キットDOSIMMUNE検討項目:再現性、定量限界、直線性、検量線の有効期間【結果・考察】同時再現性はCSA (CV:2.4-4.9%、44-2205ng/mL)、TAC(CV:3.7-6.3%、3.7-20.2ng/mL)、EVR(CV:7.2-9.1%、4.5-27.5ng/mL)とも良好な結果であった。定量限界はCSA:14ng/mL、TAC:1.0ng/mL、EVR:1.0ng/mL、直線性はキャリブレーターの最高濃度まで直線性を認めた。検量線は内部標準液を同一バイアルから使用すると3剤とも2週間有効であった。CLAM-2030は前処理不要で1度に3剤の測定が可能であり、薬剤併用患者への採血量軽減も可能となるなど血中濃度測定機器として有用であると考えられる。

  • 中村 緑佐, 杉本 龍亮, 原田 俊平, 今西 唯, 白水 隆喜, 川井 信太郎, 昇 修治, 牛込 秀隆
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 370_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    背景:抗体関連拒絶反応(AMR)は移植臓器機能不全の大きな要因の一つであり、肝移植領域においても大きな問題である。肝移植における、グラフト内ドナー特異的抗HLA抗体(DSA)(g-DSA)の検出とAMRとの相関性について検討した。方法:肝移植実施後の中長期経過患者で肝生検を実施した20名を対象とした。生検サンプルはBanff分類に基づいた病理学的診断、graft immunocomplex capture fluorescence analysis (ICFA) 法により解析、血清中DSA(s-DSA)はSAB法にて解析した。結果: g-DSA+/s-DSA+、g-DSA+/s-DSA-、g-DSA-/s-DSA+及びg-DSA-/s-DSA-はそれぞれ1, 2, 2, 15例であった。 g-DSA+/s-DSA+症例は病理学的AMR所見(門脈領域への単核求浸潤、線維化 RAI (1/1/1), A/F (1/2), C4d+)を認めた。g-DSA+/s-DSA-例はindeterminate AMRに合致し、g-DSA-/s-DSA+及びg-DSA-/s-DSA-についてはAMR所見を認めなかった。結果:肝移植領域についても graft ICFAは有用な診断ツールとなり得る可能性がある。

  • 小野 紘輔, 谷峰 直樹, 築山 尚史, 井出 隆太, 佐藤 幸毅, 山根 宏明, 今岡 祐輝, 秋本 修志, 田原 裕之, 大平 真裕, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 371_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    目的当科では、CFSE色素を用いたリンパ球混合試験(CFSE-MLR)により定量的に抗ドナー応答をモニタリングすることで、術後早期の急性拒絶や血流感染を低減できることを報告してきた。長期的には、肝移植において免疫抑制療法中止を安全にガイドする手法としての有用性が推察される。今回、その導入として長期観察症例に対しCross-sectional studyを行った。方法2005~2014年に生体肝移植を行い、タクロリムス(Tac)を含む免疫抑制療法で外来経過観察中の53症例を対象とした。CFSE-MLRは年1回の施行を基本とし、直近5年間で施行回数3回以上を施行群、3回未満を非施行群とした。Tacの直近1年間の平均血中濃度3ng/ml以下をTac最小化と定義しその達成率を検討した。結果MLR施行群29例、非施行群24例であった。MMFの併用に差は認めず、両群とも直近2年間に拒絶の発症は認めなかった。観察期間はMLR施行群で有意に短かく(8.3±0.44年vs 11.7±0.48年 P<0.001)、Tacを最小化できた頻度はMLR施行群で有意に多かった(55% vs 25%, P=0.02)。考察MLRの施行により、短期間で安全にTacの最小化が達成されていた。今後、移植後期間による免疫抑制最小化の達成や免疫反応の動向を解析し、有用性の更なる詳細が明らかになることが期待される。

  • 吉開 俊一
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 372_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    移植医療の発展には救急医や脳外科医の積極的な関与が必要である。筆者は脳神経外科医師の立場で移植医療の医学教育や啓発活動を展開する中、全ての医療従事者が臓器提供への積極性を維持するための強固な動機付けの手法を模索してきた。以前より、臓器提供は提供者自身のためにあり悲嘆の軽減に役立つとの提議がなされ、昨今では患者の最期の願いを叶える終末期医療の一環として扱われ、提供側の関与を募っている。これらは、患者や家族の提供の意思の存在が開始点となり、提供の行為内で完結する主旨である。しかし同時に、提供の意思は家族から申し出るべきで選択肢提示は不要だとの消極性を認め、家族への多様でWetな忖度が医療従事者間に不協和音を生じさせ、移植側への無関心を容認するなどの弱気なポリシーにも映る。筆者は、臓器の提供と移植は表裏一体であり、臓器提供は待機者を救う医療行為の一部であり、ドナーは移植医療の主役であり、医療従事者は平時でも移植医療を意識すべしと考える。そこで啓発講演では、願いや忖度などのWetな議論を避け、提供臓器不足の客観的なデータを知らせ、医療のプロは見知らぬ移植待機者を常に意識すべしと指導し、良好な理解と共感を得ている。筆者は決して悲嘆の軽減や終末期医療を軽視するものではないが、移植医療の堅固な定着と発展を願う時、眼前にいない待機者をも救うプロ意識を定着させることが最重要課題であろう。

