紅参から得られた 70 % メタノール抽出エキス (RG-ext) とその作用成分のラット末梢循環障害に対する改善効果について, さまざまな実験モデルを用いて研究を行った。
RG-ext は健常ラットの背部皮膚血流を促進し, norepinephrine (NE) による背部皮膚血流低下を改善し, 水浸負荷による血流低下も改善した。 しかし, セロトニン処置ラットには無効であった。 また, RG-ext は doxazosin (DO) による血流増加を回復させた。
Ginsenoside-Rb
1 (Rb
1) は NE による皮膚血流の低下を改善し, ginsenoside-Rg
1 (Rg
1) は DO による皮膚血流の増加を回復させた。 Rb
1 を紅参から得られた非サポニン画分 (RW-fr) と併用した場合, その改善作用は Rb
1 単独の場合よりも増強された。 しかし, RW-fr 自体には効果がなかった。 白参から得られた非サポニン画分 (WW-fr) は RW-fr のような増強作用を示さなかった。 Rb
1 はラット胃液および人工胃液中において20(
S)-ginsenoside-Rg
3 [20(
S)-Rg
3] と20(
R)-ginsenoside-Rg
3 [20(
R)-Rg
3] を生成した。 Ginsenoside-Rb
2, -Rc, -Rd も Rb
1 と同様にそれらを生成した. 20(
S)-Rg
3をラットに静脈内投与すると, NEによる背部皮膚血流低下を改善したが, 経口投与では改善傾向を示すにすぎなかった。 しかし, RW-frを併用した場合には20(
S)-Rg
3の改善効果は明らかに増強された。
したがって, RG-ext の末梢循環障害に対する効果は, 胃内で RG-ext の protopanaxadiol 系サポニンから形成された20(
S)-Rg
3が, RW-fr の何らかの助けにより腸管膜を通して血中に吸収されることにより発現していることが明らかとなった。
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