風工学研究論文集
Online ISSN : 2435-5429
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  • 赤星 明紀, 猿川 明, 佐々木 亮治, 宮下 康一, 中村 修, 義江 龍一郎, 植松 康
    2022 年 27 巻 p. 1-8
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    (株)風工学研究所による風環境評価指標は,累積頻度が55%および95%となる平均風速と街並みの関係から定められているが,人の風に対する体感・印象との関係は明らかにされていなかった。筆者らは既往の研究において,累積頻度95%の平均風速と風の強さの印象の関係を示しているが,その関係を環境アセスメント等の実務において活用するためには,一般の人が理解しやすい形で示すことが重要である。そこで本稿では,風の強さに対して不快に感じる人の割合(不快者率)を定義し,評価指標との関係について検討した結果を示す。併せて,不快者率に対する気温の影響,および不快者率と歩行者の転倒危険性の関係について検討した結果も示す。
  • 瀬田 航己, 池谷 直樹
    2022 年 27 巻 p. 9-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    歩行者空間の発生頻度の低い強風は速度成分の確率密度分布から予測できる.本研究はlarge-eddy simulationによって決定された単純街区の速度成分の確率密度分布について、ガウス分布とGram-Charilier Series(GCS)を用いて3次、4次の統計値によって修正したガウス分布を比較した.3次、4次のモーメントを適切に反映したGCSを用いることで、偏りのある確率密度分布を予測できること、ガウス分布と比較してより正確にパーセンタイル値を予測できることを確認した.また、3次、4次の統計値から確率密度分布がガウス分布によって表現可能であるかを判定できることが示唆された.
  • 南 健斗, 米澤 千夏, 大風 翼
    2022 年 27 巻 p. 19-27
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    LESの植生キャノピーモデルにおいて、樹冠でのkSGSの増加を考慮した1方程式モデルと、抗力項のみで評価されるSmagorinsky型の0方程式モデルを用いて植生のある流れ場の再現解析を行い、0方程式型の植生キャノピーモデルの歩行者風空間における風環境予測への適用性の検討を行った。二次元樹木を対象とした解析の1方程式モデルと0方程式モデルでは、kSGSの増加はわずかであり樹木後方の平均風速や風速の確率密度分布に与える影響は小さいことがわかった。農村部の屋敷林周辺を対象とした解析では、0方程式型の植生キャノピーモデルを用いても、樹木後方2.0hの位置で解析は風速の低減効果を再現し、観測と一致していた。
  • COMPARISON OF WEIBULL DISTRIBUTION METHOD AND GRAM.CHARLIER SERIES METHOD
    Wei WANG, Taishi KAWAMINAMI, Koki SETA, Naoki IKEGAYA, Tsubasa OKAZE
    2022 年 27 巻 p. 28-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    This study compared the accuracies of the Weibull distribution method (two-parameter Weibull and three-parameter Weibull methods, i.e., 2W and 3W methods) and Gram.Charlier series (GCS) method for estimating the low-occurrence wind speed at the pedestrian level around an isolated building. The wind speed data analyzed in this study is taken from an LES database. For the advantage of the models to predict the probability density function (PDF) of the wind speed data, the 2W, 3W and GCS methods more accurately modelled the unimodal distribution than the bimodal distribution. In addition, the highest-order GCS method in this study (i.e., GCS-6th method) exhibited better flexibility in modelling PDFs than the 2W and 3W. For estimating the low-occurrence wind speed, the 2W, 3W and i-th-order GCS methods require the mean and standard deviation, these two statistics plus the skewness, and the first-order to i-th-order statistics, respectively. For the estimation accuracy, the 2W method is better than the second-order GCS method and the 3W method is better than the third-order GCS method although the GCS-6th method is regarded as the most accuracy method in this study owing to incorporating the higher-order statistics.
