一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
69回大会(2017)
選択された号の論文の326件中51~100を表示しています
ポスター発表 5月27・28日 食物
  • 梶山 曜子, 前田 ひろみ
    セッションID: P-051
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】地域の伝統食材に対する世代間の意識の違いを明らかにすることを目的に,呉地域に住むさまざまな世代に呉の伝統食材である「音戸ちりめん」に関する意識調査を行った。それらを明らかにすることによって,地域の伝統食材の伝承についての課題を見出すとともに,「音戸ちりめん」を活用した家庭科の教材開発につなげていくための示唆を得る。
    【方法】 調査時期:2015年11月, 調査対象:呉市内在住の10代~80代の方々, 調査方法:呉で行われたイベント「おんどフェスタ」の来場者に直接配布し,その場で回収, 配布部数:58部(有効回答率98.8%)
    【結果と考察】20代以下の若者層はちりめんの認知度が他の世代に比べて低かった。30代~50代の中年層は,ちりめんを手軽に食べることのできるものとの認識が低く,家庭で料理に使用する頻度が少ないために,その子世代である若者層の認知度が低いことが伺えた。60代以上の高齢層は,ちりめんの認知度や嗜好意識も高かったが,3世代同居であることは食べる頻度に影響を及ぼしていなかったことから,家族内での食文化の伝承がなされていない可能性が示唆された。20代以下の若者層には,地域の伝統食材としての「音戸ちりめん」を知る機会が大切であり,その場として学校の役割は重要であると考えられる。手軽食べることのできる音戸ちりめんを使った料理の提案などを行うことで,伝統食材の継承が可能になると考える。
  • 村上 陽子, 宮地 結加
    セッションID: P-052
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 近年、我が国の伝統文化が国際的に注目を集めている。食文化継承の重要性については、食育基本法、食に関する指導の手引き、学習指導要領に記載があり、ユネスコの世界無形文化遺産登録を契機として、国を挙げて食文化の保護・継承の機運が高まっている。我が国の食文化の一つに、和菓子がある。和菓子の特徴として、季節感と色彩の美しさが挙げられる。色彩は和菓子の世界観を表すための重要な要素であり、その組み合わせにより、季節感を繊細に表現している。また、我が国には24節気という伝統的な暦がある。和菓子においても、24節気になぞらえた時候の和菓子が伝統的に作られている。そこで、本研究では、和菓子の色彩構成と季節感の関連について検討した。加えて、菓銘・意匠についても調査を行った。
    方法
    和菓子の季節感と色彩構成の関連を明らかにするために、文献調査を行った。調査項目は、和菓子の種類、菓銘、意匠の具体と抽象の別、色彩構成とした。
    結果 和菓子に用いられる色彩について、いずれの季節も有彩色の占める割合が高かった。色相を分析すると、いずれの季節も暖色が多く、寒色が少なかった。菓銘や意匠については、自然にまつわるものが多かった。
  • 野沢菜漬とすんき漬の継承
    中澤 弥子
    セッションID: P-053
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】昭和58年に長野県の選択無形文化財に指定された信州の伝統的な漬物である野沢菜漬とすんき漬について調査し、その保護・継承の現状と課題について検討することを目的とした。
    【方法】文献調査、アンケート調査および関係者への聞き取り調査を行った。アンケート調査は、長野県内のN短期大学の学生を対象として、漬物、野沢菜漬およびすんき漬についての認知度、食経験、嗜好および食べ方などについて平成28年7~10月に調査した。農村女性および漬物生産者への聞き取り調査は、平成26年12月~平成28年12月に行った。また、野沢菜漬については平成28年度北信州農村女性のつどい(平成28年8月25日)、すんき漬については第23回すんきコンクール(平成28年12月9日)の参加者にも、現状や継承についての聞き取り調査を行った。
    【結果】野沢菜漬は、現在は広く長野県内、一部県外でも栽培、製造されており塩漬や醤油漬に加工されていた。一方、すんき漬は、現在も木曽地方の一部地域でのみ生産される、無塩の植物性乳酸菌で発酵させる漬物であった。長野県内出身の学生が87%の短大生を対象としたアンケート調査の結果(N=158)、野沢菜漬の認知度97%、食経験ありが91%、すんき漬の認知度は44%、食経験ありが12%であった。地元では、漬物講習会の実施や漬物を米粉パンやピザに利用するなどの加工品の開発が行われ、味や加工技術の継承に努めていた。
  • 肉類・乳類に対する嗜好との比較
    戸塚 清子, 島村 綾, 峯木 眞知子
    セッションID: P-054
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的】「和食」が世界遺産に登録されたのにもかかわらず、和食に用いられる魚介類の摂取量は減少傾向にある。幼児に対する魚介類およびその料理の嗜好調査を1991年より5年ごとに行ってきた。幼児の魚介類に対する嗜好および摂取量の状況を把握するために、2016年にもアンケート調査を行った。
    【方法】 調査対象者は、1991年より毎回調査に協力いただいている8地区(秋田・宮城・東京都・栃木・山梨・長野・富山・高知)の保育所に通所する幼児とした。平成28年6月~10月の期間に、3~6歳の保育園児の保護者を対象に行い、調査協力者の総計は923名であった。
    結果】調査に協力した幼児は、男児462名、女児458名、年齢は4~5歳が多かった。魚介類に対する幼児の嗜好は、大好き23.5%、好き44.1%で前回調査(2012年)より大好き・好きの割合は低かった。肉類に対する嗜好は、大好き35.3%、好き39.5%で前回調査より大好き・好きの割合はやや増加していた。乳類に対する幼児の嗜好は、大好き31.3%、好き43.9%で前回調査より低かった。幼児の好む調理法は、焼く86.3%、生・刺身50.2%で、生・刺身は前回より低い値であった。幼児の好む魚介類の種類は、さけ・ます79.8%、しらす66.5%、えび58.1%で、えびの好まれる割合が低くなり、全国的に摂取量が減少していないさけ・ますが幼児にも好まれた。
  • 日本食に着目して
    宇都宮 由佳
    セッションID: P-055
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    研究目的と方法
    1990年代から2000年代初頭急激な経済発展を遂げたタイにおいて、健康志向の高まりとともにヘルシーな日本食が注目され、2007年724店舗だった日本食店は2016年2,713店舗まで増加した。2013年タイ人の日本渡航ビザが免除にされ、来日旅行者が増加し、スーパーやデパートで日本食のイベントが開催されるようなった。本研究では、タイにおける外来食文化、特に日本食の受容実態について、外食産業の動向を踏まえつつ、1997年からの定期的参与観察調査、大学生を対象にしたアンケート(2013年、2015年)及びヒヤリング調査(2016年)から探ることとする。

    研究結果
    タイでの外国料理店は日本食が最も多く、ラーメン店等の専門店に加え、日本にない「回転寿司しゃぶ」がある。食事は、複数主菜、味噌汁にレンゲを用い、緑茶をストローで飲むなどのタイ様式が維持されていた。
    アンケート結果では、好きな日本食が「すし」、嫌いなものは「刺身」であった。タイの「握りすし」は、カニカマ、卵焼き、ツナマヨなどの加熱したネタが多く、色鮮やかで日本のものよりサイズが小さい。刺身は好きと嫌いで2極化していた。ヒヤリングでは、抹茶入りの菓子が人気であった。日本食の価格帯は、緑茶や菓子など手軽なものから高級なものまで幅広い。外食・中食をする頻度の高いタイにおいて、TPOに合わせた多種多様な日本食が受容されていた。








  • -関東を中心に-
    櫻井 美代子
    セッションID: P-056
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】粉食から作る「だんご」について、粉食の種類の違い、日常・非日常での食べ方 違いについて明らかにしたい。
    【方法】中心資料として、大正末期から昭和初期の聞き書きをまとめた、『日本の食生活全集』(農文協)関東地域の、東京・神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨城を用い、だんごについて調査を行った。
     【結果・報告】粉食から作る「だんご」に注目をした。広辞苑等によると、だんごとは、「穀類の粉を水でこねまるめて蒸したり、ゆでたりしたもの」としている。これをふまえて、小麦粉食、米粉食、蕎麦粉食について調査を行った結果、「だんご」と料理名があるものは、多種類の呼称がみられたが、そのなかで、蕎麦粉を使用しただんご料理は今回の調査ではみられなかった。 だんごの行事においては、米粉食では、小正月等でのまゆだまだんごを飾るものや、月見(十三夜・十五夜)等は、ほとんどの地域でみられた。日常では、野菜を入れた汁にいれて食したり、だんごをゆでる・蒸して、きな粉や醤油たれで食されていた。 小麦粉食では、日常に食されることが多く、ご飯代わりに、直に煮込むものや、間食として用いられていた。行事としては、件数は少ないが、盆や彼岸での供物として用いられていた。このように、日常・行事において、多種多様な料理がみられた。
  • 山澤 和子, 園原 風香, 名倉 杏津沙, 西井 瑛子
    セッションID: P-057
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】社会構造の急激な変化は、生活様式の多様化や地域意識の希薄化など多方面に影響を与えている。このような状況下でも正月の行事食「雑煮」は多くの人々に「ハレの食物」として親しまれている。本報告はこの雑煮に焦点をあて、雑煮の喫食状況や伝統的雑煮伝承に対する意識等の調査から、地域性の高い伝統的雑煮の伝承について検討した。
    【方法】平成25年~26年にA県N市の大学に在学する学生(146名)およびその家庭を対象に、正月の食生活の実態および正月料理に対する意識等を調査した。調査対象学生の両親の出身県および当該県在住の116家庭を抽出し、A群(愛知県83件)、G群(岐阜県17件)およびM群(三重県16件)の3群に分け、雑煮について地域的特色を分析した。
    【結果】餅の形・餅の準備の方法・雑煮の汁や具材の種類・正月料理伝承の意思等にA・G・M群間で差を認め、特にA群では市販の餅(59.0%)を30日(41.5%)に購入し、具材はもち菜(36.3%)、G群では具材は小松菜(62.6%)、M群は白みそ汁仕立て(25.0%)の回答が各々他に比し高率を占めた。雑煮の認知度・喫食経験・喫食状況・喫食場所等には群間で大差を認めなかった。また、正月料理伝承の意思はほぼ全員に認められたが、A群では「簡便化して伝承したい」の回答が高率を占めた。これらから伝統的雑煮の伝承には社会生活環境を考慮しながら生産者・販売者・教育者の連携で地域特性を生かした製品の提供が必要であると推察した。
  • 現代の食生活への提案
    中根 一恵, 南 基泰, 洲崎 孝雄, 森瀬 一幸, 小川 宣子
    セッションID: P-058
