社会情報学
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11 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著論文
  • 後藤 晶
    2023 年 11 巻 3 号 p. 1-17
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    本研究においては,「誰かに見られていると感じること」を「被監視感」と定義する。その上で,第1者被監視感・第2者被監視感・第3者被監視感などの社会的監視と,超自然的存在被監視感が社会的選好並びに主観的幸福度に対して与える影響について,クラウドソーシングを用いて調査した。

    主観的幸福度に対して,被監視感を媒介変数として分析を行った結果,直感性因子が超自然的存在被監視感を部分媒介変数として主観的幸福度にポジティブな影響を与えることが明らかとなった。同様に,社会的選好に対しては,直感性因子が超自然的存在被監視感を完全媒介変数として向社会性にポジティブな影響を与えることが明らかとなった。したがって,いずれも直感的に超自然的存在による被監視感を抱くことが重要であるといえる。

    これらの結果は,監視主体として想定される存在により,主観的幸福度ならびに社会的選好が異なり得ることを指摘しており,特に超自然的存在の現代的な意義について再検討する必要があることを示唆している。

  • ―Elastic net回帰を用いたポアソン重力モデルによる分析―
    荒川 清晟, 野寄 修平
    2023 年 11 巻 3 号 p. 19-33
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    地方から都市圏への人口流出が続く中,移住誘致のための取り組みが全国の市区町村で実施されている。その一方で,日本国内の人口移動に関する研究は,市区町村単位で解析したもの,大都市から地方への人口移動流を対象としたものが少なく,これらの人口移動に関連する社会・経済的な要因は未だ明らかになっていない。本研究では,これを明らかにするため,大都市から地方への人口移動量と社会・経済的な要因(所得,就業機会,アメニティなど,移動先と移動元合わせて53変数)の関連を市区町村単位で網羅的に分析した。一般に,回帰モデルはモデルに使用できる変数の数の制限や多重共線性の問題があり,多くの変数を使用することは難しい。これらの問題に対処するため,本研究では,モデル内に取り込める説明変数の数の制限が弱く,かつ相関の強い変数の回帰係数の絶対値が近い値をとる特徴(Grouping効果)をもつElastic net回帰を使用した。この結果,重力モデルの基本変数である距離,移動元の総人口,移動先の総人口を含む20の変数が移動人口と関連のあるものとして選択された。今後は年齢や子供の有無など属性別の分析,複数年次のパネルデータを用いた各要因の人口移動量への影響評価が必要である。

研究
  • ―ノルウェーにおけるメディア政策を題材として―
    上田 一紀
    2023 年 11 巻 3 号 p. 35-51
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    本稿は,デジタル時代における編集の自由の保障とそのあり方について検討するものである。編集の自由に関して,ノルウェーでは,メディア政策という文脈において積極的に同自由の保障やそのあり方に関する議論が展開されている。そこで本稿では,なぜいまノルウェーを題材として編集の自由を論じるのか,という点を明確にした上で,日本の参考となりうる普遍的な論点の析出も意識して考察を進めていく。

    まずノルウェーでは,①編集者の自由の保障,編集の独立の原則の強化(法制化),②編集者の自由を享受し,民主的機能を果たすメディアへの支援・助成,③編集者に特有の自由の行使に伴う責任の明確化,という3つの方向性があることを指摘する。

    そしてこれらの議論を踏まえ,日本における編集者の自由の保障に関しては,まずメディア環境全体の状況をトータルに勘案した上で,国家の関与の余地について検討を加え,慎重に制度設計がなされるべきであることを確認する。そして,メディア環境全体をデザインするという観点から,編集者の自由を享受・行使するメディアへの助成制度が,編集上の独立性が揺るがないよう設計されている場合には有効であることを指摘する。とりわけ,編集者の自由の確保とそれにリンクした編集メディアへの助成策がセットで展開されることが重要であると主張する。さらに,責任の議論に関しては,報道機関とオンラインプラットフォーマーの協働,オンラインを対象とした救済制度の設計の可能性等について述べ,自由の行使に伴う責任の明確化が肝要であることを確認する。このような編集の自由へのアプローチによって,日本の編集メディアは民主的役割を果たすことができると考える。

  • 劉 沫妤
    2023 年 11 巻 3 号 p. 53-69
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    絵文字が日々のデジタルコミュニケーションに浸透している一方で,絵文字の利用行動と個人差に対する理解が不足し,利用傾向の異なるユーザー同士で,意思疎通の行き違いが多発している。そうした中で,本研究は10代と20代の若年層を対象に,年齢,性別とパーソナリティの三要素から,絵文字利用頻度と利用種類の個人差を探究した。本研究では,Simejiでウェブアンケートを実施し,男女1289名の回答についてUnicodeに従い分析を行った結果,(1)20代は10代より絵文字の利用頻度が高く,「face-hand」と「event」カテゴリーの絵文字を多用する傾向にある。(2)女性は男性より絵文字を頻繁に利用し,「emotion」カテゴリーの絵文字を好む傾向がある。(3)外向性,開放性と情緒不安性の得点が高いほど,絵文字を頻繁に使う。また,情緒不安性,誠実性,外向性,開放性とよく使う絵文字のカテゴリーが関係していることが分かった。一連の結果は,若年層における絵文字利用の多様性と,利用行動および個人特性との関連を示唆している。

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