物理探査
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64 巻, 5 号
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論文
  • 高倉 伸一, 南 大樹, 高木 哲一, 伊藤 雅和
    2011 年 64 巻 5 号 p. 309-318
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     ベントナイトは様々な分野の産業に使用されている粘土である。地下にあるベントナイトを探すため,現在,多くのボーリング調査が行われている。しかし,ボーリングの掘削はコストが高く,得られる地質情報は局所的なものであるので,ボーリング調査とは別の有効なベントナイトの探査法が求められている。ベントナイトは高導電性を示すスメクタイトを多量に含むことから,一般に比抵抗は非常に低い。したがって,地下の比抵抗分布を求める電気・電磁探査はベントナイト探査に適していると考えられる。電気・電磁探査のベントナイト探査への適用性を評価するため,宮城県にある土浮山鉱山で比抵抗法電気探査の実験を行った。解析された比抵抗断面から,低比抵抗体が地質調査や多くの調査井によって確認されているベントナイト鉱体とよく対応することが確認された。ベントナイト試料で計測した比抵抗とメチレンブルー吸着量の間に高い相関があり,メチレンブルー吸着量はベントナイトの特性を評価する指標として使われていることから,我々は両者の相関を利用して比抵抗断面からメチレンブルー吸着量の分布の断面を推定した。高いメチレンブルー吸着量を示す領域は,ボーリング調査で確認されているベントナイト鉱体の位置と概ね一致した。このことは,電気・電磁探査のような比抵抗探査がベントナイトの探査や評価に有効であることを示している。
  • 中山 徹, 古瀬 雅己, 高橋 明久
    2011 年 64 巻 5 号 p. 319-330
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     カナダのアルバータ州にあるオイルサンド貯留層の三次元地質モデル構築の際に,地球統計学の手法を応用して深度構造モデルの高精度化を図るとともに,地震波属性値記録の深度変換を実施した。構造モデルの構築では,オイルサンド貯留層の上面と基底面それぞれについて,水平方向のデータ密度が高い三次元地震探査の解釈ホライゾン(時間構造)と垂直方向のデータ精度の高い坑井深度の情報を地球統計学的な手法により調和的に統合して深度構造を推定した。オイルサンド貯留層の上面と基底面のそれぞれの時間構造と深度構造の情報に,さらにオイルサンド貯留層区間の地震波速度が水平方向に対しては変化するものの深度方向に対しては一定であると仮定すると,オイルサンド貯留層区間内の任意のデータサンプルの往復走時を深度に変換できる。この方法により,時間軸上の地震波属性値の情報を深度軸上の情報に変換することで,地震波属性値の深度ボリュームを作成した。本解析直後に対象地域内において5本の坑井が掘削された。地表からの深度約300mに存在するオイルサンド貯留層の上面と基底面について,掘削前の深度の予測値と掘削後に確認した深度の値とを比較したところ,その差は2m以下であった。その後,近隣の地域で取得した4つの三次元地震探査データにも本手法による深度変換が引き続き実施され,各地域の地下の三次元地質構造や岩相分布の推定に貢献した。
  • 地元 孝輔, 山中 浩明
    2011 年 64 巻 5 号 p. 331-343
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     南関東地域における微動の連続観測記録を用いて地震波干渉法理論に基づいて推定された表面波のスローネストモグラフィ解析を行った。解析では,山中ほか(2010)による観測から得られる微動データを用いて各観測点間で推定されたグリーン関数の表面波のスローネスを基にして,南関東地域を0.125°毎のセルに分割し,同時反復法により繰り返し計算を行い,周期 2 から 6 秒の表面波群速度のトモグラフィマップを作成した。その結果,関東平野中央部や東京湾では群速度が小さく,伊豆半島や関東平野西端部では群速度が大きいことが分かった。解析結果と既往のモデルによる表面波の基本モードの理論群速度マップおよび理論分散曲線とを比較し,伊豆半島,関東平野西端部および相模湾地域に,両者の顕著な差異を確認した。既往の 3 次元 S 波速度構造モデルの妥当性を検証するために各セルでのトモグラフィ解析結果による表面波群速度分散曲線の逆解析を行った。トモグラフィ解析結果で差異が大きかった相模湾においては逆解析結果により既往のモデルよりも層厚が小さいことが分かった。また,既往のモデルでは地震基盤が露頭していると仮定されていた伊豆半島における堆積層の存在を示唆する結果を得た。
ケーススタディ
  • 楮原 京子, 加野 直巳, 山口 和雄, 横田 俊之
    2011 年 64 巻 5 号 p. 345-357
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     新潟沿岸はひずみ集中帯に属し,ここでは1964年新潟地震,2007年新潟県中越沖地震が発生している。しかし,沿岸域は地質情報の乏しい領域であり,海陸境界部の地質構造の詳細は解明されていない。本研究では新潟海岸南西部において陸から海へと連続する活断層と推定されていた長岡平野西縁断層帯・角田・弥彦断層の位置・形状を明らかにするため,断層推定位置を横断する2測線での新規反射法地震探査と石油公団(現・独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)基礎物理探査「新潟~富山浅海域」の再解析を行った。データの処理は共通反射点(CMP)重合法を用いた。その結果,陸域断面,海陸接合断面,海域断面のいずれにおいても,堆積層が東へ大きく撓む構造が認められ,角田・弥彦断層が明らかに陸域から海域にのびる断層であることが示された。断層上盤側の堆積構造ならびに褶曲構造の特徴から,角田・弥彦断層がテクトニックインバージョンを背景とする逆断層で,その逆断層としての活動開始時期は西山層堆積中であると推定された。そして,西山層上面を基準とした場合,角田・弥彦断層に付帯する褶曲変形は幅約2kmにおよび,角田・弥彦断層の分布は海岸線付近において屈曲・分岐していることが明らかとなった。
  • 高倉 伸一, 南 大樹, 伊藤 雅和
    2011 年 64 巻 5 号 p. 359-366
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     ベントナイトは様々な分野の産業で利用されている粘土である。ベントナイトは高い導電性を示すスメクタイトを多量に含むことから,一般にその比抵抗は非常に低い。したがって,地下の比抵抗分布を求める電気・電磁探査はベントナイト探査に適していると考えられる。このことを確認するため,川崎鉱山および月布鉱山のベントナイトや周辺に分布する岩石を採取し,その比抵抗を他の物理的特性および化学的特性とともに計測した。比抵抗は含水率や膨潤度と高い相関を示した。また,沸石を含む岩石を除くと,比抵抗は陽イオン交換容量(CEC)とも相関を示した。特に比抵抗とメチレンブルー吸着量との間には高い相関が認められた。メチレンブルー吸着量はベントナイトの性状を評価する指標として使われていることから,電気・電磁探査法は地下にあるベントナイトの探査や評価に有効な手法であると考える。
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