移植
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55 巻, Supplement 号
選択された号の論文の348件中51~100を表示しています
  • 福田 晃也, 栁 佑典, 清水 誠一, 内田 孟, 阪本 靖介, 中村 和昭, 梅澤 明弘, 堀川 玲子, 笠原 群生
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 226_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【はじめに】肝細胞移植は,新生児期に発症する尿素サイクル異常症に対する治療として期待されているが,安定した品質の肝細胞の供給が課題であった.今回,新たなセルソースとしてヒトES細胞由来の肝細胞(HAES:再生医療等製品)を用いた肝細胞移植(医師主導治験)を行ったので報告する.【臨床経過】日齢2 多呼吸・筋緊張亢進・痙攣などの症状が出現し,著明な高アンモニア血症(2,026 µg/dl)を認めたため,持続的血液ろ過透析,薬物療法などの集中治療を開始.遺伝子検査にてアルギニノコハク酸合成酵素欠損症(シトルリン血症Ⅰ型)の確定診断を得た.日齢6 臍帯静脈より門脈左枝に留置したカテーテルよりHAES(5.0×107個/kg)懸濁液を2回(2日間)に分割して,門脈圧・門脈血流などをモニタリングしながら緩徐に注入した.肝細胞移植の手技による合併症・有害事象なく投与を完了した.肝細胞移植後,蛋白摂取量は1.92 g/kg/dayまで増量し,75回測定した平均アンモニア値は54.1±36.1 µg/dl(mean±SD)であった.胃腸炎にて下痢を呈したが,透析を要する高アンモニア血症なく経過した.生後5か月(7.6 kg)で,生体肝移植を施行した.移植後4か月経過した現在,外来通院中である.【考案】世界で初めてヒトES細胞を用い,肝臓移植までの橋渡しの治療"としての肝細胞移植を安全に施行しえた."

  • 武石 一樹, 吉住 朋晴, 伊勢田 憲史, 冨山 貴央, 森永 哲成, 大津 甫, 吉屋 匠平, 戸島 剛男, 米村 祐輔, 伊藤 心二, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 227_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】Scaffoldを用いてヒト完全iPS由来人工肝臓(iPS-Liv)を作成すること。【方法】1)Scaffold作成:ラット肝を脱細胞化する。2)ヒトiPS由来細胞の作成:iPS細胞からiPS由来肝細胞(iPS-Heps)、iPS由来胆管細胞(iPS-Chol)、iPS由来血管内皮細胞(iPS-VEC)を作成。3)iPS-Liv作成: ScaffoldにiPS由来細胞を入れ、iPS-Livを作成。4)iPS-Livの移植:免疫抑制ラットに移植。【結果】1) Scaffoldは胆管、血管の構造を有し、コラーゲンの含有量は脱細胞化前と同じであったが、DNAの含有率は0.1%まで減少。2)作成したiPS-Heps、iPS-Chol、iPS-VECはそれぞれの細胞マーカーを発現。3)iPS-CholはiPS-Livの65%を、iPS-VECは86%の上皮を覆っていた。iPS-Livの尿素産生量は、2D培養よりも有意に増加した。4)門脈や肝静脈吻合はスムーズであり、再還流後のリークは認めなかった。摘出した標本はヒト特異的アルブミン、HNF4α、CD31、CK7の発現を認め、ラット血中にてヒトアルブミンを認めた。【結論】脱細胞化したScaffoldを用いて、移植可能なiPS-Livを作成した。Scaffoldは人工肝臓を作成する上で有効であり、今後、さらなる研究が期待される。

  • 池本 哲也, 徳田 和憲, 齋藤 裕, 宮崎 克己, 山田 眞一郎, 居村 暁, 森根 裕二, 島田 光生
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 227_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】adipose derived stem cell:ADSCを用いたinsulin producing cell: IPC分化誘導の成果と今後の最終的な患者治療への展開につき報告する。【方法】手術時破棄される皮下脂肪からADSCを分離し、確立された我々のprotocolでIPCを作成、in vitro/ in vivo(2.0x106個移植)で解析。【結果】Stimulation indexは8.5で、電顕で膵β細胞の分泌顆粒様構造を証明。単回移植で糖尿マウス血糖は全例正常域へ降下(205日維持)。移植部位にはInsulin/HLA class I/C-pepに強染色の構造を認めた。【結語】局所麻酔下採取の1gの皮下脂肪からIPCを分化誘導、腹腔鏡下に腸間膜内へ自家移植する戦略を発案。移植医発の当戦略はPMDAとの安全性に関する対面助言を終えており、医師主導治験に繋げて行く。

  • 山本 貴之, 岩瀬 勇人, 原 秀孝, David Cooper
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 228_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    当グループではブターヒト間の障壁となる主要3抗原をknock-outしたTriple-knockout(TKO)に加え、補体、凝固抑制した9 gene pigが使用できるようになり、再生医療領域と比較すると臨床応用に極めて近い状況にある。2018年までにGTKOブタ腎臓を10匹のヒヒに移植するモデルを用いてFDA認可レジメン 5例と、anti-CD40 mAbレジメン5例の2群間で比較試験を行い、anti-CD40mAb レジメン群の生存中央値が186日とFDA approved regimenの14日と比較して有意に長く、異種移植において必須であることを示した 。また19例の移植待機患者血清とTKO pig PBMCとのCDCでは、10例(52.6%)において陰性症例を認めた。9 gene pigからヒヒへの腎移植の最新結果も含め、臨床試験への課題、再生医療との位置づけについても論じる。

  • 高 陽淑
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 230_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】日本組織適合性学会(JSHI)では、タイピング・抗体検査の2部門でQuality Control Workshop(QCWS)を年一回開催しており、国内の主な輸血・移植関連施設が参加している。 中でも、 臓器移植分野では、抗HLA抗体検査が全ての臓器移植後において保険収載となった2018年以降増加し、今年度は全体の68.2%(60/88)を占めていた。 QCWSの目的は自施設の精度管理と検査水準の維持向上であり、日常検査と同様の検査方法で得た結果を提出することから、その解析結果は本邦のHLA検査の現状を表している。【現状】DNAタイピング検査はLuminexで測定するSSO法を採用する施設が多い中、高解像度の結果を必要としない臓器移植では、SSP法で検査をする施設の割合が高い。 一方、抗体検査ではLuminexに加えて、フローサイトメーター(FCM)を用いる施設が多いが、これはクロスマッチをFCMで実施する背景が影響しているのであろう。 如何なる方法であっても、治療方針の一助となる検査結果は、より正確に臨床側に伝えられなければならない。本シンポジウムでは、現状の検査法の紹介と、検査手技や判断の正確さがどのように検査結果に影響するかを、実際のQCWS解析データを引用して解説したい。

  • 宮本 京子
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 231_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

     移植においてHLA関連検査は重要であるが、臨床医と検査を行っている現場ではこれらの検査に対する認識の乖離を感じる場面がある。今回、それらを踏まえながら抗HLA抗体や関連検査の基礎的な事項や課題について解説する。 主な課題としては、次のようなものがある。抗HLA抗体検査は、遺伝子型によるDSA(ドナー特異抗体)検索が一般的となっているため、タイピング検査は遺伝子型での報告が必要となってきているが、HLA-CやHLA-DP,HLA-DQの遺伝子型での検査は臓器移植ネットワークを含めてなかなか広まっていない。抗HLA抗体は、標準物質がないためnMFI値を絶対値として扱う事はできない。また、試薬メーカーやキットおよび施設や検査者により差が生じる危険性がある事は日本組織適合性学会のQCWSでの結果から明らかになっている。しかし、臨床では未だにnMFI値を絶対値と誤解している面がある。さらに移植前の抗HLA抗体検査はタイミングが問題となる事がある。 臓器移植の抗体拒絶に関しては、従来の血清型から遺伝子型、エピトープ、エピレット解析も含めた結果解釈など日々進歩している。また、抗HLA抗体以外の拒絶の原因も解明されつつある。これらについては、次演者が詳細を報告予定である。移植とHLAとの関連もまだまだ研究途上である事を常に念頭に置いて、臨床側と検査の現場が協力して共通認識を持つ事が重要である。

  • 古澤 美由紀, 石田 英樹
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 231_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    臓器移植では、DSA(ドナー特異的抗体)の存在を移植前後に測定することの意義は十分に議論され、その重要性は様々な論文で報告されている。国内でも、術前術後の抗体検査を、フローサイトメーターやルミネックスなどの高性能機器を用いて検査を行う施設は増加傾向にある。しかしながら、抗体検査は日々、進化しているものの、現在の抗体検出法は多様であり、検出感度や方法論によって違いがあるなど、様々な要素が複雑に絡み合い判定基準は、非常に難しい。現在、しっかりとしたガイドラインがなく、判定基準や測定方法は施設によって違いがあり、そのデータの解釈や解析に関して議論がされているのが現状である。本シンポジウムでは、HLA抗体検査から、更に詳細な解析が進みつつあるエピトープ解析やIgGサブクラス、C3d抗体、C1q抗体とnon-HLA抗体などの最近のトピックスを中心に、いくつかの症例を用いながら、重要性について議論するとともに、新たな発展への期待について述べ、これまでに得られた知見を紹介したい。