  • 加藤 櫻子, 纐纈 一枝, 宮島 由佳, 吉川 充史, 剣持 敬, 伊藤 泰平, 會田 直弘
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 372_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    (はじめに)当院は、脳死下臓器提供10例、心停止下臓器提供249例の実績がある。当院では臓器提供数増加を目指す他施設との協働に我々の経験を生かすべく、2019年度臓器提供施設連携体制構築事業に応募し採択された。連携施設として、藤田医科大学ばんたね病院(名古屋市)、あいち小児保健医療総合センター(大府市)、西知多総合病院(東海市)、トヨタ記念病院(豊田市)を選択、当院(豊明市)を含み5市5病院がそれぞれの施設の特性に合わせた臓器提供体制の構築・強化をすることになった。(対象・方法)当院が中心となり研修会、講演会、移植医療関連会議、シミュレーションなど連携施設職員の交流機会を設定、連携病院が自施設に合わせた臓器提供体制の構築・強化できるよう支援した。(結果・考察)10月のキックオフミーティングを皮切りに、2020年1月末までは研修会、講演会、シミュレーション等計画的に開催された。2月からコロナウィルス感染防止の為、施設間交流は中止となり本事業の活動が中断された。実質活動期間は4ヶ月で、5施設相互の職員間の交流は、院内コーディネーターや提供に関わる職員の臓器提供に対する意識の向上に寄与し、人材育成の機会になった。またこの間5施設の臓器提供例はなく実践支援はできなかった。(まとめ)本事業により連携施設間の臓器提供体制の構築・強化に繋がったと考えられる。

  • 平尾 朋仁, 竹田 昭子, 田﨑 修
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 372_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】移植医療においてはドナー候補症例発生時の患者家族対応、臓器提供に係る諸手続きに際し施設の負担が大きいことが課題である。そこで院内体制が充実した施設から提供経験の少ない施設に対しノウハウの提供や人的支援を行うために、地域の連携体制を構築した。【方法】改正臓器移植法施行以後、14例の臓器提供経験をもつ長崎大学病院を拠点施設とした。またこれまで臓器提供の経験がなく、かつ今後ドナー発生が見込まれる病院を連携施設に選定し、スタッフへの教育と現場サポートを活動の柱とした。この取り組みは日本臓器移植ネットワーク2019年度臓器提供施設連携体制構築事業の助成をうけた。【結果】長崎県内3施設(長崎みなとメディカルセンター、長崎県島原病院、長崎労災病院)を連携施設とした。各施設の院内体制整備状況を把握し必要な支援内容を明確化した。スタッフ教育として臓器提供シミュレーション、選択肢提示や脳死判定手技に特化した講習、移植倫理の研修を実施した。また現場サポートとして脳波記録環境調査、脳死判定時の助言を行ったほかドナー管理および臓器摘出手術に必要な人員を連携施設へ派遣する体制を整えた。【結論】長崎県における臓器提供施設間の教育および人的支援体制が構築された。今後さらに連携施設数を充実させると共に、各施設において臓器提供の意思を確実に汲み取り、必要な支援を早期から提供できる体制作りが必要である。

  • 小崎 浩一, 米山 智, 小林 仁存, 湯沢 賢治, 寺島 徹, 仲宮 優子
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 373_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    緒言:当院は2006年5月に腎移植プログラムを開始以来献腎移植26例を施行した。当院の献腎移植患者の平均待機年数は21.9年と全国の14年に比して7年程長く、平均透析年数は24.5年で16例(61.5%)が透析歴20年を超える長期透析患者である。患者:男性16例・女性10例、平均年齢:57.8歳、生着18例(69.2%)、再透析導入2例、primary non-function2例、死亡4例、最長生着年数:13年8ヶ月、平均S-Cr:1.44mg/dl、ドナーの種類:脳死9例・心停止17例、提供施設:県内18・県外8、長期透析に伴う廃用性膀胱のため自己尿管移植尿管吻合で7名(26.9%)が尿路再建を行った。結論:当院の献腎移植26例中24例(92.3%)が、移植後機能発現し透析離脱、社会復帰したが、4例が死亡した。このように当院の献腎移植の成績は良好でさらなるドナーの増加が望まれる。一方2019年の当県の臓器提供数は6件、献腎移植件数は7件と最近の5年間で最も多かったが、提供件数は依然として10例に届かず、現在当県の献腎移植希望者が277名であることを考えると移植の恩恵を受けられた人は僅かで、献腎移植希望者解消への道筋は未だ見えないのが現状である。その上当県の臓器提供施設は全て都心に近い県南から県央で、県全体に臓器提供に対しての意識が未だ浸透しておらず、更なる啓発活動が必要である。