  • Yezhan LI, 大風 翼
    2022 年 27 巻 p. 38-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    The wind and temperature fields around a cubic array in unstable boundary layer were simulated by large-eddy simulation. This study aimed to evaluate the performance of polyhedral meshes with local mesh refinement andthe effect of boundarylayer meshes on the characteristics of wind velocity and temperature fields within a focused area. A precursor simulation was conducted to obtain wind and temperature fluctuations for the inflow boundary conditionin the unstable boundary layer. After validation,four cases with differentpolyhedral mesh arrangements were compared. The polyhedral cases with local meshrefinement showed comparable accuracy with the orthogonal case. The boundarylayer meshes on the groundand surfaces of cubic building models improved the accuracy of the wind and temperature fields near the surfaces.
  • 川島 理沙, 大宮 哲, 新屋 啓文, 西村 浩一, 大風 翼
    2022 年 27 巻 p. 48-57
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    本研究では北海道弟子屈町の雪原にて吹雪観測を行い、地吹雪イベントを抽出した後、風速と飛雪流量の関係について分析したほか飛雪流量の10分間平均値と1分間移動平均値の最大値の関係について整理した。さらに、メソ気象解析により算出した風速の水平分布と観測で得た風速と飛雪流量の関係を用いて飛雪流量の水平分布を算出し、既往の視程予測式より、視程の水平分布を推定したほか飛雪流量の増加に伴う視程分布の低下について検討を行った。推定された視程の10分間平均値は観測地点の視程計の値と概ね一致していた。また、弟子屈の観測サイトを含む谷の出口付近で特に視程が低下し、乱流変動に伴い視程が30%程度に低下する可能性が示唆された。
  • 西村 宏昭, 玉城 麿
    2022 年 27 巻 p. 58-67
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    建築基準法と園芸施設施工標準仕様書の比較によって,両者の長所と短所を考察した。園芸基準では,風速の出現頻度は施設の供用期間や重要性から設計者が任意に決めることができ,合理的な考えを取り入れている。その一方で,速度圧の高さ方向の分布を表す係数の根拠が明確でないこと,内圧係数が与えられていないことなどの見直すべき項目が散見され,最新の知見を取り入れた方が良いと思われる。建築基準法では設計風速の出現頻度の設定に安全性の指標が明確に示されていない。建築物荷重指針がモデル標準として両基準の短所を補うように整備することが望ましいとする考えを示した。
  • 植松 康, 山家 哲生, 池田 浩和
    2022 年 27 巻 p. 68-76
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    本論文は、金属下地を有する機械的固定工法防水システムを対象とし、実大試験体を用いた実変動風圧載荷試験に基づき、風荷重による防水システムの動的挙動と破壊性状について検討したものである。試験体には風洞実験で得られた風圧係数の時刻歴を用いて再現した時間的にも空間的にも変化する変動風圧が載荷され,シートの変形や固定部に作用する風力並びに破壊モードが測定された。比較のため、漸増圧載荷試験も行った。実験結果より、固定部には鉛直力と同程度の水平力が作用し、それによって破壊荷重の低下と破壊モードの変化がもたらされることが示された。漸増圧載荷による破壊荷重は変動圧載荷による値より一般に小さいことより、実設計では漸増圧載荷試験の結果を利用することが可能であると考えられる。
  • Yong CAO, Haokai WU, Yaoran CHEN, Dai Zhou
