地域メディアとは,かつては地方紙や地上波地方局など,マスメディアの一角として全国メディアと相互補完的な関係にあるものが中心であったが,近年ではCATVやコミュニティ放送など地域独自の視点から地域の出来事や問題を扱うような地域メディアが着実に広がってきた。とくに阪神・淡路大震災以降は,大規模な災害が発生した時に,マスメディアでは取り上げにくい被災者向けの情報を提供する媒体として注目を集めている。社会情報学の観点からこうした地域メディアの問題を考えると,主に3つの新たな論点が考えられる。市民のメディア表現との関連については,地域メディアが市民のメディアリテラシーを育む場として機能し,ソーシャルメディア時代の個人の情報発信とも接続していくことが求められる。既存のマスメディアに対する批判的メディア実践については,マスメディアによるステレオタイプ的な地域イメージに対抗して,地域に内在的な独自の視点で地域を表象していくことが必要である。地域の映像アーカイブの問題については,地域メディアが時代を超えて映像資料を伝えていく役割を果たすことが必要であると同時に,地域メディアの生み出した映像資料をメディア内部で抱え込むのではなく地域社会に還元していくことが必要である。
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