精神疾患への新しい治療的介入法としてニューロフィードバック(NF)が注目されている.患者に自身の脳活動状態をリアルタイムに呈示し,本人がそれを見ながら脳活動状態を自発的に制御できるようにする訓練法である.脳活動の変化方向(増加または減少)が,治療者の求める方向か否かを示すことでオペラント条件付けが行われ,患者内部での学習が強化される.近年,うつ病や発達障害を対象に磁気共鳴画像装置(MRI)を用いたNFの臨床効果を示す報告がみられるが,侵襲が大きく利用施設が限られ,医療コストも高いため,その成果を実臨床で利用するにはまだ大きな壁がある.近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)は,近赤外線を用いて脳神経活動の変化を測定する方法論である.小型で騒音もなく,痛みや被爆もない低侵襲であるため,高齢者や小児を対象としたNFとしての有用性が期待される.
ADHDへの治療法として,薬物療法やSSTなどが一般的であるが,その効果は限定的である.そのため国内外で発達障害を対象にNF研究が盛んに行われており,ADHDへの新規治療法として注目されている.本稿では現在までのADHDにおけるNF研究について概説をし,現在進行中である成人のADHDを対象としたNIRSによるNF研究の結果について触れたいと思う.
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