    2022 年 27 巻 p. 77-88
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    クラッディングの耐風設計の中、既存の推定方法は、圧力タップから測定された時系列を時間的にフィルタリングすることにより、空間平均のピーク負荷に近似する。 この研究では、機械学習法を適用して、非線形性と高い空間分解能(超解像フィールド)を備えたパネル上の圧力分布を再構築した。これにより、直接空間平均化によるピーク圧力の推定が可能になる。 高層ビルの上部コーナータイルに焦点が当てられ、風上と風下の両方の条件下での低解像度測定から超解像圧力場が再構築された。 再現された時間平均圧力は実験結果とよく一致している。 超解像法は、従来のシングルポイントタイムフィルター法よりも極圧の予測精度が高く、個々の測定タップの選択に依存しない強力なロバスト性を備えている。
  • 髙舘 祐貴, 喜々津 仁密, 奥田 泰雄
    2022 年 27 巻 p. 89-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    建築基準法や建築物荷重指針・同解説等では高さZb以下の設計風速が一定値で与えられている。建築物等の高さがZbよりも低い場合,一般に安全側ではあるものの対象とする建築物等によっては設計用風荷重を過大評価することとなるため,合理的な耐風設計のためには地表面付近の風速性状を把握する必要がある。本研究ではまず粗度ブロックを均質に配置した風洞実験及び数値流体解析を用いて地表面付近の風速を測定した。平均風速と変動風速の性状については既往の研究と比較するとともに気流の乱れ強さの推定式を拡張する形で提案した。また,POD解析を用いて地表面付近の変動風速の空間的な特性を示した。
  • 西嶋 一欽, 米田 格, 清水 勝
    2022 年 27 巻 p. 99-108
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    本稿では2021年台風16号通過時に低層建築物の屋根面に作用した圧力と周辺風速を分析する。低層建築物の屋根面に作用した圧力の実測には著者らの研究グループが開発した絶対圧センサを用いた計測システムを用いた。分析によれば、低層建築物の屋根面で発生する急激な負圧や風速の増減はクラスタとして発現するなど強い非定常性を示した。このような特徴は、通常の風洞実験や高層建築物の耐風設計で想定されている風環境・風荷重とは異なるものであり、低層建築物の強風被害低減やリスク評価においては、既存の風荷重の算定方法を再考する必要を示唆するものである。
  • 尾田 春雄, 益子 渉, 野田 稔
    2022 年 27 巻 p. 109-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    最弱リンクモデルを適用した建物被害確率モデルの精度を向上させるため、建物ポリゴンを導入した。建物の密集度の指標として、評価メッシュ面積に対する建物面積の割合である建物面積比(ε)を使用した。また,被害建物ポリゴンを用いて,各メッシュの被害有無の判定を行った.2018年台風21号(T1821)における建物被害について検討した結果、説明変数としてεと最大風速の2乗を用いた被害確率モデルによる推定値は、実際の値とよく一致することがわかった。そして、構築したモデルによる推定値と実際の被害メッシュ分布とを比較すると、概ね対応することが示された。また、T1821の情報を基に構築したモデルを2019年の台風Faxaiの被害に適応して被害確率を推定し、被害の有無と比較したところ、今回提案したモデルが他の台風にも適用可能であることが示唆された。
  • 徐 鏡淋, 高橋 徹
    2022 年 27 巻 p. 118-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    台風の直後、住家に対して迅速的な被害評価などの作業を行うことができれば、住宅修理や災害保険認定の根拠を提供することができる。本稿では、ドローンと深層学習に基づいて、令和元年台風15号後の鋸南町において、屋根と外壁の被害検出および評価を行った。ドローンで現地撮影、屋根と外壁のテクスチャの出力、深層学習による被害の自動検出、被害のレベル判定という4つの部分に分かれている。本稿で自動検出のF値は0.80で、レベル判定は0.65に達した。
  • 畔上 泰彦, 大竹 和夫, 田中 英之, 日下 博幸
    2022 年 27 巻 p. 126-133
