日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の251件中51~100を表示しています
口頭発表
  • 矢口 美音里, 河村 美穂
    セッションID: 2C-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】日本のマンガとアニメは、国内のみならず海外でも高い人気があり、漫画に関する社会学的研究も数多く発表されている。なかでも日本独自の「料理・グルメ」漫画はその時々の人々の食生活の状況を表し時代を反映したものとなっている。そこで本研究では、特に主人公が家庭でつくる料理がメインとして登場する漫画である「家庭料理漫画」に焦点を当て、家庭料理漫画の特徴を調理の視点から明らかにすることを目的とする。

    【方法】一般社団法人日本雑誌協会が発行部数を公表している雑誌59誌に掲載された家庭料理漫画のうちレシピが掲載されている10作品を対象とし、掲載料理に対して(ア)使用されている食材と使用頻度(イ)料理の種類(ウ)調理方法について分析した。

    【結果】対象とした10作品の家庭料理漫画は成人向け漫画のジャンルに属するものがほとんどであった(男性誌5作品、女性誌4作品)。主人公が自分のためというより家族や恋人等といった誰かの為に作った料理に対して栄養や見た目等のこだわり(彩り、1食当たりの料理数、味の変化)を強く示した内容となっている場合が多いことも特徴であった。また、掲載料理は初心者が試しやすいように基本的な調味料(塩、しょうゆ、砂糖)や入手可能な食材(たまねぎ、にんじん、卵、じゃがいも)を使用した再現可能な日常食が多く、料理の種類としては和食が多い(掲載料理の56%)ということが明らかになった。
  • 奥谷 香, 坂本 薫, 山内 千裕
    セッションID: 2C-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】寿司は、最近では回転寿司などの利用が多くなり、気軽に食べられる料理となっており、昔ながらの寿司のイメージや味付けは変化していることが考えられる。そこで、兵庫県西播磨に居住する50~70歳代を対象とし、現在と10~30年前の頃の寿司の摂取状況および寿司の味をどのように評価しているかについて若い世代と比較、検討することを目的として調査を行った。
    【方法】兵庫県西播磨に居住する50~70歳代を対象とし、平成28年9~11月に無記名式の自記式質問紙法にて現在と40歳代の頃の寿司の摂取状況やイメージについて尋ねた。結果は、兵庫県姫路市の10~20歳代の学生を対象として平成28年10月に同様の内容を調査した結果と比較、検討することとした。さらに、50~70歳代は居住地により都市部と山間部にわけて解析した。
    【結果】中高年世代と若い世代では、寿司の摂取状況は異なっており、中高年世代は若い世代に比べて、自宅で寿司を「普段の食事」、「年中行事」、「来客時」に食べる割合が高かった。中高年世代を都市部と山間部とで比較したところ、摂取状況と味に対する評価において異なる傾向を示した。都市部の中高年世代は、現在自宅で寿司を「記念日」に食べる割合が高く、山間部の中高年世代は、時代を問わず自宅で寿司を「年中行事」で食べる割合が高かった。寿司の味に対するイメージについては、甘い、塩辛い、すっぱいの3項目を5段階で評価してもらったところ、若い世代は、寿司を甘いと思っていなかったが、山間部の中高年世代は、寿司を甘いと思っていた。世代や居住地の違いによって、寿司を食べる場面、寿司のイメージや味に対するイメージは異なっており、寿司の位置づけが異なっていることが示唆された。
  • 関本 美貴, 大橋 きょう子
    セッションID: 2C-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】演者らは先に大正末期から昭和初期におけるジャガイモ料理について調査し,大部分が里芋に準じて調理されていた実態を報告した。両者の調理上の特性や歴史的背景は大きく異なることから,ジャガイモの調理に対する意識や食べる際の意識は里芋と異なる可能性がある。そこで本研究では調理者の意識に着目し,当時のジャガイモ料理の特徴を明らかにすることを目的とした。
    【方法】「日本の食生活全集都道府県別編纂」およびそのCD-ROMを資料とした。材料および調理法の記載があるジャガイモ料理を調査対象とし,調理者の意識が表れたコメントをすべて収集した。コメントを分類・整理して上位概念に集約し,各概念に該当するコメントの有無を料理別に調べデータ化した。比較のため里芋料理も同様の手順でデータ化した。データをクロス集計し,χ2乗検定でジャガイモと里芋の意識の違いを,コレスポンデンス分析で意識の関連性を分析した。
    【結果】対象とした948件(ジャガイモ344件,里芋604件)の料理の77%から1,111のコメントが抽出でき,これらを生理的要因・認知的要因・物理化学的要因・文化的要因の観点から15項目に集約させた。その結果ジャガイモと里芋の調理に対する意識は明らかに異なり,8項目で有意差がみられた。さらにコレスポンデンス分析でマップ化した結果15項目は3グループに分けられ,その1つは明らかにャガイモ独自の意識であった。この意識を「豊かな日常食への期待」と定義した。
     以上より,調理者がジャガイモに対して里芋とは異なる意識をもっていたことを定量的に明らかにできた。この結果は現代のジャガイモ料理の多様さへとつながる要因の一つと考える。
  • ~調理方法による比較~
    山田 千佳子, 鈴木 美沙, 和泉 秀彦
    セッションID: 2D-1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】
