Journal of Traditional Medicines
Online ISSN : 1881-3747
Print ISSN : 1880-1447
ISSN-L : 1880-1447
30 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Review: Incentive Award, 2012
  • Misato Doui-Ota
    2013 年 30 巻 2 号 p. 51-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    中国では, 目的とする薬効の向上や副作用低減を目的に, 大黄には主に酒製や蒸製の修治が施されてきた。 現在の 『中華人民共和国薬典』 には, 「酒大黄」 と称する酒炒 (酒を吹きかけた後に炙る) 品, 「熟大黄」 と称する酒蒸 (酒を吹きかけた後に蒸す) 品が収載されているが, 修治による効能変化についてはこれまで充分に研究されてこなかった。 本稿では, 本草考証研究と成分研究により熟大黄と酒大黄の本質を調査した。
    熟大黄については, 本草考証研究によると, 解毒作用を期待した大黄は酒製の後に蒸したものではなく単に蒸したものであった。 一方, 成分研究から十分量の酒に浸した後に蒸したものは解毒作用が期待できると考えられる。 更に本修治により瀉下作用が低下すると判断できる。
    次に酒大黄については, 金元代以降から酒炒品は駆血作用を期待して用いていたと考えられる。 本作用を有する修治大黄は酒を吹きかけた後に加熱して製するべきである。
Review: Symposium in the 29th Annual Meeting of Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
Regular Article
  • Misato Doui-Ota, Masayuki Mikage, Nobuo Kawahara
    2013 年 30 巻 2 号 p. 62-71
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    日本では, ショウガの乾燥品を 「生姜」, 湯煎または蒸製品を 「乾姜」 としているが, これらの品質は加工方法の違いに影響される。 我々はショウガの色彩の変化は加熱方法により異なり, その変化は 6-shogaol の 6-gingerol に対する割合 ([S/G]) と相関していることを明らかにした。 すなわち, 蒸製品の a* 値 (赤み) と 6-shogaol の 6-gingerol に対する割合 ([S/G]) の間に正の相関が認められたが, 湯煎品では成分比によらず a* 値はほぼ一定であった。 また, 180℃での加熱品では [S/G] と a* 値に対数曲線上の相関が認められた。 本研究では, 上述の結果を応用して市場品 「生姜」, 「乾姜」 の品質評価を行なった。
     その結果, 大半の 「生姜」 の a* 値は [S/G] と対数曲線上の相関が認められたが, 表面に白味を帯びた検体の a* 値は 2 以下となり, 曲線と離れた場所に位置した。 一方 「乾姜」 の a* 値と [S/G] の関係は, 正の相関を成すもの, [S/G] に関わらず a* 値が 9 付近のもの, a* 値が 8 以下のものの 3 パターンに分かれた。 これらの調製法は順に蒸製, 湯煎, 低温での湯煎品であると判断した。 以上, 色彩と [S/G] の値から調製法が予測できることを明らかにした。
  • Takeshi Ino, Hiroshi Odaguchi, Akino Wakasugi, Tetsuro Oikawa, Hajime ...
    2013 年 30 巻 2 号 p. 72-81
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    目的:慢性耳鳴に対する半夏厚朴湯の有効性を検討すること。
    研究デザイン:プラセボ対照, 二重盲検比較試験。
    セッティング:北里大学病院耳鼻咽喉科
    対象:2011年 1 月から2012年 2 月までに, 3 か月以上続く耳鳴・難聴で受診し Tinnitus Handicap Inventory (THI) が18点以上の成人患者のうち, 試験参加に同意の得られた76例。
    介入:76名が半夏厚朴湯投与群 (38例) とプラセボ投与群 (38例) に無作為化された。
    評価項目:①THI, ②Visual Analog Scale (VAS), ③Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS), ④Short-Form 36-Item Health Survey (SF-36), それぞれの投与前後の変化量とした。 また, 3 つの探索的事後解析を行った。
    結果:THI に関して, 両群で有意差を認めなかった (p = 0.73)。 また, VAS, HADS, SF-36に関しても両群で有意差を認めなかった。 めまいを伴っている群での検討では, 半夏厚朴湯群がプラセボ群より改善している傾向があった (p = 0.006)。 また, 明らかな不安・抑うつがない患者, 半夏厚朴湯証がある患者の検討では, 両群で差は認めなかった。
    結論:全患者の解析では両群に明らかな差は認めなかったが, めまいを伴っている患者では半夏厚朴湯が耳鳴苦痛度を軽減させる可能性があった。 漢方薬を処方するためのより明確な基準や漢方医学の特徴を反映させた臨床研究が必要である。
Short Communication
  • Sansei Nishibe, Shigeharu Yamaguchi, Masateru Hasegawa, Koji Oba, Taka ...
    2013 年 30 巻 2 号 p. 82-90
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は新素材のレンギョウ葉エキスをシトラスエキス, サンシシエキス, カンゾウエキスと混合し, 簡単で有用な抗肥満サプリメントを創出することである。
    実験 1 ではエキス混合物 (MHE) を10週間通常食ないし高脂肪食と混餌でラットに与えて抗肥満効果を調べた。
    通常食では MHE を与えたグループは白色脂肪組織重量に顕著な減少が認められた。 また用量依存的に血清中性脂肪値の減少が認められた。
    高脂肪食では MHE を与えたグループは体重および白色脂肪組織重量に顕著な減少が認められた。 血清中性脂肪, グルコース, インスリン値の顕著な減少, 血清アジポネクチン値の顕著な増加が認められた。
    これら MHE の抗肥満効果は既報の防風通聖散 (BOFU) の研究報告と類似した結果となった。
    実験 2 は高脂肪食で MHE を 4 週間与えたラットの肝臓および脂肪組織と BOFU を与えたものについて遺伝子解析をリアルタイム PCR を用いて行った。 MHE の抗肥満に関する遺伝子発現は BOFU の遺伝子発現とよく類似した。
    MHE は BOFU の抗肥満作用に相当する効果があり, 簡単で有用な抗肥満サプリメントになるものと思われる。
feedback
Top