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】本膳料理は一汁三菜、二汁五菜といった献立構造を完成させた料理方式であるため、料理品数が多く、多くの食材が利用されている。本研究では本膳料理の特性の一つである旬食材の利用や栄養・おいしさの視点から本膳料理の特性をさらに調査し、旬食材の活用法、見た目の工夫、栄養バランスについて現代の食生活へ提案することを目的に検討を行った。

    【方法】宗和流本膳を伝承している高山市内の料亭洲さきの料理を平成28年3月、7月、11月、平成29年1月に調査した。旬の食材は季節ごとに食材、料理を確認した。栄養についてはPFC比率から評価した。また、おいしさの視点として、食欲の増進にも関与するとされる外観を評価項目とした。

    【結果】栄養評価では、たんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギー比率が、それぞれ18.9~21.5%E、28.4~30.7%E、47.8~50.3%Eと理想に近く、旬の食材は、春は小豆菜、菜花、蕨、夏は、天魚、岩魚、鮎、岩梨などが用いられ、夏は川魚の料理が豊富であった。外観は、春は桜花・花弁人参、夏は瓢南瓜、楓冬瓜など季節に応じた飾切りを使用するなどの工夫がみられた。これらの結果から、食欲が低下した高齢者や食に興味がない成長期の子どもなどたんぱく質の摂取が必要とされる対象者に向け、外観の鮮やかさや旬の食材で食欲を増進させ、栄養面ではたんぱく質が豊富な食事の提案が出来ることが示唆された。
  • 伊尾木 将之, 宇都宮 由佳
    セッションID: P-059
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    東日本大震災を中心に、レシピ検索データ上に現れる震災の影響を調査した。
    インターネットの普及にともない、インターネット上に存在する料理のレシピを検索することが一般的になってきている。特にクックパッド株式会社が展開するレシピサービスには非常に膨大な検索が実施されている(2016年12月の時点で、検索利用者が月間6000万を超える)。このレシピ検索には、ユーザの関心が反映されており、現在の日本の食事情が反映されていると考えることができる。
    通常のレシピ検索の状態と、震災直下でのレシピ検索の状態を比較することで、どのような震災の影響があったのかを調査した。
    結果、震災当日は東北地方を中心に大きな影響があり、特に宮城県では検索データが激減しており、震災が大きなものであったことが伺える。一方、この少ない検索データのなかには、当時の利用者が真にどのような料理や調理の知恵を求めていたかが反映されていた。その一つとしてパンに関する料理名や調理法がよく検索されていた。これは、水を大量に必要とする米の代替の主食としてパンを求めたからではないかと考えられる。
    その他、発表ではどの地域、どれくらいの日数、震災の影響が存在しかも合わせて発表する。
  • 磯部 由香, 平島 円, 田中 里奈
    セッションID: P-060
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】学校現場で行われている食育に関する様々な取り組みの中で、毎日繰り返し行われる「給食の時間」での指導は、食に関する指導を進めていく中で、極めて重要な役割を担っている。学校現場での給食指導の実態の把握を目的に調査を行った。
    【方法】2015年に栄養教諭を対象に「給食時の教員の指導の内容」「教員からの給食指導についての相談内容」について、小学校教職員を対象に「これまでの給食指導において、苦労したこと、困難に感じられたことの具体例と解決策」について、アンケート調査を行った。また、小学校15校から給食指導マニュアルを収集し、分析を行った。
    【結果】「食に関する指導の手引」に記載されている給食の時間に指導すべき内容の12項目中10項目については、調査対象の7割の学校において「多数」または「半数」の教員が行っていた。しかし、「食品・栄養バランス」や「食文化」に関する2項目については指導を行っている教員は少なかった。給食指導における一番の課題は偏食に関する指導であるが、個人への対応が多様であることから指導方法の一般化が困難なため、マニュアルへの記載はほとんどなかった。偏食指導について、アンケート調査および文献から実践事例を収集したところ、「食べ物や食べ方に対するアプローチ」「子ども自身への働きかけ」「環境を変える」など、様々な指導方法が試されていた。
  • 小学生のアンケート結果より
    森脇 弘子
    セッションID: P-061
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 近年,小学生において,生涯にわたり健全な心身を培い,豊かな人間性を育む食育の更なる推進が求められている。小学生が食に関する経験を通じて知識と食を選択する力を習得し,健全な食生活の実践につなげることが重要である。また,小学生の食生活は保護者の影響を受けている。そこで,小学生の親子を対象とし,望ましい食事量や食事バランスを簡単に知ることのできる弁当箱ダイエット法による料理教室を実施した。
    方法 2013~2015年の8月,広島市内のA公民館で料理教室を実施した。対象者は小学生とその保護者,内容は弁当箱ダイエット法の説明,調理の説明,参加者による調理実習,弁当の試食とした。参加者は小学生37名,保護者24名であり,教室の最後に小学生を対象にアンケート調査を行った。調査内容は弁当箱ダイエット法の理解と実習の評価,家庭でのお手伝い,家庭での実践や料理教室への参加についてであった。
    結果 弁当箱ダイエット法の理解と実習の評価(自分に合った弁当箱のサイズの理解,料理の組み合わせの理解,それぞれの調理法の理解,彩りのきれいな弁当になったか,弁当の中身は動かずつめられたか)は9割以上ができていた。食事づくりのお手伝いはすべての者がしていた。家庭での実践や次回料理教室への参加は9割以上が肯定的な回答をしていた。以上のことより,料理教室により望ましい食事量や食事バランスを理解することができた。今後,家庭での実践がされているかなど,長期の介入を行うことが課題である
  • 柿山 章江, 久木野 睦子
    セッションID: P-062
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】シュガークラフトはイギリスで発祥した砂糖を使用した繊細で優美な細工を施した装飾菓子である。シュガークラフトの主な技法である「シュガーペーストワーク」は、シュガークラフトを初めて行う学生にとって難しい操作で、シュガーペーストをうまく扱えるかどうかが出来た作品に影響を及ぼす。そこで本研究では、大学の授業でシュガークラフト行う場合、学生が扱いやすいペーストについて検討した。【方法】①市販されているシュガーペーストについて、その特徴を調べた。②入手可能なシュガーペースト2種(AおよびB)を購入し、A100%、B100%、A50% B50%、の3種類のペーストを調製し、これらのペーストを使用して、学生8名に180分間の授業時間内でベビーシューズを製作させた。【結果】①入手したシュガーペーストAは粉末状で水を加えて使用するタイプ、Bは粘土状であった。②シュガーペーストAは乾く時間が早く、 陶器のように固くなり、長期保存する場合に適していると考えられた。しかし、操作に時間のかかる初心者が扱う場合、乾燥しやすいため途中で成形しにくくなった。一方、シュガーペーストBはすぐには固くならず、柔らかい状態を保つことができるが、シュガーペーストに慣れていない学生には取り扱いが難しかった。シュガーペーストAとBを同量配合したペーストは成形しやすく、シュガークフトを初めて行う学生に取り扱いやすいペーストであると考えられた。
  • 岸田 恵津, 石井 純代
    セッションID: P-063
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 メタボリックシンドロームに着目した特定健康診査の標準的な質問票には,夜遅い食事に関して「就寝前2時間以内の夕食・夜食をとることが週3回以上ある」に該当するか否かを問う項目がある。そこで就寝前2時間以内の夕食及び夜食の頻度と肥満や食習慣等との関連を明らかにすることを目的とした。
    方法 2015年3月,男性の大学事務職員68人を対象に留め置き法で質問紙調査を実施した。質問項目は「就寝前2時間以内の夕食(就寝前夕食)」と「夜食」の摂取頻度の他,体格(BMI),食習慣,食意識,健康習慣等であった。就寝前夕食及び夜食の頻度より,「週に3回以上」に該当するか否かで各2群(就寝前夕食該当群・非該当群/夜食多群・夜食少群)に分け,質問項目との関連をカイ2乗検定等で調べた。
    結果 有効回答者は56人(回収・有効回答率82%),就寝前夕食の該当群27人(48%)・非該当群29人(52%),夜食多群11人(20%)・夜食少群45人(80%)であった。就寝前夕食の頻度とBMIには関連がなかった。就寝前夕食の頻度と関連が認められたのは,年齢,食事や健康に対する意識,睡眠時間であった。就寝前夕食該当群は比較的年齢が若く,食事や健康の現状に対してネガティブに自己評価している者が多かった。夜食の頻度とBMIとは関連がなかったが,夜食多群では20歳からの体重が3kg以上増加した者の割合が多く,飲酒アルコール量が多かった。また,就寝前夕食と夜食の頻度が両方多い群は,他群よりも平均BMIが高く,肥満に該当していた。
  • 片平 理子, 金坂 尚人, 千歳 万里
    セッションID: P-064
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 平成27年4月に子ども・子育て支援新制度が開始し、放課後児童クラブ(以下、学童)の質の向上と量の拡充が進んでいる。学童のおやつは、「放課後児童クラブ運営指針」に補食としての役割に配慮して提供するとされているが、内容や量は示されていない。全学年児童の受け入れが進む学童の望ましいおやつのあり方を探る一助とするため、神戸市A学童を例としておやつ提供の現状と課題を明らかにする。
    方法  指導員へのアンケート調査と、秋季12日間の業務日誌、児童(16~66人/日)が記入した喫食調査票から、指導員の意識や知識、おやつ内容と喫食量(延べ659人分)を調査した。
    結果  おやつは市販の菓子類やジュース類等が分類して並べられ、児童各々が組合せて喫食するバイキング方式で提供された。内容は日々異なり、可能な組合せ数は1~28まで日により幅があった。供給エネルギーは133~379kcal(中央値248)で、組合せ数が多いと供給量の幅も広がり量の調整が可能であった。供給脂質エネルギー比は15~65%(中央値38)と高く、購入時に注意が必要である。一方、喫食量は個人差が大きく、組合せの全てを喫食しない児童が多いため、摂取エネルギーは最大供給エネルギーの50~70%程度となった。新体制下で体格や発達段階の異なる全学年の児童に適切におやつを提供するには、指導員に補食の役割を周知し、目安量や具体的な提供例が示されることが望まれる。
  • 伊藤 淳子, 内山 裕美子, 長田 朱美, 佐藤 麗奈, 豊田 久美, 二瓶 滋美, 丹羽 絹子, 阿南 豊正, 大森 正司
    セッションID: P-065
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 子どもがこの世に誕生して最初にする行動は「食べる」〈母乳を数〉という行動である.お腹が満腹になると休み,目が覚めるとまた母乳を飲むという行動を繰り返し,体重はどんどん増加する.「三つ子の魂,いつまでも・・・」の諺の通り,食べるという行動は人の発達にとって重要な役割を演じるものである.今回,0-5歳の保育園児を対象に,食の行動,あり方について分析し,知見が得られたので報告する.
