Journal of Traditional Medicines
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25 巻, 2 号
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Regular Article
  • Zhigang WANG, Shuhan TANG, Chaomei MA, Naoki TOYOOKA, Hiroaki KIDA, Ma ...
    2008 年25 巻2 号 p. 29-34
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    Wistar ラットを用いて伝統医療に用いられるスウェルチア植物の主成分である swertiamarin (1) の代謝研究をおこなった。 swertiamarin (1) を経口投与後, ラットの血漿を液体クロマトグラフィー/イオントラップマススペクトロメトリー法で分析し, 新規代謝物(R)-gentianol (4a), (S)-gentianol (4b), 及び既知代謝物 gentianine (2) を同定した。 これら全ては窒素を含む代謝物であり, 代謝物の構造は, swertiamarin (1) から合成した標準化合物との HPLC での保持時間, MS, MS/MS スペクトルの直接比較により決定した。 (S)-gentianol (4b) を, gentianine (2) から得た gentianone (3) の立体選択的還元反応により合成し, その絶対立体配置を新モッシャー法により確定した。
  • Hidemasa NAGAI, Yutaka YAMAMOTO, Florian RAUCHENSTEINER, Tadato TANI, ...
    2008 年25 巻2 号 p. 35-42
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    マウス摘出空腸のカルバコール誘発収縮に対する抑制作用を指標にして Glycyrrhiza 属植物の根を比較した。 中国内蒙古自治区東部で栽培研究して得た G. uralensis 根の収縮抑制作用は, 野生の G. uralensis から調製された市場品甘草と同程度あった。 また, 中国市場で入手した栽培根の抑制作用も市場品甘草と同等であった。 これらの結果と収縮抑制成分 (glycycoumarin) 含量およびHPLC-profileを比較し, G. uralensis の栽培根はその野生資源の不足を補完する有望な資源になり得ると考えられる。
    3 種の Glycyrrhiza 属植物を比較評価した結果, G. inflata 根と G. uralensis 根は強い抑制作用を示したのに対し, G. glabra 根の抑制作用は弱かった。 すでに収縮抑制作用成分として G. inflata 根から licochalcone A, G. uralensis 根から glycycoumarin が明らかにされているが, この両成分はG. glabra 根には含まれていない。 このことが G. glabra 根の作用が弱い要因の一つだと考えられる。
    また, Glycyrrhiza 属植物の根の抑制作用と作用成分は根の皮部 (outer periderm) に局在していることが明らかになった。
  • Yasuyuki TSUKIOKA, Kikuyo NAKAO, Kenzo MORIYAMA, Takahiro SHINTANI, Ke ...
    2008 年25 巻2 号 p. 43-51
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    紅参から得られた 70 % メタノール抽出エキス (RG-ext) とその作用成分のラット末梢循環障害に対する改善効果について, さまざまな実験モデルを用いて研究を行った。
    RG-ext は健常ラットの背部皮膚血流を促進し, norepinephrine (NE) による背部皮膚血流低下を改善し, 水浸負荷による血流低下も改善した。 しかし, セロトニン処置ラットには無効であった。 また, RG-ext は doxazosin (DO) による血流増加を回復させた。
    Ginsenoside-Rb1 (Rb1) は NE による皮膚血流の低下を改善し, ginsenoside-Rg1 (Rg1) は DO による皮膚血流の増加を回復させた。 Rb1 を紅参から得られた非サポニン画分 (RW-fr) と併用した場合, その改善作用は Rb1 単独の場合よりも増強された。 しかし, RW-fr 自体には効果がなかった。 白参から得られた非サポニン画分 (WW-fr) は RW-fr のような増強作用を示さなかった。 Rb1 はラット胃液および人工胃液中において20(S)-ginsenoside-Rg3 [20(S)-Rg3] と20(R)-ginsenoside-Rg3 [20(R)-Rg3] を生成した。 Ginsenoside-Rb2, -Rc, -Rd も Rb1 と同様にそれらを生成した. 20(S)-Rg3をラットに静脈内投与すると, NEによる背部皮膚血流低下を改善したが, 経口投与では改善傾向を示すにすぎなかった。 しかし, RW-frを併用した場合には20(S)-Rg3の改善効果は明らかに増強された。
    したがって, RG-ext の末梢循環障害に対する効果は, 胃内で RG-ext の protopanaxadiol 系サポニンから形成された20(S)-Rg3が, RW-fr の何らかの助けにより腸管膜を通して血中に吸収されることにより発現していることが明らかとなった。
  • Fumiyasu ENDO, Tomohiko OGUCHI, Masaomi IKEDA, Takayuki SUGIMURA, Yosh ...
    2008 年25 巻2 号 p. 52-54
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    精索静脈瘤による慢性陰嚢痛に対する精索静脈瘤結紮術は有効であると報告されているが, 手術に替わる非侵襲治療は未だ確立されていない。 我々は精索静脈瘤に伴う不妊症に対し投与されている桂枝茯苓丸を, 静脈瘤の疼痛に対し使用し臨床効果をプロスペクティブに検討した。 桂枝茯苓丸の臨床効果は疼痛の種類, 程度, 持続期間を表す問診票を用い評価した。
    対象は 11 人の患者で年齢は 40 ± 14.5 歳 (平均±標準偏差)。 罹病期間は 6.2 ± 9.4ヶ月であった。 対象患者の精索静脈瘤グレードは 2 例でグレード I, 5 例がグレード II, 4 例がグレード III であった。 平均治療期間は27日で, 著明な副作用は見られなかった。 72.7%の患者で疼痛の軽減あるいは消失がみられた。 VAS による評価では 3.4 ± 1.2 から 1.5 ± 1.5 (p < 0.0106) に有意な減少を示していた。 疼痛の種類も, 治療前で 5 人の患者で違和感, 5 人が鈍痛, 1 人が鋭い痛みを示していたが, 治療後では 3 人が疼痛消失, 7 人が違和感, 1 人が鈍痛に変化しており, 鋭い痛みを示すものはいなかった。
    少数の検討ではあるものの, 本研究より桂枝茯苓丸は精索静脈瘤を有する慢性陰嚢痛に対し, 安全で有効性の高い治療となりうることが示唆された。 今後, 多数例の検討を考慮すべきであると考えられた。
Short Communication
  • Shiro WATANABE, Yasuhiro YAMADA, Kazuki DOBASHI, Masataka SAITO
    2008 年25 巻2 号 p. 55-59
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    われわれはマウスにインドメタシンを投与することにより誘発される小腸傷害に伴う消化管出血および貧血に対して, オウゴンエキスの経口投与が促進的に作用することをすでに報告した。 本研究ではオウゴンエキスの投与はインドメタシンの投与による小腸における潰瘍形成を促進することを見出した。 また, インドメタシンによる小腸傷害に伴って, 小腸における炎症性サイトカイン (IL-1β, IL-6) およびケモカイン (CCL2) の遺伝子発現量の増加が観察されたが, オウゴンエキスを投与することにより, これらの増加が抑制されることも明らかにした。 本研究の結果は, オウゴンエキスがインドメタシン誘発性小腸傷害の増悪させることをさらに明らかにしたものである。 オウゴンのこのような影響には, 炎症性サイトカインやケモカインの発現の抑制を介した免疫・炎症応答反応の修飾が関わっている可能性がある。
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