神経心理学
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35 巻, 4 号
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特集 精神症状を神経心理学から捉える
  • 船山 道隆
    2019 年 35 巻 4 号 p. 176-177
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    ジャーナル フリー
  • 前田 貴記
    2019 年 35 巻 4 号 p. 178-186
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    ジャーナル フリー

    自己意識という主観を実証的に扱うための方法論として,主体感(sense of agency)というアプローチについて紹介する.我々は主体感について実証的に評価するために,「Sense of Agency Task(Keio Method)」を考案し,主として統合失調症をターゲットとして研究を進めてきた.さらに,主体感に直接介入し,主体感の精度を向上させる手法を考案し,統合失調症のみならず,様々な神経疾患・精神疾患における認知リハビリテーションについても試みている.主体感を軸とした,統合失調症の症状論,病態論,治療回復論にわたる一連の研究について紹介したい.主体感というアプローチが,神経心理学において,人間の主観的体験を実証的に扱うための一つのモデルとなればと考えている.

  • 是木 明宏
    2019 年 35 巻 4 号 p. 187-196
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    ジャーナル フリー

    内受容感覚は,心拍や呼吸といった主に身体内部の生理的な情報の感覚を指し,これはホメオスタシスに関与するとして元々提唱された.しかし近年はそれを超えて,感情や意思決定,身体感覚,運動といった様々な脳機能に影響を与えていることがわかってきた.さらに様々な精神疾患で内受容感覚の異常が示され,今まで説明が難しかった病態に新たな見方を与えた.そのため内受容感覚は新たな病状評価および治療のターゲットとなりうる.しかし,現在のところ標準的な内受容感覚の評価法は未だ確立しておらず,また内受容感覚の疾患特異的な異常まで十分に示せた研究はなく,今後の発展が必要である.また内受容感覚の改善に標準を合わせた治療法の開発も待たれる.

  • 黒瀬 心
    2019 年 35 巻 4 号 p. 197-206
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    ジャーナル フリー

    緊張病症候群はカタレプシー,反響現象,常同症,昏迷などの特徴的な症状を呈する精神運動の障害である.1874年にKarl Kahlbaumが緊張病を命名し,Kraepelinが統合失調症の一亜型に位置付けた.その後,統合失調症だけでなくあらゆる精神疾患,感染症といった一般身体疾患においても起こり得ることが報告されてきた.ベンゾジアゼピン系薬と電気けいれん療法が著効するが,適切に診断・加療がされないと様々な合併症をきたし致死的になりうる.その生物学的基盤については十分に解明されていないが,本稿では,これまで報告されてきた神経画像研究,遺伝子研究などの知見についてレビューし,自験例を交えながら,その症候と生物学的基盤について考察した.

  • 三村 悠
    2019 年 35 巻 4 号 p. 207-214
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    ジャーナル フリー

    摂食障害(Eating disorders:ED)はボディイメージの歪み,体重変化への異様な恐怖心とそれに伴う食事制限などの食行動の異常を特徴とした精神疾患である.体重によって神経性食思不振症(Anorexia nervosa:AN)と神経性過食症(Bulimia nervosa:BN)に大別されるが移行することもある.Refeeding症候群を中心として身体合併症管理に難渋するが,ED患者特有の認知機能や思考がさらに治療を困難にさせる.ED患者の認知機能にはどのような特徴があり,神経心理学的にはどのようにとらえられるのか,文献的探索をまじえながら検討する.最後に当院の自験例からも考察を加える.

  • 船山 道隆
    2019 年 35 巻 4 号 p. 215-224
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    ジャーナル フリー

    前頭側頭葉変性症ほど頻繁に観察されるものではないものの,脳血管障害や外傷性脳損傷などの後天性脳損傷後に繰り返しの行為や行動である常同行為/行動,あるいは過剰なこだわりが出現することがある.本稿では最初にこれらの症状と強迫性障害との症候学的な違いを明らかにする.次に,後天性脳損傷後にこれらの症状が出現した自験例と過去の例を挙げ,その病巣と特徴を検討した.常同行為/行動は前頭葉を中心としたかなり広範な損傷後にまれに出現し,保続との関係が考えられた.こだわりは外傷性脳損傷にときどき認められ,その背景には言語理解の低下やワーキングメモリの低下などの認知面の低下があるかもしれない.

原著
  • ―意味性認知症例の行動観察より―
    清水 秀明, 小森 憲治郎, 豊田 泰孝, 吉田 卓, 越智 紳一郎, 森 崇明, 池田 学
    2019 年 35 巻 4 号 p. 225-237
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    [早期公開] 公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    典型的な語義失語像を呈した54歳右利き男性の意味性認知症例の経過中,全般的な能力は保たれていたが,意味記憶障害の進展に伴い,当初は目立たなかった常同行動の出現を認めた.「休職中に早朝から用紙作成のために会社の複写機を独占する」と社会的行動障害を認めたが,行動異常型前頭側頭型認知症よりも強迫的であった.固執的な常同行動の背景に,語義失語による語彙の喪失に対する自覚とそれに伴う不安から対処行動に対する強迫化の傾向,意味記憶障害の進行に伴う対象の意味理解の狭小化と言語に関連する実行機能障害による行動目標の狭小化,早期から現れる他者視点の消失と次第に強まる自己の障害への無関心の3要素の関与を推定した.

  • ―1年間の経過比較―
    小林 良太, 川勝 忍, 林 博史, 岡村 信行, 大谷 浩一
    2019 年 35 巻 4 号 p. 238-248
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    [早期公開] 公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    意味障害型進行性失語(svPPA)は,典型的には若年発症で,病理学的にTDP-43タイプCを示すが,病初期や高齢発症例では,アルツハイマー病(AD)との鑑別が問題となることがある.本検討では,アミロイドイメージングでADは否定された初期のsvPPAの特徴を明らかにするとともに,臨床症状及び画像所見の経過について,若年発症例と高齢発症例とで比較した.両症例とも,1年の経過で脳萎縮や脳血流低下の進行を認めたが,若年発症例の方が,臨床症状と画像所見変化の進行が大きかった.高齢発症例は,若年発症例と比べて,緩徐な進行を示すことが示唆され,その原因として,病理学的背景の相違があるのか,今後明らかにしていくことが必要である.

  • 中薗 良太, 水田 秀子, 近藤 正樹
    2019 年 35 巻 4 号 p. 249-257
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/08
    [早期公開] 公開日: 2019/11/22
    ジャーナル フリー

    右上下肢に強いしびれ感が出現した心原性脳塞栓症例を報告した.頭部MRIでは左中心前回・中心後回・前頭弁蓋部後部・頭頂葉弁蓋部・島皮質後部に病変を認めた.右上下肢には重度の運動麻痺と軽度の感覚障害(表在覚,深部覚低下,複合感覚障害,しびれ感)を認め,しびれ感は偽性視床痛に関連したアロディニアと考えられた.患者自身が非麻痺肢で麻痺肢に触れた場合はしびれ感が出現せず,検者が患者の麻痺肢に触れたり,布団や机が触れた場合にしびれ感を認めた.しびれ感の機序として,自ら自己に触れる際は,能動的接触における感覚予測により感覚の消去が起こるが,他者からの接触時は感覚予測が困難なため,しびれ感が誘発されたと考えた.

第43回日本神経心理学会学術集会一般演題
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