Journal of Traditional Medicines
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25 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Regular Article
  • Naoko FUSHIMI, Lili WANG, Shunsuke EBISUI, Shaoqing CAI, Masayuki MIKA ...
    2008 年 25 巻 3 号 p. 61-66
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/17
    ジャーナル フリー
    マオウ科の Ephedra sinica Stapf, E. intermedia Schrenk et C.A.Meyer および中国産の E. distachya L. の種間差を明らかにする目的で, 中国の主として内蒙古自治区と青海省で採集したマオウ属植物を外部および内部形態学的に検討した。 その結果, E. sinica と中国産の E. distachya は同一種であること, E. sinicaE. intermedia は内部形態的に茎の皮層中の繊維束数と髄中の繊維数の2要素を考慮することにより明確に区別できること, この形質によってこれら 2 種に由来する市場品や毬果のない押葉標本の種同定が可能であること, E. sinica が分布するとされる青海省東部で採集したマオウ属植物はすべて E. intermedia であり E. sinica は確認できなかったこと, 青海省産 E. intermedia の毬果のない小型株が E. sinica と同定されたと考えられること, よって青海省東部の竜羊峡地区などで採集される麻黄の原植物は E. intermedia と考えられること, などが明らかになった。
  • Katsutoshi TERUI, Yuji FUJITA, Masao TAKEI, Hidehiko AOKI, Shigeatsu E ...
    2008 年 25 巻 3 号 p. 67-73
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/17
    ジャーナル フリー
    トリカブト植物は主に根にアコニチン類 (アコニチン, メサコニチン, ヒパコニチンやジョサコニチン) のような毒性の高いジエステル, ジテルペンタイプアコニチンアルカロイドを含有する非常に危険な植物である。 アコニチン類は死に至る重篤な不整脈を生じる急性毒性の高いものとして知られている。 著者らは事故で生じたトリカブト中毒患者 13 名の致死的な症状を記した。 全ての患者は根或いは葉を摂取後 15~30 分以内に特徴的なトリカブト中毒症状を呈した。 これらの患者では心室頻脈や心室細動等の不整脈が観察され, 患者の 1 名は死亡した。 著者らはこれら患者 13 名中 5 名におけるアコニチン類の血中濃度と不整脈消失の関係を検討した。 消失に要する時間が各々で大きく異なるにも関わらず患者の不整脈消失時のアコニチン類血中濃度は 0.5~1.5 ng/mL であった。 アコニチン類の血中濃度はトリカブト中毒患者の不整脈治療に対して重要である。 従って, 我々の結果はトリカブト中毒患者の今後の治療を行う上で有益な情報となるだろう。
  • Takayuki NAGAI, Teruyo NARIKAWA, Naoki ITO, Tadahiro TAKEDA, Toshihiko ...
    2008 年 25 巻 3 号 p. 74-80
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/17
    ジャーナル フリー
    香蘇散は, 風邪, アレルギー, 不眠及び自律神経失調症などに伴ううつ症状の治療に臨床的に用いられている。 インターフェロン (IFN)-α療法では, 様々な神経精神的な副作用が惹起されることが知られており, 特に C 型肝炎患者の IFN-α療法時に起こるうつ症状はよく問題となっている。 しかし, IFN-αで誘発されるうつ症状に対する香蘇散の抗うつ効果に関しては科学的な検討が行われていない。 本研究では, 強制水泳試験法を用いて, IFN-α誘発うつ様モデルマウスのうつ様行動に対する香蘇散エキスの作用を検討した。 その結果, 香蘇散エキス (1.0 g/kg/day) を14日間経口投与することによって, IFN-α(1.2 x 106 IU/kg/day, 7 日間腹腔内投与) で誘発された無動時間の延長は有意に短縮された。 一方, 香蘇散エキスは自発運動量に影響を与えなかった。 うつ病態において視床下部-下垂体-副腎系が過剰亢進していることが知られている。 IFN-αで誘発された視床下部の CRH mRNA 発現増加及び血清中のコルチコステロンレベルの上昇は, 香蘇散エキスの投与によって抑制された。 以上の結果から, IFN-α誘発うつ様モデルマウスを用いた検討において, 香蘇散エキスは視床下部-下垂体-副腎系の機能の正常化を介して抗うつ様効果を発揮することが示唆された。
Short Communication
  • Kazuki DOBASHI, Emika OHKOSHI, Yuichi FUJII, Masahiro NAGAI, Shiro WAT ...