    方法 ①0-5歳の保育園での食事風景を写真に収め,この写真を分析対象資料とした.写真での幼児数は0歳児のみ6名であったが,1~5歳児ではそれぞれ17~21名である,②「家政科学技術分類表」(CHE),食行動分類表CFB(試作第一版)等を参考にして,10進数形式4桁の事後組合せ分類表としての骨格はそのままに,食行動分類表(CFB第二版 2016)を作成した.③分析対象資料である写真をよく観察し,人の全身,各部位の動作を多観点から捉え,CFBにあてはまる4桁コードを抽出(インデクシング)し,入力した.④今回は7000代(食行動に関するコード)のみを用いてインデクシングを行った.⑤入力されたデータから,単純集計後,出現頻度,共出現頻度,累積出現頻度,連関度等を算出し,0‐5才児全体,及び各年代ごとの比較解析を行った.
    結果 ①0-5歳児の幼児一人当たりのコードの数は23-28個であった.②各年代の累積出現頻度を算出したところ,0と1歳児のコードの種類は13種,2-3歳児は21種,4歳児は20種,5歳児は18種と年齢が進むにしたがって,少ないコードの種類で50%に達していた.③累積出現頻度図を0-1歳児と4-5歳児を比べると,低年齢児の曲線の方がなだらかであった.
  • 土海 一美
    セッションID: P-066
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】不適切な生活習慣が将来の生活習慣病の罹患に影響を及ぼすことは、良く知られている。特に大学生は、食事、運動、精神的健康の全てに何らかの問題があると報告されている。そこで、食事を改善すると精神的健康が高まるのではないかという仮説を立て、大学生の食事と精神的健康度との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】A大学1年生、女性74名を対象とし、平成28年4月に調査を実施した。質問紙により年齢、身長、体重、BMI、身体活動レベル(PAL)を、精神的健康度は精神健康調査票(General Heath Questionnaire-12, GHQ-12)を、食事摂取状況は簡易型自記式食事歴法質問票(Brief-type self-administered Diet History Questionnaire , BDHQ)を用いた。【結果及び考察】BMIは20.5±2.3、PALは1.56±0.35、GHQ-12得点は3.34±2.5であった。食事摂取状況については、エネルギー1,407±398kcal、たんぱく質50.2±16.4g、脂質42.5±15.6gであった。入学当初の不安定な時期に調査を行ったが、先行研究と比較したところ、GHQ-12得点に有意差は認められなかった。今後、食習慣に関する調査の追加や、幅広い年代での調査、縦断調査、介入調査をすすめていくことが必要である。
  • 石見 百江, 冨永 美穂子, 湯浅 正洋
    セッションID: P-067
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】日本の食文化や郷土食伝承が失われつつある現代,その背景には食生活の多様化や核家族化,問題の個別化がみられる.そのような中,子どもたちへ望ましい食教育を実施するために,保育所の食教育が保護者の郷土食伝承意識に与える影響を明らかにすることを目的とした.
     【方法】平成28年6月~11月にA園4~6歳児(32名),B園4~6歳児(37名)の保護者へ留置法によるアンケート調査を実施した.調査内容は幼児・保護者の属性,食生活状況,郷土食伝承実施の有無,郷土食伝承に対する意識だった.調査項目の調査園間や保護者の回答間による比較解析をカイ二乗検定により行い,p<0.05で有意差ありと判定した.
    【結果】A園は食教育を実施する常勤栄養士がいたがB園に専門職配置はなかった.「子どもと郷土食の話や調理体験をした」人はA園17名(53.1%),B園7名(18.9%)だった.また,食育活動をするA園がそれらを行っていないB園と比較して「郷土食伝承の必要性がある」と考える保護者の割合が高かった.伝承方法は「保育園での教育」が最も多く,「家庭伝承」,「地域の方のご指導」の順だった.一方,「郷土食の話・体験あり」と回答した保護者と「体験なし」と回答した保護者の間に郷土食伝承に対する意識差が認められた(p<0.05).伝承しない理由を「郷土食の知識が無い」と回答しており,保護者の自己効力感を高める働きかけが必要と考えられた.
  • 松浦 亮太, 築地原 里樹, ガルシア リカルデス グスタボ アルフォンソ, 丁 明, 高松 淳, 小笠原 司
    セッションID: P-068
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    マナーやプレゼンテーション技術を客観的に評価し、改善するために、自分自身の行動をビデオで撮影し、振り返ってみるといった方法がある。そのためには目的の映像の頭出しや再生を繰り返す必要があり、撮影された映像が長くなれば長くなるほど、手間が増大する。必要な情報のみを要約した映像が仮に自動的に作成されたとしたら、振り返りにかかる手間の軽減が期待される。 本研究では、画像処理技術を使って、元の映像を短くまとめた要約映像を生成する方法を構築する。具体的には、食事の場面を撮影し、摂食中の映像のみを抜き出し、要約することを試みる。実際に要約された映像を閲覧することで、その効果を検証する。 計算機に目的の動作がどのようなものであるかを提示し、そこから機械学習を用いて自動で判定する必要がある。本研究では、不特定多数の人の行動認識に比べ、ある特定の人(服装なども同じ)の認識のほうが簡単であるという事実に基づき、ある特定の人に特化した機械学習をおこなうことで、提示の手間を軽減する。 実験では,複数の被験者の食事映像に対して提案手法を適用することで、箸を用いた摂食動作の約85%が抽出できた。摂食判定の結果に基づいて要約された映像の長さが,元の映像の約10%に短縮されることを確認した。要約された映像を閲覧することで,食べる順番、三角食べ、食べるときの姿勢、食事のテンポ、が人目で簡単に判断できることを確認した。
  • 和井田 結佳子, 由田 克士
    セッションID: P-069
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的
    川上小は1970年代の「地域に根ざした教育」実践で知られる。当時の給食は教育の一部に位置づき地域と連動したものであり、食文化教育の観点から高く評価されているだけでなく、今日における第三次食育推進基本計画の基本的な取組方針全7項目と包括的に合致する食育実践であった。しかし、これまでどのような経緯で包括的食育実践(以下、本実践)に至ったかは明らかでない。そこで本実践の根拠がどう確立し共有されたかを検討した。

    方法
    2016年10月24日、1970年代当時教頭・教諭・用務員兼調理員計3名の方にインタビュー調査を行った。また、教育実践の一次資料、郷土資料等の文献調査を行った。

    結果
    1970年代末までの給食は3つの実践期①1939年頃~戦前戦後補食給食期、②1960年~弁当米飯給食期、③1976年~自校炊飯米飯給食期に分けられた。本実践は③自校炊飯米飯給食期以降に始まりその期間は10年ほどであった。本実践に決定的な影響を与えた出来事は2つあり、1つは1970年に実施された川上地域実態調査運動である。この調査運動で地域と学校が実践の根拠となる共通の課題を見出し解決に向けて連携を深めていた。もう1つは「給食調理員は職員会議に参加し提案を行うこと」が1975年教育方針に明記されたことである。これにより給食の存在が具体的に学校教育の一部とされ、継続的に課題共有が図られたことで本実践に至ったと考えられる。
  • 木下 友理子, 河本 真由美, 城野 由加里, 山崎 圭世子, 坂番 和, 松本 楓子, 竹村 理子, 米浪 直子
    セッションID: P-070
