レイランドサイプレス(×
Cupressocyparis leylandii, Leyland cypress)は,モンテレーサイプレス(
Cupressus macrocarpa, Monterey cypress)とアラスカヒノキ(
Chamaecyparis nootkatensis, Nootka cypress)との属間雑種である.風に強く,耐塩性があるとされ,イギリスやニュージーランドで防風林として植栽されている.石川県では,1986年に海岸部にレイランドサイプレスを試験的に植栽した.その植栽木に,樹幹から激しく多量の樹脂を流出する被害が発生した.その症状は,ヒノキ漏脂病に類似した被害であったが,今までにヒノキ,ヒノキアスナロ,サワラ以外の樹種では,漏脂病は記録されていない.そこで,被害の実態と原因を明らかにするため,樹脂流出患部からの菌類の分離と接種試験を行った.被害は,植栽木全てに発生し,特に樹幹下部に激しい患部があった.内樹皮に形成された壊死斑からは,樹脂胴枯病菌(
Seiridium unicome)が優占的に分離された.分離された同菌をレイランドサイプレスとヒノキの苗木に接種した結果,両者に病原性を示した.以上のことから,レイランドサイプレスに発生した漏脂症状は,樹脂胴枯病による被害であると判断された.レイランドサイプレスは,日本におけるヒノキ樹脂胴枯病の新しい宿主である.
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