本論文では、農業分野における知的障害者就労支援の取り組みについて、奈良県「植村牧場」の事例を紹介する。その目的は、(1) 今まで農業分野に関する研究論文がほとんど紹介されなかったこと、(2) 障害者就労を支える上で重要な収益事業を積極的に行っていること、(3) 知的障害者雇用を22年間行っている実績があること、などに注目し、知的障害者の就労支援の新たな視点を見出したいと考えるからである。
「植村牧場」は、福祉事業体としての姿と企業体としての姿の両方の顔を持っている事業体と捉えることができる。その特徴として、(1) 従業員の適正配置、サポート体制が充実していること、(2) 従業員に対する福利厚生が整備されていること、(3) 伝統を守りつつ積極的な事業展開を行っていること、などの点が注目される。また、それを支える上で国、市町村の公的助成金制度を十分に活用していることが明らかになった。今後は従業員の高齢化の支援等を課題としてあげることができる。
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