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的:近年、女性においてBMI18.5未満のやせの割合が増加しており、特に20歳代は生活時間の乱れや朝食欠食の割合も多く、次世代を育む若年女性のやせの問題は深刻である。本研究では、女子大学生を対象に食習慣および生活習慣の意識についての調査を行い、体格との関連について検討した。方法:大阪市および京都市内の大学に在籍する女子大生421名を対象とし、2015年10月~12月に質問紙調査を実施した。有効回答数は379名(回収率90%)であった。結果:50項目の回答について因子分析を行った結果、「外食・中食の自己抑制の意識」「食事摂取の意識」「食品の安全性の意識」「運動の意識」「食事のマナー・時間の意識」「食品の選択の意識」「体重管理の意識」の7因子が抽出され、全ての因子間に有意な相関が認められた。BMI18.5未満群と18.5以上群を比較すると「体重管理の意識」の得点において、18.5未満群で有意に低値を示した。重回帰分析の結果から、BMI18.5未満群の「体重管理の意識」因子には、「外食・中食の自己抑制の意識」と「食品の選択の意識」の2因子が関連し、18.5以上群では「運動の意識」因子を入れた3因子が関連していた。以上のことから、女子大学生のBMI18.5未満群では、「外食・中食の自己抑制の意識」、「食品の選択の意識」を向上させて「体重管理の意識」を高める必要があることが示唆された。
  • 山崎 圭世子, 藤井 佐紀, 坂番 和, 木下 友理子, 米浪 直子
    セッションID: P-071
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】朝食摂取の有無は味覚に影響を与えることが報告されている。しかし、月経周期を考慮した朝食摂取と味覚との関連は明らかになっていない。そこで本研究では、朝食摂取状況と月経周期が味覚に及ぼす影響について検討した。
    【方法】健常な女子大学生を対象とし、朝食を毎日摂取している者(摂食群)28名、欠食習慣がある者(欠食群)70名について味覚検査および月経周期に関する調査を実施した。味覚感受性・嗜好性検査は、起床時、9:00、12:00、15:00、18:00、就寝前の計6回実施した。甘味1%および5%、塩味0.1%および0.5%、酸味0.01%および0.05%の検査液を用い、ビジュアルアナログスケールにより評価した。味覚閾値検査は、12:00および15:00の2回実施した。甘味0.3~1.2%、塩味0.3×10-1~0.75×10-1%、酸味0.2×10-3~0.2×10-2%の各10段階の濃度の検査液を用い、検知閾値および認知閾値を測定した。
    【結果】甘味5%溶液を用いた味覚感受性検査において、摂食群では12:00の感受性は就寝時よりも有意に高く、12:00をピークに就寝時にかけて低下する日内変動がみられた。低温期では2群間で甘味感受性および閾値に有意差はみられなかったが、高温期においては、欠食群は摂食群に比べて甘味感受性の低下がみられ、また12:00の甘味検知閾値が有意に高かった。これらのことから、朝食欠食と月経周期の両条件が甘味感受性に影響する可能性が示唆された。
  • 朝原 頌子, 今川 真治
    セッションID: P-072
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 小鴨ら(2015)は,幼稚園児と母親への食育の一環として,親が普段調理しない共通の献立を弁当に入れることを指示した。その結果,子どもたちが同じ献立を楽しんで食べ,家庭での親子の会話が増えたことにより,調理に対する親の意識も変化した。弁当の作り手である親の意識は子どもの食経験や心身の発達において重要である。本研究では,日ごろの弁当作りに対する親の意識を明らかにし,弁当作りを通した今後の食育について考察することを目的とする。  
    方法 F幼稚園に在籍する3~5歳児86名の親を対象に,日常の弁当作りや子どもへの食指導に関するアンケート調査を実施した。回答者は全て母親であり,78名から回答を得た(回収率90.7%)。また,全園児を対象に,昼食時に弁当の写真撮影を行った。  
    結果 3,4歳児では,弁当作りに対し肯定的または否定的な感情を持つ親が約半数ずつ見られたが,5歳児では否定的に捉える親はいなかった。これは,弁当作りを長く経験するほど親に慣れや安心感が生まれるためであると考えられる。また,3,4歳児では子どもの苦手なものよりも好きなものを弁当に入れる親が多かったが,5歳児では苦手なものを入れる親の方が多かったことから,子どもの成長とともに親が食育において重視する内容が変化していることが分かった。さらに親の意識と弁当内容との関係について,実際の弁当の写真から考察する。
ポスター発表 5月27・28日 被服
  • 福田 典子
    セッションID: P-073
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年染料廃液の処理問題が深刻化している。これまで促染、均染、堅牢などの向上を目的に多様の助剤が使用されている。補助生地などの添加によって、助剤代替効果を得ることを狙って、異なる組成繊維が同一染浴中に共存した場合の酸性染料の分配に注目し、繊維の組み合わせおよび面積比の染着挙動への影響を明らかにすることを目的とした。
    方法 酸性染料はOrangeⅡを、生地は毛(W)、綿(C)、ポリエステル(P)、ナイロン(N)を、助剤は酸、中性塩を用いた。布の表面反射率L*値は表裏4か所を測定した。染色はねじ付きキャップ付き三角フラスコ50mlに染液と白布6枚を投入し行った。異なる組成2種類の面積比を変えて検討した。インキュベータ内で、一定の温度(40℃)時間(10分)速度(120rpm)で処理後、純水すすぎ、風乾を基本条件とした。染色後の表面反射率からF値(k/s)を算出した。
    結果 綾薄手Wにおいては40℃以下の時、P共存系はP非共存系に比べてWが濃色化する傾向が得られた。一方、75℃の場合はWのみの場合のK/S値がP共存系のそれに比べて大となった。P、C、Nについても同様に2種共存での検討を行ったが、P共存の影響が明瞭であったのは、Wであった。酢酸添加によりWは濃色化したが、P共存においてもWの濃色化傾向が認められた。WとPの面積比の影響を検討したところ、Pの面積比が増大するほど濃色化に有効であった。
  • 天木 桂子
    セッションID: P-074
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的:草木染めは,植物に含まれる天然染料を用いた染色で,古来から広く行われている.しかし天然染料からは得られる色の種類が少なく,多くは黄-茶系である.藍からは青,茜からは赤が得られるが,緑系に染まる天然染料はあまりない.本研究は,緑色を得るため古くから藍と併用され,植物染料では珍しい塩基性染料である黄はだに着目し,染料の抽出,染色を行ってその特性を明らかにするとともに,水洗浄を行って洗濯堅牢性を評価した.
    方法:黄はだは内樹皮の黄色部分(黄檗)を乾燥したチップ,さらに含有染料の主成分であるベルベリンを用いた.黄はだ2gを水50mLで,80℃,60分間振とう抽出し,抽出液とベルベリン水溶液の吸収スペクトルから,黄はだ1g中のベルベリンを定量した.染色は,綿,毛,アクリルに対して2%owf,pH=4,7,10,80℃,60分条件下で,媒染剤としてアルミと銅を,さらに重ね染めを行った.洗濯堅牢度は,染色布を水中で40℃,30分間で洗浄し,洗浄前後のΔEから評価した.
    結果:①黄はだ1g中のベルベリン量は,0.05gであった.②黄はだ抽出液とベルベリンは,タンパク質系繊維とアクリルに対して染色性,洗濯堅牢性とも優れていた.③染色性は,抽出液,ベルベリンともpHは中性,無媒染またはアルミ先媒染が効果的で,水での抽出,染色が可能な染料と判断された.④ほとんどの繊維に重ね染め効果が現れ,洗濯堅牢性もわずかに向上した.