  • 長谷川 綾子, 髙松 正博, 中村 小織, 田中 公美子, 小島 加洋子, 佐藤 明日美, 川瀨 紀子, 三浦 清世美, 菅谷 直美, 杉浦 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 373_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】当院では1995年以降、脳死下臓器提供8件、心停止下臓器提供18件を経験している。当初は、院内に関連委員会が設置され、マニュアルは整備されていたが、救命救急センターに配置された院内コーディネーターの活動はドナー発生時に限られていた。2014年、臓器提供意思をより確実に活かすことができる体制構築のため、日本臓器移植ネットワークの院内体制整備支援事業に参加した。【活動の実際】院内コーディネーターに救急科医師、手術室看護師、臨床検査技師、臨床工学技士を加えて多職種体制とした。さらに移植医・レシピエントコーディネーターをサポートメンバーに加え、毎月定例会を開催し、対策を検討した。マニュアルを詳細化し、職員に対する研修を毎年開催した。健康保険証の確認時に意思表示欄への記載を奨励し、希望者の臓器提供意思を電子カルテに登録した。関連部署に院内コーディネーターが配置されたことでポテンシャルドナー発生時には早期より介入でき、家族の心情に配慮しながら主治医が選択肢提示を行った。院内外との連携もスムーズとなり、抜群のチームワークで臓器提供意思を実際の摘出手術につなぐことができた。【結果】2014年以降の臓器提供数は脳死下7件、心停止下1件であった。過去3年間で提供した脳死下7件の主科は、脳神経外科・救急科であった。多職種で構成する院内コーディネーター活動は、臓器提供数増加に非常に有効であった。

  • 村上 穣, 福間 真悟, 池添 正哉, 福原 俊一
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 373_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】死後の臓器提供を決断するうえで正しい理解と知識は欠かせないが、本邦のように死後の臓器提供が少ない国においてその知識の意義は検討されていない。【目的】死後の臓器提供および移植に関する知識と行動の関連を検討すること。【研究デザイン】横断研究。【セッティングおよび対象】佐久総合病院グループ15施設の医療系および非医療系の常勤職員。【要因】要因は死後の臓器提供および移植に関する知識とした。妥当性を検証済みの自己記入式質問紙を用いて測定し、知識に基づいて3分位でグループ分けした。知識の少ない群を対照とした。【評価項目】主要評価項目は臓器提供の意思表示、副次的評価項目は臓器提供の意思で、質問紙を用いて測定した。【統計解析】修正ポアソン回帰を用いて調整発生割合比(95%信頼区間)を推定した。【結果】1967名の職員のうち1190名が質問紙に回答した(知識の少ない群512名、中間群428名、多い群250名)。知識の少ない群と比較して、多い群の臓器提供の意思表示の調整発生割合比は0.90 (0.73-1.10)、中間群は1.00(0.80-1.26)であった。しかし、知識の多い群の臓器提供の意思の調整発生割合比は1.37(1.13-1.66)であった。【結語】本邦の医療施設の職員において、死後の臓器提供および移植に関する知識は臓器提供の意思表示と関連しなかったが、臓器提供の意思と関連した。

  • 那須 良次
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 374_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    私は前任地では腎移植に関わっていたが、2008年7月に当院に赴任以来、臓器移植等管理委員会の委員長を務めている。今回、腎移植医が臓器を提供する立場となって感じたことを報告する。2010年の臓器移植法改定を受けて、脳死判定医の拡充(麻酔科、小児科、精神神経科医師を追加)、院内コーディネーターの設置、デジタル脳波計の購入、脳死下臓器提供のシミュレーションの実施など脳死下からの臓器提供を想定して院内体制の整備を進めてきた。マンパワーの限られた中規模病院にとって臓器提供は大きな負担であり、今後も地道な啓発活動を続けて臓器提供のコンセンサスを得る努力が必要である。未だ脳死下の臓器提供はないが1例で角膜提供を経験した。70歳、男性、膀胱癌。死後ご家族から提供の申し出があった。角膜は固形癌患者からも提供可能で、ドナーの年齢制限もない。われわれ移植医が臓器提供にどのようにかかわるべきか、以下に私見を述べる。勉強会等に積極的に参加し、提供病院の実情を知り、移植医も臓器提供に関する見聞を広めるべきである。院内で臓器提供があれば無理のない範囲で協力する。特に、心停止下腎提供は人手不足であり、積極的に直接・間接の助力を申し出るべきである。また、担当患者の死亡時には高齢者、担癌患者であっても角膜提供の意思を確認することが望ましい。臓器提供が患者とその家族の意思であればできる限り尊重されるべきと考える。