    ケールと芽キャベツの交配により生まれ、日進市の特産品であるプチヴェールには、ポリフェノールなどの抗酸化物質が含まれていることが本研究室のこれまでの研究結果から分かっている。しかし、加工によりこれらの抗酸化物質がどのような影響を受けるかについては分かっていない。そこで本研究では、薄力粉とプチヴェールの粉末を混合した生地を加熱した試料を用いて、抗酸化物質量とポリフェノール量の測定を行った。その結果から、プチヴェールに含まれる抗酸化成分が加熱方法などの違いによりどのように変化するか明らかにすることを目的とした。
    【方法】
    プチヴェールを凍結乾燥後、粉砕して薄力粉と混ぜ合わせ、純水を加えて生地にした。これを、うどん(厚さ3mm、幅1cm)、クッキー(厚さ3mm)、パン(直径5cm)に成形し、うどんは熱水中で10分、パンは200℃のオーブンで10分、クッキーは200℃のオーブンで5,10,15分加熱し、計5種類のプチヴェール加工食品試料を作製した。またコントロール試料としてプチヴェールを含まない試料も作製した。以上の試料から抗酸化物質を水で抽出し、脂質除去及び、濃縮を行った。溶液を用いて以下の解析を行った。抗酸化物質量はDPPH法で測定し、ポリフェノール量はフォーリン・チオカルト法で測定した。これらの結果をプチヴェール入り加工食品試料とプチヴェールなし加工食品試料の値で比較した。
    【結果】
    コントロール試料は抗酸化物質量、ポリフェノール量共に試料間に差は見られなかったが、プチヴェール含有試料はクッキー、パン、うどんの順に高値であった。さらにクッキーは焼き時間が長い程、抗酸化物質量とポリフェノール量は高値であった。10分および15分加熱クッキーでは加工前のプチヴェール粉末と薄力粉に含まれているポリフェノール合計量よりもそれぞれ約2倍、約3倍ものポリフェノール量が検出された。これらの結果から、高温乾燥下で加熱を行うほど薄力粉とプチヴェールの成分が反応し、ポリフェノール様物質が生成したと考えられた。また抗酸化物質量の増加はポリフェノール様物質の生成とメイラード反応によるものと考えられた。
  • 石橋 ちなみ, 本同 宏成, 上野 聡
    セッションID: 2D-2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【背景】O/Wエマルションは,冷凍-解凍によって水と油が分離すること(エマルションの不安定化)が知られており,この要因の1つが油脂の結晶化と考えられている.油脂結晶は針状結晶や微結晶といった様々な結晶形態をとり,また同一の化学組成であるが異なる結晶構造を有する多形現象を示すが,それらがO/Wエマルションの冷凍-解凍安定性に及ぼす影響は不明である.そこで本研究では,油脂を多く含むO/Wエマルション食品のモデルとしてマヨネーズを用い,冷凍-解凍によるO/Wエマルションの不安定化に油脂の結晶化が及ぼす影響を調べた.
    【方法】菜種油または大豆油:70 wt%,卵黄:15 wt%,酢:15 wt%の割合で調製したマヨネーズ様O/Wエマルションを試料とした(以下,菜種油エマルション,大豆油エマルションと呼ぶ).エマルションの安定性試験は-20 °Cで行い,不安定化が進行する時間帯を調べた.さらに,その時間帯における油脂の結晶多形をX線回折測定,油脂の結晶形態を偏光顕微鏡観察によって調べた.
    【結果】エマルションの安定性試験の結果,菜種油エマルションは保存4~6時間,大豆油エマルションは保存30~42時間の間で不安定化が進行していた.偏光顕微鏡観察の結果,菜種油エマルションでは油脂結晶が油滴界面を突き破りながら成長していく様子が観察されたが,大豆油エマルションでは油滴界面を囲って油脂が結晶化していた.X線回折測定の結果,菜種油エマルションでは結晶多形の変化はなかったが,大豆油エマルションでは油脂結晶が異なる多形に変化していた.以上の結果から,菜種油エマルションは冷凍保存中の油脂結晶の粗大化,大豆油エマルションは油滴界面の結晶が異なる多形に変化したことによって不安定化したと考えられる.
  • 笠井 美希, 瀬尾 幹子, 関 圭吾
    セッションID: 2D-3
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目 的】家庭における食用油を使用した加熱調理において、酸化しにくく、油臭さが少ないことが望まれている。ごま油は熱に強く、安定性に優れた油といわれており、本研究では、焙煎せずに搾油した精製ごま油(かどや製油㈱)の加熱調理における安定性の評価として、フライ調理に用いた際の安定性、おいしさ等について調べた。
    【方 法】試料は精製ごま油と家庭で一般的によく使われている食用油3種類(キャノーラ油、サラダ油、大豆油)とした。一定条件下でフライ試験を実施し、フライ油の色、酸価、過酸化物価、カルボニル価、アニシジン価を測定して安定性を比較した。また、フライ調理中の油臭及び揚げ直後と冷めた時のフライの官能評価を実施した。官能評価は7段階尺度の採点法で行った。なお、各試料のCDM試験、アクロレイン濃度の測定も行った。
    【結 果】精製ごま油は他の食用油3種類と比較して、フライ油の色の着色が若干濃くなる傾向がみられた。揚げ回数による酸価、過酸化物価の値には大差がなかった。油脂の加熱による劣化の指標であるカルボニル価、アニシジン価の値は精製ごま油が最も低値であり、加熱劣化の進行がゆるやかであった。フライ調理中の油臭は精製ごま油が最も弱く、不快感が少なかった。官能評価では、精製ごま油を使用したフライはべたつきが少なく、冷めてもおいしいという評価であった。CDM試験の結果より、精製ごま油は自動酸化に対する安定性も良く、アクロレイン濃度の測定結果からアクロレインの発生量も少ないことがわかった。
  • 吉田 里緒, 佐藤 瑶子, 八川 梨紗, 飯島 久美子, 辻 ひろみ, 香西 みどり
