従来,生物学的なO
2の定量にはポーラログラフ法を用いた被覆Pt電極が用いられているが,電極の較正曲線が試料の物理的性質や状態によって変化するので,十分な精度が得られなかった.ここで蒸着Pt薄膜をガラス中に封じ,その帯状の断端でO
2の還元を行うと電極面上に生成する拡散層の大きさが円形の断端を持った従来のPt線電極の場合に比較して小さくなり,上記の欠点が改善されることが判って来た. この報告では上記円形および帯状の両静止固体電極面上でのO
2の拡散についての理論式を各々について求め,またそれら電極の実験値と比較した. 第1図に示すような円形電極面上へのO
2の拡散は第7式のようになり,電極周辺のO
2の濃度分布を示すと第3図のようになる.電極面の軸(Z)上でのO
2濃度と電極面からの距離との関係を表lに,O
2の濃度勾配との関係を表llに示す.円形電極に流れる02の拡散電流は第11式のようになり,これは電極の円の面積でなく,その半径に比例するが,従来Caterによって報告されている電流値の1/πとなった. Pt線を用いた円形電極の直径とO
2の拡散電流との関係を実験的に求めたのが第6図で,拡散電流は電極の直径に比例し,電流値も理論値と一致した. 一方,第2図に示すような帯状電極面へのO
2の拡散を求めると,第17式のようになり,電極周辺の濃度分布は第4図,第5図のようになる.帯状電極面に垂直な軸(Z)上でのO
2濃度の分布は表lに示すようになり,O
2の濃度勾配の分布は表llのようになる,帯状電極に流れるO
2の拡散電流は第28式のようになり,電極の帯の幅には無関係となった. Pt板をガラスに封じた帯状電極の帯の幅とO
2の拡散電流との関係とを実験的に求めた結果が第7図で,―〇―は実測値,―●―は帯状電極の長さ方向の末端に流れる電流の影響を補正した値を示したもので,電極の帯の幅とO
2の拡散電流の大きさとは無関係であることが実験的にも証明できた. この結果,試料の物理的性質や状態で電極の較正曲線が変化するのを防ぐには,Pt線の断端を用いた従来の電極よりも,非常に狭い幅の帯状電極の方が有利であることを理論的に証明した.
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