現代社会において，人工知能（以下，AI）の開発が着々と進められており，我々の日常生活の隅々までに影響を与える時代が来ることは間違いない。そのような時代において人間がAIとのコラボレーションできるかどうかはもう一つの課題であろう。本論文においては，クラウドソーシングによる仮想的なAIエージェントを相手プレイヤーとして想定した公共財ゲーム実験を用いてAIと人間の協力行動の可能性について分析した。

その結果，公共財ゲームについては，対人信頼および対人社会的価値志向性は影響を及ぼさないが，対AI社会的価値志向性は影響を及ぼすこと，協力的なAIエージェントが多い方が公共財ゲームで貢献することが明らかになった。また，人間よりもAIに対する一般的信頼が高い一方で，向社会性と親密性についてはAIに比べて，人間に対して高く，AIエージェントに対する親密性は，一緒に作業を行った後に高まることが明らかとなった。

これらの結果は，人間に対して協力的な人がAIに対して協力的であるとは限らないものの，社会的選好の知見がAIとの関係にも応用し得ること，これからの社会においてさまざまな形でAIとの協力の機会が増えることで，個人のAIに対する態度が改善し得ることを示唆している。