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    本研究は、database for Policy Decision making for Future climate change(d4PDF)の全球モデルの現在気候実験(HPB)、2℃昇温実験(HFB_2K)、4℃昇温実験(HFB_4K)データを用いて各実験での日本のエリア毎の再現期間50年、500年の風速と上陸時の台風の性状を調査した。その結果、日本の陸上ではHFB_4KはHPBに比べて再現期間50年、500年の風速がそれぞれ1.05~1.10倍、1.05~1.15倍となり、温暖化が進むと現在より強い風荷重が建物に作用する可能性があることが明らかとなった。またHFB_2K、HFB_4Kの日本上陸時の台風はHPBに比べ発達し、上陸エリアによって進行速度が遅くなるため、強風の継続時間が長くなることや台風中心付近の左側で強い風が吹く可能性がある。一方で、台風中心付近の右側では風が弱まる可能性もある。
  • 石戸 空, 佐々 浩司
    2022 年 27 巻 p. 134-143
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    台風第24号が九州南部を北西へ進行する2018年9月30日6:30JST頃、高知市長浜地区で竜巻被害が発生し、2時間後には別の漏斗雲も確認された。これらの親雲は台風中心から500km以上離れた台風遠隔で形成された波状雲であった。レーダー解析の結果、波状雲は長さ約30kmの細長い帯状の雲列であり、台風の動径方向に平行な北東方向の走向を持っていた。親雲の南西端にはメソサイクロンが見られたが、移動方向と形状の位置関係が一般的なミニスーパーセルと異なる特殊な構造をしていた。また、ミニスーパーセル事例と環境場の比較を行った結果、MUCAPEが大きく、SREHが小さい事例であることがわかった。
  • 岩下 久人, 小林 文明, 諸富 和臣, 嶋村 重治, 樋口 篤志, 大矢 浩代, 鷹野 敏明, 高村 民雄
    2022 年 27 巻 p. 144-153
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    群馬県・埼玉県平野部エリアには約150台のPOTEKA気象観測装置が設置され、約1~2㎞間隔の地上稠密気象観測網を構築している。この稠密観測網データを利用したダウンバースト突風の予測アルゴリズムは、当該エリアで発生した気温低下型のダウンバーストなどの突風発生を事前検知することができた。また特に顕著であったF1・JEF1クラスのダウンバースト3事例について、突風被害発生可能性の高い予測領域と突風発生予測時刻を精確に予測することができた。突風予測アルゴリズムの精度検証を行った結果、閾値として定めた1分間に2℃の気温低下が適切であることを確認した。また、約1~2㎞の観測網稠密度により、突風発生前約30分の事前通知リードタイムの確保と予測領域の精確な絞込が保証されていることを確認した。
  • -海面水温の温暖化を考慮した2019年台風19号の数値シミュレーション-
    中島 慶悟, 山中 徹
    2022 年 27 巻 p. 154-162
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    海面水温の温暖化を考慮した2019年台風19号の数値シミュレーションを行い,地球温暖化に伴う海面水温の将来変化が台風の発達過程,減衰過程に与える影響について検討した.将来気候の海面水温条件では現在気候の海面水温条件と比べて,より高緯度まで台風が発達し続けた.その結果,特に上陸緯度における台風強度が大幅に増大した.これは将来気候では,特に高緯度の海面水温が高く,海面から多量の水蒸気が供給され続けたことが原因であると考えられる.また,将来気候の海面水温条件では現在気候の海面水温条件と比べて,台風強度だけではなく台風サイズも増大し,強風が発生する領域がより広くなることを示した.
  • 江口 譲, 野村 光春, 服部 康男
    2022 年 27 巻 p. 163-172
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    Wangらの傾度風モデルを含む既往3種の傾度風モデルについて,2018年台風21号上陸時前後での気圧場およびモデル風速場の評価を行うとともに,6地点のウインドプロファイラ観測結果と傾度風モデルの風速計算結果から両者のベクトル相関量を評価し,Wangらの傾度風モデルが他の2モデルに比べて観測結果との整合性が高いことを示す。
  • 杉山 裕樹, 安積 恭子, 川田 歩美, 中村 正人, 吉岡 勉, 平山 博, 八木 知己
    2022 年 27 巻 p. 173-182
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    大阪湾岸道路西伸部では,多径間連続斜張橋が計画されている.多径間連続斜張橋は,主桁のたわみ振動数が低いため,渦励振に耐風性能が課題となる.さらに,分離二箱桁断面ではフラッターに比べ,渦励振が課題となる.そこで,本橋の分離二箱桁断面に対して,箱桁のフェアリング形状や耐風付加物を変化させた部分模型によるバネ支持試験を実施し,耐風安定性の高い主桁断面形状を検討した.