  • 芝 順太郎, 佐藤 正章, 平岡 希生, 菊地 紘彰, 山田 高嗣, 岡田 憲樹, 眞田 幸弘, 大西 康晴, 佐久間 康成, 菱川 修司, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 374_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    脳死臓器摘出は年間50件前後を推移している。本邦では実際の経験数が少ない施設が大半で呼吸循環管理の経験を重ねることは難しい。当院ではブタを用いた臓器摘出シミュレーションを行っている。ブタシミュレーションにおける麻酔管理とヒト脳死臓器摘出の呼吸循環管理との類似点と相違点を明示する。類似点:1)胸部操作に伴う血圧低下が酷似している。2)臓器灌流に必要なカテーテル留置や大動脈遮断といった手術操作の最終段階における血圧変動が酷似している。相違点:1)脳死モデルではなく脳死状態の循環変動は再現できない。2)ヘパリンの投与を行わない。3)血液製剤の使用を行わない。4)中心静脈カテーテルはカットダウンにより留置しており上大静脈の切離の前に引き抜きができない。類似点・相違点を理解しブタを用いたシミュレーションに麻酔科医が参加することはヒト脳死臓器摘出の呼吸循環管理を行う上で有用と考える。

  • 安藤 忠助, 中島 駿佑, 鈴木 駿太郎, 藤浪 弘行, 山中 直行, 佐藤 吉泰, 篠原 麻由香, 溝口 晋輔, 佐藤 竜太, 甲斐 友喜 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 374_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は66歳、男性。3年4か月前に妻をドナーとする血液型適合生体腎移植術を受け、sCr1.5mg/dl程度で安定していた。真夏の草刈り時に、右示指にチクッとした痛みを感じ、マムシを目視した。すぐに近医を受診し、マムシ咬傷の診断で入院となり補液、セファゾリン、セファランチンの投与で経過を診ていた。咬傷後3日目にマムシ咬傷による腫脹と発赤が右肩関節を超えて体幹まで及び、肝酵素およびCKの上昇と複視を認めたためマムシ咬傷gradeⅤの判断となり、移植施設である当院へドクターヘリ搬送された。すぐに乾燥まむしウマ抗毒素の皮内試験を行ったが陽性であったため投与を見送り、十分な補液のみで対応した。その後、DIC、各種臓器障害を認めず、腫脹や複視も改善したため、当院入院後10日目にsCr1.7mg/dlで自宅退院となった。考察:マムシ咬傷自体は地方では珍しくなく、死亡率も高くない。腎移植後の患者においても一般的な対処と同様で腎不全予防を主とした早期からの全身管理が重要である。

  • 國分 希美, 岡田 良, 西間木 淳, 月田 茂之, 武藤 亮, 鈴志野 聖子, 渡邊 淳一郎, 小船戸 康英, 石亀 輝英, 木村 隆, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 375_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【はじめに】橋中心髄鞘崩壊症(以下CPM)は、肝移植後のまれな神経学的合併症である。CPMでは、意識障害、構語・嚥下障害及び四肢麻痺などを呈する。患者の機能回復を目的に、レシピエントコーディネーター(以下RTC)として介入した経験について報告する。【症例・経過】60代女性。劇症肝炎に対して脳死肝移植施行。移植後10日目頃より構音障害、嚥下障害、四肢麻痺や呼吸筋麻痺が出現し、経管栄養、気管切開による気道管理を要した。移植後24日目に薬剤性疑いのCPMと診断され、免疫抑制剤変更となった。RTCが中心となり、在宅療養を見据えた機能回復を目的とした多職種カンファレンスを開催し、嚥下機能評価や効果的な理学療法を計画し実施した。また、多職種からの個別の相談に対応し、問題点の振り返りなども行った。神経学的予後は不良と判断されていたが、徐々に四肢運動や会話、経口摂取が可能となった。患者と家族が精神的に不安定となる時期もあったが、RTCが患者と家族と積極的に面談をし、不安を表出できるように関わった。徐々に運動機能の回復は認められたが、在宅療養への準備も必要であり、移植後140日目にリハビリテーション目的の転院となり、転院後約1カ月で自宅退院となった。【結論】CPM症例を経験し、機能回復を目的とした多職種連携の構築と継続的な患者と家族の精神的支援におけるRTC役割の重要性を再認識した。

