本稿は,デジタル時代における編集の自由の保障とそのあり方について検討するものである。編集の自由に関して,ノルウェーでは,メディア政策という文脈において積極的に同自由の保障やそのあり方に関する議論が展開されている。そこで本稿では,なぜいまノルウェーを題材として編集の自由を論じるのか,という点を明確にした上で,日本の参考となりうる普遍的な論点の析出も意識して考察を進めていく。
まずノルウェーでは,①編集者の自由の保障,編集の独立の原則の強化(法制化),②編集者の自由を享受し,民主的機能を果たすメディアへの支援・助成,③編集者に特有の自由の行使に伴う責任の明確化,という3つの方向性があることを指摘する。
そしてこれらの議論を踏まえ,日本における編集者の自由の保障に関しては,まずメディア環境全体の状況をトータルに勘案した上で,国家の関与の余地について検討を加え,慎重に制度設計がなされるべきであることを確認する。そして,メディア環境全体をデザインするという観点から,編集者の自由を享受・行使するメディアへの助成制度が,編集上の独立性が揺るがないよう設計されている場合には有効であることを指摘する。とりわけ,編集者の自由の確保とそれにリンクした編集メディアへの助成策がセットで展開されることが重要であると主張する。さらに,責任の議論に関しては,報道機関とオンラインプラットフォーマーの協働,オンラインを対象とした救済制度の設計の可能性等について述べ,自由の行使に伴う責任の明確化が肝要であることを確認する。このような編集の自由へのアプローチによって,日本の編集メディアは民主的役割を果たすことができると考える。
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