  • 岡村 浩史, 中前 博久, 進藤 岳郎, 大谷 克城, 日高 義彦, 大塚 泰史, 南野 智, 中嶋 康博, 康 秀男, 廣瀬 朝生, 中前 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 232_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    <背景>同種造血細胞移植後の移植関連血栓性微小血管症(TA-TMA)発症に補体の関与が示唆されているがその動態の詳細は不明である。我々はTA-TMAにおける補体動態を網羅的に検討した。<方法>2012年から2016年の間、当院で同種造血細胞移植を施行した患者の移植前、day7、28、60の血漿を用いて補体蛋白検査(sC5b-9、Ba、CFH、CFH-IgG、CFI、C5a、 C3、C4、CH50)を行い、TA-TMA群と対照群の経時的推移を比較した。傾向スコアを用いてマッチングした非TA-TMA症例を対照群とした。<結果>174例の移植例からTA-TMA15例、非TA-TMA15例を解析対象とした。最も移植後早期に有意差を示した補体蛋白は移植後day7のBaであり、TA-TMA群で異常高値を示した(p=0.02)。<結論>移植後早期のBa上昇は、TA-TMAの発症予測マーカーとなり得る。

  • 藤山 信弘, 佐藤 滋, 田﨑 正行, 蔦原 宏一, 松本 明彦, 上條 裕司, 原田 浩, 豊田 麻理子, 岩見 大基, 乾 政志, 白川 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 233_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    腎移植後超早期・早期発症の血栓性微小血管症(TMA)における患者背景及び補体関連因子の解析結果を報告する。術後1週以内のTMA発症群の全国11施設19症例において、臨床データ収集、血液検査及びNGS解析を行った。血液検査はnon TMA群9例と比較した。患者背景は、献腎1例、生体腎18例(グラフト喪失5例)、17例がABO不適合移植で、16例はPEやDFPPによるコンディショニング不十分症例と思われた。グラフト喪失症例はすべて12時間以内のTMA発症例であった。遺伝子解析からCFHR3/1欠失、CFHR1/4欠失、CFHR1 D35Vfs(終始コドンを伴う欠失)などの補体制御系の欠損をもつ症例が見られた。腎移植後TMA発症直後にグラフト喪失に至ったのはCFHR1/4欠失例のみであった。その他CFH、MCP、C3、CFIなどに疾患関連候補としてマイナー頻度変異が見つかった。血液分析では補体代替経路CFB分解産物Ba値や補体制御因子CFI値においてTMA群とnonTMA群で差が見られた。CFH-IgG高値2例やC4高値4例がTMA症例にのみ見られ、CFH-IgG高値例ではCFH SCR18の変異を持つ症例があった。【結語】CFHR欠損が腎移植後早期TMAの危険因子の1つと考えられ、Baなどが血液マーカーの候補として考えられたが、重症度やグラフト喪失との関連性は更なる評価が必要である。

  • 横田 裕行
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 235_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    いわゆる五類型施設で脳神経集中治療を担当する救急医、脳外科医、麻酔科医、集中治療医、神経内科医、及び小児科医は脳死下臓器提供数を増加させる立場ではない。しかし、治療の過程で脳死となった患者の事前意思やその家族の意思が脳死下臓器提供を希望している場合は、その想いを実現することが医療者としての責務と考える。一方、脳死下臓器提供時には様々な課題が存在し、脳死下臓器提供数が海外と比較すると少ないの原因の一端であると言われている。これらの課題を解決するために臓器提供側になる関連学会、臓器移植関連学会協議会、および厚労科研研究班が解決に向けた方策や、手順の見直し、脳死判定時の支援体制等を提案し、多くの成果物も公表してきた。また、厚労科研研究班では脳死患者だけでなく急性期疾患の重症患者とその家族の心理的サポートを行い、時に患者家族の意思決定支援も行うことができる入院時重症患者対応メディエーター(仮称)の重要性を考え、テキスト作成、人材育成を目的としたセミナーも開催している。さらに、脳死下臓器提供した場合の医師に最も大きい負担とされる検証フォーマット作成の修正版を提案した。五類型施設の視点から脳死下臓器提供時の課題解決に向けての取り組みや体制整備等により、脳死下臓器提供がより日常の医療として定着することが期待されている。

  • 田﨑 修
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 237_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    現在、厚生労働科学研究「5類型施設における効率的な臓器・組織の提供体制構築に資する研究」(研究代表者 嶋津岳士)において、我々ドナー家族サポート体制班は、指針作成を進めている。臓器・組織の提供体制構築において、ドナー家族のサポート体制は極めて重要な位置を占める。しかし、救急診療科や脳外科等、臓器提供側の医療・ケアチームにとっては、最初から「ドナー家族」が存在するわけではない。あくまで救命を目的に治療を行う患者の家族がいて、必要に応じて患者家族の支援を行い、結果的に「ドナー家族」に対する支援につながることになる。従って、本指針における家族サポートの重要な点は、臓器提供ありきの家族サポートではないこと、そして治療の開始時点から患者および家族に寄り添い、患者にとって最善の治療・ケアを目指すことにある。以上より、本指針のタイトルを「ドナー家族」とはせずに「重症患者の家族サポートに関する指針」とした。「重症患者」とは、来院時もしくはその後に重篤な意識障害を呈する患者を想定している。また、対応時期のめやすとなるよう、項目を、1.家族サポートのための準備、2.重症患者の来院~入院、3.入院後~約1週間、4.入院後約1週間以降に分けて作成した。加えて、5.臓器提供に同意した後の家族のサポート体制、および6. スタッフのサポート体制についても言及した。現時点での状況と今後の進め方について紹介したい。

  • 澁谷 祐一, 室川 剛廣, 尾崎 和秀, 小野 憲昭, 須井 健太, 堀見 忠司
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 238_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【はじめに】既存抗体陽性腎移植は脱感作療法を施行しなければ抗体関連型拒絶(以下AMR)を高率に発生し早期移植腎廃絶のリスクが高いといわれている.2013年11月から術前にflow PRA、シングル抗原同定検査を全例に行い脱感作療法の適応を決定している。今回その結果を検討したので報告する。【対象】2013年11月から2019年12月までに当院で行った腎移植は78例のうちpreformed DSAを認めたものは20例であった.そのうちの5例はflow PRAで陰性と判定されていた.【結果】男性5例,女性15例,年齢平均52歳(31~76歳)でドナーは夫6,妻1,親9,その他4であった.血液型不適合移植は9例であった.感作歴として輸血歴あり8例,妊娠歴あり11例,移植歴あり2例,輸血歴・妊娠歴・移植歴すべてなしは7例.脱感作療法として全例リツキシマブ(平均投与量673㎎)投与し,血漿交換を17例に行った.AMRを発症した症例は2例(10%)あり,ステロイドパルス療法,血漿交換,リツキシマブ,グスペリムス塩酸塩により軽快した.現在全例生存生着中である.直近のeGFRは平均57.3 ml/min/1.73m2であった.【まとめ】preformed DSA陽性腎移植は脱感作療法を行うことで良好な成績であった.

  • 古澤 美由紀, 石田 英樹, 海上 耕平, 尾本 和也, 清水 朋一, 田邉 一成
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 238_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【はじめに】HLA抗体は、術前に検出されるDSAも重要であるが、移植後に検出されるdnDSAも重要とされ、腎機能を悪化させる独立危険因子であることは、広く知られている。近年では、HLA Matchmakerを使用して、HLA ClassⅡがdnDSAを発症する長期的なリスクとも報告されている。今回われわれは、エピトープミスマッチ(EM)を算出し、移植予後との関連について解析を行った。【対象および方法】 当科にて腎臓移植を施行した309例を対象とし、HLA Matchmakerを用いて、エピトープミスマッチスコア(EpMM)Ab Verifiedを算出し、EpMM:0-2(1群)、3-5(2群)、6-8(3群)、9-11(4群)、12-14(5群)、15以上(6群)に分け、CAMR発症率、dnDSA発生率の解析を行った。【結果】 各群の分布は、1群:13%(39/309)、2群:24%(75/309)、3群:31%(97/309)、4群 :16%(48/309)、5群:12%(36/309)、6群:5%(14/309)であった。CAMR発症率、dnDSA発生率ともに、EpMMが高くなるにつれ、CAMR発症率、dnDSA発生率は、高い確率で認められていた。 【結語】EpMMは、腎移植後のCAMRおよびdnDSAの発生を予測する因子になり、有益な検査法になる可能性が示唆された。