  • 西原 知彦, 杉山 裕樹, 河野 晴彦, 深谷 茂広, 鈴木 俊洋, 舘 浩司, 八木 知己
    2022 年 27 巻 p. 183-190
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北~駒栄)は,大阪湾岸道路の一部を構成する道路であり,国土交通省との合併施行事業として事業化された神戸市東灘区から長田区に至る延長14.5kmのバイパス事業である.本路線では,神戸西航路部において世界最大支間(480m)を有する5径間連続の1主塔斜張橋が計画されている(図-1)1). 長支間を有する斜張橋の主桁はたわみやすく,渦励振やねじれフラッター等の風による振動が発生しやすい構造であり,更に本橋は海上部に架橋されることから耐風安定性の確保が課題である. 本稿では,現地の架橋条件を踏まえ,鋼1箱主桁の主桁断面に対して耐風安定性への影響が大きい主桁最外縁部の主桁先端形状について,主桁の有効断面であり耐風対策のフェアリング機能を持たせ,幅,傾斜角をパラメトリックに変化させた部分模型によるバネ支持試験を実施し,空力的対策により耐風性を満足する主桁断面を検討した結果について報告する.
  • 勝地 弘, 小川 菜穂, 石原 大作
    2022 年 27 巻 p. 191-197
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    橋梁設計における風荷重の値と載荷方法については、橋桁の横方向剛性を確保するために適切に設定する必要がある。現在は、道路橋示方書や鋼道路橋設計便覧などに規定があるが、対傾構の設計では上弦材、下弦材に1/2ずつの荷重を載荷することとなっている。しかしながら、その載荷方法の根拠は明確でなく、橋梁構造の合理化を検討する上での足かせとなっている。本研究では、2主桁、4主桁の鈑桁形式橋梁を対象に、橋桁各部に作用する風荷重を計測し、現行規定の載荷方法の妥当性を検証し、今後の構造合理化のための基礎データを得ることを目的とした。検討の結果、橋桁に作用する風荷重の分布については、現行規定でのそれと概ね一致するものであった。
  • 王 嘉奇, 佐藤 真希, 勝地 弘, 田村 洋
    2022 年 27 巻 p. 198-206
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    This research intends to experimentally investigate the effects of the wind barrier on the aerodynamic response of the bridge, the crosswind environment, and the aerodynamic forces of the vehicle on the bridge. The discussion focuses on the wind-barrier section configuration, i.e., Straight-line Type (ST) and Curved-line Type (CT), and the Opening-area Ratio (OR) of the wind barrier, which is the ratio of the area of its total openings to its windward-surface area. A streamline box girder model of side ratio B/D = 9 (B: girder width; D: girder height) with different wind barriers is applied in a series of wind tunnel tests, i.e., the vertical and torsional one-degree-of-freedom (1DOF) free vibration tests, and wind velocity measurement on the girder. The wind barrier of OR = 0% resulted in the vortex-induced vibration and torsional flutter of the girder because it promoted the detachment of the separated flow from the girder, however increasing OR stabilized these aerodynamic instabilities because increasing OR resulted in increasingly strong turbulent flow on the girder. The wind velocity below the vehicle height on the girder was significantly decreased by decreasing OR, while the wind barrier of OR = 50% still reduced the wind velocity by about 50% compared with that without the wind barrier. As a result, based on the measurement of the aerodynamic forces on a simplified vehicle on the girder, enlarging OR increased the drag force coefficient (Cs) of the vehicle, whereas the wind barrier of OR = 50% still reduced Cs by about 50% compared with that without wind barrier.
  • 金子 玲衣, 金 惠英, 木村 吉郎, 勝地 弘, 藤野 陽三
    2022 年 27 巻 p. 207-216
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    強風時の橋梁上における横風特性の把握は,効果的な遮風対策を講じ走行車両安定性を確保する上で重要である.なお橋梁上の横風に関する既往研究では風洞実験やCFDによる方法が主流であり,実測による評価を行った例は少ないのが現状である.そこで本研究では,桁高が変化する東京湾アクアライン橋梁部を対象とし走行車両を用いた実測を行い,橋梁全長にわたる横風特性の分析を行った.実測の結果,最も風上側の車線では厚桁高断面による影響が風速の低下において顕著であり,一方で間欠的な高風速も観測された.これは橋桁端部からの剥離せん断流高さの差による影響であり,最も風下側の車線では気流の連行が生じ,この影響が低減されたと考えられる.