  • 細谷 美帆, 小原 奈津子, 下村 久美子
    セッションID: P-075
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 ベトナム南部のタンチャウ村では、黒檀の実を用いて絹布を黒く染める伝統的技法がある。この技法で染色された絹布は光沢があり独特の風合い・質感をもっている。しかし、その染色工程は多くの労力を必要とするために、将に失われようとしている染色技法である。本研究では、この伝統染色が絹布に与える効果を明らかにすることを目的とする。
    方法
    試料:ベトナム・タンチャウ村で織られた斜文織りの絹布(Dと略)、これを現地の手法で黒檀の実で染色した絹布(ND)、および比較試料として同絹布を市販の合成染料(酸性染料)で染色した絹布(SD)。実験:3種の試料布について、染料の付着状態、織り密度、織り組織を顕微鏡で観察し、厚さ、質量を測定した。また、染色堅牢度、耐光性、光沢度、保温率、通気性、ドレープ特性、風合い等の消費性能を測定評価した。
    結果
    Dの染料は繊維内部に浸透することなく、繊維表面に厚く付着していた。この結果、繊維および糸は太くなり、布中の糸間隙は狭くなったため、保温率、通気性は低下した。染色によりDの質量はNDの2倍となり、ドレープ性は向上した。また、染料が付着し繊維や糸の自由度が減少したため、引張り、圧縮、せん断特性においてDはかたくなり、回復性も低下した。一方、布の表面はなめらかになり、凹凸は少なく、光沢もSDに比べて高かった。また、染色堅牢度もSDに比べて高く、染色によってキセノン光に対する変退色や強度低下も抑制された。
  • 洗浄条件、汚染布別洗浄力
    井上 美紀
    セッションID: P-076
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:本研究は、大豆の廃液(煮汁)に着目し洗浄剤への利用を目的としてその可能性を検討している。これまでの研究で煮汁の抽出条件、素材への影響を検討し、さらに洗浄実験で大豆煮汁が一定の洗浄力を有する事などを明らかにした。本報告では、引き続き洗浄条件の影響を詳細に検討するとともに、EMPA汚染布を用いて洗浄実験を行い比較した。
    方法:大豆煮汁(水抽出液)は、大豆を浸漬後、煮熟しろ過して得た。比較洗剤は中性洗剤と石けん洗剤で、標準使用量を基準に用いた。試料は湿式人工汚染布、EMPA101(綿)と104(綿・ポリエステル)汚染布を用いた。洗浄はターゴトメーターで行い、浴比1:30、時間10分、硬度20~180ppm(塩化カルシウム2水和物で調整)、温度15~40℃、回転速度120rpmとした。洗浄力は洗浄前後の汚染布の表面反射率を測定し、クベルカームンク式より求めた。
    結果:硬度別洗浄実験では、石けん洗剤のような硬水での洗浄力低下が大豆には見られなかった。洗浄温度別実験より、大豆は15℃と40℃で約10%の差が見られた。またEMPA汚染布での洗浄実験では、EMPA104での大豆洗浄剤は中性洗剤より低い値を示したが、EMPA101では石けん洗剤より洗浄力は低い値を示すが中性洗剤と同程度で、湿式人工汚染布での洗浄実験と同様の傾向を示した。
       なお、本研究はJSPS科研費 JP15K00760の助成を受けたものです。
  • 熱海 春奈, 小松 恵美子, 森田 みゆき
    セッションID: P-077
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 環境負荷の少ない土顔料を用いた布の染色方法を開発している。土顔料には,地域の特性を活かしたものにするため,北海道剣淵町で採取される“剣淵粘土”を用いている。布への粒子付着には機械力が大きく関わっている。本研究では,布が染色装置から受ける機械力の影響を調べるため,MA値を用いた機械力の数値化を目的として機械力測定実験を行った。
    方法 機械力の測定は,デンマーク技術研究所によるMA試験法(D.T.I法)を改変した片山らによる方法に準じ,本研究の染色条件に則って更に調整して行った。染色装置には,水平振盪装置(TBK202AA,東洋製作所)及び垂直振盪装置(万能シェーカーAS-1N,アズワン株式会社)を用いた。
    結果 MA試験法は,布の中央に同一直径の穴を打ち抜き,処理後に現れ出たタテ糸及びヨコ糸の本数を基準に沿って計測し,MA値とする方法である。処理時間とMA値の関係を調べた結果,全処理時間で水平振盪装置よりも垂直振盪装置の方がMA値は高くなることがわかった。また,近似曲線を求めたところ,時間の増加とMA値の増加は比例関係に近いことが明らかとなった。さらに,計測していなかったが機械力を受けていると考えられる糸があった。布が受けている全ての機械力を反映させるため,それらを計測することとした。この結果,近似曲線における相関係数が水平振盪処理・垂直振盪処理ともに更に高くなり,1に近づいた。
  • ―注染型紙について―
    川又 勝子, 佐々木 栄一
    セッションID: P-078
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 大正期から昭和50年代にかけて、仙台地方では注染による浴衣、手拭の染色が多数行われた。これまでに、仙台地方の染色製品等について明らかにするために、当時使用された注染用型紙1,049枚の調査と文様の電子保存・電子的補修を行った。引き続き、調査対象の染色工場所蔵の型紙保存箱第7番(全116枚)の注染用型紙について調査した結果を報告する。
    方法 注染用型紙の保存状態の調査と計測を行った後、CCDセンサー・イメージスキャナによる型紙文様の電子化を行い、文様等の型紙形状を調査した。また、破損文様は汎用フォトレタッチソフトを用いて電子的に補修した。
    結果 破損・欠損箇所のある型紙は116枚中84枚と多数を占め、その多くが型紙補強のために施された紗の破損であった(23.8%)。また、文様部分(型地紙)の破損までには至っていないが、紗の劣化が著しいために今後文様部分の破損へと確実に繋がるであろう資料もみられた。さらに、紗の重ね張りや(10枚)テープによる紗の補修跡がみられるもの(2枚)もあり、紗の絹糸は染色工場で型紙が使用されていた段階でも補修が必要なほど劣化が早いことが分かった。柄行については殆どが名入れ型紙で、名入れ手拭が大部分を占めた(87.1%)。一方、文様分類の結果、文字(115枚)、幾何文様(30枚)、植物文様と動物文様(各12枚)などが見られた。なお本研究はJSPS科研費24700780、16K00791の助成を受けて行った。
  • 佐々木 麻紀子
    セッションID: P-079
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 リンゴ剪定枝の樹皮を用いた染色を試み廃棄される素材を再利用することについて検討した。 方法 試料染材は4月下旬に剪定した長野県佐久市のふじリンゴの剪定枝樹皮部分を自然乾燥し、抽出時に約0.5~1cmに裁断して使用した。試布は多繊交織布(JIS)及び10号縮緬風紬(絹100%)である。浴比1:100とし、濃度を25~200%owfと変化させ、1液から3液まで煮沸抽出し、各抽出液で試料布を染色した。媒染剤は硫酸鉄10%、酢酸銅10%、酢酸アルミ20%、スズ酸ナトリウム10%である。染色布は色差計でL*値a*値b*値を測定し比較した。耐光、洗濯、摩擦はJISに準拠した方法で行い評価した。  結果 絹が安定して染まり抽出液は3液まで使えるが色は薄くなった。また1液では黄み、2・3液では赤みのある色に染まる傾向があった。染色布のL*値a*値b*値から、150%owfと200%owfの数値の変化は小さいため、染色濃度は150%owfが適していた。リンゴ剪定枝は媒染剤によって発色が異なることが確認できた。染色堅ろう度は洗濯試験で鉄媒染布は最大4-5級、銅は最大3級、アルミは4-5級の変退色があり、添付の絹はこれらの媒染剤の変退色と同程度の汚染が見られた。摩擦試験において湿潤状態は乾燥状態より1級から2級程度染色堅ろう度が低くなったことから、摩擦に弱く色移りしやすかった。以上のことからリンゴ剪定枝で絹の染色は可能であり、廃棄される剪定枝の再利用ができることが分かった。
  • 柿沼 愛, 宮坂 樹里, 小林 泰子, 岩﨑 潤子
    セッションID: P-080
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 環境に配慮した天然素材を用いて染色を行い、その消費性能について評価し、衣類への展開を検討した。
    方法 試料布は羊毛モスリンと絹羽二重、染料はクローブ、媒染剤は硫酸カリウムアルミニウムを用いた。試料布を先媒染し、染料を10倍の水で煮出した抽出液に試料布または媒染布を入れて80℃で染色した。染色性は、K/S値で評価し、耐光、洗濯、汗、摩擦堅ろう度試験は、JIS法で行い、目視および式差で評価した。アンモニアと酢酸に対する消臭性は、ガス検知管法で行い、羊毛染色布の大腸菌、MRSAに対する抗菌性は、(一財)ニッセンケン品質評価センター東京事業所に依頼した。
    結果 染色羊毛布では、媒染の有無によるK/S値の差はわずかで、染色絹布では、媒染により波長220~460 nm付近でK/S値が増加した。耐光堅ろう度は、染色布の色が濃くなり、色差値では赤味、黄色味が僅かに増した。洗濯堅ろう度は、変退色、汚染ともに、ほぼ5級であった。アンモニア残存率は、試験開始後1分で60%、30分で97%と高い消臭性を示した。大腸菌、MRSAに対する抗菌活性値は2以上で、抗菌性が認められた。クローブの主な成分であるオイゲノールは医療分野でも使われている成分であり、殺菌性が認められている。これらの結果より、衣料品への展開は可能と考えるが、さらに高い堅ろう性と機能性の検討を行っていく。
  • 都甲 由紀子, 松尾 和樹, 佐藤 恵利菜, 小池 加菜子, 澤水 夏姫, 西口 宏泰
    セッションID: P-081
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 シチトウイとイグサは畳の材料である.工芸品などの製品の多様化・高付加価値化のため,シチトウイとイグサの染色について天然染料のキハダを用いて検討した.また,染色性に及ぼす前処理の影響を調べ,それぞれの構造との相関について検討した.
    方法 シチトウイとイグサをキハダで染色した.浴比1:100,100℃で20分間攪拌して水に色素を抽出後に浴比1:50,80℃,100cpmで60分間染色した.染色の前処理として蒸し処理と灰汁炊き処理を行い,染色性への影響を調べた.染色結果は分光色差計(日本電色NF777)による測色(L*a*b*,ΔE*,K/S)と目視で評価した.シチトウイとイグサの断面と側面を走査型電子顕微鏡(日立TM3000)により観察した. 
    結果 キハダにより、シチトウイもイグサも均一にある程度の濃さで染色できた。前処理で蒸しても染色結果はほぼ変わらず、灰汁炊きの前処理ではその処理による変色の影響を受けた。 キハダで染色したシチトウイとイグサは蛍光を有することを確認した。 シチトウイの髄の構造は比較的密度が低く隙間が不均一で,垂直方向に細胞壁が見られないのに対し,イグサの髄の構造は網目状でスポンジのような海綿状組織であった。 染料の主成分のベルベリンの蛍光特性と比較し、蛍光画像、スペクトル解析によって、シチトウイとイグサの染液の浸透性、染着特性に差異がみられ、構造との相関性について議論した。
  • 森 俊夫, 浅海 真弓, 遠藤 祐里, 吉岡 陽一郎
    セッションID: P-082
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 従来,しわ外観の評価はしわレプリカと観察者が比較し,目視判定によりレプリカの等級をつける方法であった.本研究では,従来の目視によるしわ等級評価法に替えて,商品の性能の差別化がしやすく消費者にもわかりやすい新しいしわ評価法を構築することを目的とした.