  • 山根 宏昭, 田中 友加, 井手 健太郎, 田原 裕之, 大平 真裕, 谷峰 直樹, 今岡 祐輝, 秋本 修志, 佐藤 幸毅, 井手 隆太, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 239_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【はじめに】移植後に発現するde novo DSA(dnDSA)は、拒絶反応やグラフト予後に影響する因子として知られているが、dnDSAの出現を予見する手段はない。本研究では、腎移植患者における、Eplet MMと移植成績、予後、抗ドナー応答を解析した。【方法】生体間初回腎移植を施行した96例を対象とした。Eplet MMはHLA matchmakerを用いて解析した。術前後の抗ドナーT細胞応答応答はCFSE-MLRで評価し、Mitotic index (MI), precursor frequency (PF)を算出した。【結果】術後拒絶反応は6例に認めた。グラフトロスは4例であった。dnDSAは15例で認められた。拒絶反応・グラフトロスはEplet MMに関連を認めなかった。移植前後の抗ドナー応答とEplet MMの比較では、移植前のCD8陽性T細胞応答とClass IとClass II Eplet MMに統計学的な関連を認めた。移植後長期(移植後3年)の評価では、CD4陽性T細胞応答とDRB1, DQB1 Eplet MMに統計学的な関連を認めた。dnDSAの未発現群と発現群の2群に分け比較したところ、HLA C, DQB1, Class IIに統計学的な関連を認めた。【結語】術前に知り得るEplet MMは抗ドナー応答とdnDSA発現に関連する可能性が考えられた。

  • 谷澤 雅彦
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 239_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    米国では肝腎同時移植(SLKT)が年々増加し全肝移植の約10%を占める。本邦では圧倒的な臓器提供不足により実施数は少ないが、同一生体ドナーからの二期的な部分肝移植と腎移植は複数例報告されている。肝移植領域において、ドナー特異的抗体(DSA)の存在は、移植肝による抗体の吸着作用(protective phenomenon)によってその注意度は低く、米国では術前脱感作療法や術後DSAモニタリングは多くの施設で施行しない場合が多い。本邦では生体肝移植が占める割合が多く、術前脱感作療法を行うケースが多いが、未だにDSAの影響は肝移植領域においては不明な点が多い。SLKTにおいてはprotective phenomenonによって移植肝のみならず移植腎もDSAから保護されるという知見が以前より報告されいた。しかし肝臓でのHLA抗体吸着の主たるものはClassⅠ抗体であることから、特に移植後(persistentもしくはde novo)のClassⅡDSAや近年注目されているC1q binding DSAの移植腎への負の影響を我々のグループ(Methodist Hospital in Memphis)が報告した。SLKTの知見であるが、肝・腎単独移植へのDSA subclassの影響も適応可能と考えられ、その研究結果を報告する。

  • 大平 真裕, 今岡 祐輝, 佐藤 幸毅, 井出 隆太, 築山 尚史, 小野 紘輔, 山根 宏昭, 谷峰 直樹, 田原 裕之, 井手 健太郎, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 240_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    背景:当教室では、Preformed DSAに対して、CDC陽性もしくはClass IのMFIが5000以上の場合は術前の脱感作療法を行っている。当教室におけるDSA症例の発症率、予後、危険因子、免疫学的特徴について解析を行った。方法:2010年~2019年の肝移植127例中、血液型不適合、再肝移植を除き、術前及び術後にLab screenを測定し、術後6ヶ月以上生存している74例を対象。DSAの定義はLabscreen:MFI1000。結果:術前DSA陽性は12例、陰性は62例。陽性12例のうち術前減感作症例は8例。DSA遷延症例は3例(減感作2例)、消失症例は9例(減感作4例)。拒絶反応や長期生存に差はない。術前DSA陰性62例中、de novo DSAは10例、累積発生率は、1年 5.8%、3年 12.8%、5年 21.5%。免疫抑制剤トラフを含めた背景因子において有意な危険因子なし。慢性拒絶反応はde novo DSA群の1例のみに発生。長期の生存率に有意差なし。De novo DSA群では術前及び術後1ヶ月のMLRで抗ドナーCD8+CD25+T細胞の反応性が亢進(p<0.05)。考察:Preformed DSA患者に対しては減感作プロトコールを導入して良好な成績。De novo DSA症例も成績は良好であるが、症例の蓄積と長期経過を観察する必要がある。

  • 戸子台 和哲, 宮城 重人, 中西 渉, 藤尾 淳, 柏舘 俊明, 佐々木 健吾, 菖野 佳浩, 太田 嶺人, 小笠原 弘之, 後藤 昌史, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 240_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】dnDSAは慢性抗体関連型拒絶の原因となり、腎臓移植を中心に移植臓器の機能廃絶の主因となっている.一方で肝臓移植においては他の臓器移植と比較し移植臓器機能への影響は軽微であることが知られている.しかし,短期成績が大きく向上した現在,肝移植においても長期間の安定したグラフト機能が求められており, dnDSAの長期的な影響が懸念されている.当施設においても2014年にDSAスクリーニングを開始し,免疫抑制薬の再開・増量による免疫抑制療法再強化を進めてきた.2018年より2回目のDSAスクリーニングを施行し、免疫抑制療法再強化がDSAに与える影響について解析を行った.【方法】当科で2013年までに小児肝移植を施行し2014年に開始したDSAスクリーニングを施行し得た72例を対象とした。さらに2回目のDSA評価まで施行し得た67例を対象として免疫抑制療法再強化がDSAに与える影響を評価した. 【結果】初回から2回目のDSA評価までの期間は中央値50ヶ月であった.67例中43例が初回評価でDSA陽性であり,免疫抑制療法再強化症例では有意なMFIの低下およびDSA陰性化が認められた(68% vs. 10%, p=0.005).【結語】当施設にて2014年より開始したDSAスクリーニングと免疫抑制療法再強化の結果を提示し,肝移植におけるdnDSAの意義と対応策について議論したい.

  • 金森 洋樹, 山田 洋平, 梅山 知成, 工藤 裕実, 加藤 源俊, 長谷川 康, 篠田 昌宏, 松原 健太郎, 尾原 秀明, 入江 理恵, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 241_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    <背景>肝移植後のDSAは肝線維化及び慢性拒絶反応と関与しているという報告がある。当科フォロー中の肝移植後患者を対象にDSAを測定し、肝生検の病理組織学的所見との関連性を評価した。<方法>1995年〜2020年に当院で実施した肝移植レシピエント328例のうち移植時年齢18歳未満かつ移植後3年以上経過した85例(平均経過年数:12.8年)を対象とした。男性48例、女性37例、移植時平均4.3歳、原疾患は胆道閉鎖症が61例を占めた。DSAスクリーニング陽性例に対してLuminexによる抗原同定検査を行い、DQ抗原に関しては連鎖不均衡及びドナーgenotypeを解析し、C4d染色、線維化(pericellularとportal)との相関を検討した。<結果>DSAはスクリーニング検査77例中66例で陽性、現時点で抗原同定検査結果が判明している39例では、classI陽性2例、classII陽性33例(1例は両方陽性)、5例は陰性と判断した。MFI値で層別化するとMFI>2万の症例では10例中7例にC4d陽性で、DSA陰性群よりも有意に陽性率が高く、 MFI>5千におけるMETAVIR scoreも陰性例に比して有意に高い傾向にあった。<結論>小児肝移植後晩期には高率にDSAを認め、その程度と肝臓線維化、C4d陽性との関連性が示唆された。DSA及び肝生検は長期グラフト機能評価に有用である。

  • 原田 浩, 村上 卓, 辻 隆裕
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 242_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【研究目的】移植腎の長期生着のために、移植腎障害(KGI)を非侵襲的に診断しうるバイオマーカーの探索を尿中のエクソソーム・微小嚢胞(EV)中のmRNA解析により行った。【方法】全国11施設にて計127症例の腎移植後の尿検体を集めた。各尿検体からEV RNAを抽出し定量RT-PCR測定を行い、腎生検を含む病理診断結果と比較しマーカー候補遺伝子並びに複数候補による診断式の診断性能を検証した。【結果】拒絶反応の鑑別では以前に報告したANXA1の上昇は確認できなかったものの、CXCL9、CXCL10、UMODがT細胞性拒絶反応(TCMR)で上昇し、慢性抗体関連拒絶反応(cABMR)ではSPNS2の上昇が確認された。Sparse Logistic Regression(SLR)解析による複数マーカー候補からなる診断式にてcABMRと他のKGI群とAUC 0.875で鑑別できることを確認した。また、臨床上判定が困難な慢性カルシニューリン毒性に比しても、SLR解析でAUC 0.886でcABMRの鑑別が可能であった。加えて、間質線維化・尿細管萎縮や慢性腎障害重症度と相関がみられるマーカー候補POTEMを確認し、SLR解析による診断式で各々AUC 0.830、0.850で鑑別できた。【結論】尿中EV RNA解析によりKGIを非侵襲的に診断できうる可能性が示された。