  • 三宅 克典, 栗田 剛, 西嶋 一欽
    2022 年 27 巻 p. 217-226
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    本研究は、有風下にある雨滴の軌跡からPTV技術を用いて風速値を推定する方法を確立することを目指すものである。既報では基礎的検討として、風洞内に作成した一様流に落下させた水滴の軌跡から風速値の推定を行い、推定風速の平均値が熱線風速計による計測値との誤差5%以内に収まることを確認したが、個々の水滴から推定される瞬間的な風速値にはばらつきが存在した。本報では、瞬間的な風速値にばらつきが生じた原因を特定するため、風速値推定時に設けた仮定の妥当性の検討や熱線風速計の計測データの見直しを行い、検討を踏まえた新たな風速値推定方法を提案する。新たな手法で推定を行った場合は、風速値のばらつきの低減が確認できた。
  • 李 栄茂, 菊本 英紀, 賈 鴻源
    2022 年 27 巻 p. 227-236
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    風杯型風速計のデータ駆動型校正における訓練データを得るコストを低減するため、本研究では、ドメイン適応に基づく転移学習によって既存の訓練データを活用する手法を提案する。本手法は、教師データなし学習のクラスタリングおよび教師データあり学習のANNモデルを採用した。建物周辺の2つの測定点で訓練とテストデータセットを得るため、2回の測定を実施した。新たなテストデータに対する予測精度では、本手法により、従来型の学習に比べて、校正結果の誤差および10分間毎の瞬間風速における風速統計量の相対誤差をより低減できることを確認した。また、k平均法または凝集型クラスタリングを用いて、それらによる校正精度の違いも検討した。
  • 比江島 慎二, 三木 弟梧
    2022 年 27 巻 p. 237-244
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    振り子式ギャロッピング振動発電のエネルギー取得性能を効率的に評価する手法を提案し,その有効性について検証した.この評価法では,振り子を定常回転させたときのトルクに基づいて振り子振動時のパワー係数を推定する.この手法で推定したパワー係数は,実際に振り子を振動させて測定したパワー係数に近い値が得られた.しかし,準定常理論が成り立たない低い無次元流速では,この手法では適切に評価できない.また,この手法はストローハル成分の渦の影響については考慮していない.
  • 島 卓真, 木綿 隆弘, 濵野 雄仁, 竹内 聡太朗, 上野 敏幸
    2022 年 27 巻 p. 245-254
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、片持ち矩形柱を用いた磁歪式流力振動発電デバイスの開発に向けて風洞実験を行った。断面辺長比が0.2,0.3,0.4,0.5,1.0矩形柱について、断面辺長比と矩形柱後方に設置したスプリッタープレートの隙間間隔が振動応答特性と発電特性に与える影響について調査した。スプリッタープレートが無い場合、断面辺長比0.2,0.3,0.4,0.5矩形柱では、振動開始流速が低速ギャロッピングにより断面辺長比1.0矩形柱に比べて低下した。スプリッタープレートがある場合、ギャップ比が0.2の場合では、高速ギャロッピングにより流速が増加するにつれて振動振幅も大きくなった。一方、ギャップ比が1.2の場合は振動開始風速も低く、高流速域で振動が停止したため安全に発電できる。
  • 垂石 早紀, 松宮 央登
    2022 年 27 巻 p. 255-264
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    敦賀試験線の4導体送電線で観測されたギャロッピングの有限要素解析を実施し,吹上角および初期着氷角が解析結果に与える影響を評価するとともに,初期着氷角の条件に着目して観測結果と解析結果を比較した。広範囲の初期着氷角を解析対象とする場合,吹上角による最大張力変動の差異は小さかった。また,観測において風速増加に従って最大張力変動が増加する間は,解析により観測結果が再現されていた。一方,観測結果では高風速域において風速増加に従って最大張力変動が減少する傾向もみられたが,この傾向は解析から再現されなかった。今後,解析結果と観測結果の傾向が異なることの要因を把握した上で,解析手法を再検討する必要がある。
  • 松宮 央登, 松島 宏樹, 垂石 早紀, 麻生 照雄
    2022 年 27 巻 p. 265-273
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,釧路試験線における4導体電線の湿型着雪条件下でのギャロッピング観測結果を示す.湿型条件下での顕著なギャロッピングが観測された事例は少なく,観測データに基づき様々な検証ができるよう,可能な限り観測条件や観測結果を詳細に記す.観測されたギャロッピングは,鉛直方向の次数が最も低い2ループモードで発生し,鉛直変位全振幅は最大で5.8mに達した.鉛直・水平・ねじれが連成した3自由度振動となり,大振幅の定常的な振動が30分~1時間程度継続した.一方,ギャロッピング対策品としてルーズスペーサを設置することで,ルーズ把持された導体が大きく回転し,ギャロッピングが顕著に抑制されていることを確認した.
