神経心理学
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38 巻, 3 号
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シンポジウムIII 座長記
シンポジウムIII さまざまな注意のかたち
  • ―ワーキングメモリへの介入の課題と可能性―
    吉村 貴子, 大沢 愛子, 苧阪 満里子
    2022 年 38 巻 3 号 p. 175-185
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    ワーキングメモリ(WM)は注意制御のもと,必要な情報を活性化状態で保持し,目標達成に向けて情報を統合する役割を担い,中央実行系を中心として,音韻ループ,視覚・空間的スケッチパッド,エピソード・バッファというサブシステムから成る.

    アルツハイマー型認知症(AD)では,WMを測定するリーディングスパンテストや逆唱で成績が低下する.WMをターゲットとするトレーニングの有効性を示す報告も多いが,現状においてはWMトレーニングの理論については多面的な検証が待たれる.

    本稿では高齢者に対するWM低下への予防的介入の可能性や,AD等の認知症高齢者にWMに焦点をあてた介入を行う際の留意点を考察した.

  • ―リハビリテーションの観点から―
    青木 重陽
    2022 年 38 巻 3 号 p. 186-192
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    脳外傷者に伴う注意障害は,多様性が高いことが特徴となる.脳外傷者の回復期入院患者145名のtrail making test日本版(TMT-J)の実施状況を調査すると,検査ができない者が23例(15.9%)あり,異常を来した85例(58.6%)ではその80例に他の症状を合併していた.重症度の違いや合併する他症状の影響など,多くの因子が関連して多様な状態を来すことが窺えた.このことは,リハビリテーションにおいては,画一的な対応では限界があることにつながる.近年は,その対応に,障害学習を基盤に自己の行動の適応力を高めることが注目されてきており,具体的な方法の検討が期待されている.

  • ~類似点と相違点~
    船山 道隆
    2022 年 38 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    注意機能,ワーキングメモリ,遂行機能という専門用語をわれわれはしばしば使用している.しかし,これらの用語の類似点や相違点をわれわれが常に意識して使用しているとは限らない.本論ではこれらの用語が構築された背景を検討し,次にそれらの違いや類似点を挙げた.

シンポジウムIV 座長記
シンポジウムIV 機能神経外科からみる高次脳機能
  • 鈴木 匡子
    2022 年 38 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    脳機能の温存をめざす手術において,個人毎に機能野の分布を知ることは重要である.Wadaテストは言語の側性化や術後の記憶障害を推測する方法として長年用いられてきたが,機能障害の十分な予測は困難であった.血管内操作の技術的発展に伴い,脳血管の分枝に麻酔薬を注入する超選択的Wadaテストが開発された.中大脳動脈では覚醒度が保たれた状態で言語の各機能を検討し,言語野の分布を推測することが可能である.後大脳動脈では海馬領域切除後の記憶障害を言語性・視覚性に分けて検討できる.このように,超選択的Wadaテストは切除後の機能状態をシミュレーションし,治療方針を決めるうえで有用な手法であると考えられる.

  • ―島周辺領域の切除は表情認識を変化させるのか―
    寺澤 悠理
    2022 年 38 巻 3 号 p. 209-215
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    島皮質は内受容感覚を介して感情を感じるために重要な領域と考えられている.島皮質が内受容感覚と感情の統合に果たす役割について報告した研究の多くは,脳機能画像研究法によるもので,神経心理学研究は限られている.本研究では,島皮質に関連する腫瘍を有する患者において,摘出手術前と術後に心拍カウント課題と表情認識課題を実施し,感情認識における島皮質の役割について検討した.その結果,手術前後の心拍カウント課題の成績の変化と怒りや喜びの表情に対する感度の変化に有意な関連が見られた.本研究の結果,島周辺領域の切除によって,内受容感覚を介して怒りや幸福などの感情の認識に影響が生じることが示された.

  • 工藤 駿, 高宮 彰紘, 平野 仁一, 三村 將
    2022 年 38 巻 3 号 p. 216-221
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    電気けいれん療法(ECT)は様々な精神疾患に対して安全性と高い治療効果が確立している.一方,ECT後には一過性に認知機能障害を来すことが知られている.具体的には前向性健忘より逆向性健忘の方が遷延しやすいが,術後数週間~数カ月でベースラインの認知機能まで回復する.ECTに伴う認知機能障害は,電極配置,パルス幅,刺激用量,治療間隔などECTの施行方法,刺激設定条件によりその出現頻度や影響の程度が異なるため,患者の病状に応じたECTの方法論の選択を行うことが重要である.

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