関東地方の暖温帯林に広く自生し,また屋敷林や生垣に用いられる常緑広葉樹シラカシとヒサカキの2種の内生菌群集について,葉内の部位間比較と優占菌の対峙培養に基づき,菌種間の競合関係を調査した.千葉県柏市の二次林と茨城県笠間市吾国山のスギ・ヒノキ人工林の下層木を対象に,野外調査をそれぞれ2008年9月と同年10月に行った.表面殺菌したシラカシとヒサカキの葉から,葉柄,基部の主脈を含む部位(基部主脈)と葉脈を含まない部位(基部葉身),先端部の主脈を含む部位(先端部主脈)と葉脈を含まない部位(先端部葉身)の計5部位より2 mm角の切片を作成し,1/2PDA培地上で内生菌を分離し,各菌種の分離頻度に基づき内生菌群集を把握した.Phomopsis sp.は吾国山のシラカシ,柏のシラカシおよびヒサカキの葉柄と基部主脈において他の部位より高頻度で分離された.また,柏のシラカシ葉では,Tubakia sp.1が基部および先端部葉身に優占し,これら2種の偏在部位が互いに異なっていた.さらに対峙培養試験では,これら2種が接触する前に伸長阻害を示したことから,これら2種間の拮抗関係が示唆された.内生菌の葉内の分布には菌種間の相互作用が関わっており,こうした種間相互作用を通して,棲み分けが生じている可能性が示唆された.
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