  • 相庭 結花, 伊藤 歩, 瀬田川 美香, 立原 恵里子, 山本 竜平, 藤山 信弘, 羽渕 友則, 佐藤 滋
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 375_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】今回我々は、移植後の生活背景の変化・夫婦間の関係性のこじれから怠薬という行動に陥った症例に遭遇した。レシピエント、ドナーの悩みや不安などに早期介入ができていれば怠薬を防ぎ腎機能の悪化を防ぐことができたのではないかと考え、今後の心理的支援のあり方を再検討することを目的とした。【症例】レシピエントA氏、男性。糖尿病性腎症。夫婦間生体腎移植を行った。移植後、糖尿病性網膜症による視力低下、膝関節症進行からのADL低下のため離職を余儀なくされた。その後は内服管理や食事、病院の送迎など日常生活の大部分を妻の支援を受けながら生活を送っていたが、妻との口論をきっかけに自暴自棄になり怠薬に至り急性拒絶反応を発症し緊急入院となった。【考察】A氏は仕事の継続や子が若いことを理由に腎移植を希望したが、離職を契機に生活背景の変化後、思い描いていた姿と現状が乖離し精神的な苦痛を認めていた。それが健康行動へ影響を与えた可能性があった。そこで、生活背景が変化しても移植腎が長期生着できるための支援が必要であると思われた。臨床倫理の4分割表で具体的な支援を検討したところ、家族やキーパーソンへの退院指導や外来指導、非来院時の安否確認、多職種と協働した指導や相談支援、ADL維持向上支援を行っていくことが重要であると考えた。以上を踏まえ、今後さらなる支援体制の整備、再構築し、患者のサポートを強化していく方針である。

  • 福田 将一, 高橋 一広, 金子 修三, 臼井 丈一, 小関 美華, 小田 竜也, 山縣 邦弘
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 375_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】夫婦間生体腎移植の実施数は全国的に増加傾向にあり、当院でも生体腎移植の約4割を占める。手術に伴う生活環境などの変化が予測される症例も経験することが多くなっており、当人以外の治療参加も求められる。今回、ドナー・レシピエント夫婦がほかの家族に相談なく移植を受けようとし、家族と医療者間の調整を必要とした症例を経験したので報告する。学会発表にあたり、患者本人から同意を得た。【症例】A氏、60歳代、男性、糖尿病性腎症により生体腎移植を希望した。ドナーは妻であり、通院はドナー・レシピエント夫婦のみであった。術前検査を進め手術入院を控えていたが、同居する30代長女からの連絡で妻以外の家族には相談せず話を進めていたことがわかった。家族は患者の病気や自己管理能力に不安を抱いていたが、患者から説明を受けていないということで、移植に対して反対の意見を持たれていた。反対の理由や疑問点・患者への思いを確認し、主治医との面談を調整した。主治医より患者夫婦に家族を加えて説明が行われ、移植手術を行うことに同意された。【考察】家族は患者を心配する気持ちを抱いていたが、家族へ相談なく進めていたため治療方針の確認やその後のフォローアップなど、理解する機会を得たかったのではないかと考える。【まとめ】患者・家族の関係性を理解し、コンフリクトが生じていないか評価する必要がある。

  • 阿部 育子, 習田 明裕
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 376_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】臓器移植医療においてレシピエント移植コーディネーター(以下、RTC)が遭遇する倫理的場面での苦悩の実態を明らかにする。【方法】本研究に同意が得られた89施設に勤務しているRTC(看護職)を対象に、質問紙調査を実施した。【倫理的配慮】所属施設の研究倫理審査会の承認を得て実施した(承認番号:19021)。研究協力は自由意思に基づくものとし、質問紙の回答をもって同意を得た。【結果】84名(回収率47.5%)から回答が得られた。認定資格所有は64名(76.2%)で、そのうち兼任28名(43.8%)、専任15名(23.4%)、専従19名(29.7%)であった。最も多くRTCが遭遇した倫理的場面は、『レシピエントの意思決定(86.9%)』『RTCと患者家族の情報の隔たり(85.7%)』『倫理的感受性の向上を意識(84.7%)』『移植後の患者の自己管理(86.9%)』であった。【考察】認定RTCのうち兼任者である43.8%が、認定資格の更新が危ぶまれる状況下で業務を行っており、組織内でのRTCの存在価値を発信していく必要性が迫られている。 また、臓器移植医療におけるRTCの苦悩は、移植の意思決定や術後の自己管理に関する問題への関わりに依拠する可能性が高く、レシピエントやドナー・家族が移植決定時に遭遇する様々な葛藤や、移植後に起こりうる問題に立ち向かうためのサポートの必要性が示唆された。 

