十1価の臭素を持つN-プロムスクシンイミド(N:BS)は,0.1MKNQ
3およびBritton-Robinson緩衝液を含むpH5.0の電解液中で,再現性良い1段の還元波を与える.白金酸化層の還元された後の活性な電極表面の場合には,+0.75Vvs.SCEに半波電位を持つ還元波を示すが,白金酸化層のある電極表面の場合には,半波電位は約120mV負電位側に移行した.pH4以下では,臭素の還元による前波が現われ,同時に還元生成物あるいは不純物の吸着によると思われる電極表面の不活性化が著しくなり,再現性良い還元波を得ることはできなかった.pH8以上では,溶液調製後の時間によって電流値は著しく変化し,安定な限界電流を得ることはできなかった.pH5.0を中心にそのポーラログラフ的挙動を検討した結果,得られる限界電流は10
-3~2×10
-5Nの濃度範囲で濃度と良好な比例性を示す拡散電流であった.限界電流には2電子が関与し,NBSに含まれる+1価の臭素が臭素イオンに還元される電極反応によるものであつた. 一方,これらの結果をもとにして,NBSを用いる硫酸ヒドラジンの電流滴定を行なった.0.1MKNO
3およびBritton-Robinson緩衝液を含むpH5.0の硫酸ヒドラジン試料液を被滴定液として,NBS標準溶液を滴下する方法を用いた.その結果,10
-3~3×10
-5N濃度の硫酸ヒドラジンを士2%以内の誤差で定量できた。
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