スギ林火災によって無植生状態になった林床で,被害を受けた低木とシダ類の萌芽再生と,火災後に多数発生した植物名を調べた.林床の低木とシダ類は,火災直後は全てが枯死したようにみえたが,1年経過すると71%が萌芽再生した.火災から半年後,林床にはクズ,ヒヨドリジョウゴ,ヨウシュヤマゴボウなど,隣接する無被害区域には殆ど見られない植物が繁茂した.火災直後,土壌が剝き出しだった林床は,埋土種子起源と思われる植物の発生もあり,短期間で緑に覆われた.火災によって上木の半数が消失し,林床が攪乱されたことから高木性樹種による天然更新を期待したが,8年経過した現在,稚樹の総本数は7,150本/ha, 草丈を超える稚樹が100本/haと少なく,無被害区域の総本数5,560本/haと比べても顕著に多いとはいえなかった.調査林分は,このまま放置していても速やかに高木性樹種の林立する森林として再生する事は困難なことが分かった.
抄録全体を表示