神経心理学
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37 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
企画特集
  • 大槻 美佳
    2021 年 37 巻 4 号 p. 224-225
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー
  • 高倉 祐樹, 大槻 美佳
    2021 年 37 巻 4 号 p. 226-237
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    Ardilaの新しい失語症分類に対する有用性の検討を軸として,失語症に関する最近の知見について概説した.失語症分類については,従来のカテゴリー的な分類を解体し,発話運動・音韻・意味などの言語システムを構成する要素的症候に基づいて,多次元的に病像を捉える方法が有用であることを指摘した.評価法については,課題の正答率ではなく,「誤り方」から障害パターンを分析する新たな検査(Mini Linguistic State Examination:MLSE)の開発が進んでいることを紹介した.最後に,オープンサイエンスとAI(artificial intelligence)時代の失語症研究においては,失語症の症候学の重要性はむしろ増大していることを指摘した.

  • 小川 七世, 鈴木 匡子
    2021 年 37 巻 4 号 p. 238-250
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    Gorno-Tempiniらによる原発性進行性失語(PPA)の臨床診断基準が発表されてから,今年で10年になる.診断基準という共通語ができたことで,PPAの論文数は急激に増加した.一方,この診断基準は発表当初から,PPAの診断をめぐって,またその先の3タイプの分類に関して問題点が指摘されてきた.特に3タイプのいずれにも属さない分類不能型や2タイプ以上にあてはまる混合型について様々な提案がなされている.その中でPPAからの独立性を確立しつつある原発性進行性発語失行やPPAの新タイプを中心に概説する.また,PPAの経過と背景疾患/病理所見についても述べる.

  • 中川 良尚
    2021 年 37 巻 4 号 p. 251-261
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    言語機能(失語症)の改善は損傷部位や発症年齢によって経過は大きく異なるが,少なくとも6カ月以上の長期にわたって改善を認める症例が多いことや,言語訓練後に改善を示した機能は脆弱である可能性が高いことが明らかとなっている.しかし,どのような訓練が,どのような言語機能の改善に適しているのかという点については,まだ結論は出ていない.近年,rTMSやCI療法が失語症の治療にも応用されるようになった.一方,言語訓練では直接的言語刺激の付与が重要なことは普遍的であると思われる.今後,言語刺激の質や量の充実を考慮した上で,さらにrTMSやCI療法などとの併用が可能となれば,言語機能の改善がより期待できるのではないかと考える.

  • 大槻 美佳
    2021 年 37 巻 4 号 p. 262-271
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    書字よりも,PC(personal computer)におけるキーボード打ちや,携帯/スマートフォンのテキスト入力のほうが一般的になった昨今の日常生活の変化は,臨床症候にも影響を与えている.それは,従来,書字障害を出現させる部位の損傷で,キーボード打ちの障害(タイピング障害)がみられるようになったことである.これは失語・失書・失行その他の視空間処理障害によるものでない,タイピングに特異的な障害と考えられ,dystypia(失タイプ)と命名された.病巣は,既報告では前頭葉または頭頂葉が多い.さらに,携帯/スマートフォンでテキストメッセージを作成・送信できない症候がdystextiaと称されて報告された.dystextiaはまだ十分症候として確立していないが,今後の検討が必要である.本稿では,これらの新しい症候の今日までの報告を整理する.

  • 東山 雄一, 田中 章景
    2021 年 37 巻 4 号 p. 272-290
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    Broca野,Wernicke野,角回そして弓状束で構成されるWernicke-Geschwindのモデルは,脳の言語モデルとして広く知られている.しかし,詳細な画像検査に裏打ちされた症例の蓄積と,脳機能画像研究を中心とした脳神経科学の進歩を背景に,Broca野やWernicke野以外の様々な脳領域がヒトの言語活動に関与していることが明らかになっている.さらに近年では拡散MRIを用いた数々の物理モデルの登場により,ヒトの白質線維の走行を詳細に評価することが可能となり,多数の機能領域とそれらを橋渡しする複雑な白質線維から構成されるネットワークとして脳を捉える考え方が主流になりつつある.本章では,こうした古典モデルに代わる新たな言語モデルと,その展望について概説を行う.

原著
  • ―目標語の呈示条件を変化させた単語指示課題による検討―
    高倉 祐樹, 大槻 美佳, 中川 賀嗣, 杉原 俊一
    2021 年 37 巻 4 号 p. 291-302
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    [早期公開] 公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    日常会話における聴覚的理解は比較的良好であるにもかかわらず,多肢選択の単語指示課題において顕著な成績低下を示した超皮質性失語の1例を報告した.症例は67歳,右利きの男性.頭部MRIおよびSPECTにて左前頭葉を中心とする病巣を認めた.本例は,単語指示課題において,目標語の聴覚呈示後に選択肢図版を「後出し」する条件で成績が向上した.さらに,目標語が呈示される前に,目標語と意味的に近似した単語を見聞きする条件で成績低下が認められた.以上より,本例の単語指示課題における障害の本質は,目標語と意味的に近似する複数の意味情報の中から適切な目標語を「選択できないこと」である可能性が示唆された.

  • 山脇 理恵, 村井 俊哉, 菊池 隆幸, 松田 秀一, 上田 敬太
    2021 年 37 巻 4 号 p. 303-314
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    [早期公開] 公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー

    脳室内出血を伴う脳梁膨大部出血後に脳梁膨大部の萎縮および右優位の両側脳梁膨大後部皮質および脳弓脚の損傷を認め,健忘と作話,道順障害を呈した1例を報告した.症例は40歳代の右手利き男性.慢性期の頭部MRIにて脳梁膨大部の萎縮および右側優位の脳梁膨大後部皮質と脳弓脚の損傷を認めた.本症例は,急性期にはせん妄と健忘および顕著な自発作話を呈し,一方で慢性期は健忘と誘発作話,道順障害を呈した.本例が呈した健忘および作話は,脳梁膨大後部皮質損傷や脳弓脚損傷の複合病巣で生じた症状であり,自発作話は,急性期の脳室内出血による意識障害が重畳して出現した可能性が考えられた.

  • 林田 一輝, 水田 秀子, 近藤 正樹
    2021 年 37 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    [早期公開] 公開日: 2021/12/08
    ジャーナル フリー

    異常感覚に伴って左上肢の無意味な運動が出現した脳梗塞症例を報告した.頭部MRIでは右中心後回,頭頂間溝前部,頭頂弁蓋部,島皮質後部に病変を認めた.運動麻痺はなく,左上肢の表在・深部感覚は脱失していた.拮抗失行,道具の強迫的使用は認めなかった.また,左手への他者接触時や他動運動時に痛みやしびれ感ではない不快な異常感覚を認め,それに伴って自己が意図しない左上肢の無意味な運動が出現していた.一方で自ら左手で対象物に接触したり,右手で左手を触った時には異常感覚は軽度であった.受動的な感覚に誘発された異常感覚が無意味運動の発現機序に関与している可能性が示唆された.

第45回日本神経心理学会学術集会一般演題
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