    方法 試料布(日清紡提供)として綿,麻,毛,絹,ナイロン,アクリル,ポリエステルなどの白布8種類と綿・ポリエステル混紡布,綿布,ポリエステルシャツなど計36種類の色柄布を用いた.洗浄は,一般家庭用洗濯機を用いて洗い15分間,すすぎ2回,脱水7分間の条件で実施した.カラースキャナを用いて解像度20dpi、画像領域を504×504pixelの条件でテクスチャ画像を取り込んだ.画像解析により,角二次モーメント(ASM),コントラスト(CON),相関(COR),エントロピー(ENT)の4つ同時生起行列特徴量求めた.
    結果 目視判定結果とシワカット率の相関性について検討した.白布では特にシワカット率としわの5段階評価値との間で非常によい直線的な関係が得られた.このことから,シワカット率算出式はしわ等級にも変換できるので,消費者にもわかりやすい評価パラメーターとして,また商品の性能を細かく差別化できる手段として有効であると判断した.色柄布では,洗濯による色落ちなどによってデータのバラつきが大きくなるが,色柄のついた布にも算出式の有効性が高いと判断された.
  • 田澤 紫野, 菅野 友美, 高橋 二郎, 小松 恵美子
    セッションID: P-083
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー


    目的 アスタキサンチンはサケやエビ,カニなどに含まれる色素成分(カロテノイド)の一種で多くの機能性を有し,サプリメントや化粧品に利用されている.アスタキサンチンを布に固定することが出来れば,付加価値を持つ素材を開発できる可能性がある.そのための基礎的研究として,今回はアスタキサンチン含有オイルを分散した緩衝液でナイロン,絹,キュプラを処理し,各布への付着特性およびそのpH依存性を調べた.
    方法 アスタキサンチンオイルには富士化学工業製のアスタリールオイル(アスタキサンチン5%以上含有)を用いた.三角フラスコに緩衝液(pH4,7,9)100mlとアスタリールオイル0.05gを入れ,超音波を照射し十分に分散させた後,実験布(JIS染色堅牢度試験用添付白布)0.5gを入れ,130r.p.mの振盪機で15分間処理した.室温で約24時間乾燥させた後,100mlの蒸留水で2回すすぎを行った.再び乾燥させた後,目視,K/S値,デジタル生物顕微鏡で評価を行った.
    結果 アスタキサンチン含有オイルの布への付着特性は,緩衝液のpHが酸性の時に処理布の色が濃くなり,アルカリ性になるにつれて薄くなった.付着性の強かったナイロン表面には黒い粒状の色素が確認された.これはアスタキサンチン含有オイルに含まれる色素であるアスタキサンチンが凝集している可能性が示唆された.一方,絹とキュプラは付着性が弱く,色ムラが生じた.
  • 上松 麻樹, 佐々木 由美子, 川田 江美, 板垣 昌子, 菅沼 恵子
    セッションID: P-084
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 布地の滑り易さは衣服着用時のみならず、様々な繊維製品において重要な性質である。昨今の衣服事情を見ると、裏地のないスカートやジャケットが多く出回り滑りに関する感覚形成に影響しているとも考えられる。本研究では滑りに対して被服教育を受けている学生が如何に「滑り」を考えているのかに注目した。
    方法 試料布11種(綿:ブロード・金巾・ドリル・ツイル・サテン、レーヨン縮緬、キュプラ、ナイロンタフタ、ポリエステル:サテン・タフタ)を用いた。官能評価については短期大学生33人(被服専攻)、「滑る」において一対比較法を実施、併せて表面状態の記述、更には「滑る」について順位法を実施した。更には摩擦感テスター・KES-SEを用いて測定した摩擦係数(MIU値・MMD値)と官能検査結果の比較を行った。
    結果 摩擦係数と官能評価結果より、3グループに分けられる。摩擦係数の差が0.03未満の場合は官能評価結果にばらつきがみられ、それ以上の差の場合は明らかに摩擦係数と官能評価値が一致する。しかしながら綿ドリルや綿ツイルはその傾向を示さないことがわかった。斜文織である2種は、2試料布間の摩擦係数の差が小さい、又は他試料のほうが大きくても、官能評価は斜文織より他試料が「滑る」と評価した結果となった。よって多くの学生は官能評価において、「滑る」という評価を他の要素も含めて判断していると考えられる。その要素についても考察をした。
  • 鶴岡市における絹織物産業のイノベーション
    西川 良子
    セッションID: P-085
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    「kibiso」は、山形県鶴岡市に拠点を構える鶴岡織物工業協同組合所有の登録商標で、語源は“キビソ(生皮苧)”に由来し、絹糸繰糸工程で蚕が繭をつくる際に一番はじめに吐き出す特殊な糸を指す。その糸は太く頑丈で手触りはごわごわしており、従来のシルクが持つなめらかなものは程遠いものであるため、あまり上等でないものに使われるか、廃棄されるものが殆どであった。 鶴岡市における絹織物生産の歴史は140年におよび、生産地としては日本最北端に位置する。明治維新以降、「刀を鍬に変えて開墾」という政策のもと庄内の藩士がこの地を耕し、養蚕を地場産業としてその地位を確立させて以来発展してきたが、近年は中国など海外の安価な絹製品や合成繊維に押され存亡の危機を迎えた。そこで現状を危惧した組合と岡田茂樹がシルク産業復興に向けたプロジェクトを2007年に発足させ、自ら素材を開発しサプライヤーとして新たな市場や販路を見出すための策を模索した。そこで織物には不向きとされていたキビソをブランド品とすることで高品質、高付加価値製品の市場開拓を目指した。ここからブランディングのための助成金を確保し5000デニールもの太さのキビソを500デニールの細さまで生成することに成功し、様々なテキスタイルに応用することが可能となった。「kibiso」は「ファクトリーブランドのモデル」として現在も汎用性を拡大しつつある。
  • 竹本 由美子, 福山 さゆり, 奥野 温子
    セッションID: P-086
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 高齢者の転倒・転落事故が増加しており、平坦な同一平面上の床で転倒しやすいことから、履物を履いて動作する床や路面、素足で動作し大量の水や石鹼水などがかかる床については、JIS A 1454に基づく評価指標がある。しかし、最も事故が発生する家庭内における、靴下類の素材の影響を考慮した床の滑りについての指標はない。そこで、各種床材と靴下類の滑り特性による評価指標に基づく、適正な靴下の素材選定による事故の未然防止を目的に、本研究ではまず各種床材に対する靴下類の滑りと素材特性との関連を明らかにした。
    方法
    素材の異なる各種靴下、滑り止め付き靴下、ストッキング、タイツ等を、家庭内で一般的に用いられている床材の上で滑らせ、静摩擦係数及び動摩擦係数を求め、各種靴下類の摩擦特性から素材と滑り特性との関連を検討した。摩擦特性は、水平法及び傾斜法、オートグラフを用いて荷重を変えて測定した。
    結果 実験試料としたほとんどの靴下で、畳よりもフローリングの摩擦係数が小さい値となり滑りやすかったが、合繊の中でもナイロンを含む靴下では、畳の方が滑りやすい傾向が示唆された。どの床材でも摩擦係数の大きかった滑り止め付き靴下は、他の靴下では畳やフローリングより滑りにくいとされた絨毯も同程度の値を示し、摩擦係数が大きくなりすぎて生じる躓きに対して、滑り止めの位置や面積、靴下の素材への考慮も必要となる。
  • 雨宮 敏子
    セッションID: P-087
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 クエン酸を用いてカルボキシ基を導入後に銅処理した染料不使用型の消臭綿布について,既に報告した.クエン酸処理綿布についてはアンモニアやエタンチオールに対する除去能は認められたが,酸処理に伴う綿繊維の脆化がみられた.本研究では,調製消臭布の強度を保持する目的で新たにクエン酸塩を用い,その消臭能を検討した.
    方法 綿ブロードを25℃のクエン酸二水素ナトリウム水溶液に浸漬し,予備乾燥後,熱処理を行った.クエン酸塩処理後,硫酸銅(II)五水和物を用い85℃で30 min,銅処理を行った.試料布2 gを入れた2 Lテドラーバッグにアンモニア1000ppmまたはエタンチオール100ppmを含む空気を導入後,バッグ内の気体の残存濃度を気体検知管法またはガスクロマトグラフ法で経時的に測定した.
    結果 得られた試料布の強度はクエン酸処理の場合よりも高かった.未処理綿布(白布)に対し,クエン酸塩処理綿布のアンモニア除去性能は顕著に向上した.カルボキシ基が繊維高分子に導入され,酸塩基中和反応による除去性が高まったと考えられる.また,クエン酸塩処理後に銅処理を行うことにより銅の取込量が増加したことから,導入されたカルボキシ基が銅の結合サイトとして用いられたことが示された.本研究で得られた消臭綿布は,酸塩基中和反応によるアンモニア除去と銅の酸化分解作用によるチオール除去という2つの異なる消臭機構を合わせ持つとともに,処理による強度低下が少なく,実用上有用であると考えられる.
  • 高山 紗季, 藤岡 留美子, 吉村 利夫, 山田 陽三, 嘉副 人文
    セッションID: P-088
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 トータルケア・システム株式会社(以下TCS)は,使用済み紙おむつのマテリアルリサイクルの事業化を実施している.紙おむつ中のパルプ成分は分離・回収した後,建築用資材として再利用されている.一方,プラスチック成分は,固形燃料として利用されるに留まっている.そこで本研究では,プラスチック成分のマテリアルリサイクルのための第一段階として,その組成を明らかにするための検討を実施した.