  • 杉本 誠一郎, 塩谷 俊雄, 富岡 泰章, 石上 恵美, 石原 恵, 諏澤 憲, 三好 健太郎, 大谷 真二, 山本 寛斉, 岡崎 幹生, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 242_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】低侵襲に血液や体液を採取し解析を行うLiquid biopsyは、癌領域では既に臨床応用され治療方針の決定に一役買っているが、移植領域ではまだ発展途上である。当科では肺移植におけるLiquid biopsyとして、ドナー由来血中遊離DNA(dd-cf-DNA)とマイクロRNA(miRNA)を標的にした研究を行ってきたため、その成果を報告する。【方法】ドナーとレシピエントの一塩基多型を比較してdd-cf-DNAを測定し、生体肺移植後の急性拒絶反応(AR)における診断的意義を検討した。次にレシピエントのみの検体で評価できるmiRNAを測定し、脳死・生体肺移植後の移植片慢性機能不全(CLAD)における診断的意義を検討した。【結果】dd-cf-DNAは、感染群(p=0.028)や安定群(p=0.001)よりAR群で有意に増加しており、生体肺移植後ARの診断に有用であった(Sci Rep 2018)。また線維化に関与するmiRNAが、非CLAD群よりCLAD群で有意に増加しており(p=0.008)、一秒量の変化率とも相関し(p=0.014)、CLAD診断に有用であった。【結論】肺移植のLiquid biopsy として、dd-cf-DNAは生体肺移植後ARの診断に、またmiRNAはCLADの診断に有用である。今後の臨床応用を目指して症例数の集積と簡便で精度の高い方法の開発が望まれる。

  • 日下 守, 河合 昭浩, 深見 直彦, 高原 健, 竹中 政史, 市野 学, 佐々木 ひと美, 白木 良一
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 243_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    移植早期においては移植腎機能発現遅延(DGF)や拒絶反応の診断、維持期においては免疫抑制剤の至適投与を評価する新規バイオマーカー開発が期待される。近年cfDNA解析を中心とする報告が増加傾向にある。腎移植領域においてはドナー由来のcfDNA(dd-cfDNA)と、拒絶反応(ABMR)の関連が報告され(Bloom et al. 2017)、HLA typingを必要とせず、レシピエントとのSNPの相違を用いたdd-cfDNAによる解析が行われている。当科ではDGFとcfDNAの関係に着目し、血中total cfDNAを解析した。対象は心停止下献腎移植(DCD)13例、脳死下献腎移植(BD)8例、生体腎移植(LD)9例。移植直後のcfDNAは生体(LD),脳死下(BD),心停止下(DCD)の順にtotal cfDNAは上昇し(LD: 78±27, BD: 99±20, DCD: 150±23 (ng/ml), LD vs DCD: p<0.05)、移植後(POD5)低下した(LD: 45±10, BD: 51±11, DCD: 66±14 (ng/ml)。さらにDGFの有無で移植直後の両群に有意差を認めた(IF: 91±18 vs DGF: 139±22, p<0.05)。移植領域におけるLiquid biopsyの現状について、特にcfDNA解析を中心に報告する。

  • 掛屋 弘
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 244_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    医療の発展に伴い臓器・造血幹細胞移植患者数も増加しているが、術後感染症のマネジメントや感染対策が重要である。造血幹細胞移植患者では、移植前から著明な免疫不全を伴うために感染症を伴うこともあるが、臓器移植においては術前に免疫不全を有することは比較的限られる。一方、臓器移植後には様々な感染症を発症するが、移植後の時期や移植臓器により原因菌に特徴がある。移植初期(移植後4週以内)には、患者の基礎疾患や手術の合併症としての感染症を発症し、細菌や真菌がその主な原因病原体となる。ときに医療関連感染としての耐性菌も関与する。移植中期(移植後1〜6ヶ月)には免疫抑制薬による細胞性免疫不全に伴う日和見感染症が問題となる。ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルス、ニューモシスチス肺炎等の予防も重要である。移植後期(6ヶ月以後)では状態が安定し、免疫抑制薬も減量され、予防薬が中止される。一方、レシピエントの多くは院外で生活するために市中感染症の感染対策が必要となる。また、移植臓器特異的な感染症としては、肺移植ではアスペルギルス、肝移植では腸内細菌やカンジダ、腎移植ではサイトメガロウイルス、BKウイルス等による感染症が知られている。講演では臓器移植および造血幹細胞移植に伴う感染症の診断および感染対策について概説する。

  • 海上 耕平, 北島 久視子, 石田 英樹
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 245_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    腎移植における現在の免疫抑制療法はカルシニューリン阻害剤によるヘルパーTリンパ球抑制が主体であり、移植後感染症としてウイルス感染症の頻度が高い。免疫抑制に伴う症状の増悪のみならず、ウイルス感染自体が更なる免疫抑制やその他の合併症を引き起こすため、その診断及び治療は移植医療において重要である。移植後レシピエントが罹患するウイルス感染症として、ヘルペス属ウイルスを中心にBKウイルスやアデノウイルス、EBウイルス等が知られているが、特にBKウイルスおよびアデノウイルス感染は他臓器移植における感染と比較して、BKウイルス腎症や出血性膀胱炎など、移植腎泌尿器へ直接障害を与えうるという特徴があり、移植後加療には注意を要する。自験例を交えて発表を行う。

  • 上田 佳秀, 犬塚 義, 丸澤 宏之, 山敷 宣代, 上本 伸二
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 245_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】臓器・造血幹細胞移植後には、B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化が問題となる。今回、肝移植後のHBV対策の現状と問題点を明らかにするとともに、HBV既往感染者からの再活性化の病態形成に関与するHBV遺伝子配列の特徴を同定することを目的とした。【方法】(1)肝移植後HBV対策の効果と安全性を解析。(2)HBV既往感染からのHBV再活性化24例の、血清中HBV全遺伝子配列を次世代シーケンサーを用いて解析。【成績】(1)肝移植後HBV対策として、抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)と核酸アナログ製剤、さらにHBVワクチンが使用されているが、その効果とアドヒアランスに問題を認めた。 (2)血液幹細胞移植後8例とその他の16例では活性化HBVの遺伝子配列の特徴が異なっていた。血液幹細胞移植のない免疫抑制16例のS領域では、HBs抗体エスケープ変異を38%、MHC class II拘束性T細胞エピトープ変異を38%、ウイルス粒子の分泌障害に関連した変異を69%に認めた。一方、血液幹細胞移植後症例においては、HBs抗体エスケープ変異を25%、ウイルス粒子の分泌障害に関連する変異を13%に認めるのみであった。【結論】肝移植後HBV活性化に対する標準的対策法の確立が必要と考えられた。HBV再活性化は宿主の免疫抑制状態と免疫からの回避に関連するHBV遺伝子変異によって生じていた。

  • 清水 大, 大谷 真二, 富岡 泰章, 松原 慧, 塩谷 俊雄, 山本 治慎, 三好 健太郎, 岡﨑 幹生, 杉本 誠一郎, 山根 正修, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 246_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    日本の肺移植における移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は移植後死亡の約3.4%を占める。しかし、そのリスク因子や予後因子、適切な治療については不明である。我々は移植前の免疫抑制状態とCLADに着目し、当院の肺移植後PTLD症例を検討した。 2020年2月までに当院で施行された肺移植204例中、7例(3.4%)のPTLD症例(両側脳死4例、両側生体3例)が抽出された。男性5例、手術時年齢中央値44才(2~50才)。原疾患はIPF 2例、膠原病合併IP 2例、その他のIP 1例、造血幹細胞移植後のBOS 2例であった。全例、移植時点でPSL 5~30mg/日内服しており、内服期間中央値は77ヶ月(13~228ヶ月)だった。EBV非関連PTLDの1症例を除いた6例がEBV関連のDLBCLであり、その初回治療は全例Weekly Rituximabであった。追加治療は、病変切除が3例、化学療法併用が2例、自家末梢血幹細胞移植が1例(重複あり)であった。発症後1年以内に3例が死亡し、いずれも日和見感染が死亡に強く関与していた。2年以上生存した4例中3例でPTLD治療後にCLADを発症した。 肺移植後PTLD症例では移植前の免疫抑制状態が発症のリスクであることが示唆される。また、晩期にCLADを高率に発症するが、同時に日和見感染症による死亡が問題であり、適切な免疫抑制状態の指標構築が急務である。

  • 平田 雄大, 眞田 幸弘, 大西 康晴, 岡田 憲樹, 宮原 豪, 片野 匠, 大豆生田 尚彦, 佐久間 康成, 佐田 尚宏
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 246_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】小児肝移植における移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)の頻度は比較的高いとされるが、治療法やその予後に関しては不明な点が多い。今回、当院における小児生体肝移植後PTLDの現状を報告する。【対象】2019年12月までに小児生体肝移植を施行した309例。移植後EBV-DNAを定期的にフォローし、PTLDは病理学的に診断した。【結果】PTLDは6例(1.9%)に発症。男/女:1/5例、移植時年齢は中央値1歳(0~10)。全例胆道閉鎖症。PTLD診断時期は移植後692日(152~2782)。臨床症状は発熱4例、その他2例。診断時EBV-DNAは5650copies/ml(17~25000)、免疫抑制剤(IS)内服数は3剤2例、2剤3例、1剤1例。病理診断は早期病変2例、多形性PTLD2例、DLBCL1例、Burkittリンパ腫1例。治療はIS減量+リツキシマブ(RTX)3例、IS減量+RTX+化学療法1例、IS減量1例、その他1例。1例で再発、全例生存。PTLDの危険因子はEBV serostatus (D+/R-)であった(p=0.039)。【結語】EBV serostatus (D+/R-)は小児肝移植後PTLD発症のハイリスクである。PTLDは、IS減量やRTX療法、化学療法などの集学的治療により予後良好である。

