カナダのアルバータ州にあるオイルサンド貯留層の三次元地質モデル構築の際に,地球統計学の手法を応用して深度構造モデルの高精度化を図るとともに,地震波属性値記録の深度変換を実施した。構造モデルの構築では,オイルサンド貯留層の上面と基底面それぞれについて,水平方向のデータ密度が高い三次元地震探査の解釈ホライゾン(時間構造)と垂直方向のデータ精度の高い坑井深度の情報を地球統計学的な手法により調和的に統合して深度構造を推定した。オイルサンド貯留層の上面と基底面のそれぞれの時間構造と深度構造の情報に,さらにオイルサンド貯留層区間の地震波速度が水平方向に対しては変化するものの深度方向に対しては一定であると仮定すると,オイルサンド貯留層区間内の任意のデータサンプルの往復走時を深度に変換できる。この方法により,時間軸上の地震波属性値の情報を深度軸上の情報に変換することで,地震波属性値の深度ボリュームを作成した。本解析直後に対象地域内において5本の坑井が掘削された。地表からの深度約300mに存在するオイルサンド貯留層の上面と基底面について,掘削前の深度の予測値と掘削後に確認した深度の値とを比較したところ,その差は2m以下であった。その後,近隣の地域で取得した4つの三次元地震探査データにも本手法による深度変換が引き続き実施され,各地域の地下の三次元地質構造や岩相分布の推定に貢献した。
抄録全体を表示