    2008 年 25 巻 3 号 p. 81-86
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/17
    ジャーナル フリー
    われわれはオウゴン (SR) の水エキスの経口投与がインドメタシン (INDO) を皮下投与することにより誘導される消化管出血や小腸における潰瘍形成を促進することを報告してきた。 本研究は SR エキスがジクロフェナクナトリウム (Dic) の経口投与により誘導される消化管出血や小腸における潰瘍形成に対しても, SR エキスが上記の報告と同様な作用を示すか否かを明らかにするために行われた。 Dic により誘導される潰瘍形成と消化管出血が, SR エキスを投与することにより促進された。 しかしながら baicalin のみを投与しても, Dic による潰瘍形成や消化管出血の促進は見られなかった。 SR を主な構成生薬とする黄連解毒湯 (OGT) の投与は, Dic による潰瘍形成に対しては有意な影響を及ぼさなかったが, 消化管出血を促進した。 われわれの結果は SR を含む漢方方剤には, 非ステロイド抗炎症剤による小腸傷害を促進する作用があることを示唆する。
  • Shinjiro MARUYAMA, Koji YAMADA, Hirofumi TACHIBANA
    2008 年 25 巻 3 号 p. 87-89
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/17
    ジャーナル フリー
    ハマウツボ科のニクジュヨウ (Cistanche salsa (C.A. Meyer) G. Beck) は, 日本では強壮作用を有する和漢薬として使用されている寄生植物である。 我々は以前の研究において, ニクジュヨウ抽出物がヒトのリンパ節リンパ球において, IgM および IgG の産生を増強することを見出した。 さらに, 3,500 Da の分子量カットオフの透析膜を使用して得られたニクジュヨウ抽出液の透析物 (CSD) はヒト由来の B 細胞株である BALL-1 細胞に対して, わずかな細胞増殖活性と共に IgM 産生増強作用を有していた。 しかしながら, 対照的にこの CSD はヒトバーキットリンパ腫由来の細胞株である Namalwa にはアポトーシスと伴う細胞増殖抑制を誘導した。 これらの結果より, CSD にはリンパ球に対して特異的な活性成分が含まれていることが示されたが, これまで CSD に含まれる活性成分の化学的性質の検討は行われてこなかった。 そこで, 本研究では, CSD に含まれる活性成分の化学的性質について検討を行った。 その結果, CSD をオートクレーブ処理しても前述のB細胞に対する2つの活性は失われず, またゲルろ過クロマトグラフィーの結果より, この両活性のピークが異なるフラクションに濃縮されることが明らかとなった。 これらの結果より, CSD には少なくとも2つのタイプの活性成分が存在し, これらは水溶性の高分子成分で熱に安定であることからポリサッカライドであることが示唆された。
  • Hisayoshi NORIMOTO, Kazuo YOSHIDA, Takashi TSUCHIDA, Yasuo MORIMOTO
    2008 年 25 巻 3 号 p. 90-94
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/17
    ジャーナル フリー
    「延辺当帰」 は約70年前に大和当帰を日本から中国東北地区に導入したものと言われている。 実際, 延辺当帰は化学的および遺伝学的に現行品の大和当帰に近似し, そのため大和当帰と同様に生薬原料として利用できることが期待されている。 そこで今回, ベタメタゾンによる瘀血モデルマウスおよび冷水浸漬による冷え症モデルラットを用い, 当帰の代表的な薬理作用 (駆瘀血作用, 冷え症改善作用) について, 延辺当帰と大和当帰, および同じく現行品の北海当帰の比較を行った。
    1) 瘀血マウスでの末梢血流改善効果:3種の当帰エキス (各200 mg/kg) を単回または連続経口投与した群では, 末梢血流量はいずれも対照群に比べて有意に増加した。 その効果は大和当帰が最も強かったものの, 3種の当帰間で明らかな差はなかった。
    2) 冷え症改善効果:3種の当帰エキス (各200 mg/kg) を投与した群では, 冷水浸漬から解除後の体表温の回復値はいずれも対照群に比べて大きかったが, 3種の当帰間では明らかな差は認められなかった。
    以上の結果から, 延辺当帰は現行品の大和および北海当帰と比べて, 少なくとも同等の薬理作用を有していると考えられる。
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