地球に接近・衝突する可能性がある近地球型小惑星(Near Earth Objects:NEO)は,NASAを中心としたNEO programによりその発見,軌道予測,データベース化が進められている.このNEO programにより地球落下前に発見され落下の軌道予測に成功した例が1つだけある.それが2008年に地球に落下した小惑星"2008 TC_3"であり,その破片は後に回収され"Almahata Sitta隕石"と呼ばれている.ところで,多くの隕石は一種類の隕石種からなる.一方,Almahata Sitta隕石の場合,複数の異なる隕石種の岩片を含む(ユレイライト,普通コンドライト,エンスタイトコンドライト,炭素質コンドライト)ことが分かっている.本稿では小惑星"2008 TC_3"の発見・落下の経緯と上記のようなユニークな特徴を持つ"Almahata Sitta隕石"の研究から明らかになった小惑星"2008 TC_3"の構造と成り立ちを紹介する.
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