神経心理学
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35 巻, 1 号
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受賞記念論文
  • 第14回日本神経心理学会優秀論文賞を受賞して
    野川 貴史, 平林 一, 小瀧 弘正
    2019 年 35 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    物体方向失認におけるこれまでの研究の流れに触れながら,鹿教湯病院と物体方向失認の関わりについて紹介した.次に用語・訳語の変遷,受賞論文における模索のプロセス,その後の研究の展開について述べた.特に物体方向失認が量的障害であるのか質的障害であるのかという論点を提起し,これを明らかにするために新たに作成した鹿教湯PC版物体方向失認検査とその構成,臨床場面へ実際に適用した所感を述べた.最後に物体方向失認の1症例の成績を提示し,これについて簡潔な考察を加えた.

会長講演
  • 平山 和美
    2019 年 35 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    神経心理学の魅力をお伝えするために,私が関わって知的な興奮をおぼえた研究の例を挙げた.研究の多くが一人の患者と出会い,びっくりし,不思議に思ったことから始まった.無視や失読はないのに横書き文を読み誤る患者に会い,半盲性難読と呼ばれる病態であることを知った.頭頂葉上部に病変のある患者が「歩くとき左に曲がってしまう」と訴える理由が,オプティックフローの認知障害であることが分かった.ある視覚型Alzheimer病患者が金時計の数字を読めない理由が,主観的輪郭が見えないためだと分かった.これらは後日,健常者を対象とした機能的MRI研究や精神物理学的研究,患者群を対象としたPET研究にもつながった.

特別講演I
  • ~偉大な神経学者たちの大間違い~
    岩田 誠
    2019 年 35 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    1906年,Pierre Marieは,失語症における機能局在論を攻撃する3つの論文を次々に発表し,Dejerine夫妻の提唱する機能局在論を真っ向から否定した.その結果として,Dejerine夫妻とMarieは,弟子たちをも巻き込んだ公開の“失語論争”を行ったが,どちらも対立する相手を論破することは出来ず,論争の決着はつかなかった.しかし,この論争の元となったMarieの論文を検討すると,彼が重大な解剖学的誤謬を繰り返しているのに気付かされる.それだけでなくDejerine夫妻側にも,同じような誤謬が見いだされる.彼らの解剖学的誤謬が教えてくれるのは,水平断脳スライスにおける大脳皮質領域同定の難しさである.

原著
  • 太田 信子, 種村 純
    2019 年 35 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/19
    [早期公開] 公開日: 2019/03/25
    ジャーナル フリー

    健常者242名と脳損傷者76名におけるThe Cambridge Prospective Memory Testの時間ベースと事象ベースの課題形式別に存在想起と内容想起について因子構造を検討した.健常群の第1因子は「時間・暗示的手がかりにもとづく展望記憶」,第2因子は「明示的手がかりにもとづく展望記憶」と解釈され,各因子ともビジランスが関連した.脳損傷者の第1因子は「手がかり情報どおりに想起する展望記憶」,第2因子は「遂行内容の記憶」,第3因子は「手がかりを構造化する展望記憶」と解釈された.因子妥当性は想起の形式および記銘時の手がかり情報の特性を反映し,注意・記憶・遂行機能が関連していた.

  • 鈴木 夏美, 佐藤 卓也, 今村 徹
    2019 年 35 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/19
    [早期公開] 公開日: 2019/03/18
    ジャーナル フリー

    アルツハイマー病患者における生活上の出来事全体の記憶の障害(出来事忘れ)の有無に寄与する要因を連続215症例で検討した.出来事忘れなし群とあり群間の患者属性,疾患属性,認知機能属性を分散分析およびMMSE得点を共変量とするlogistic重回帰分析で検討した.近時記憶課題,見当識課題,日常記憶課題の成績で効果量の大きな群間差が得られ,重回帰分析では見当識課題と日常記憶課題の成績に有意なオッズ比が得られた.出来事忘れの有無は,日常記憶障害の重症度を適切に反映し,日常記憶障害を予測する一助になることが示された.日常記憶にはテストで測定する記憶機能以外にも多様な基盤があり,そのうちの1つとして見当識が示唆された.

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