    方法 ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)については,示差走査型熱量測定(DSC)による定量を試みた.ポリ塩化ビニル(PVC),接着剤,パルプは溶解性の違いによる分別を実施した.分別に使用した溶剤はテトラヒドロフラン,トルエン,N,N-ジメチルアセトアミド/塩化リチウムである。
    結果 DSCによるPEとPPの定量は,測定に用いる試料量が微量で,取り出す場所による試料むらが大きく再現性に乏しかったために断念した.一方,溶解性による分別においては,再現性良く組成比率を求めることができることが判明した.上記のいずれの溶媒にも溶解しないPEとPPについては,目視による分別を実施することで組成を決定した.また,本来紙おむつには用いられていないPVCが含まれていることが判明した.これは,病院などで使用されている使い捨て手袋がPVC製であり,これが混入するためであると考えられた.
  • 徳丸 絵里香, 藤岡 留美子, 吉村 利夫
    セッションID: P-089
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 当研究室はこれまでに,セルロースと無水コハク酸や無水グルタル酸との反応で,生分解性を有する高吸水性樹脂を得ている.しかし,難溶性のセルロースを特殊な有機溶剤に溶解して合成を行うため,環境負荷やコストの点で課題があった.一方,代表的な水溶性セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースも,イソプロピルアルコール中,不均一条件下で合成されている.しかし,有機溶媒の使用は環境負荷,コストの点から不利である.そこで本研究では,水系溶媒を用いて低環境負荷高吸水性樹脂が得られるかどうか検討した.
    方法 セルロースは脱脂綿を粉砕したものを用い,クロロ酢酸ナトリウムは過去の検討から固体として添加するために凍結乾燥したものを用いた.反応は55℃で5時間加熱しながら行った.反応生成物は水溶性チェックのほか,FT-IRでの構造確認,生分解性評価を行った.また,反応生成物は全てジビニルスルホンで架橋し,ティーバッグ法による吸水性評価を行った.
    結果 アルカリウレア溶媒中で,クロロ酢酸ナトリウムの添加量を変えながらセルロースとの反応を行い,反応の進行と水溶性,生分解性のある反応生成物を得られたが,高い吸水性を有する生成物は得られなかった.クロロ酢酸ナトリウムの添加量を極端に増やしても吸水性向上は見られなかった.
  • 白井 菜月, 小倉 穂佳, 滝本 郁子, 畠山 貴絵, 飯塚 堯介, 濱田 仁美
    セッションID: P-090
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 麻繊維に含まれるリグニンを化学処理により除去することで、苧麻布の改質を試みる。高い強度や吸湿性の良さを維持し、しわになりやすいなどの短所の改善を目指す。
    方法 試料は、麻ブロードを用いた。油分や加工剤を除去する前処理を行ったのち、亜塩素酸ナトリウムを用いてリグニンの除去を0、1、2、3時間と4段階の処理時間で行った。リグニン除去処理後、KES-Fシステムによる力学特性、熱物性の測定、ドレープ特性、防しわ性、吸水性、吸湿性、乾燥性の評価、及び表面観察を行い、苧麻布へのリグニン除去処理の影響を調査した。
    結果 強度や熱物性においては目立った変化はなく、麻本来の特性を維持することができた。通気性と吸水性は大きく向上した。通気性の上昇については、リグニンを除去したことで繊維がしなやかになって織糸が細くなり、織糸間の空隙が増したことによると考えられる。吸水性の向上については、処理により繊維表面の親水性が増したことで、濡れ性が向上したためと考えられる。乾燥速度は、リグニン除去処理によってほとんど変化はなく、良好な乾燥性を維持していた。吸水性は向上し、乾燥性の良さは保てたことで、夏の衣料としてより快適な布になったと言える。本処理では、麻本来の強度を保ち、接触冷感に優れるという特性を維持したまま、更に吸水性、通気性の高い苧麻布に改質することができた。
  • 谷 明日香, 諸岡 晴美, 村上 修一, 富樫 宏介
    セッションID: P-091
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 卵殻膜にはコラーゲンに含まれる多くのアミノ酸を含有しており,皮膚治癒効果があると報告されている.また,リン脂質ポリマーは化粧品やコンタクトレンズなどにも使われ生体親和性の高い素材として知られている.本研究では,皮膚性状の向上とともに夏季の温熱的快適性の向上を目指した衣服素材を開発することを目的に,卵殻膜パウダーとリン脂質ポリマーを用いた加工を行い,その熱水分移動特性を明らかにした.
    方法 ポリエステル/ポリウレタンから成るトリコット編布(ブランク布)に,卵殻膜加工,リン脂質ポリマー加工,卵殻膜・リン脂質ポリマー同時加工,卵殻膜・親水性リン脂質ポリマー同時加工をそれぞれ行った.各試料について,バイレック法を用いて吸水性を測定した.また,各相対湿度下での水分率を測定した.熱水分移動特性の測定にはサーモラボⅡを使用し,不感蒸散および発汗をシミュレーションした方法を用いた.
    結果 卵殻膜加工布,卵殻膜・親水性リン脂質ポリマー同時加工布において吸水性の向上がみられた.また各加工布の吸放湿曲線から,卵殻膜を付与した加工布において高湿環境でブランク布の約2倍の水分率が観察された.発汗シミュレーション実験では,恒率乾燥期で最大熱損失量が観察され,その後,減率乾燥期となり乾燥に至る.吸水性の高かった加工布において最大熱損失量が高く,乾燥時間が短いことがわかり,卵殻膜・親水性リン脂質ポリマー同時加工布の有用性が明らかとなった.
  • 小野寺 美和, 谷 明日香, 竹本 由美子
    セッションID: P-092
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】東日本大震災以降注目されている蓄光材だが,蓄光機能を施したエコテックス認証の衣服は未だになく,暗所での災害救助や情報収集,避難が迅速になることから期待されている.そこで本研究では,蓄光布を用いた衣服設計の実現を目的に,着用や洗濯によってどの程度の耐久性を維持できるのかを検証するとともに,表面状態の変化がりん光輝度に及ぼす影響について明らかにした.
    【方法】(有)ヒロタ工織提供の蓄光糸を複合した4種の各糸(集束撚糸, 蓄光リリヤン4mmテープ, 反射×蓄光, 蓄光起毛糸)を用いて,平織,綾織,朱子織の蓄光布(縦60cm×横30cm)を卓上織機で作製し,洗濯試験及び摩耗試験をおこない,試験前後のりん光輝度測定とデジタルマイクロスコープ及び電子顕微鏡により表面状態を観察した.
    【結果】蓄光起毛糸の平織布が最も高いりん光輝度を示し,洗濯試験後には更に数値が高くなったが,摩擦による表面の汚れが目立ちやすくりん光輝度の低下がみられた.また,他の蓄光布も洗濯により外力が加わることでりん光輝度が高くなる傾向が確認できた.蓄光リリヤーンテープを用いた場合,摩擦により表面の繊維が切れて絡み合いピリングが生じやすく,さらに擦れによる汚れも観察されたが,りん光輝度はそれほど低下していなかった.衣服への応用時には,洗濯よりも摩擦による糸や繊維への影響と汚れによるりん光輝度の低下が課題である.
