国語科教育
Online ISSN : 2189-9533
Print ISSN : 0287-0479
87 巻
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
I シンポジウム(要旨)
秋期大会 第137回 仙台大会
II 研究論文
  • 奥泉 香
    2020 年 87 巻 p. 14-22
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は、国語科の検定教科書に採録されている複モード・テクスト等から意味を構築する学習を、特に「対人的」な意味に焦点化させて国語科に導入していく可能性を検討・提案することである。この目的のために、本論文では選択体系機能言語学において開発されてきた次の三つのメタ機能の枠組みを援用する。その三つとは、観念構成的意味、対人的意味、テクスト形成的意味の三種類である。対人的意味については、Painter et al.(2013)において、次のニ種類の関係性を検討する必要性が指摘されている。一つは、読み手とテクスト中の登場人物との関係性である。そしてもう一つは、テクスト中の登場人物相互の関係性である。これらの枠組みを基盤として用い、本論文では対人的意味の中でも、特に複モード・テクストを読んでいる際に、私たちの感情に重要な影響を与えるとされる「強度」という概念に焦点を当て、視覚的アプレイザルという枠組みを用いて検討を行う。そして結論部では、こういった学習のための幾つかの学習材や、学習のポイントを提示する。

  • 岸 圭介
    2020 年 87 巻 p. 23-31
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、マンガと説明文を含めた連続型テキストとの読解要素の異同を明らかにする点にある。小学校第4学年児童を対象に「ピーヒョロロープ」(藤子・F・不二雄『ドラえもん』第7巻小学館1975年)を読解教材とする授業を行った。授業後に「マンガ・物語・説明文」の3つの読解過程に関わる質問紙調査を実施した。分析においては「構造構成的質的研究法」をメタ研究法として「修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ」を援用した。

    分析の結果、マンガの読解にはマンガ特有の読解要素だけではなく、物語や説明文と類似した要素もあることが示唆された。本研究は、異なるメディア間を結ぶ読解要素の構造を示したものとして位置付けられる。

  • 後藤 志緒莉
    2020 年 87 巻 p. 32-40
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    本稿は、昭和31年度頃の増淵恒吉の授業実践の変容と、そのことの歴史的な意味について明らかにしたものである。

    昭和30年代前後は、経験主義・総合主義の国語教育が反省され、能力主義・系統主義の国語教育へと転換していった時期である。そのような時期に、増淵は、それまでの生徒の研究発表を軸にした方法から、教師の発問を軸にした方法へと授業の進め方を変えている。

    このことの背景には、当時の文学教育に対する増淵の立場と、同時代の国語教育界全体の動向があった。本稿で明らかにした増淵の変容は、戦後転換期の国語教育の動きと並走するものとして位置づけることができる。

  • 中嶋 真弓
    2020 年 87 巻 p. 41-49
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    本研究では、坪内雄蔵読本と第2期・第3期国定高等小学読本の一般用と女子用に採録された書簡文教材に着目し、その内容と文体を分析することをとおして、明治中期から昭和初期の国語科教科書教材における書簡文の特徴を議論した。その結果、坪内雄蔵読本から第2期・第3期国定高等小学読本までに採録された書簡文の特徴として、一般用と女子用では採録書簡文の内容や文章の構成要素には差異がみられたが、文体に差異はなく採録書簡文の大部分が候文体であった。また、この時期に採録された書簡文は、読本を読むことをとおして書簡文を書くことが求められていたことが看取できた。そして、それは特に第3期国定高等小学読本の女子用にみられ、今まで以上に書簡文における実用、形式が重視されたことが分かった。

  • 森田 真吾
    2020 年 87 巻 p. 50-58
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    本研究では、文部省『中等文法』の指導内容について、橋本進吉の文法学説との連続性にではなく、むしろ両者の差異に注目することによって『中等文法』の独自性を見出そうと試みた。その結果、『中等文法』における橋本学説に対するアレンジは、文法の指導内容を学習者にとってより身近なものとするための配慮に基づいて行われていたことが確認できた。また『中等文法』に援用されている橋本学説以外の内容については、いわゆる「五種選定本」の影響を指摘することができ、それにより『中等文法』は当時一般に流布していた文法教科書の内容を視野に入れつつ、それらを一つに収斂させて指導内容を整えようとしていた可能性があることが明らかになった。

  • 矢部 玲子
    2020 年 87 巻 p. 59-67
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    言語感覚育成は国語教育において重要でありながら,客観的な測定が困難なため教育現場における指導成果を得難いという問題が指摘されてきた。本研究はこの問題に対し,言語感覚の修得状況を客観的に測定できる要素を特定した上で可視化し,その結果を国語教育資料及び指導方法として提案することを目的とした。

    目的達成のため,従来の指導者寄りの視点を改め,学習者の視点から言語感覚修得状況を測定するために,原文と比較して読みやすいと思う文を選択させる実験を大学生に対して行った。その結果,最も支持された文に存在する,読点の増加や配置変更,さらに75字以上の原文は2文に分割されるという共通点が,客観的に測定可能な要素として可視化され特定された。また学生たちが,これらの選択を感覚的に行ったことも明らかになった。

    この結果や過去の教育実践の検討に基づき,言語感覚修得の指導方法として,読点の位置や文の長さに着目した読解指導や,形式を定めたルール文の作成指導を提案した。

  • 山田 直之
    2020 年 87 巻 p. 68-76
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    芦田恵之助は日本の「書くこと」の教育を代表する教育実践者である。彼の随意選題による綴方指導は、「随意か課題か」、「作文か綴方か」といった国語教育史上の重要な論争に大きな影響を与えた。ただし、芦田の関心は綴方そのものにあったのではなく、「陶冶」や「教科」優位の近代教育をのりこえるための方法にこそあった。本稿では、芦田恵之助の綴方教育の理念に含まれる訓育的側面に焦点を当て、彼の「近代教育批判」を現代的な課題と結びつけながら再考している。

    議論はまず、芦田の綴方教育の理論的特性(第一節)と、教育史における意味の把握(第二節)からなされた。そして、芦田が禅の思想のもつ訓育的側面を教育へと援用することによって、近代教育を乗り越えるべくいかに綴方教育を構想したのかを確認し(第三節)、その限界を見出した(第四節)。

    議論を経ることによって、国語科作文教育における訓育的教授は、次の学習指導上の目的及び省察の下で行われることが望ましいという結論が導かれた。すなわち、「書くこと」の教育は、絶え間ない世界認識の更新を学習者自らが行える能力を保証するものとして組織されること。そして、その認識のあり方が「教化」に傾倒していないかが、反省されなくてはならないこと、である。

III 資料
  • 大野 早苗, 莊 嚴
    2020 年 87 巻 p. 77-85
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    本稿は、2017年に中国教育部による発布された高校国語の課程標準を紹介するものである。発布の背景には、大学入試対応の教育の蔓延、急速に進む情報化、グローバル化がある。この課程標準は、OECDのDeSeCoによるキーコンピテンシー概念を取り入れた核心素養を設定したこと、そしてそれをもとに課程目標を立て、課程を構成したことが、大きな特徴となっている。必修、選択必修、選択の各課程には、それぞれ複数の学習任務群が置かれ、学習の目標と内容、指導のヒントが詳細に記述されている。また、学業の質の評価について詳細な基準を設けたこと、大学入試のあり方への言及があることも、注目すべき点である。

IV 書評
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