  • 築山 尚史, 大平 真裕, 小野 紘輔, 望月 哲矢, 井出 隆太, 佐藤 幸毅, 山根 宏昭, 今岡 祐輝, 秋本 修志, 谷峰 直樹, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 247_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    当科にて1996年7月から2020年5月までに施行した肝移植レシピエントのうち,移植後1年以内に死亡していない症例を対象とし, 術後経過観察期間内に移植後リンパ増殖性疾患(以後,PTLD)を発症した症例における発症時期や免疫抑制状態などについて検討した。対象は225例で,PTLD発症は6例に認めた。PTLD発症患者の内訳は,生体肝移植症例が4例,脳死肝移植症例が2例だった。肝移植時平均年齢は53.3歳,術後平均観察期間は8.4年,PTLD発症時平均年齢は61.0歳,肝移植からPTLD発症までの期間中央値は7.1年だった。PTLD標準化罹患比は13.6と高率であった。全例が患者からの症状訴えをきっかけに診断に至った。6例中3例は血液型不適合移植であり,そのうちの2例で術前減感作療法を行い,術後急性拒絶をきたした症例はなかった。PTLD発症時にMLRを実施できた5例では,1例でドナー非特異的低応答を示しており,またde novo DSAは5例中4例で検出されなかった。PTLD発症患者は抗腫瘍治療を実施することで寛解を維持し,全例生存している。また6例中2例で他悪性腫瘍の異時的合併を認めている。当科で行った肝移植後レシピエントにおけるPTLD発症の頻度や傾向,各患者の免疫抑制状態や化学療法後の免疫抑制剤使用方針などについて、症例提示を交えて報告する。

  • 浦田 晋, 進藤 考洋, 小川 陽介, 犬塚 亮, 波多野 将, 小野 稔
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 247_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】PTLDは発症時期により早期と後期に分類され、臨床像が異なる。早期2例と後期1例を振り返り、PTLD治療戦略を検討した。【症例】① 1歳10か月時に移植し、術後4か月にタクロリムスTAC(トラフ8-10 ng/ml)、ミコフェノール酸モフェチルMMF投与中、monomorphic B cell PTLDを発症。② 17歳時に移植し、術後6か月にTAC(トラフ 7-15 ng/ml)、MMF、エベロリムス、プレドニゾロン投与中に伝染性単核球症を発症し、2か月後にmonomorphic B cell PTLDと診断。③ 1歳8か月時に移植し、術後約700日にTAC(目標トラフ 6 ng/ml)、MMF投与中にリンパ節生検にてmonomorphic B cell PTLDと診断。①、③はD+, R-のEBVミスマッチ症例で、②はR-だがドナーステータス不明。①、②はdiffuse typeで、リツキシマブRTX投与および化学療法を行い、②は更に自己末梢血幹細胞移植を施行。③は節外病変なくTAC減量とRTX投与にて感染B細胞消失を確認。【考察】早期PTLDはEBV関連が90%で、非EBV関連の増加する後期と背景が異なる。早期は高用量の免疫抑制剤を必要とする時期であり経過も早く重篤であるため、EBV感染とともに末梢血B細胞の増加を認めた際にはRTXの先制投与が考慮されると考えられた。

  • 大石 久, 渡辺 有為, 平間 崇, 新井川 弘道, 渡邉 龍秋, 野田 雅史, 江場 俊介, 鈴木 隆哉, 野津田 泰嗣, 桜田 晃, 秋 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 248_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】 近年、脳死片肺移植 (SLTx)術中にECMOが用いられることが多い。研究目的は、SLTx術中のECOM使用状況と術中循環動態、特に肺動脈圧(PAP)について検討することである。 【方法】術中PAP(mmHg)の記録がある2010-2019年のSLTx 47例(再移植例除く)を対象とし、ECMO使用の有無とその種類により、V-A ECMO群(静脈脱血―動脈送血)・V-V ECMO群(静脈脱血―静脈送血)・No ECMO群に分け、PAP等を調査した。 【結果】V-A ECMO群23例、V-V ECMO群11例、No ECMO群13例であった。手術開始時に比較して、術側肺動脈クランプ時のPAPは、V-A ECMO群では当然PAPが有意に低下したが(46.7±3.2, 24.9±0.9)、V-V ECMO群でもPAPが有意に低下した(44.8±4.4, 36.5±3.5)。No ECMO群では有意にPAPが上昇していた(38.1±41.4, 45.6±2.6)。【結論】SLTx術中のV-V ECMO使用によりPAP低下がみられ、循環動態を安定に保つことが可能であった。V-V ECMOによるPAP低下のメカニズムについては、PaO2の低下、lung protective ventilationによる気道内圧の低下が推察される。

  • 原田 昇, 吉住 朋晴, 伊藤 心二, 戸島 剛男, 長尾 吉泰, 栗原 健, 王 歓林, 島垣 智成, 武石 一樹, 井口 友宏, 萱島 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 248_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】生体肝移植では肝動脈は末梢での採取となり、複数再建が必要となることがある。レシピエントでの複数の動脈再建はサージカルフィールドが深部であり、また最適なレシピエント再建動脈を認めないこともあり、全ての肝動脈再建が困難な場合がある。【目的】複数の肝動脈再建を必要とする肝グラフトにおいて、バックテーブルでの動脈形成を用いた動脈再建術について報告する。【方法】症例:アラジール症候群の1歳男児で母親の外側区域グラフトを用いて生体肝移植を施行した。肝グラフトにおいてA2(右胃動脈から派生)及びA3+4+胆嚢動脈の2本の肝動脈を認め、それぞれ径が1mmと細径であった。レシピエント全肝摘出の待機時間中にバックテーブルにて手術顕微鏡を用いて、1穴に形成し、レシピエントの右肝動脈とin-situで再建し、経過は良好であった。冷保存時間の延長は認めなかった。【結果】動脈形成術、肝動脈再建術時間は19分と32分で、再建後の肝動脈血流は110ml/minであり、ドッップラーエコーにて血流は良好であった。現在移植後30ヶ月であるが、経過は順調であり、胆管合併症を認めていない。【まとめ】肝動脈複数再建の必要な生体肝移植における手術顕微鏡下バックテーブル動脈形成を用いたレシピエント肝動脈再建は吻合部位を1穴とすることによって、レシピエントにおける肝動脈再建が簡素であり、有効である可能性があった。

  • 平光 高久, 鳴海 俊治
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 249_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

     膵移植における移植膵の長期予後を得るためには、graft lossとなりやすい周術期合併症予防が大切である。そのための新たな膵腎移植手術の工夫について検討する。CITを短縮することで術後の合併症を減らすため、Bench surgeryにリガシュアーを使用している。リガシュアーの使用で、Bench surgeryの時間が短縮され、CITを短縮できるだけでなく、再還流後の出血も減少した。移植十二指腸をBench surgeryで先に短く処理すると、再還流後産生された膵液が、短い移植十二指腸を充満し、十二指腸壁が薄くなったり、十二指腸の圧排により止血が困難となっていた。移植十二指腸末梢側を長く残すことで、膵液が十二指腸内内にドレナージされ、確実に止血を行うことが可能となる、さらに十二指腸の血流不良部分を確認してGIAで切離できるため十二指腸断端トラブルを回避することも可能である。

  • 堀田 記世彦, 岩見 大基, 田邉 起, 岩原 直也, 篠原 信雄
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 249_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対する腎移植の際には、移植床の確保のために自己腎摘術を行う場合が多い。当施設では、腰部斜切開にて腎摘術を行っていたが侵襲が大きいため、後腹膜鏡下腎摘術を取り入れた。【対象・方法】対象は腎移植時に鏡視下後腹膜アプローチにて自己腎摘を行ったADPKD患者18症例(右14、左4)。手術は4ポートにて行い、側臥位で後腹膜鏡にて腎を遊離した後に仰臥位となり腎移植時の傍腹直筋切開創より摘出した。摘出腎の容量は平均1198ml (622-1725)であり、従来の腰部斜切開による腎摘術を行った10症例と術式、手術成績について比較した。【結果】従来法では腰部斜切開と傍腹直筋切開の大きな手術創が2つ必要であったのに対して、当術式では傍腹直筋切開と4ポートの手術創で摘出できた。手術時間は後腹膜鏡と腰部斜切開それぞれ平均162±28分と150±25分と有意な差はなかった。出血量は全症例少量であり、輸血した症例はなかった。離床開始、食事開始までの期間は鏡視下手術で有意に短く、術後の鎮痛剤の使用回数も鏡視下手術で有意に少なかった。腎摘術に伴う合併症は後腹膜鏡では認めなかったが、腰部斜切開では1例胸膜損傷による気胸を合併した。【結語】当術式は侵襲が少なく、有用な術式である。今回は手術成績とともに安全に施行するポイントについても供覧する予定である。