  • 菊地 久美子, 市田 遼太, 藤原 裕久, 亀山 裕, 矢吹 雅之, 大野 哲, 深井 尚子, 駒場 ゆかり, 桐井 まゆみ, 片山 敦 
    セッションID: P-093
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】猛暑などによる汗をかく機会の増加や消費者意識の高まりから衣類のニオイが気になることが多い。そのなかでも夫が着用した衣類のニオイを不快に感じていて、夫の脱いだ衣類を洗濯機に入れるときに最も不快に感じている実態がある。そこで、女性が不快に感じるニオイを明らかにするために検討を行った。
    【方法】男性が着用した衣類の官能評価を行うとともに、ニオイ嗅ぎGCおよびGC-MS分析を実施しニオイ成分を調べた。官能評価とニオイ成分解析結果から男性が着用した衣類のニオイと類似度の高いモデル臭を作成した。作成したモデル臭を社内男女各12名で不快度評価(Visual Analogue Scale法)を行い、性別によるニオイの感じ方の違いを確認した。
    【結果】男性が着用した衣類のニオイには、既報の通り短鎖および中鎖の脂肪酸、ラクトンなどが寄与していると考えられた。不快度評価の結果、男性が着用した衣類のニオイを再現したモデル臭は女性の方が不快に感じる傾向があった。今回の結果から、男性が自身の衣類のニオイを不快に感じている以上に女性は不快に感じていることが示唆され、男性が着用した衣類のニオイを軽減させることが必要と考えられる。
  • 中国と日本における調査研究
    甲斐 今日子, 王 春苑
    セッションID: P-094
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的   更年期症状を有する辛い時期に、少しでもその症状を緩和して穏やかに過ごすための、より良い衣服を提案することを目的とする。まず、中年期女性を対象として更年期症状と衣生活に関する調査を実施し、中国と日本の状況について検討を行ったので報告する。
    方法   対象者は、45~65歳の日本人および中国人女性である。両国間の職業によるバイアスを極力避けるために、対象者の職業を教員及び公務員に限定して調査を実施した。方法は、無記名自記式とし、実施は質問紙を配布し、郵送による返却とした。期間は、平成25年7月~10月である。有効回答数は118である。集計及び統計的検定には統計解析ツールPASW Statistics19を用い、2群間の平均値の有意差検定を行った。調査内容は、①基本属性、②体調とその変化、③衣生活とその変化、④20~30歳代の頃と比べての変化、⑤服を選択(購入)する際に困っていることや悩んでいること等である。
    結果  更年期症状の経験については、「疲れやすい」「憂鬱になる」「イライラする」「寝つきが悪い」といった項目に加えて、「肩こり」「冷えや寒さを感じやすい」「急なほてりや発汗」「肌の乾燥」などの具体的な身体の不調を有している女性が多い。そしてこれらの項目は、衣服の着心地に影響するものであり、衣服の素材や形、あるいは着方が変化していることが明らかとなった。
  • 内田 幸子, 丸田 直美, 斉藤 秀子, 田村 照子
    セッションID: P-095
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 1年間にわたる広域定点観察法による写真撮影での調査から、地方都市における高齢者の衣服着用の実態を把握し、高齢者に好まれる服装や季節による着衣量の変化を調べることを目的とする。
    方法 着衣調査は、2014年秋~2015年夏の1年間(11月、2月、4月、8月の合計4回)実施した。実施場所は群馬県高崎市と山梨県甲府市、地域のスーパーマーケットを訪れる高齢者をデジタルカメラで撮影した。調査対象者は延べ766名(男性223名、女性543名)であった。撮影した写真から、男女別に最外層の衣服を、上衣、下衣、類衣服別に分類し、服種別着用頻度を集計し、対象者全数を母数とする着用率を求めた。また、高崎市の調査で協力の得られた高齢者に聞き取りをして着衣量(clo値)を求めた。
    結果 着装傾向としては、全ての季節において男女共にロングパンツ、スニーカー、ローファー、帽子の着用率が高いことが示された。着衣形態は、夏は上衣を一枚で着るが、それ以外の季節ではジャケット、コートなどの上着を重ね着していた。また、秋季、冬季、春季、夏季における着衣の平均枚数は、男性6.9、9.1、7.1、5.9枚、女性6.8、8.3、7.2、5.8枚であった。本調査で得られたclo値は、男性は秋季1.14clo、冬季1.62clo、春季1.15clo、夏季0.61clo、女性は秋季1.01clo、冬季1.50clo、春季1.01clo、夏季0.54cloであった。
  • 内田 幸子, 小柴 朋子, 森本 美智子, 荒川 創一, 田辺 文憲
    セッションID: P-096
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 新興感染症罹患患者に最初に対応する医師・看護師・その他の医療従事者を二次感染から守るためには感染対策用防護服の着用が必須である。本研究の目的は感染対策用防護服の現状とニーズを明らかにすることである。
    方法 無記名自記式質問紙調査を行った。調査対象は日本環境感染学会の理事・評議員、調査期間は2015年12月~2016年1月、調査内容は防護服の現状とニーズである。単純集計およびIBM SPSS
    Statistics19を用いて統計処理解析した。倫理的配慮:高崎健康福祉大研究倫理委員会の承認(第2729号)を得て行った。
    結果 質問紙の配布数は227名・158施設、回収は123名・84施設(回収率54.2%、53.2%)であった。防護服着脱経験者のうち、着衣にかかる時間は20分が最も多く53.7%、脱衣にかかる時間も20分が最も多く58.2%であった。防護服の下に着用する衣服は、個人の衣服、診察用白衣、スクラブウェア、看護白衣、術衣等を、防護服の上にはプラスチックガウン等を着用していた。重視する項目は防護服の感染防護性能、防護具(呼吸用防護具・ゴーグル・フェイスシールド・手袋等)の安全性、着脱マニュアルのわかりやすさ、着用時の動きやすさ、蒸し暑さの軽減であった。その他、自由回答として現場のニーズを得た。防護服の問題点を抽出し、改善することが急務である。
  • 今井 素惠, 井上 尚子, 上甲 恭平, 高橋 勝六
    セッションID: P-097
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 モデル実験により求められる熱移動係数と物質移動係数を用い,衣服下に空気を送入することによる放熱促進効果を検討する.さらに,放熱速度により人体が対応できる温湿度についても検討した.

    方法 ガラス瓶を人体に見立て温水入りの瓶からの熱移動速度を測定した.瓶は綿布を密着して覆い,その上に5mmの空隙を持った衣服を着せた.綿布には発汗水を供給し,衣服の空隙には空気を吹き込んだ.瓶中の温水の温度低下から熱移動速度を算出した.発汗水を供給しない実験により綿布表面と外気の間の熱移動係数を求めた.熱移動速度から顕熱移動速度を差し引いて潜熱移動速度を求め,さらに潜熱移動速度から水の蒸発速度を求めた.

    結果 発汗水を供給すると熱移動速度は外気温が高くなるにつれて減少するが,空隙の空気速度が大きくなると外気温が温水温度近くなってもゼロにはならない.水の蒸発速度は濡れた綿布表面の水分分圧と外気の水分分圧の差に比例し,水分移動の物質移動係数を得た.人体が耐えられる気温は,外気の相対湿度の低下および人体皮膚表面の相対湿度の低下に伴って高くなる.衣服下への空気の吹込みがないときの人体からの放熱速度は乾燥地域の高温や日本の夏の高湿度に対して十分ではないが,空気の吹込みによって40℃(湿度20%)の高温や70%(温度30℃)の高湿度に対しても十分な放熱速度が得られるとの結果が得られた.
  • 関東地区計測データより
    丸田 直美, 小柴 朋子, 倉 みゆき, 渡部 旬子
    セッションID: P-098
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的  全国規模の詳細な人体寸法の計測はアパレル製品のサイズ設計に寄与する。しかし、HQLによる2004-2006に計測されたデータ以降は公表されたものはない。今回全国規模の一環として行われた関東地区での計測結果をもとに、現在の成人女子の年齢層別サイズ変化を調べるとともに、HQL2004-2006年のデータとの比較を試みた。
    方法  被験者は関東在住の成人女子189名(18~19歳:25名、20~24歳:30名、25~29歳:36名、30~39歳:17名、40~49歳:10名、50~59歳:22名、60~69歳:23名、70~79歳:26名)である。計測は、2014年~2015年に文化学園大学にて行われた。計測方法はマルチン計測器及び巻き尺による手計測である。
    結果  今回の計測では、特に40歳代の被験者において被験者数が少なく、身長、体重共に大きい被験者が多い傾向がみられた。関係偏差値で比較すると、高度項目においては、10歳代~50歳代と60歳代以降に分類される傾向を示した。周径項目では、10歳代~30歳代と40歳代以降に差がみられた。2004-2006年のデータとの比較では、バスト周辺項目において、バスト囲はやや大きく、アンダーバスト囲は小さい傾向がみられた。乳頭位横径と厚径では、乳頭位横径が大きい傾向を示し、厚径には差が見られなかった。(本研究は科研費基盤研究(A)25242010(代表 大塚美智子)による。)
  • ‐関東地区計測データより-
    小柴 朋子, 丸田 直美, 渡部 旬子, 倉 みゆき
    セッションID: P-099
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 全国規模の詳細な人体寸法の計測は、アパレル製品のサイズ設計に寄与する。しかし、HQLによる2004-2006に計測されたデータ以降は公表されたものはない。今回全国調査の一環として行われた関東地区での計測結果をもとに、現在の男性の年齢層別体型の特徴を明らかにし、サイズ設計への指針を得ることを目的とする。
    方法 計測方法はマルチン計測器および巻尺による手計測で、計測項目は54項目である。計測姿勢は立位姿勢とし、計測着はボクサーパンツを着用した。被験者は関東在住の180名(18‐25才:49名、25‐35才:24名、35‐45才:15名、45‐55才:26名、55‐65才:25名、65‐75才:31名、75才以上:10名)である。測定は文化学園大学にて2014―2015年に行われた。計測は倫理規定に基づき実施された。
    結果 全被験者の計測データの平均値に対する関係偏差から見ると、高度項目は35-45才、横径・厚径並びに周径項目は45-55才が最も大きいことが示された。35才までを若年層、35~65才を中年層、65歳以上を高年層とすると、厚径項目は若年層が中年層より低値の傾向を示し、若年層は扁平な腕・脚・手・足の長い体型、中年層がほぼすべての項目で大型、高年層は厚径と腹部周辺の周径のみ大で、その他の項目はすべて小の、小柄で厚みのある体型であった。層別に体型特徴が顕著に示された。本研究は、科研費基盤研究(A)25242010「アパレルの質と国際競争力向上の基盤となる日本人の人体計測データの構築と多角的分析」(代表 大塚美智子)による。
  • 武本 歩未, 石井 優利奈, 大塚 美智子
    セッションID: P-100
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:スポーツは種目によって鍛えられる筋肉の部位や運動時の姿勢が異なるため,特定の種目を継続して行っている人の体型には,種目ごとに異なった特徴が現れる.本研究ではプロ選手ではない一般の女性でも体型に変化や特徴があるか否かに着目し,女子学生を対象とし,種目別の体型分析を行い,体型の相違を検討した.
    方法:まず,20代女性80名を対象にスポーツ経験の有無,種目,継続期間等に関するアンケート調査を行った.次に,アンケートの結果から経験者の多かった4種目(テニス・バトミントン,バスケットボール,卓球,ダンス)について,39項目の人体計測行い,その種目を行っていない者と比較した.さらに4種目のうち経験者の多かった2種目(テニス・バトミントン,ダンス)については三次元計測データを用いて平均形状を作成し,体型の相違を検討した.
    結果:各種目の運動に関係すると考えられる部位の計測値に相違や特徴が認められ,テニスとバトミントン経験者の周径項目及び胸部の矢状径項目がそれ以外の被験者より有意に大きかった.平均形状による比較でもテニスとバトミントン経験者はその他の被験者より体幹部が太く特に胸部に厚みがあり,脚部が太い傾向が確認された.またダンス経験者の平均値は,胸部から胴部が細く,平均形状の比較からも他の部位に比較して胴部が細い傾向が示された.継続した運動経験があることで,種目ごとの体型に相違が現れることが明らかになった.
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