    セッションID: 2D-4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】スチームコンベクションオーブン(スチコン)はゆで加熱も可能であり、使用するホテルパンの枚数や食材の重量に応じた加熱時間の設定が重要である。本研究では、スチコンでジャガイモをゆでる際の種々の要因が加熱時間に及ぼす影響を検討した。【方法】要因としてホテルパンの枚数、ホテルパン1枚あたりの試料と水の合計重量、合計重量に対する試料の割合の3つに着目した。試料はジャガイモ2cm角を用い、スチコン(tanico,TSC-10GB)のコンビモード(100℃、蒸気量100%)で加熱し、水温変化を測定した。得られた実測値に基づき試料中心温度及び硬さの変化をプログラム計算により予測し、適度な硬さになるまでの最適加熱時間(θ)を算出した。各要因の影響は(A)単独の場合と(B)組み合わせた場合を検討した。(A)は<ホテルパン1枚、水量3kg、水のみ>を基準に、ホテルパンの枚数は1~10枚(4水準)、水量は2~4kg(3水準)、試料と水の合計重量に対する試料の割合は0~0.6 (7水準)とした。(B)は各要因に3水準を設け、実験計画法に基づき16通りの条件とした。
    【結果】(A)各要因の水温変化への影響を単独で検討したところ、ホテルパンの枚数、水量、試料の割合の増加に伴い、水温が99.5℃になるまでの時間(t99.5)は直線的に増加した。(B)要因と水準を組み合わせた加熱の結果を用いて重回帰分析したところ、各要因のt99.5への影響は、ホテルパンの枚数>試料と水の合計重量>試料と水の割合の順に大きかった。さらに、t99.5とθはθ=0.90×t99.5+6.12の関係にあったことから、3要因からの最適加熱時間の予測が可能となった。
  • 林 秀之, 山本 克也, 水馬 義輝, 佐藤 英男, 塩田 良子, 野村 知未, 北 和貴, 彦田 星香, 杉山 寿美
    セッションID: 2D-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】ダッチオーブンは,厚い鋳鉄製の鍋であり,屋外ではふたの上に炭火を乗せて上下から加熱調理する小型オーブンのような鍋である。屋内では炭火ではなくガスコンロの魚焼きグリルにダッチオーブンを入れることで高温加熱を行うことが可能であり,材料を入れるだけの簡単さからその調理方法への関心が高まっている。しかし,ガスダッチオーブンで調製した料理に関する報告はなく,その嗜好特性等は明らかではない。本研究では,ガスダッチオーブンで調製したいくつかの料理の嗜好特性とうま味成分量について報告する。
    【方法】ガスコンロの魚焼きグリルを熱源として,ダッチオーブンでアクアパッツァおよびラタトゥイユを調製した。アクアパッツァは11-13分の加熱と10分の余熱調理を,ラタトゥイユは14-18分の加熱と30分の余熱調理を行った。また,フライパン,片手鍋を用いた従来法も比較として行った。食材からのうま味成分の浸出の程度について,煮汁のアミノ酸分析,イノシン酸・グアニル酸分析をHPLCで,ナトリウム分析をICPで行った。官能評価は煮汁の塩分濃度が同じになるよう調整した試料について,女子大学生をパネルとして行った。
    【結果】ダッチオーブン加熱は従来法と比較して,出来上がり重量,煮汁重量が多く,食材重量が少なかった。また,煮汁に含まれるグルタミン酸,ナトリウム量が多く,官能評価において,味が深く,好ましいとされた。この結果は,ダッチオーブン加熱が,煮汁や食材に由来するうま味成分,ナトリウム量を多く浸出することで,高い嗜好特性と料理に添加する食塩量を減少できることを示したものであり,高温かつ緩慢加熱であるダッチオーブンによる調理が食材の組織変化を促したためと推察された。
  • 松山 真衣, 南部 優子, 大久保 公美子, 澤田 容子, 嶋田 祥子, 津田 舞, 辻 奈津美, 松宮 健太郎, 松村 康生, 安信 淑子 ...
    セッションID: 2D-6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】本研究では、冷凍処理を調理の下ごしらえとして利用するため、冷凍処理による食材の物性や成分の変化が、調理後のおいしさに及ぼす影響について検討した。
    【方法】試料は白菜及び調味液を含む鶏胸肉を用いた。冷凍処理の試料は「-3℃」、「-20℃」で24時間保存後、内部温度が5℃になるまで流水解凍した。冷凍処理なしの試料は「5℃」で24時間保存した。それぞれ、加熱調理後に官能評価、物性測定、筋電位測定を行い、保存後の組織はクライオSEMを用いて観察した。
    【結果】白菜の官能評価では「-3℃」の総合評価が最も高く、「5℃」とほぼ同等の食感を保ち、味が甘く感じられた。「-20℃」は総合評価が最も低く、軟らかいが噛み切り難く、特有の味を呈したことが要因であった。また、物性測定では、「-20℃」の破断応力が最も小さく、筋電位測定による筋活動量も減少傾向であった。「-3℃」解凍後の組織は「5℃」とほぼ同等の細胞構造を維持していた。一方、「-20℃」解凍後は、表層部分の細胞構造の破壊による膜状の組織が観察され、それにより噛み切り難い食感になった可能性がある。鶏胸肉の官能評価では、「-3℃」の総合評価が最も高く、次いで「-20℃」「5℃」であった。「-3℃」は軟らかく味が浸透していることが評価の要因であった。組織観察では、「-20℃」凍結組織では氷結晶が観察されたが、「-3℃」では殆ど氷結晶が観察されなかった。
     以上の結果より、「-3℃」冷凍処理による物性や味の変化が好まれる傾向があり、調理の下ごしらえとして「-3℃」で保存すると、調理後のおいしさが向上する可能性が示唆された。
  • 檀上 沙梨, 村川 秀樹, 吉田 充史, 野村 知未, 石長 孝二郎, 杉山 寿美
    セッションID: 2D-7
