Journal of Traditional Medicines
Online ISSN : 1881-3747
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ISSN-L : 1880-1447
24 巻, 4 号
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Review
  • Chizuko HIOKI, Makoto ARAI
    2007 年24 巻4 号 p. 115-127
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    メタボリックシンドロームを構成する疾病は, 単独でも動脈硬化症を発症させるが, 未病の段階で, これらの症候が重なると動脈硬化が進展する。 早期治療が最も重要である。 特に耐糖能異常 (impaired glucose tolerance : IGT) 患者は脳梗塞と冠動脈疾患を併せた心血管病の発症率が高いと報告があり, IGT は, メタボリックシンドロームの中心に位置する。 そこで東洋医学的診断による“肥満症”に適応が認められている防風通聖散が, 西洋医学的診断基準の肥満症, メタボリックシンドロームに有効であるかを IGT を伴う肥満症女性患者81名の協力により調査した。 その結果, 安静時代謝量を減少させずに体脂肪量の減少が見られた。 特に腹部内臓脂肪および胴囲が有意に減少し, インスリン抵抗性の改善が認められ, メタボリックシンドロームの改善に有効であると考えられた。
    この臨床研究展開に先駆けて, 防風通聖散の体重および脂肪減量効果が肥満動物を用いて調べられた。 保険適応のもとに使用されている漢方薬を, 現代疾病治療に活用する, つまり一定の範疇において西洋薬と同様に病名治療に使用するために, 作用機序が明らかにされている成分系と比較した実験研究が行われた。 ここではカフェインとエフェドリン併用における熱産生効果との比較がなされた。 その結果, 防風通聖散は熱産生組織である褐色脂肪組織を活性化し, 白色脂肪組織の脂肪分解を促進することが示された。 この効果は麻黄に含まれるエフェドリンにより交感神経が活性化され, さらに甘草, 荊芥, 連翹の持つフォスフォディエステラーゼ阻害作用 (カフェインの効果に類似) が相加的に働いた結果であることが明らかとなった。
    肥満症やメタボリックシンドローム予備軍の増加にもかかわらず, その有効な治療対策は見つけられていない。 フランスでは, エフェドリン・カフェインの合剤が, Letigen®として市販されてきたが, 2004年, 米国食品医薬品局 (Food and Drug Administration) は, エフェドリンアルカロイドを含む栄養補助食品 (ダイエタリーサプリメント) の販売を禁止した。 日本では, β-アドレナリン受容体を刺激し, ニューロンを介して満腹中枢に促進的, 摂食中枢には抑制的に作用する食欲抑制剤が, BMI 35 kg/m2 以上の肥満症に限られ, 投与期間も 3 カ月間に限定され保険適応されている。 これらの生活習慣と密接に関わる疾病の世界的増加は, その予防や治療の難しさを物語っている。 そこで防風通聖散の肥満症患者に対する臨床効果を中心に, 西洋医学的治療における漢方適応の今後の国際的展望にむけて概説する。
Regular Article
  • Yasuhiro YAMADA, Ryo YAMAMOTO, Shiro WATANABE
    2007 年24 巻4 号 p. 128-136
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    インドメタシン (INDO) の単投与により, 糞中へのヘモグロビン (Hb) 排泄と血中のヘモグロビンと総タンパク濃度の低下を伴う腸疾患症状がマウスにおいて誘発された。 マウスにあらかじめオウゴンエキス (SR, 500 mg/kg, 2 回/日) を投与したところ, 糞中への Hb 排泄量が有意に増加したが, 血中の Hb および総タンパク濃度には変化しなかった。 これに対して, SR を含有する黄連解毒湯 (OGT) および三黄瀉心湯 (SST) を 1100 mg/kg にて投与したところ, INDO による糞中への Hb の排泄や血中 Hb および総タンパク濃度の低下は顕著に抑制された。 SR, OGT および SST の投与は, 血中の INDO 濃度の変化には影響しなかった。 本研究の結果は, INDO 誘発性腸疾患に伴う消化管出血や血液損失の制御において, OGT や SST が有用である可能性を示唆する。 しかしながら, これら以外の SR 含有漢方方剤の INDO 誘発性腸疾患に対する有害性の可能性についても検討されるべきである。
  • Toshihiro MIURA, Manami KURATA, Satoshi TAKAGI, Chinami ISHIBASHI, Eri ...
    2007 年24 巻4 号 p. 137-139
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    カバノアナタケと糖尿病運動療法との併用効果について遺伝的 2 型糖尿病モデル動物である KK-Ay マウスを用いて検討した。 カバノアナタケの水抽出物 (FO) と運動は単回投与において血糖値を低下させた。 また, FO 投与と運動を 1 日 1 回 3 週間連続して行ったところ血糖値およびトリグリセライド値を低下させ, トリグリセライド値は運動のみよりさらに低下させた。 しかし, 血糖値は運動のみや FO のみの血糖値の低下をさらに低下させることはなかった。 以上のことから, FO と運動の併用は 2 型糖尿病の高脂血症に有効であることが示唆された。
  • Hideo HASEGAWA, Mitsuo SAKAMOTO, Yoshimi BENNO
    2007 年24 巻4 号 p. 140-143
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    漢方処方を構成する生薬には様々な配糖体が有効成分として含まれる。 配糖体は加水分解されてから吸収され, 薬効を発揮する。 この加水分解には, 腸内細菌が深く関与している。 腸内細菌叢の構成は個体差が大きく, 配糖体を加水分解する能力を有する腸内細菌の有無が, 薬効差を引き起こす一因になることが懸念される。 そこで著者らは, 人参 (Panax ginseng C. A. MEYER) を例にとり, 人参配糖体 (サポニン) を加水分解する能力にどの程度個人差があるかと, 配糖体の加水分解に関わる腸内細菌を解析した。 まず無作為に抽出した被験者17名の配糖体分解活性を測定した結果, 配糖体分解活性に著しい個体差が認められ, ジオール系サポニンとトリオール系サポニンとで分解の様相が異なり, 分解に関与する腸内細菌が異なることが示唆された。 そこで, 配糖体の加水分解に関わる腸内細菌を特定する目的で, ジオール系サポニンの代謝物である M1 を生成する配糖体分解活性を保有した被験者5名の糞便細菌叢を T-RFLP 法で解析した結果, バクテロイデス属細菌が共通して検出された。 さらに, Bacteroides 属細菌 9 種の配糖体分解活性を測定し, 代謝物 M1 を生成する腸内細菌種として Bacteroides uniformis を特定した。
Short Communication
  • Yoshihiko HIROTANI, Takuya IKEDA, Kaoru YAMAMOTO, Nobuo KUROKAWA
    2007 年24 巻4 号 p. 144-148
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    八味地黄丸がポリオール代謝経路に及ぼす影響について検討した。 この代謝経路の生成物で全身のソルビトールを反映すると言われている赤血球ソルビトール含量を測定した結果, ストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットにおいて有意に増加したが八味地黄丸投与の影響は見られなかった。 次に, 腎でのポリオール代謝経路律速酵素であるアルドース還元酵素活性は, 同モデルラット腎での上昇を八味地黄丸は有意に抑制し, ソルビトール蓄積を低下させ糖尿病性腎症の自覚症状を軽減する可能性を示した。 さらに, 細小血管障害の発症に関与している血液凝固の発症・進展に八味地黄丸が影響しているか検討した結果, 本モデルにおける凝固系亢進が見られたが, 本研究での投与量範囲では八味地黄丸の影響は見られなかった。
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