  • 山本 小奈実, 山勢 博彰, 田戸 朝美, 佐伯 京子
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 376_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    <目的>臓器移植コーディネーターの家族ケア実践と課題を明らかにする <研究方法>5年以上の経験がある5名の臓器移植コーディネーターに、家族ケアの実践と課題をフォーカスグループインタビューした。研究代表者の所属する倫理委員会の承認を得て、2019年3月~6月に実施した。結果「臓器提供の説明」では、家族構成・パワーバランス・患者・家族の思いを確認し、心理状態のアセスメントなどの実践があった。「臓器提供の意思確認」では、個々の表情・家族の言動などを確認し、話し合いの過程を確認するなどの実践があった。「臓器提供の承諾」では、承諾書に同意している最中に泣き出す家族・手が震えて書けない家族には、声をかけ落ち着くまで寄り添うなどの実践があった。「法的脳死判定」、「臓器摘出までの対応」では、実施されている検査・処置の説明・面会時間の調整などの実践があった。「退院後の対応」では、家族の生活状況、生前の患者の話を傾聴するなどの実践があった。課題は、複雑な家族関係への対応、医療者間との情報共有などであった。考察移植コーディネーターは、家族の状況を観察しアセスメントしながら、家族に寄り添い臓器提供の検討から意思決定、臓器提供後までを支えていることがわかった。また、課題に対しては、臓器移植コーディネーターと医療者の双方がコミュニケーションを図り連携を整えていく必要があると考える。

  • 西島 加奈子, 谷口 恵子, 下山 佳奈子, 守屋 孝子, 中村 祥英, 森 典子, 石川 牧子
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 376_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】 当院では地元演奏家のボランティアによるコンサートを定期開催している。今回、院内移植コーディネーターの活動として、臓器提供に関心を持ってもらうことを目的に、院内コンサートを活用し啓発活動を行ったので報告する。 【方法】地元を中心に活動しているピアノ弾き語りユニットの小学校教師2人に、歌とピアノ演奏を依頼した。患者・家族・職員・一般市民に、コンサート情報をポスター掲示・SNS・口伝えで告知した。「愛・絆・繋ぐ」をイメージできる曲の選曲を演者に依頼しコンセプトの共有を行った。演奏の合間に、院内移植コーディネーターがドナー家族の手記や意思表示カードの紹介など、臓器提供の情報を発信した。 【結果】定期的な院内コンサートは30~80人の集客であるが、今回は約90名が集まった。患者・家族だけでなく、演者の生徒や保護者など一般市民も多かった。終了後は、意思表示カードを持ち帰る姿や、臓器提供について「真剣に考えなくてはいけないことだと思った」との言葉が聞かれた。 【まとめと展望】病院開催のため命について考えやすい場所でもあり、来場者に「自分や家族が臓器提供に関わる可能性があることを知る機会」を提供でき、臓器提供啓発の手ごたえを感じた。しかし、今回は成果指標は明確ではないため、今後は評価の可視化を踏まえた企画に努め、より効果的な啓発活動を目指していく。

  • 中田 美和, 中田 美智代, 島 佳子, 高田 留美, 村中 弘志
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 377_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

     A病院では約 10 年前から院内のスタッフを対象とし、講演会や研修会を行なっている。 研修前後で 臓器提供に対する意識の変化や理解度を明らかにしたいと考え、外部講師を迎え 「 バッドニュースの伝え方 」 という研修効果をみた。結果解析方法: 独自に作成したアンケートを用い、 4 段階の回答を求め点数化した。 結果・考察:配布数 98 、回収数 84 (回収率 85.7 %)、有効回答数 74 (有効回答率 88.1 %)。 実績のある医師が講演で具体的な事例を通して、医療者が行った家族への声のかけ方とタイミング、意思表示の確認方法、医療者が行った行動に対する家族の反応や考え、事例の振り返りを語ることで受講者の抱えている不安を払拭出来たと考える。講演医師の成功体験を聴くことで受講者の中に代 理体験による自己効力を高めたと考察する。この効果により「 臓器提供の説明のタイミングが判断でき るか」、「 ポテンシャルドナーの判断ができるか 」、「 家族に臓器提供の確認をすることにより家族との関係が悪くなると思うか 」の問いで出来る方向へ有意に回答が得られたと考える。 今後も院内移植コーディネーターが研修企画し、重ねてシミュレーション研修を取り入れることで職員の自己効力が高めるよう支援していきたい。