  • 三浦 景祐, 松井 正宏
    2022 年 27 巻 p. 274-283
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    日本では、高さ100mを超える煙突が数多く建設されている。こうした超高煙突は、通常の構造物よりもスレンダーな形状になることが多く、アスペクト比20以上となることも珍しくない。本研究では、アスペクト比の大きい円筒構造物を想定した円柱模型の風洞実験を実施し、円柱模型に作用する層風力係数等の統計量や変動成分の空間相関特性について整理し、層風力の空間相関特性のモデル化を試みた。
  • 本田 明弘, 和田 良太, 渡部 正人, 玉田 正樹
    2022 年 27 巻 p. 284-293
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    2021年に発表された第6次エネルギー基本計画において洋上風力への期待が高まり,2030年及び2040年には10GWおよび30-45GWの設備容量が目標に設定された.この設備容量は2020年末時点での我が国の風力発電の全設備容量が約4.2GWであることからも,急速な設備導入が必要となる事が判る. また洋上風力発電は欧州を中心に30年を超える期間で技術的および社会的な進化の末に現在のコストレベルを達成しているのに対して,我が国では2030~35年までに8~9円/kWhの達成目標を掲げた. 本研究ではこれらを同時に達成するための課題のひとつである風車建設のロジスティクスを研究対象として,気象・海象の影響に関して検討を加えた.
  • 笹沼 菜々子, 本田 明弘
    2022 年 27 巻 p. 294-302
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    著者らは既報において、複雑地形における灯台と風車3基の風特性をまとめ比較的良い相関関係を確認できた. 風況解析シミュレーションの結果、風車3基のうち2基が相互干渉している可能性が明らかとなった. 風車が年々巨大化する中、ウィンドファーム開発が行われている.一方、風車間距離を十分に離すことができないと風車間で相互干渉を受け、風下風車の発電量の低下、風車自体の疲労荷重の増大する恐れがある. 今回、後流検討を実施するため、既報で述べた2基の陸上風車の実機のデータを用い、後流影響がある場合とない場合の2つの条件下で風速比、乱流強度、出力の比較検討を実施し、風速低減と出力低減の整合性がとれた.
  • 小野寺 英輝
    2022 年 27 巻 p. 303-311
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    大型風車から発生する空力騒音は距離減衰が大きく、人家のあるエリアでは環境騒音まで減衰する。一方、空力振動による表面波は距離減衰が少ないので空力振動も検討すべきである。この報告ではアノイアンスが確認されていない場所といる場所それぞれで空力振動に伴う表面波の伝播を計測し、FFT解析を故なった結果の振幅強度を3次元表示することでそれぞれの地域の特性を調べた。その結果アノイアンスのある地域では振動特性が2つの軸を中心としていることがわかった。次いで、それぞれの地域の地盤特性を水平垂直の振動比(HV比)を用いて調べた結果、アノイアンスが確認された地域では風車基礎地盤が浅い可能性が示唆された。
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