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】においは食する前からおいしさを予測・決定させるが,においを有する化合物は非常に多く,量的に多い成分がにおいの主体にならないことや成分の組み合わせで別のにおいが生じることなどから,その評価は困難である。本研究では広島風お好み焼きのソース塗布後のにおいの変化をGC-MSおよびにおい識別装置で評価した。【方法】鉄板上でお好み焼きの表面に52g,側面に8gのソースを塗布し,2分または10分焼成した。お好み焼きを鉄板からおろした後にソースを塗布したもの,ソースを塗っていないものも調製した。お好み焼き1/4枚をサンプルバックに入れ,ヘッドスペースガスを回収し,GC-MS(SPMEファイバー,QP2010Plus,島津),におい識別装置(FF-2020S,島津)で分析した。【結果】GC-MSの結果,焼成時間が長くなるほど揮発性成分数が増加し,フラン・ フラノン類が成分数の約3割を占め,定量値でもフラン・フラノン類,ピラン類,ケトン類が増加した。組成においても,フラン・フラノン類が約40%を占め,他の成分の変化は小さかったが,テルペンは減少した。におい識別分析の結果,基準ガスとの類似度に,焼成0分と10分の有機酸系,アルデヒド系で10%以上の差が認められたが,臭気寄与には差は認められなかった。臭気指数相当値にも有意な変化は認められなかった。これらから,ソース塗布後のお好み焼きのにおいは,加熱によるメイラード反応等による成分増加によって特有の焼成感が生じていると示唆され,におい識別装置の結果からは十分に認識できる程度ではないもののにおいの質が変化することが確認された。この質の変化の小ささと,強さに変化が認められないことは,鉄板上で焼成しつつ食する広島風お好み焼きのおいしさの一要因であると考えられた。
  • 湯浅 正洋, 田川 夕映奈, 冨永 美穂子
    セッションID: 2D-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【背景】アルギン酸ナトリウムとカルシウムのイオン架橋により生じる球状のゲルは分子キャビアと呼ばれ、欧米諸国では様々な料理に利用されている。一方、わが国では人工イクラが分子キャビアの具体例として挙げられるが、和食へはほとんど応用されていない。そこで演者らは、分子キャビアの和食への応用を目的とし、和風の調味料の中でも汎用性の高い「めんつゆ」を用いた「めんつゆキャビア」を開発した。本研究では、めんつゆキャビアの実用化を目指し、キャビアの物性に及ぼす影響とその嗜好性を明らかにした。
    【方法】めんつゆは塩分濃度の異なる4種類の市販品を用いた。各めんつゆに対し約1%(w/w)重量のアルギン酸ナトリウムを溶解し、約5%(w/w)乳酸カルシウム溶液に滴下することで、めんつゆキャビアを調製した。調製後の時間経過がキャビアに及ぼす影響を明らかにするために、調製後60分までの破断解析を行った。また、調製後の時間経過の異なるキャビアを用いて、女子大学生30名による官能検査を行い、嗜好性を評価した。
    【結果・考察】4種類のめんつゆキャビアの破断荷重は、どれも調製後の時間経過に伴い高値を示した。時間経過に関わらず、塩分濃度の低いキャビアの方が破断荷重が高値を示した。そこで、用いためんつゆと同程度の濃度の食塩水キャビアの破断解析を行ったところ、食塩濃度が低い方が破断荷重が高値を示した。このように、キャビアの硬さには調製後の時間経過と塩分濃度が影響することが明らかになった。一方、調製後の時間経過の異なるめんつゆキャビア0、15、30分の嗜好性を評価したところ、「食感の好み」および「総合評価」は調製後の時間が短い方がより好まれた。以上より、めんつゆキャビアを料理として供する場合、調整後15分以内のものが適していることが示唆された。
  • 柳内 志織, 松本 美鈴
    セッションID: 2D-9
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】 天ぷら衣は、揚げ操作によって水分と油の交代が起こり、サクサクとした軽い食感になる。水よりも沸点の低いアルコールは、水分と油の交代を速やかにすることが期待される。本研究では、天ぷら衣に添加したアルコールが、揚げ衣の食感に及ぼす影響を検討することを目的とした。
    【方法】 <天ぷら衣の調製>薄力粉40gを、水、卵水およびアルコール水溶液(5、10、15,25v/v%)60gに篩い入れ、粉を水相に叩き落とすように菜箸で撹拌した。<揚げ衣の調製>紙片(2.5㎝角)を衣の中に潜らせ、180℃のサラダ油で2分間揚げ、測定に供した。官能評価用試料は、紙片の代わりに1cm角のじゃがいもを使用した。一般成分分析用試料は、衣をロートで直接油に滴下して3分間揚げた。<測定項目>紙片への衣付着量、揚げ衣重量、揚げ衣の破断試験(レオメーター)、官能評価(7段階尺度による評点法)、揚げ衣の水分量(常圧加熱乾燥法)・脂質量(酸分解法)、揚げ衣のアルコール残存量(F-キット)について測定した。
    【結果】 衣付着量および揚げ衣重量について有意差は見られなかった。揚げ衣の厚さはアルコール添加により増加し、破断応力はアルコール添加により減少した。揚げ衣の水分量は、15%および25%アルコール添加試料が水衣より有意に低かった。脂質量はアルコール添加にともない増加した。官能評価の結果、アルコール添加にともない衣は硬く砕けやすくなり、サクサク感が増すと判断された。これらの結果より、天ぷら衣にアルコールを添加することで、揚げ衣がサクサクとした歯脆い食感になることが明らかになった。また、10%および15%アルコール添加衣は、卵水衣より好ましいと評価された。
  • パン食塊の性状からの検討
    高橋 智子, 大越 ひろ
