苗畑における暗色雪腐病菌の繁殖・伝播様式を明らかにするため,0.07haの苗床において,エゾマツとアカエゾマツの罹病苗から分離した117菌株の遺伝子型を,7座のマイクロサテライト(SSR)マーカーを用いて決定し,ジェネット分布を調べた.その結果,117菌株は40の遺伝子型に分けられた.このうち2つの遺伝子型は苗床の広範囲にわたって分布していたが,苗床内で連続して排他的なコロニーを形成することなく,その他の遺伝子型と混ざり合いながら分布していた.したがって,これら2つのジェネットは,菌糸伸長に加え,土壌耕起や床替え時に菌体や,菌が付着・寄生した植物残渣が拡散することで,無性的に分布を拡大した可能性が考えられた.一方,32の遺伝子型は,1本の苗のみから検出され,苗畑には出現頻度が低い多様なジェネットが存在していた.この結果は,暗色雪腐病菌が有性または疑似有性生殖を頻繁に行っている可能性を示唆した.
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