行為と動作が生じる過程とその障害について,十分に解明されていない部分の考察を深めることを目的とする.Alien hand signs,特に左上肢と全身行為に拮抗失行を呈した自験例をたたき台として,行為選択・遂行に対する下頭頂小葉・前補足運動野・補足運動野の関与,「Libetの時計」の実験より発見された“Bereitschaftspotential”脳波所見が「行為の自覚」の有無に与える影響,注意が逸れている時などにhabit(癖・習慣的行為)が本来の行為意志を凌駕して出現する可能性,さらに,habit発現の背景にdefault mode networkの機能異常がある可能性などを総括的に述べた.