「延辺当帰」 は約70年前に大和当帰を日本から中国東北地区に導入したものと言われている。 実際, 延辺当帰は化学的および遺伝学的に現行品の大和当帰に近似し, そのため大和当帰と同様に生薬原料として利用できることが期待されている。 そこで今回, ベタメタゾンによる瘀血モデルマウスおよび冷水浸漬による冷え症モデルラットを用い, 当帰の代表的な薬理作用 (駆瘀血作用, 冷え症改善作用) について, 延辺当帰と大和当帰, および同じく現行品の北海当帰の比較を行った。
1) 瘀血マウスでの末梢血流改善効果:3種の当帰エキス (各200 mg/kg) を単回または連続経口投与した群では, 末梢血流量はいずれも対照群に比べて有意に増加した。 その効果は大和当帰が最も強かったものの, 3種の当帰間で明らかな差はなかった。
2) 冷え症改善効果:3種の当帰エキス (各200 mg/kg) を投与した群では, 冷水浸漬から解除後の体表温の回復値はいずれも対照群に比べて大きかったが, 3種の当帰間では明らかな差は認められなかった。
以上の結果から, 延辺当帰は現行品の大和および北海当帰と比べて, 少なくとも同等の薬理作用を有していると考えられる。
抄録全体を表示