Review of Polarography
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18 巻, 1-2 号
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  • 鈴木 信, 澤田 恵夫, 田孝 治朗
    1972 年 18 巻 1-2 号 p. 1-9
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     水―有機混合溶媒系において,溶媒組成による粘度,ポーラログラフ波高および半波電位を各有機溶媒について測定した.拡散電流が粘度変化だけにより変化するものと仮定して実測波高を実測粘度から計算した波高と比較すると,ジオキサンの場合,低い有機溶媒含量では両者はかなりよく一致するが,DMF,アセトニトリルの場合は偏差が見られる。一方高い有機溶媒含量では,ジオキサンの場合偏差が極端に大きくなるが,DMF,アセトニトリルの場合,それ以上大きくなってこない.従って両者の偏差は有機溶媒の性質に関係していることが認められる.これらの原因として,ジオキサンの場合,イオン会合が,そしてDMF,アセトニトリルの場合,選択的溶媒和が考えられる.1価のT1+イオンについては更に緩和効果の補正をした所,よりよい一致が得られた. 半波電位についてはフェロセンおよびコバルトセンによって液間電位を補正して溶媒組成との関係を調べたが,ボーンの式に従わず,イオン会合等が影響しているものと思われる.
  • 山下 和男, 今井日 出夫
    1972 年 18 巻 1-2 号 p. 10-16
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     ポーラログラフ法を用いてクロラニル(Q)の光化学反応の速度論的研究を行った.クロラニルおよび支持電解質として0.06MEt4NC1O4を含むジクロルメタン溶液中でDMEの表面を紫外線照射した場合,ポーラログラフ電流一電位曲線およびDME1滴下間の電流一時間曲線に顕著な影響が観察された.この現象は,光照射時のクロラニルの紫外,可視スペクトルに対する電子供与体の効果などの考察より,電解還元によって生成したクロラニルアニオンラジカルQ-およびジアニオン(Q2-)のそれぞれQおよびQ-への光酸化反応に原因すると結論された.また接触電流に関するHenkeとHansの理論およびKou-teckyの理論を援用した方法によってQ-からQへの光酸化過程の見かけの速度定数が評価された.
  • 清水 都夫, 妹尾 良夫, 佐藤 弦
    1972 年 18 巻 1-2 号 p. 17-28
    発行日: 1972年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     Taubeらは,(メチルフマラト)ペンタアンミンコバルト(III)錯体[CoOOCCH=CHCOOCH3(NH3)5]2+とCr(II)等との反応について報告している.すなわち,1961年にSeberaおよびTaubeは,フマラトペンタアンミンコバルト(III)塩とジアゾメタンとの反応によって合成した物質を上記錯体であると考えて,これをCr(II)等によって還元する際に,エステルの加水分解が起こると報告した。しかし,HurstおよびTaubeは,1968年になって,別な方法で合成した錯体を用いて同じ実験を繰り返し,還元の際に,エステルの加水分解は起こらないという前回の実験と逆の結果を報告した. 著者らは,これらの実験においてメチルフマラト錯体の合成方法が異なることに着目し,この点について検討を加えるとともに,水銀電極におけるメチルフマラト錯イオンの還元反応を調べた. 種々の検討の結果,HurstおよびTaubeの方法で合成したものがまさしく(メチルフマラト)ペンアタンミンコバルト(III)錯体であると考えられる.この錯体の直流ポーラログラムは,図3の曲線1に示されるように2つの波を示した.第1波は,Co(III)からCo(II)への1電子非可逆還元波であって,限界電流は拡散律速である.また,第2波は,Co(III)の還元によって電極近傍で遊離した有機配位子によるキネティックな性質を含む2電子還元波でpHに依存する.第2波の半波電位については,図4に示されるようにメチルフマラト錯体は,フマル酸モノメチルエステルに,フマラト錯体は,フマル酸にそれぞれ一致した.第2波の平均限界電流とpHの関係(図5)も同様であった. すなわち,メチルフマラト錯体は,水銀電極によって,Co(III)からCo(II)へ還元される際,エステルの加水分解は起こらず,フマル酸モノメチルエステルを遊離することが明らかである.このように,HurstおよびTaubeの溶液内反応の場合と同様な結果になることは興味深い. 一方,フマラト錯体とジアゾメタンとの反応生成物から得られた錯体(Complex S)については,元素分析,赤外吸収スペクトル(図1),NMRスペクトル図2),可視紫外吸収スペクトル,中和滴定,電気伝導度,陽イオン交換法,交直流ポーラログラフィー(図3,4,5)および定電位クーロメトリーなどによる種々の結果から,一応,Formula Iのような構造が推定される. SeberaおよびTaubeがはじめの実験で用いた物質は,おそらく,未反応のフマラト錯体,あるいはComplex Sのような錯体,もしくはこれらの混合物ではなかったかと考えられる.
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