  • 中山 久実
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 377_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【研究の背景】日本では1997年に「臓器の移植に関する法律」が施行され、2010年に臓器移植法の一部が改正された。脳死下臓器提供は増加しているが、手術室看護師長のマネジメントに関する経験が蓄積されていない。【目的】現状の脳死下臓器摘出術における手術室看護師長のマネジメントを明らかにする。【方法】2013年以降の脳死下臓器提供において手術室看護師長として関わった経験を持つ看護師長を便宜的抽出法で抽出し、6名に研究参加の同意を得て半構造化インタビューを行った。【結果】分析から抽出されたカテゴリーは8個であった。脳死下臓器摘出術における手術室看護師長のマネジメントは《脳死下臓器提供の手術室の準備》に関わらず《情報の収集と管理》を行い《摘出術担当看護師の精神的サポート》を軸に《動機づけにもとづいた摘出術担当看護師の人選》により《ドナーと家族の思いにもとづいた臓器提供》につなげていた。さらに《看護部のサポート》を得る働きかけの重要性と《病院全体の取り組み》の中で《支援が必要な病院スタッフ》を認識していた。【考察】手術室看護師長の語りから脳死下臓器提供における手術室看護師長のマネジメント・フローチャートの試案を作成した。【結論】脳死下臓器提供における手術室看護師長のマネジメント・フローチャートの試案の活用により、脳死下臓器提供未経験の施設で脳死下臓器提供を円滑に行うことができる可能性がある。

  • 山田 隆子, 高木 章乃夫, 八木 孝仁, 鶴園 真理, 有森 千聖, 岡田 裕之
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 377_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】ALDで生体肝移植を受け断酒継続している患者に対し断酒継続へのプロセスを明らかにする。【方法】1.対象者:ALDで生体肝移植を受け,移植後6か月の断酒継続が確認できた患者。2.研究方法:質的記述的研究。3.データ収集方法:研究者から研究について説明し同意書記名にて承諾を得た。プライバシーを保持し半構成的面接をし,録音し逐語録にした。4.分析方法:逐語録から断酒への思いに関する記述,背景や価値・信念と思われる個所を抽出し概念化した。構成概念を共同研究者で確認し,真実性の確保に努めた。5.倫理的配慮:岡山大学医療系部局研究倫理審査委員会で承認を得た(研1803-037)。【結果】対象者は3名,断酒継続期間は6~10年。断酒継続のプロセスの構成概念は6つであった。[理由をつけて飲酒をする]ことで肝不全に至るが,周囲の説得により[周囲の自分に対する思いに応えようと移植を決意する]ことで移植を受けた。移植後に決意が揺らぎ,[飲みたい気持ちと我慢しなければと思う気持ちを天秤にかける]ことをしながら,[飲まないことに価値を見出す]という価値の転換や,不慮の飲酒体験で[飲めない体になっていることを体感する]ことで認識変容を行い,行動化にむけ[飲まない環境を自分で作る]ことで断酒継続ができた。【考察】医療者は患者が認識を変容する機会を設けることが,断酒にむけた支援となりうることが示唆された。

  • 後藤 丈博, 土田 千尋, 鈴木 麗美, 宇津木 努, 佐藤 洋子, 西田 隼人, 山岸 敦史, 福原 宏樹, 土谷 順彦
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 378_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    2019年5月より泌尿器科病棟と腎臓内科病棟との混合病棟となり、慢性腎臓病療養指導看護師(以下DLN)とレシピエント移植コーディネーター(以下RTC)が同じ病棟に在籍することとなった。腎臓内科・腎代替療法選択外来にて腎代替療法(以下RRT)の意思決定支援には腎臓内科医、DLNが関わり、腎移植希望時は腎臓内科医より移植医へ紹介し、移植医から腎移植の説明を行っていた。混合病棟となったことでDLNとRTCが情報を共有し、腎移植に興味を示した患者を移植医へと紹介する前に腎代替療法選択外来でのRTC介入が可能となった。RTC介入後、生体腎移植に結びついた一症例について、腎代替療法選択外来にRTCが介入してからの経過を含め報告する。

  • 茂呂 遥, 福田 将一, 澤田 幸子, 高橋 一広
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 378_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【はじめに】生体腎移植ドナーにとって腎臓を提供することは自身の「命」の一部を提供することと同義であり、レシピエントは受け取った腎臓を大切する必要がある。我々は、術中動画を使用した「振り返り」によりレシピエントの術後の提供腎、生活習慣に対する意識に変化が起こるかどうかを検討した。【方法】2019年10月1日~2020年2月28日に生体腎移植を受けた患者3組を対象。術後約1か月後、ドナー、レシピエント、家族に、1ドナーから腎臓を取り出し還流液による脱血操作、2レシピエント手術室に移動しバックテーブルでの処置、3レシピエントの体内で血管吻合、再灌流、尿生成、4尿管吻合の場面を供覧し「振り返り」を実施。レシピエントに対し術後外来で日頃の取り組みや移植後のドナーに対する「思い」を聞いた。【結果】「振り返り」により “ドナーに対する結び対の強さを再認識した”、”移植を受けることのできた有難さを感じた”、”自分の腎臓が大切に移植されたのが分かった”との感想があった。レシピエントの、血圧、血糖、体重管理も意欲的で、免疫抑制剤に対するコンプライアンスも良好であった。【結論】「振り返り」により、レシピエントに「ドナーあってこそ移植を受けられた」という感謝の気持ち、提供を受けた腎臓を大切する必要性を改めて感じてもらい、ドナーにとっても腎臓を提供してよかったと感じさせる効果があったことが推測された。

