社会情報学
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原著論文
  • 平田 勇人, 新田 克己
    2021 年 9 巻 3 号 p. 1-16
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/06/24
    ジャーナル フリー

    近年,同一労働に対する待遇格差が大きな社会問題となり,労働問題を分析するのに労働判例の解析が重要になっている。一般に判例を解読するには多くの時間を要する。それは判例における主張対立の論理構造が複雑なためである。判例の分析を助けるため,重要な特徴的事実(ファクタ)による判例の記述と判例間の類似性を判断する研究や判例の論理構造のダイアグラムによる記述法の提案などがあった。しかし,ファクタだけでは判例の論理構造が表現できないという問題と,複雑なダイアグラム表現を判例から抽出することは困難であるという問題があった。一方,数理議論学の分野で研究されている双極性議論フレームワーク(BAF)や拡張議論フレームワーク(EAF)は判例の構造を簡明に記述するのに適しており,論理的裏付けが明確であるという利点がある。そこでわれわれは,ファクタとBAF・EAFを組み合わせて,判例の論理構造を記述し,(1)判決に影響を及ぼすファクタの分析,(2)裁判所による争点の選択傾向の分析,(3)原告と被告の主張の対立や裁判所の判断の論理検証,という3つ観点から労働判例の分析を行った。その分析結果から,本手法が労働判例の個々の判例の論理構造を詳細に記述して検証を行えること,ファクタや争点に着目することで複数の判例からの判決の傾向分析が有効に行えることを示した。

  • 後藤 晶
    2021 年 9 巻 3 号 p. 17-33
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/06/24
    ジャーナル フリー

    本研究においては,情報技術の進展に伴う「情報社会における監視」に着目して,その監視の許容の程度について実験を行った。研究1として,クラウドソーシングユーザを対象に実験を行った結果,信用情報システムによる監視,購入履歴に関する監視を許容する傾向にあり,個人による監視,電話メールによる通信に関する監視を許容しない傾向にあること,さらに監視主体と監視方法の交互作用が存在することが認められた。

    続いて,研究1を踏まえて,昨今注目を浴びる社会信用システムに対する評価を明らかにすること,およびクラウドソーシングユーザがオンラインでの行動を志向している可能性を考慮して,研究2として大学生を対象として項目を追加した実験を実施した。その結果,社会信用システムに対する許容度も高いこと,さらに研究1と研究2の結果を比較した研究3から,大学生調査とクラウドソーシング調査で同様の結果を得られることが明らかとなった。

    これらの結果は,監視主体と監視媒体の組み合わせによって,監視の許容の程度が異なることを示しており,一律に許容するものでなければ,一律に排除するものでもないことが明らかとなった。今後の課題として,監視主体,監視対象,監視媒体の種類の拡張や,行動実験による検討があげられる。

研究
  • ―大学の広報の基本方針等の文書調査から―
    池谷 瑠絵
    2021 年 9 巻 3 号 p. 35-45
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/06/24
    ジャーナル フリー

    本研究では,日本の大学等の研究機関がインターネット上で公開している広報に関わる文書を用いて学術広報の現況を調査し,これに基づいて学術広報コミュニケーションに,コミュニケーションの一般モデルであるシャノン=ウィーバー・モデルを適用して,学術広報共通のフレームワークを作成することを試みた。この調査では,収集した広報の「基本方針等」41文書から,その内容を6項目・計50の下位項目にまとめた。次に調査結果からわかった学術広報の諸活動に,シャノンが示した技術的な問題(A)とウィーバーが追加した意味と効果の問題(B,C)という3つのレベルから成るシャノン=ウィーバー・モデル(1949年)を適用することにより,コミュニケーション・フローのどこで,どの問題(A,B,C)に関わる指標が計測可能であるかを明らかにするフレームワークを作成した。

  • 仲嶺 真, 河野 真歩
    2021 年 9 巻 3 号 p. 47-63
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/06/24
    ジャーナル フリー

    近い将来,南海トラフ巨大地震の到来が予想されている日本において防災対策は重要である。このような対策を考えるために,避難行動に関する研究が数多く実施されてきているものの,その多くは,質問紙調査や実験など避難行動に影響する要因を特定するための研究であった。しかし,そのような要因を捉えるだけでは,人々の実際の避難行動を捉えたことにはならない。今後,より効果のある避難行動対策を考案するためにも,被災者がどのように情報を取得しながら避難したのかについて具体的な径路を記述することが重要であると考えられる。そこで本研究は,複線径路等至性アプローチを用いて,東日本大震災の被災者が被災当時どのように情報を取得しながら避難行動を行なったのかを検討し,当時の避難行動径路を可視化した。それにより,防災対策の一助となる知見を得ることを試みた。その結果,被災者は避難時に(特に行動の分岐点において)「所属集団の尊重」という価値観を有していたことが示唆された。そこから,「自助」や「公助」だけでなく,「共助」を前提とした避難対策が必要であることが指摘された。災害対策を考える上では,質問紙調査や実験といった要因特定型の研究だけでなく,実際の避難行動径路の可視化などのミクロな視点での研究も必要であることが議論された。

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