    セッションID: 2D-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】α-アミラーゼ製剤添加によるパンのクラム部分、クラスト部分の力学的特性、および食べやすさへの影響を検討した。ことに食べやすさへの影響の検討は、その食塊の特性に注目した。
    【方法】基本の配合(強力粉、砂糖、塩、ドライイースト)のパン試料A、試料Aにショートニングを添加したパン試料B、パン試料Bにα-アミラーゼ製剤を添加したパン試料Cを調製した。3種類の試料について、比容積、クラム部分およびクラスト部分の歯形プランジャーを用いた貫入試験、クラム部分のテクスチャー特性(圧縮率40%、80%)を行った。食べやすさの検討は、嚥下直前の食塊のテクスチャー特性、唾液分泌率を測定した。加えて、咀嚼回数5,10,15,20,30回における食塊についてもそのテクスチャー特性と唾液分泌率を測定した。併せて、咀嚼時筋電位を測定した。
    【結果】比容積は基本パン試料が最も小さく、ショートニング、α-アミラーゼ製剤を添加することでパンの比容積は大きくなった。クラスト部分の貫入試験において明確な破断点は認められなかったが、最大圧縮時の応力はパン試料Aが最も大きく、一方パン試料Cは最も小さくなった。クラム部分のテクスチャー特性は圧縮率40、80%いずれにおいても、パン試料Aが最も硬く、α-アミラーゼ製剤添加パン試料が軟らかくなった。α-アミラーゼ製剤添加パン試料は嚥下までの咀嚼回数は少ない傾向を示し、また、嚥下直前の食塊に含まれる唾液含有率は試料A、Bに比べ少ない傾向を示した。咀嚼回数を変えて食塊の性状を検討した結果、すべてのパンにおいて咀嚼前のパン試料に比べ咀嚼5回から20回までの食塊は硬く、付着性が大きいものとなった。咀嚼時筋電位測定の結果、α-アミラーゼ製剤添加パンが他のパン試料に比べ、咀嚼時開口筋である舌骨上筋群筋活動時間が有意に短いことが認められた。
  • 宮田 顕, 山代 和明, 宮本 勇樹, 太田 智子, 後藤 彰彦, 濱田 泰以
    セッションID: 2D-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】

    パン製造においてガス抜き工程が最終仕上がり度合に影響を与えることが経験的に理解されている。特に芯作りが重要であり、熟練者の技といえる。パンの焼き上がりにおけるボリュームは、芯の仕上がりに依存する。芯を上手く造るためには、空気の抜き過ぎに注意を払い、小さな空気を保持することが重要である。
    そこで本研究ではこのガス抜き工程に着目して熟練者の技の解明に取り組んだ。ボリュームのあるフランスパンをつくる上でどのように生地を叩くことが最適なのか、叩く回数や頻度がどのような影響を及ぼすのか、熟練者と非熟練者の違いはどこにあるのかという点を数値化し、データ分析を行うことにより、科学的な観点から解明することを試みた。

    【方法】

    実験参加者は経験年数20年の熟練者、9年の経験者、1年の初心者の計3名とした。
    対象としたパンはフランスパンとした。パン生地に与える圧力は、フォースプレートを用いて測定した。さらに、生地の叩き方は、高速度カメラを用いて撮影することにより、現象を詳細に捉えた。

    【結果】

    熟練者は、パン生地の状態を瞬時に判断して、叩く回数は最小限に抑え、生地に与える圧力は均等であった。一方、非熟練者は、生地を叩く回数が多く、生地に与える圧力は不均等であった。生地の叩き方に着目した場合、熟練者は、生地を弾くように叩いていた。一方、非熟練者は、生地を押さえつけるように叩いていた。
    これらのことから、熟練者は、作業時間は短時間であり、生地内部の空気保持量を推測しながら作業を進めていた。一方、非熟練者は、作業時間は長時間であり、パンの形状を整えて行くうちに、生地内部の空気が徐々に抜け、空気保持量が熟練者に比べて減少していくことが明らかとなった。
  • 味・風味のプリファレンスマッピング
    井上 賀美, 関根 有紀, 佐藤 俊郎, 笠松 千夏, 野中 雅彦
    セッションID: 2E-1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】複数のオリーブオイルの官能特性強度を記述分析法とTemporal Dominance of Sensations(TDS)法により評価し、風味タイプのグルーピングを試みた。得られたグループの代表サンプルと消費者嗜好の関連についてプリファレンスマッピングを行い、オリーブオイルの嗜好性関連因子(Drivers of Liking(DOL))を予測した。
    【方法】産地・品種の異なるオリーブオイル17種について、訓練パネル5~6名により、45用語を用いた強度評価と、7用語を用いたTDS評価を行った。結果を主成分分析に供し、風味タイプのグルーピングを行った。さらに、選抜した5種のサンプルを用いて嗜好調査を行った。嗜好調査ではオリーブオイルヘビーユーザーの一般消費者女性120名がサンプルを食した時のおいしさを回答した。プリファレンスマッピング手法としてLandscape Segmentation AnalysisR(LSA)を用いた。
    【結果】強度評価の結果、17種のサンプルは風味により5タイプに分類でき、この分類は産地・品種との相関が高いことがわかった。また、TDSによる時間パラメーターを解析に組み込むことで、分類がより明確になることが確認された。LSAの結果、甘く熟したフルーツ香や苦味・辛みが嗜好と高い相関を示した。また、苦み・辛みは、嗜好評価のMedian値とも高い相関を示すことが確認され、嗜好を決定する重要な要素であることが示唆された。
  • 味・風味のTemporal Dominance of Sensations(TDS)法による評価と嗜好との関連
    関根 有紀, 井上 賀美, 笠松 千夏, 野中 雅彦, 佐藤 俊郎