  • 足立 亜由美, 加藤 千鶴, 奥山 正仁, 長谷川 総子, 安田 多美子, 小林 清香, 岩下 山連, 黒澤 明, 小川 智也, 長谷川 元
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 378_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

     生体腎移植のレシピエントは、事前に全身状態をチェックされるが、適切な判断力を持って十分理解していることも非常に重要であるといわれている。腎移植に耐えられると判断したものの、術後に生じる精神状態によって大きな支援が必要となった症例を経験した。 患者は、適応障害、器質性精神障害の既往がある20歳代女性、透析導入直後に生体腎移植を希望した。患者は「血液透析は絶対にやりたくない」と発言し、家族も腎移植に期待する気持ちが強く、移植さえ行えば健康で安定した日常が手に入ると思っていた。  看護師は、患者が末期腎不全を受け入れていないことを問題視し、本人と家族、ドナー候補の母に対する面接を術前より繰り返し実施し、その情報をチームで共有した。家族へはドナーとしての役割以外でも、末期腎不全を支える家族の役割を明確にすることで、患者を支えることができるということを説明した。 術後数年は、精神状態が安定し経過していたが、その後不安定になり、幻聴・幻覚、家族に対する不信感が出現するようになった。看護師は、患者が何度も電話で体の不調を訴えるのを、その都度傾聴しながら対応に苦慮した。 腎移植後の腎機能が安定していても、様々な精神症状に対して支援する必要がある。レシピエントコーディネーターが不在な中、術前から現在に至るまで、血液浄化センター看護師の取り組みを振り返り、今後に繋げる。

  • 黒澤 明, 濱田 隆行, 関口 桃子, 原 宏明, 岩下 山連, 清水 泰輔, 小川 智也, 長谷川 元
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 379_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植後のステロイド離脱症例の治療成績を検討した。【方法】2000年1月から2018年12月までに当院で施行した腎移植症例26例を対象とした。BXM、CNI、MMF、PSLの4剤で導入し、腎移植9-12ヶ月後でステロイド離脱するプロトコルとした。ステロイド離脱群(NSG)とステロイド継続群(SG)の2群に分け、患者背景、生着率、合併症について解析した。【結果】NSGは18例(69.3%)、SGは8例(30.7%)であった。ステロイド継続理由は、再発高リスク腎炎(MPGN、FSGS)3例、IgA腎症再発1例、気管支喘息1例、ステロイド離脱症候群1例、DSA陽性1例、急性拒絶反応1例であった。NSGの移植時年齢52.0±11.7歳、女性6例、献腎13例であった。SGは移植時年齢50.6±13.9歳、女性3例、献腎6例であった。ステロイド離脱症例は5年生着率100%で、腎移植後発症糖尿病は1例のみであった。【考察】ステロイド継続を要する割合は既存の報告と同様であった。免疫学的リスクが低い献腎移植が多く、ステロイド離脱症例の生着率は良好であった。合併症では腎移植後発症糖尿病が少ない傾向にあった。【結語】ステロイド離脱プロトコルが適応できる症例を厳選することで良好な生着が得られた。

  • 今田 遼介, 金子 周平, 山田 真理子, 早瀬 奈緒美, 渡辺 葉子
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 379_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:腎移植後の維持期成人患者を対象にEVRを使用実態下で投与したときの安全性及び有効性の検討のために特定使用成績調査を実施した方法:観察期間は本剤開始日より2年間とし,EDCシステムを用いて調査票を回収した。調査期間は2014 年9 月1 日より2018 年8 月31 日で登録期間は1年間であった結果:登録患者数は263名, 男性が61.98%, 平均(±SD)年齢は51.5(±13.1)歳であり, 本剤開始の主な理由は腎機能の悪化(31.56%), 悪性腫瘍(13.69%), 動脈硬化(11.03%)であった。観察期間を通して拒絶反応を認めなかった有効症例率は93.16%,移植腎の生着率は95.82%,生存率は99.24%であった。平均(±SD)eGFR値は, 開始時43.7(±16.43)mL/分/1.73m2, 投与後2年目では43.6(±16.82)mL/分/1.73m2であった。また, 併用したシクロスポリンとタクロリムスの1日の平均投与量は, それぞれ投与開始後2年目で64%と79%に減少した。重篤な有害事象の発現率は15.97%で, 副作用発現率は49.43%であった結論:併用したCNIの平均投与量は本剤開始時より減少しており,腎機能(eGFR)は開始時から投与後2年目まで維持されていた。安全性の新たな問題は認められなかった

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