吸汁性昆虫の寄生が樹木の生育に及ぼす影響を明らかにするため,トドマツオオアブラムシ(
Cinara todocola)に寄生されている樹高約50 cm,30年生前後の天然生トドマツ(
Abies sachalinensis)稚樹を対象に,枯死の発生,および樹体内の水分状態をプレッシャーチャンバー法を用いて調べた.調査はプロット設定時に,トドマツオオアブラムシの寄生状態と寄生による影響発現の状態により稚樹群をほとんど寄生なし,多数寄生しているが正常に生育,多数生育し生育異常の3つに区分して行った.トドマツオオアブラムシは木部樹液でなく師部の液を吸汁するが,日中の木部圧ポテンシャルはアブラムシが多数寄生しているが正常に生育している稚樹群に比して,寄生がほとんど無い稚樹群のほうが高い傾向を示したものの,両者に大きな差は見られなかった.寄生により萎凋等を示す生育異常とされた稚樹群の日中の木部圧ポテンシャルは-2 MPa以下の低い値を示し,その後,それらの個体の多くは枯死した.プロット内では毎年枯死木が発生し,最も高い年の死亡率は10%を超えた.
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