  • 宮城 重人, 戸子台 和哲, 中西 渉, 藤尾 淳, 柏舘 俊明, 佐々木 健吾, 菖野 佳浩, 太田 嶺人, 亀井 尚, 海野 倫明
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 251_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:高齢肝移植は増加傾向にある。日本肝移植研究会報告2018をみると50・60代で肝移植を受けたレシピエントの10年生存率は65.4%・63.8%と以前に比べ許容できる値である。当院も肝移植年齢上限を70歳に引き上げた。本研究の目的は高齢レシピエント・高齢ドナー肝移植各々の術後経過、成績を検討することである。方法:2020年4月までの当院肝移植肝移植201例のうち、移植時レシピエント年齢が60歳未満の190例と60歳以上の11例の術後成績を比較検討した。更に移植時ドナー年齢が60歳未満の197例と60歳以上の4例についても術後成績を比較検討した。結果:移植時60歳未満レシピエント群と60歳以上高齢レシピエント群の5年生存率は各々81.0%と90.9%、10年生存率は各々76.2%と68.2%で、有意差を認めなかった。一方、移植時60未満ドナーと60歳以上高齢ドナーの5年生存率は各々81.6%と75.0%、10年生存率は77.5%と0%で、有意差をもって高齢ドナー群が不良であった。高齢レシピエントは血管・胆管合併症共に有意差を認めなかったのに対し、高齢ドナーでは静脈狭窄2例、門脈狭窄2例と血管合併症が多く認められた。結語:高齢レシピエント肝移植の生存率は比較的良好であったが、高齢ドナー肝移植の長期生存率は有意差をもって不良であった。症例数が少ないため今後も継続した検討が必要である。

  • 門久 政司, 猪股 裕紀洋, 嶋田 圭太, 石井 政嗣, 冨田 真裕, 内田 皓士, 磯野 香織, 本田 正樹, 山本 栄和, 菅原 寧彦, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 251_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    [背景と目的]日本の移植医療の現状にあって,生体肝移植において60歳以上の高齢ドナーを選択する機会が度々あるが,その適応に関しては未だ議論を残す.そこで我々は,高齢ドナーにおける手術侵襲及びレシピエント治療成績という両面から,高齢ドナーの安全性・有用性に関して考察した.[対象]1998年12月から2017年3月までに,当院でグラフト採取術を施行した生体肝移植ドナー470例を後方視的に検討した.[結果] ドナー年齢の内訳は,20代(n=109),30代(n=157),40代(n=87),50代(n=81),60代(n=36)であった.各群間において,術後合併症や術後入院期間に有意差は認められず,術後肝機能の回復も同等であった.また,レシピエント治療成績に関しては,レシピエント年齢やMELDスコア別のグラフト全生存率において各群間に有意差を認めなかった.多変量解析の結果,成人レシピエントの6カ月以内グラフトロスに対する有意因子は左葉系グラフト及び急性肝不全であり,ドナー年齢は含まれなかった.[結論]60歳以上の高齢ドナーは,グラフト採取術における安全性及びレシピエント治療成績への寄与の両面から鑑みて,他に妥当なドナー候補が存在しない場合には,有用な選択肢になり得る.

  • 竹村 裕介, 篠田 昌宏, 長谷川 康, 尾原 秀明, 北郷 実, 八木 洋, 阿部 雄太, 山田 洋平, 松原 健太郎, 黒田 達夫, 江 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 252_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    [背景] わが国の脳死肝移植で高齢ドナー・レシピエントが移植成績に及ぼす影響は不明である。 [方法]2019年3月までの脳死肝移植523例のレシピエント・ドナー情報を日本肝移植学会、日本臓器移植ネットワークの協力のもと収集し、高齢ドナー・レシピエント(それぞれ60歳以上と定義)のグラフト生存への影響を検討した。高齢ドナーについては、全期間および期間別(Era1: 1-100例, Era2: 101-300例, Era3: 301-523例)に成績の変遷を検討した。 [結果]高齢レシピエントは63例(12%)おり、1年グラフト生存率は高齢vs非高齢で差はなかった(86 vs 87%)。高齢ドナーによる移植例は70例(13%)おり、1年グラフト生存率は高齢で有意に不良で(73 vs 89%)独立した予後不良因子の一つだった。Era1, 2では時代別の解析でも高齢vs非高齢で1年グラフト生存に有意差を認めたが、Era3では差を認めなかった。高齢ドナー70例で1年グラフト廃絶の危険因子を解析したところ、総阻血時間、レシピエント術前ICU入院が同定されたが、Era3ではこれらの因子を持つ症例が少ない傾向で、更に70歳以上の超高齢ドナーを認めなかった。 [結語]高齢ドナーはかつて強力な予後不良因子だったが、近年成績は改善している。症例選択等、各施設の経験が成績向上に貢献している可能性がある。

  • 田中 里奈, 豊 洋次郎, 山田 義人, 大角 明宏, 中島 大輔, 濱路 政嗣, 伊達 洋至
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 252_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:当院における、高齢レシピエントの片肺移植と高齢ドナーからの提供症例の成績を検討する。方法:2012年8月から2018年3月までの脳死肺移植85例が対象。ドナー因子として、年齢・脳死判定時pO2、レシピエント因子として、年齢・術前酸素使用・術前pCO2、術後経過として、再灌流後pO2・気管切開の有無・人工呼吸期間・ICU入室期間・Overall survival (OS)を評価項目とし、1)55歳以上で片肺移植を行った高齢レシピエント17例を、55歳未満で片肺移植を行ったレシピエント27例と比較 (登録時55歳以上は片肺移植に限るため)。2)55歳以上の高齢ドナーから提供を受けた16例を、55歳未満のドナーから提供を受けた69例と比較(片肺、両肺移植を含む)。結果:1)高齢レシピエントは、より若年のドナーから提供をうけていた (平均 45.3 vs 34.5歳 p = 0.01)。術後経過、OSに差なし。2)高齢ドナーからの提供例は、脳死判定時と再灌流後pO2に差はなかったが、人工呼吸期間 (20.2 vs 9.2日 p < 0.01)、ICU入室期間 (21.4 vs 10.9日 p < 0.01)が長かった。OSに差なし。考察:高齢レシピエントの片肺移植後の成績は、若年者と比べて差は認めなかった。高齢ドナーからの提供は、術後早期の経過に影響を与える可能性がある。

  • 富岡 泰章, 大谷 真二, 清水 大, 松原 慧, 山本 治慎, 塩谷 俊雄, 三好 健太郎, 岡崎 幹生, 杉本 誠一郎, 山根 正修, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 253_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】日本における高齢者レシピエントの長期成績に関しての報告は少ない.今回当院における高齢者レシピエントの長期成績について後方視的に検討した.【対象と方法】1998年1月~2020年1月に施行した18歳以上の肺移植症例161例を対象とした.60歳以上の高齢群(H群:n=10)と18-59歳の非高齢群(L群:n=151)の2群に分けて,全生存期間(OS)およびCLAD発症までの期間(CFS)について解析を行った.【結果】H群ではL群と比較して片肺移植(p=0.03),間質性肺炎(p=0.02),男性(p=0.04)の割合が有意に多かった.BMI,ドナー年齢,総虚血時間,LASスコアには有意差は認めなかった.H群とL群の5年OSはそれぞれ51.9%と75.5%であり,有意差を認めた(p=0.02).H群とL群の5年CFSはそれぞれ53.3%と72.5%であった.サブグループ解析では,H群の片肺移植症例(5年:OS 25%)は両肺移植症例(5年OS:75%)と比較してOSが悪い傾向にあった(p=0.08)が,H群の両肺移植症例はL群の両肺移植症例(5年OS:74.2%)と比較しても同等の成績であった(p=0.5).【結語】60歳以上のレシピエントの成績は60歳未満と比較し不良だが,両肺移植がより望ましい可能性が示唆された.

  • 平光 高久, 友杉 俊英, 二村 健太, 岡田 学, 一森 敏弘, 後藤 憲彦, 鳴海 俊治, 打田 和治, 渡井 至彦
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 253_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    はじめに 70才以上の高齢者からの生体腎移植についての報告は少ない。方法 2008年1月から2018年12月までの生体腎移植1022例から、18才未満のレシピエント44例、腎移植後膵移植4例、Preformed DSA陽性移植63例、詳細データをえられない26例を除く、885例で検討した。ドナー年齢70才以上群(112例)、70才未満群(773例)で、ドナー手術の安全性、レシピエントの移植腎への影響を検討した。結果 ドナー年齢70才以上群、70才未満群でドナー手術合併症、graftのqualityで有意差を認めず。ドナー予後に関してESRDを認めず、ドナー死亡でも有意差を認めなかった。レシピエントのgraft lossの因子を検討すると、単変量解析でレシピエントの性別、術前感作歴、de novo DSA陽性、ドナー年齢70才以上で有意差を認めた。多変量解析でレシピエントのde novo DSA陽性(P=0.020)、ドナー年齢70才以上(P=0.017)で有意差を認めた。de novo DSA陰性例でgraft survivalを比較するとドナー年齢70才未満群と比較して、70才以上で有意に不良であった(10年生着率94.6% vs 80.4%, P=0.005)。結語 ドナー年齢70才以上からの腎提供は安全に行えるが、レシピエントのgraft予後は短くなると考えられた。

