本研究においては,情報技術の進展に伴う「情報社会における監視」に着目して,その監視の許容の程度について実験を行った。研究1として,クラウドソーシングユーザを対象に実験を行った結果,信用情報システムによる監視,購入履歴に関する監視を許容する傾向にあり,個人による監視,電話メールによる通信に関する監視を許容しない傾向にあること,さらに監視主体と監視方法の交互作用が存在することが認められた。
続いて,研究1を踏まえて,昨今注目を浴びる社会信用システムに対する評価を明らかにすること,およびクラウドソーシングユーザがオンラインでの行動を志向している可能性を考慮して,研究2として大学生を対象として項目を追加した実験を実施した。その結果,社会信用システムに対する許容度も高いこと,さらに研究1と研究2の結果を比較した研究3から,大学生調査とクラウドソーシング調査で同様の結果を得られることが明らかとなった。
これらの結果は,監視主体と監視媒体の組み合わせによって,監視の許容の程度が異なることを示しており,一律に許容するものでなければ,一律に排除するものでもないことが明らかとなった。今後の課題として,監視主体,監視対象,監視媒体の種類の拡張や,行動実験による検討があげられる。
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