    セッションID: 2E-2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】第1報ではオリーブオイルを生食した場合の官能特性強度と消費者嗜好の関連についてプリファレンスマッピングを行い、オリーブオイルの嗜好性関連因子(Drivers of Liking)の予測を行った。本研究では、オリーブオイルを調理に用い、ソースとして食した場合の官能特性強度を測定した。併せて、複数官能特性の経時的変化を1回の評価で捉えられるTemporal Dominance of Sensations(TDS)法を用いた評価を行い、味・風味の経時変化と消費者嗜好との関連解析を試みた。
    【方法】トマトソースに産地・品種の異なるオリーブオイル5種をそれぞれ7%添加したものとトマトソースのみの計6種について25用語を用いて強度評価を行った。さらに11用語を用いTDS評価を行った。いずれの評価も訓練パネル4~5名で行った。嗜好調査ではオリーブオイルヘビーユーザーの一般消費者女性120名がサンプルを食した時のおいしさを回答した。TDS評価データは各特性をドミナントに感じた長さに加え、ドミナントに感じた人数の割合の平均値を評価時間帯の前半と後半に分けて求めたものも解析パラメータに追加した。プリファレンスマッピング手法としてLandscape Segmentation AnalysisR(LSA)を用いた。
    【結果】TDS評価を行うことで強度評価では捉えられなかった特徴を見出すことができた。LSAの結果、官能特性の強度だけでなくTDSパラメータも消費者の嗜好に関連することがわかった。また時間帯によって嗜好に影響するドミナントな官能特性が異なることから、調理に用いた時、消費者が好ましいと感じるオリーブオイルの官能特性の経時的変化をより精緻に捉えることができる可能性が示唆された
  • 村上 恵, 安藤 真美, 伊藤 知子, 今義 潤, 川路 美由紀, 久保 加織, 小寺 真実, 髙村 仁知, 露口 小百合, 中平 真由巳, ...
    セッションID: 2E-3
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】アボカドは果実中に約20%の脂質を含んでいることから「森のバター」と呼ばれ、その輸入量はここ10年で2倍に増加している。また、脂質にはオレイン酸が最も多く含まれることから、健康によい油として食用のアボカド油も売られるようになり、家庭でも今後、調理に用いられる可能性が考えられる。しかしながら、アボカド油の加熱調理特性についての報告はほとんどない。そこで、本研究ではアボカド油を用いて揚げ調理を行い、加熱による劣化度について検討した。
    【方法】アボカド油と対照としてキャノーラ油を用いて揚げ実験を行った。揚げ種としてバッターを用い、170℃で15分ごとに1時間連続揚げを行った。揚げ操作中の油温および揚げ油、揚げ種の重量の変化を測定した。また揚げ油について、脂肪酸組成、酸価、極性化合物、色(ガードナー値)を測定した。合わせて油の官能評価も行った。
    【結果】アボカド油はキャノーラ油と比べて、加熱時間が長くなっても油温降下後、もとに戻りやすい傾向にあった。また、アボカド油は揚げ種への吸油が少なく、揚げ上がりの重量も減少する傾向を示した。脂肪酸組成はアボカド油、キャノーラ油、いずれにおいてもオレイン酸が多かったが、アボカド油ではパルミチン酸、パルミトレイン酸が多く、リノール酸やリノレン酸は少ない傾向を示した。酸価や極性化合物については劣化度に差は認められず、使用に問題のない範囲であった。色はアボカド油の方がやや色づく傾向がみられた。官能評価では、1時間加熱後のアボカド油はキャノーラ油よりも評価が高くなった。以上の結果より、アボカド油は加熱に対してキャノーラ油と同等の加熱安定性を示し、加熱調理にも使用できると考えられる。
  • 小柳津 周
    セッションID: 2E-4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】日本大学国際関係学部・短期大学部(三島)は、函南町(静岡県)と地域活性化プロジェクトに関する協定を結び(その他、自治体として三島市、富士宮市など)、地域振興及び地域再生策に取り組み地域活性化を推進している。そこで演者は、函南町の特産農産物であるスイカに注目し、新感覚の加工食品の研究開発を行うことにした。函南町のスイカは高い糖度など高品質で知られているが消費量の拡大に期待できない現状もある。一般的にスイカは生食が主であり皮の一部が漬物に調理加工されているに過ぎず、廃棄率も40%(食品成分表より)であり、必ずしも有効に利用されていない。本研究では、スイカの部位、すなわち、果肉、果皮、種を全て利用した加工食品の研究開発を行うとともに、地域との連携について検討を行い、二三の知見を得たので報告する。
    【方法】加工農産原料は、平成28年7月下旬に函南町産スイカを小売業者より購入した。加工原料の調製:スイカより、果肉、果皮、種に分離。果肉はミキサーで粗く粉砕後、80℃で15分間加熱し、果肉、煮汁、色素を分画する。果皮は外皮(緑色部)と内皮(白色部)に分割し、内皮を幅1.5cm、厚さ3mmに切り分けた後、風乾した。外皮は千切りにし風乾した。種は洗浄後、風乾した。
    【結果】製造を試みた加工食品:果肉を利用したジャム・ケチャップ、乾燥内皮を利用した佃煮、色素を利用したラクトアイス・パウンドケーキ、乾燥果皮と種を利用した醤油・味噌(現在試作中)、その他を試みた。乾燥内皮を佃煮に加工することにより、廃棄率を大幅に軽減できた。地域との連携については、ラクトアイスと佃煮を函南町産業振興課に提案し、函南町が地元企業に紹介したことで連携が実践されたものと考える。
  • 海堀 杏果, 中川 裕子, 小柳津 周