  • 芦刈 淳太郎, 佐々木 ひと美, 能勢 和宏, 三重野 牧子, 西 愼一
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 254_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】献腎移植のExpanded Criteria Donorで適応判断に難渋することも多く、ドナー年齢は、献腎移植レシピエントの予後に影響を及ぼすリスク因子の一つである。我が国のデータ解析からリスク指標となる因子を探索する中で、ドナー年齢と献腎移植レシピエントの腎機能発現に着目した。【方法】本研究はAMED研究「マージナルドナー腎移植の安全性に関する新規エビデンス創出研究」の分担研究「献腎移植ドナーのリスク基準探索」として日本臓器移植ネットワークの倫理委員会承認にてデータを入手した。2000年~2016年の腎臓移植レシピエントN=2,671(肝腎・膵腎同時移植除く)を対象とし、ドナーの年齢と腎機能発現の有無及び発現までの期間について相関関係を分析した。【結果】心停止下臓器提供において、ドナー年齢と腎機能発現の有無の有意差が認められ(p<0.05)、ドナー年齢が高齢になるにつれて腎機能発現率が低下する相関関係が認められた(決定係数R2=0.67)。さらに、脳死下臓器提供・心停止下臓器提供ともに、腎機能発現例においては、ドナー年齢が高齢になるにつれて腎機能発現までの日数(平均値及び中央値)が延長する相関関係が認められた(R2=0.62~0.95)。【考察】上記の相関関係が認められたことから、ドナー年齢によって腎機能発現までの期待値モデルを導ける可能性が示唆された。

  • 秦 浩一郎, 小木曾 聡, 穴澤 貴行, 福光 剣, 伊藤 孝司, 八木 真太郎, 加茂 直子, 田浦 康二朗, 上本 伸二
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 255_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    緒言: 肝腎症候群(HRS)は末期肝硬変に合併する致死的病態であり、その肝移植治療成績は不良とされる。対象: 当科の成人初回生体肝移植437例(2005~2016)をHRS合併群と非合併群に分け、患者生存、移植後腎機能につき比較。また①腹水ドレナージ、②アルブミン補填、③DOA/NAD/VP(ADH)による血圧/腹腔内血流の是正、④トルバプタン等による利尿、から成る移植前治療を施した5例の成績を併せ検討。結果: HRS合併は1型17例、2型14例の31例(7.1%)。HRS群でMELD/CPT共に高く(P<0.001)、在院期間が長く(P=0.002)、在院死亡率が高かった(P=0.027)。1/3/5年生存率は65.0/60.0/60.0% vs. 83.3/78.9/76.8% (P =0.042)とHRS群で有意に不良。腎機能は肝移植後早期に改善(P =0.011)を認めたものの、移植2年後でも非合併群より不良であった(P <0.005)。術前治療(2-8週)を施行した5例では、全例で腎機能は劇的に回復、正常化し(P <0.01)、患者生存100%、移植2年後の腎機能も非合併群と同等であった。結論: 肝腎症候群は成人生体肝移植予後を有意に悪化させるが、”待機的な”生体肝移植だからこそ可能な術前治療がある。

  • 齋藤 満, 藤山 信弘, 提箸 隆一郎, 齋藤 拓郎, 嘉島 相輝, 山本 竜平, 奈良 健平, 沼倉 一幸, 成田 伸太郎, 佐藤 滋, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 255_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    生体腎移植は待機手術として行われる。設定された手術日にピークを合わせて様々なリスクを低減化し、考え得る最善の状態で手術に臨むことが基本である。しかし、先行的腎移植(PEKT)では移植までの期間が短いためリスク評価や必要に応じた治療が不十分となる恐れがある。特に貧血は短期間での治療が困難であり周術期に輸血を施行せざるを得ない症例も多い。実際、当科の症例を見てみると2004年7月から2015年12月までの期間でPEKT群(33例)では非PEKT群(171例)と比較して当科初診時のHbが有意に低値であった。ほぼ同時期の生体腎移植症例163例の検討では102例(62.6%)で濃厚赤血球製剤が輸血されていた。背景因子の比較では、輸血施行群で非施行群と比較して有意に女性が多く(p=0.03)、腎移植前日のHb値が低値(p<0.001)であった。幸い、免疫学的ハイリスク症例を除くと両群間でde novo DSA産生やABMRの頻度に有意差は見られなかったものの、輸血は行わないに越したことはなく、術前Hb値がより高値であれば輸血を要しなかった症例も多いと思われた。周術期の輸血回避のため、腎移植、特にPEKT施行時には術前にエリスロポエチン製剤や鉄剤などを充分に投与しHb値を上昇させておく必要がある。

  • 福元 健人, 井尻 直宏, 篠原 義和, 吉安 展将, 登 祐哉, 師田 瑞樹, 椎谷 洋彦, 山口 寛和, 川島 峻, 飯田 崇博, 此枝 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 256_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】より「適切な」レシピエント選択基準とは何か、については議論があるが、海外では「待機中死亡率の最小化」が達成すべき一つの目標とされており、手段としてLung Allocation Score (LAS)やMELD score等が用いられている。日本でも脳死肝移植では2019年5月、待機日数重視からMELD scoreを基本としたレシピエント選択システムへ移行した。肺移植においても待機中予後の正確な把握・予測が望まれている。【方法】2014年3月から2020年6月までに、日本臓器移植ネットワークを通じ当施設で肺移植待機登録を行った患者185例を検討対象とした。待機登録日を起点とした生存解析を疾患別に行うと同時に、待機中予後に影響を及ぼす因子について登録時の情報を元に検討した。【結果】45例が脳死肺移植に到り、生体肺移植・渡航移植により待機中死亡を免れたのがそれぞれ4例、1例であった。一方6年の間に待機中死亡が41例発生、うち26例が待機開始後1年以内の早期死亡であった。特発性間質性肺炎(IIPs)57例(31.0%)、肺高血圧症41例(22.3%)、その他の間質性肺炎34例(18.5%)の3疾患群で全体の70%以上を占めた。IIPsは肺高血圧症と比較し有意に待機中生存率が低かった(p=0.0437)。待機中死亡に関連する因子として6分間歩行距離が挙げられた。

  • 今岡 祐輝, 大平 真裕, 佐藤 幸毅, 谷峰 直樹, 黒田 慎太郎, 田原 裕之, 井手 健太郎, 小林 剛, 田中 友加, 大段 秀樹
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 256_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    COVID-19によるパンデミックは急速に進展し、生活スタイルの変化や医療体制だけでなく移植領域においても多大な影響を受けている。広島県では2020年3月7日に県内1例目のCOVID-19感染者を認めた後に累計168名の感染者数を認めている。(2020年6月末現在) 当科におけるCOVID-19への取り組みを報告する。主な取り組みとして、当研究室でのCOVID-19のqRT-PCR検査体制の確立、Web会議の導入、HUCPC(Hiroshima University COVID-19 Peaceful Center)への参加などが挙げられる。これまでに計14例の術前qRT-PCR検査を当研究室で実施した。結果はすべて陰性であった。今後は、移植前スクリーニング検査に加え、HUCPU(Hiroshima University COVID-19 Peaceful Center)の一員としてCOVID-19再流行時の当大学ならび大学病院職員・学生を対象とした検査や保健所のバックアップ検査ができる体制の整備を進めている。流行初期段階で、ウイルス学研究室ならびに感染症科と協力して、当科研究施設でのqRT-PCR検査体制を確立することで脳死レシピエントや術前患者・入院患者へのスクリーニング検査導入を迅速に対応可能であった。未曾有の危機に対し、移植領域でも柔軟な対応が求められる。

  • 日高 悠嗣, 山永 成美, 杉本 美保, 豊田 麻理子, 椛 朱梨, 田中 康介, 稲留 彰人, 横溝 博, 宮田 昭
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 257_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】献腎移植待機期間は約14年8ヶ月と長期に渡るが,その間の評価は各施設の判断に委ねられている.当院では年1回の合同診察会という形式で登録更新の診察業務としていたが,レシピエント候補となった際の状態把握に難渋することもあった.こういった状況から2013年頃から長期待機者を対象に,一般外来枠での事前評価を開始したのでこの取り組みについて報告する.【結果】2020年6月末時点で当院の待機患者は137名,そのうち2020年で登録年数10年以上となる33例を対象とした.受診率は93.9%(31/33)で,既往症は悪性腫瘍4例(12.1%),心血管疾患6例(18.2%),抗血栓薬内服13例(39.4%)だった.またHCV抗体陽性者のうちSVRは5例中4例(80%)だった.検査は心臓超音波23例(69.7%),ABI 27例(81.8%),CT 29例(87.9%)と心・血管評価の施行は高率だったが,上部・下部内視鏡検査や腹部エコーは50%前後だった.【考察】事前評価によりネットワークからの連絡に迅速な対応ができる一方,検査項目・頻度など一定の見解はない.また一般的ながん検診は各自での受診を促すに留めており施行率が低かった.【結語】献腎待機者は長期透析で様々な合併症を持ち,移植にあたってハイリスクである.事前評価と移植前から患者本人や透析施設と連携を取ることで安全な移植が可能と思われる.

