Ardilaの新しい失語症分類に対する有用性の検討を軸として,失語症に関する最近の知見について概説した.失語症分類については,従来のカテゴリー的な分類を解体し,発話運動・音韻・意味などの言語システムを構成する要素的症候に基づいて,多次元的に病像を捉える方法が有用であることを指摘した.評価法については,課題の正答率ではなく,「誤り方」から障害パターンを分析する新たな検査(Mini Linguistic State Examination:MLSE)の開発が進んでいることを紹介した.最後に,オープンサイエンスとAI(artificial intelligence)時代の失語症研究においては,失語症の症候学の重要性はむしろ増大していることを指摘した.