    セッションID: 2E-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】近年日本人はカルシウムの摂取が少なく、欧米人の3分の1であると報告されている。欧米に比べ飲料水の軟水や植物中のカルシウム含有量が少ないことも原因の一つであると考えられ、若年層から高齢者層までカルシウムの摂取が懸念される。そこで、老若男女に好まれている乳加工製品であるヨーグルトに着目し、硬水と脱脂粉乳を使用したカルシウム含有量の多いヨーグルトの開発を行うことにした。本研究ではヨーグルトの調製における硬水の影響を検討した。

    【方法】試料は、Y社製市販ヨーグルト、U社製市販硬水、M社製市販スキムミルクを用いた。硬水の割合は0%(蒸留水100%)、25%、50%、75%、100%とし、希釈は蒸留水で行った。またスキムミルク量は、水100gに対し、14g、16g、18g、20gとした。これらを市販ヨーグルトと攪拌し、40℃、6時間で調整後、冷蔵庫で10℃に冷却した。調製したヨーグルトの力学的特性、官能評価および栄養価の評価を行った。力学的特性として、テクスチャー特性と粘度を測定した。使用した機器は、株式会社山電クリープメーターおよび、東機産業株式会社VISCOMETERである。

    【結果】硬さ、粘度の結果からスキムミルク18g、硬水25%の条件下のヨーグルトが市販ヨーグルトに近い値を示した。スキムミルク18gでは、硬水の硬水割合が増加する程、硬さおよび粘度は低い値を示す傾向であったが、スキムミルク20gでは硬水割合の異なる試料間に有意差はなかった。栄養価面については従来の市販ヨーグルトよりも強化できるものと考えられる。
  • 平野 早紀, 辻本 華音, 坂本 宏司, 真部 真里子
    セッションID: 2E-6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】現在、嚥下調整食(嚥下食)には、主にゲル化剤を用いたゼリー食が利用されている。これまでに、照焼鮭のゼリー食のにおいが調製時の均質化操作やゲル化剤由来のにおいによって普通食と異なることを報告した。一方、近年、「凍結含浸法」による嚥下食が開発された。そこで、本研究では人参の含め煮を、キサンタンガムを主成分とした市販耐熱ゲル化剤2種と凍結含浸法を用いて3種の嚥下食に展開し、そのにおいをGC分析にて普通食と比較した。
    【方法】各嚥下食は、学会分類2013の嚥下調整食3に相当するよう調製した。におい分析は、供卓時のにおいモデルとして、60℃に保温した試料のヘッドスペース(HS)中の香気成分をSPME法にて抽出しGCに供した。各香気成分を前鼻腔経由のにおい嗅ぎ(GC-O)で検出し、においの質を言葉で表現した。摂食中のにおいモデルは、咀嚼を模して試料を粉砕し人工唾液と混和後37℃で保温したHS中の香気成分をGCに供し、後鼻腔経由のにおい嗅ぎ(GC-RO)にて分析した。
    【結果】GC-O分析では、ゼリー食の場合、普通食で検出されたにおいの消失やゼリー食でのみ検出されるにおいが多く、その傾向は凍結含浸法より顕著であった。一方、GC-RO分析では、全試料でGC-O分析に比べて、認識されるにおい数が著しく減少した。その中で、凍結含浸法では検出されたにおいが多かったが、そのほとんどは、3倍量の普通食を分析した場合にも検出されたことから、凍結含浸法では、においの変質が起こっているのではなく、普通食のにおいが認識されやすいことがわかった。すなわち、凍結含浸法では、嗅覚の低下した高齢者においても、普通食の風味を楽しむことが期待できる。
  • 近藤(比江森) 美樹, 新家 大輔, 長尾 久美子
    セッションID: 2E-7
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】シカ肉は、牛肉や豚肉に比べて低脂肪、鉄分やビタミンB群が豊富であり、栄養面で高い価値を有する食材である。そのため、近年深刻化する有害野獣問題の対策の一環として実施されている害獣駆除において、捕獲されたシカを食肉資源として有効利用する取り組みが行われている。一般に畜肉は、屠体を低温下で一定期間保存し、プロテアーゼ等の作用により保水性や旨味成分が増加して軟らかく美味しい肉質に変化した熟成肉として流通している。現在徳島県では、シカ肉は指定の加工所で解体後、3℃で2~3日の熟成後に真空包装して冷凍販売されているが、その熟成条件の設定は経験等によるものである。本研究では、熟成期間中の物理変化や旨味成分の挙動を解析することにより、シカ肉に適する熟成条件を検討した。
    【方法】徳島県で冬期に捕獲された野生のシカ(雌)、3頭を処理加工施設で屠殺後、直ちに左右のロースを採取した。ロースを約6 cm幅に分割して真空包装後、3℃で一定期間(0~24日間)熟成させた。熟成後、試料の重量変化、遠心保水性、クッキングロス、色調を測定した。さらに、一部の肉片を成分分析用の試料として-30℃で冷凍保存した。解凍してミンチ状にした試料から核酸関連化合物および遊離アミノ酸を抽出後、HPLC-PDAおよび自動アミノ酸分析装置により定量し、旨味成分の挙動を確認した。
    【結果】熟成11日目に遠心保水性の上昇とクッキングロスの低下が認められた。旨味成分の挙動では、核酸系の旨味成分である5’-イノシン酸は熟成初期に増大し、その後減少した。一方、アミノ酸系の旨味成分であるL-グルタミン酸は11日目以降に著しく増加した。これら理化学的性質および旨味成分の挙動を指標にシカ肉の熟成条件を検討した結果、真空包装下3℃で保存した場合、おおよそ11日間の熟成期間が必要であることが示唆された。本研究は、徳島文理大学「平成28年度 特色ある教育・研究(課題番号TBU2016-3-1)」の助成を受けて実施した。
  • 還元糖および有機酸の併用効果
    高木 明奈, 山田 夏代, 松本 祥子, 板橋 未奈, 大橋 かすみ, 山澤 正勝
