樹木医学研究
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13 巻, 2 号
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論文
  • 吉川 枝里, 米田 美里, 宮本 和則, 岩永 史子, 山本 福壽
    2009 年 13 巻 2 号 p. 58-66
    発行日: 2009/04/30
    公開日: 2020/10/28
    ジャーナル フリー
    オオバヤドリギ(Scurrula yadoriki)と種々の宿主の葉の水ポテンシャルの比較を行い,P-V曲線法を用いて,それぞれの葉の水分生理特性を検討した.さらに,光合成速度の測定によりオオバヤドリギと宿主の同化生産能力の差異を明らかにした.オオバヤドリギは宿主よりも低い葉の水ポテンシャルを示し,宿主からオオバヤドリギへ水分の移動が起こっていることが示唆された.光合成速度はオオバヤドリギと宿主間で有意差は認められなかったが,蒸散速度は宿主と比較してオオバヤドリギの方が顕著に高い値を示した.これに伴う葉の水ポテンシャルの低下により宿主から水分および養分の獲得が可能となり,オオバヤドリギは恒常的な物質生産と成長を行っていると考えられた.また,オオバヤドリギでは日中の高い蒸散速度により水ストレスを受けることが想定されるが,オオバヤドリギは宿主よりも膨圧を高く維持できる耐乾性の強い葉を持つことが示唆された.
  • 佐藤 明
    2009 年 13 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2009/04/30
    公開日: 2020/10/28
    ジャーナル フリー
    吸汁性昆虫の寄生が樹木の生育に及ぼす影響を明らかにするため,トドマツオオアブラムシ(Cinara todocola)に寄生されている樹高約50 cm,30年生前後の天然生トドマツ(Abies sachalinensis)稚樹を対象に,枯死の発生,および樹体内の水分状態をプレッシャーチャンバー法を用いて調べた.調査はプロット設定時に,トドマツオオアブラムシの寄生状態と寄生による影響発現の状態により稚樹群をほとんど寄生なし,多数寄生しているが正常に生育,多数生育し生育異常の3つに区分して行った.トドマツオオアブラムシは木部樹液でなく師部の液を吸汁するが,日中の木部圧ポテンシャルはアブラムシが多数寄生しているが正常に生育している稚樹群に比して,寄生がほとんど無い稚樹群のほうが高い傾向を示したものの,両者に大きな差は見られなかった.寄生により萎凋等を示す生育異常とされた稚樹群の日中の木部圧ポテンシャルは-2 MPa以下の低い値を示し,その後,それらの個体の多くは枯死した.プロット内では毎年枯死木が発生し,最も高い年の死亡率は10%を超えた.
樹木医学の基礎講座
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