神経心理学
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39 巻, 1 号
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受賞記念論文
会長講演
  • 中川 賀嗣
    2023 年 39 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/04/25
    ジャーナル フリー

    筆者が神経心理学を学び始めたのは,1990年頃である.この頃MRI(Magnetic Resonance Imaging)やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)といった画像技術が普及し始め,日常の臨床でも活用できるようになった.それから今日まで,幸いなことに筆者には多くの症候との出会いがあった.そしてこれらの症例やその近縁の方々などから発せられたフレーズが,筆者の記憶に残っている.患者自身の「持てば勘所が戻る」といった言葉,患者の母からの「無意識の動作を忘れる」といった言葉,介護スタッフからの「無理やり持たせると,実は箸を使える」という情報提供,そして本学会優秀論文賞を受賞した際に,故大東祥孝先生から編集後記でいただいた「アリアドネの糸」といった表現が私の頭に浮かんでくる.本稿では,主な失行症候を筆者の視点から概観した.

教育講演1
教育講演2
  • 井上 貴博, 上野 将紀
    2023 年 39 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/04/25
    ジャーナル フリー

    皮質脊髄路は随意運動の制御に重要な役割を果たしており,脳卒中や脊髄損傷などで損傷を受けると重篤な運動障害が引き起こされる.一方で,脳や脊髄には可塑性があり,失われた機能は時間を経て回復あるいは増悪するなどしばしば変容することが知られる.近年の研究成果から,こうした機能の変容は,障害をのがれた回路網の代償的なはたらきや再編に起因することが明らかとなりつつある.本総説では,げっ歯類の基礎研究から明らかになってきた皮質脊髄路の構造や機能,障害パターンに応じた再編様式について概説し,中枢神経障害後の回路再編と機能回復を促進しうる有望な治療アプローチと今後の課題について述べていく.

シンポジウム1 座長記
シンポジウム1 言語・認知・行為のアルゴリズム
  • 平山 和美
    2023 年 39 巻 1 号 p. 42-53
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/04/25
    ジャーナル フリー

    視覚情報処理には3つの流れがある:1)側頭葉へ向かう腹側の流れは,対象の色や形の処理を行い,対象の知識(意味記憶)の回収に至る.2)下頭頂小葉へ向かう腹背側の流れは,位置や運動の処理を行い,対象の存在の認識に関わる.3)頭頂間溝や上頭頂小葉へ向かう背背側の流れは,位置や運動,対象の空間的形態の処理を行い,意識性の低い行為に直結する.腹側や腹背側の流れでは,情報は後ろから前へ段階的に送られる.視覚に限った処理が終了したのちに初めて,他の感覚情報との合流が起こる.各段階の処理結果が様々な行為に利用される.一方,背背側の流れでは,視覚以外の感覚の情報が,比較的早い段階から脳の限局した場所に,それぞれ特定の行為別に集結する.以上について,3の流れの損傷による症状を示して説明した.

  • 福井 俊哉
    2023 年 39 巻 1 号 p. 54-64
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/04/25
    ジャーナル フリー

    行為と動作が生じる過程とその障害について,十分に解明されていない部分の考察を深めることを目的とする.Alien hand signs,特に左上肢と全身行為に拮抗失行を呈した自験例をたたき台として,行為選択・遂行に対する下頭頂小葉・前補足運動野・補足運動野の関与,「Libetの時計」の実験より発見された“Bereitschaftspotential”脳波所見が「行為の自覚」の有無に与える影響,注意が逸れている時などにhabit(癖・習慣的行為)が本来の行為意志を凌駕して出現する可能性,さらに,habit発現の背景にdefault mode networkの機能異常がある可能性などを総括的に述べた.

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