  • 蔵満 薫, 矢野 嘉彦, 江木 盛時, 宗 慎一, 権 英寿, 津川 大介, 小松 昇平, 田中 基文, 木戸 正浩, 福本 巧
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 257_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    背景;2019年5月15日から新しいレシピエント選択基準の運用が開始された。新基準では患者の重症度に応じ採血結果の更新が義務付けられている。当院におけるレシピエント登録状況と待機患者の管理について検討した。方法;新基準運用開始から2020年5月15日までに当院で希望登録を行った12名について検討を行った。結果;12名中7日ごとの更新が必要なstatus1は3名、うち2名を当院で管理し1名に対し待機14日目で移植を実施、1名は内科的治療で軽快退院、残る1名は他院で待機6日目に出血で死亡となった。14日ごとに更新が必要な患者3名は全員当院で管理しうち1名に対し待機3日目で移植を実施、残る2名は現在も待機中である。30日ごとに更新が必要な患者1名と90日ごとに更新が必要な患者5名中3名は当院外来で、残る2名は他院外来で待機中である。診療科別にみると7名(58.3%)が消化器内科、5名(41.7%)が外科管理であり、病棟別に見るとICU管理が5名(41.7%)、一般病棟が2名(16.7%)、外来が5名(41.7%)であった。考察;新基準の運用開始により移植待機リストの上位に位置付けられる患者は短期間でデータ更新することが義務付けられるようになり、他院で患者を待機させるためには綿密な連携体制の構築が必須となる。待機日数の長期化に伴うICU患者数の増加にいかに対応するかが今後の課題である。

  • 中島 大輔, 芳川 豊史, 伊達 洋至, Shaf Keshavjee
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 258_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    近年、Ex Vivo Lung Perfusion (EVLP)が障害肺の移植前治療のプラットフォームとして有効であることが、研究にて証明されており、体外でのマージナルドナー肺のテーラーメイド治療に注目が集まっている。トロント大学にて、EVLP評価後に移植適応外と判断されたマージナルドナー肺の約半数が、誤嚥と感染により障害されていることを証明した。 トロント大学にて、感染による肺炎が原因で移植に不適応だった研究肺を用い、肺炎に対するEVLP中の広域抗生剤治療の有効性を証明した。抗生剤(メロペネム2 g+バンコマイシン1 g+シプロフロキサシン400 mg or アジスロマイシン500 mg)をEVLP閉鎖回路の灌流液中に投与することにより、灌流液中の抗生剤濃度を高濃度に維持し、ドナー肺から検出された細菌数とともに、灌流液中のエンドトキシンレベル、移植後の早期移植肺機能不全に関連した炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、MIP-1 α、MIP-1β)を有意に減少させ、EVLP中の肺機能を改善した。しかしながら研究肺であるが故に、肺移植までには至っていない。 このようなEVLPを用いたtranslational researchとして行われている様々な研究は、臨床に還元することを目標に行われており、本邦においても早急なEVLPの臨床導入が待たれる。

  • 新井川 弘道, 岡本 俊宏, Kamal S, 井戸田 佳史, 岡田 克典, Kenneth R
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 258_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    背景:移植不適と判断されたマージナルドナー肺でも,肺葉レベルでは移植可能と仮説を立て,体外肺灌流(EVLP)を用いて肺葉レベルで移植適応評価した.方法:クリーブランドクリニックにて肺移植に使用されなかったドナー肺をEVLPにて適応評価した. 加えて選択的血液ガスと視触診による肺葉毎の評価,Wet/dry比(W/D), Lung injury score(LIS)を得た.結果:肺葉レベルで評価された14肺中13が移植不適であったが, 上葉のP/F比は下葉に比較し有意に高く, P/F比>300mmHg及び浮腫所見無しを移植適応の基準とすると, 全ての上葉が移植可能と判断された.また, 上葉組織のW/DとLISは下葉と比較して有意に低かった. 結語:移植不適とされたドナー肺でも上葉の肺機能は良好であった. 大型ドナーの肺葉を用いた小型レシピエントへの上葉移植は移植数増加の有効な戦略になり得る.

  • 中村 公治郎, 影山 詔一, 平尾 浩史, 伊藤 貴洋, 門野 賢太郎, 小島 秀信, 岩崎 純治, 畑 俊行, 飯田 拓, 長田 圭司, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 259_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    冷保存中肝障害の機序は解明されておらずバイオマーカーや予防法も確立していない。ASK1-p38シグナルは細胞特異的に冷ストレス障害に関与するが,肝臓における関与および細胞接着分子であるCEACAM1 (CC1)との関りについては分かっていない。CC1 knockout(CC1-KO)またはWTマウスからグラフトを採取し18時間冷保存後に門脈から生食2mlをフラッシュし,フラッシュ液とグラフトを回収した。CC1欠損はグラフト内4HNEを増強し,HMGB1細胞質移行を促し,ASK1/p-p38発現を高め,フラッシュ液HMGB1濃度を増したが,ASK1阻害剤を冷保存液に添加するとこれらの変化は抑制された。肝細胞培養でもCC1欠損は冷ストレスによる4HNE発現を増強,HMGB1細胞質移行を助長,ASK1/p-p38の発現を高め,死細胞数を増したが,ASK1阻害(siRNA)はこれらの影響を抑制した。WTまたはCC1-KOグラフトを18時間冷保存後にWTレシピエントに移植したところ,CC1欠損は再還流後肝障害を助長し,術後20日間生存を悪化させた(WT/CC1-KO=44/0%)が,CC1-KOグラフトの冷保存中にASK1阻害剤を加えると移植後肝障害は緩和され生存も改善した(50%,p=0.0217)。CC1はASK1-p38シグナルを抑制し冷保存中の肝障害を軽減し移植後の肝機能を改善する。

  • 石井 大介, 松野 直徒, 榎本 克朗, 斉木 俊一郎, 小池 悠希, 細野 将太, 合地 美香子, 岩田 浩義, 小原 弘道, 西川 裕司 ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 259_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    欧米において、マージナルドナーの肝保存として機械灌流保存が臨床レベルで行われている。我々は多くの実験結果に基づき2017年から、企業と腎臓・肝臓の灌流保存装置の共同開発に取り組み、腎臓に関しては臨床試験を始めている。今回、肝臓用装置を用いて前臨床試験としてブタを用いた実験を行ったので報告する。保存装置は基本的に病院据え置き型であり、実験ではブタ70%肝切除を行い、30%残肝をマージナルグラフトとした。8時間の単純冷却保存群と6時間の単純冷却保存+2時間の短時間酸素化低温灌流保存群とし、自己血を用いて体外再灌流試験で比較した。結果は機械灌流保存中、門脈圧8-10mmHg、肝動脈圧30-50mmHgと安定して流量が制御可能であり、温度も4-6℃と安定していた。再灌流2時間でのAST,LDH,Lac,COHbの低値を灌流保存群で認めた。病理学的検討でSuzuki’s scoreは灌流保存群で有意に低値であり、免疫染色においてもERG染色(内皮細胞傷害のマーカー)、CD42b染色(血小板凝集のマーカー)ともに灌流保存群で有意に良好な結果であった。さらに肝組織におけるPCR検査においてTNFα、IFNγ、IL-1β、IL-10が再灌流2時間の時点で灌流保存群で有意に低値であった。以上の結果から短時間酸素化低温灌流保存は有用な保存方法と考えられた。

  • 小原 弘道, 二方 幹弥, 松野 直徒, 渡辺 大智, 佐藤 優樹, 中條 哲也, 絵野沢 伸, 平野 俊彦, 暮地本 宙己, 古川 博之, ...
    2020 年55 巻Supplement 号 p. 260_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    [目的]ECD(Extended criteria donor)の臓器機能を回復しドナープールの拡大を目指す臓器機械灌流法において、臓器機能評価は極めて重要である.血管抵抗や代謝因子などが経験的な指標はあるものの、肝臓の複雑な流動構造に着目した評価指標の報告は少ない。本報告では臨床でも利用可能なICGを用いて肝臓内流動特性の低侵襲かつ迅速な評価をおこなうための時空間蛍光計測法を提案し,ブタ臓器をもちいた実験により虚血障害予測に向けた評価をおこなう。[方法]実験では臓器機械灌流装置に近赤外域まで評価可能な高感度CCDカメラを用い、近赤外領域も含む蛍光計測をおこなった。WIT(温阻血時間)30分、60分を経たブタ肝臓に対して復温下での4時間機械灌流の後、体外血液再灌流時に灌流液にICGを添加し時空間的な蛍光計測をおこなった。計測は再灌流開始から30分において行い、撮影した蛍光画像を機械学習を援用した画像解析手法を用い評価した。[結果]実験を行ったWIT30分、60分臓器間では、ICG蛍光の観測できる領域、及び蛍光の形態に差が見られた。特に虚血障害の激しいWIT60分の肝では肝臓末端までの血液流動は確認できず、一部では斑状の特異な形態が観測された。[結語]ICG蛍光特性を用いた時空間的な画像計測にもとづく解析により肝臓機能評価に向けた非侵襲かつ迅速な虚血障害予測手法の可能性を示した。

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