    セッションID: 2E-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】大量調理施設では、食中毒事故防止のため「大量調理施設衛生管理マニュアル」が施工され、調理後直ちに提供されない卵調理加工食品では65℃以上に保管することによって緑変による品質低下が問題になっている。本研究では、卵調理加工品の緑変防止法として還元糖と有機酸の併用効果について検討した。
    【方法】加水10%全卵溶液を対照とし、加水の代わりに0.2Mグルコース、0.05%クエン酸、0.1%クエン酸単独および0.2Mグルコース+0.05%クエン酸、0.2Mグルコース+0.1%クエン酸をそれぞれ混合した全卵溶液を調製した。これらを直径30mmポリ塩化ビニリデンケーシングに充填し、90℃で60分間加熱・冷却後常温に戻し、各25mm厚に切断したものを試料とした。品質評価として、色調(L値:明るさ、a値:+赤色、-緑色、b値:黄色)、硫化水素生成量、破断強度等物性測定、および官能検査を行った。
    【結果】対照はa値が著しく低下し緑変するのに対し、0.2Mグルコース添加試料では硫化水素生成量は減少しa値の低下は少なく緑変はかなり抑制されるが、メイラード反応による褐変臭を伴う。0.2Mグルコースに0.05%クエン酸を添加すると、pHが低下するため、L,a,b値が増加して明るい黄色を呈し、緑変は抑制された。また、酸による風味の低下は認められず、褐変臭も抑制された。これらは、還元糖およびクエン酸による硫化水素生成抑制効果とクエン酸のpH低下による黄色化によるものと考えられ、卵調理加工品の緑変防止法としては有効であった。
  • 田村 安里, 木下 純, 庄司 龍市
    セッションID: 2E-9
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】がん治療における副作用や、妊娠時のつわりなどで、食物のにおいに対して吐き気やむかつきを感じて極端に食欲が落ちてしまう場合がある。
    吐き気やむかつきの元となる食物は色々あるが、肉や魚もあげられる。肉や魚は良質なタンパク質に富む食材であり、病気治療中や妊娠時には積極的に摂ってもらいたい食材である。そこで、マヨネーズを用いた調理工夫を行って、吐き気やむかつきの元となるにおいを抑えておいしく食べられることを目的とし検討した。
    【方法】肉は、鶏むね肉を選択し、調理工夫として「鶏むね肉のカレーマヨ焼き」を調理した。作り方は、①鶏むね肉はひと口大のそぎ切りにし、混ぜ合わせたカレー粉、マヨネーズを加えて漬け込む。②フライパンに油をひいて熱し両面焼き、火が通ったら①の残りのソースを入れ、からめて焼く。
    魚はカジキマグロを選択し、調理工夫として「カジキマグロのマヨネーズ焼き」を調理した。作り方は、①カジキマグロは3cm幅に切り、軽く塩・こしょうをする。②パセリはみじん切りにし、パン粉、マヨネーズとともに混ぜ合わせる。③①の表面に②を塗り、オーブントースターで焼く。
    上記のメニューに対して各々マヨネーズ抜きを作り対照品として比較を行った。
    評価は、パネラーによる官能評価、およびSPME-GC-MSを用いたにおい成分分析を行った。
    【結果】パネラーによる官能評価により、調理工夫がにおいに対して効果的であることが分かった。マヨネーズを用いた調理を行うことで、マヨネーズを用いない調理に比べてhexanalなどのにおい成分が有意に抑えられていることが分かった。
  • 梶野 涼子, 栗﨑 純一, 山田 和彦
    セッションID: 2E-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】鶏卵以外の家禽卵を新しい食資源として有効利用することを目的とし,我々はまず摂取する上で重要な消化性の研究に取り組んでいる.消化性は,栄養学的に基本的な性質であるが,一般に消化酵素によって消化されにくいタンパク質はアレルギーを誘発しやすく,卵の消化性の解明は,食の安全を保つ上でも重要である.卵には,様々な調理・加工法があるため,種々の調理・加工条件下における消化性を調べる必要がある.本研究では,卵の希釈性と熱凝固性を利用したプリンや茶わん蒸し等の料理を想定し,各種家禽卵卵白の希釈と加熱処理条件の組み合わせと消化性との関連性を鶏卵と比較した.
    【方法】家禽卵は,ニワトリ(Chi),アヒル(Duk)およびダチョウ(Ost)の卵を対象とした.希釈しない卵白および希釈卵白(2~5倍希釈)について,加熱処理を施し,人工胃液および人工腸液による消化性試験を行った.消化反応液のトリシン-SDS-PAGEによる解析,消化により生成したアミノ酸・ペプチド量の測定およびペプチドのHPLC分析も行った.
    【結果】人工胃液による消化性は, 5倍希釈卵白溶液を加熱した場合では,Chiは80℃以上,Dukは70℃以上,Ostは90℃以上の加熱処理により未加熱に比べ著しく消化性が高まったが,卵白を希釈せずに加熱した場合では,各家禽共,上記の温度帯から著しく消化性が低下した.人工腸液による消化性は,5倍希釈卵白溶液を加熱した場合では,Chiは75℃以上,Ostは50℃以上の加熱処理により,Dukは加熱の有無に関わらず速やかに消化されたが,卵白を希釈せずに加熱した場合では,各家禽共,70℃以上の加熱処理により消化抵抗性が高まった.
  • 辰口 直子, 大 雅世
    セッションID: 2E-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>温泉卵を作る際の加熱温度は、一般に65~70℃といわれている。本研究では加熱到達温度と時間経過が凝固状態に与える影響を明らかにし、好みの温泉卵を作る加熱条件を明らかにすることを目的とした。到達温度65℃、68℃、70℃における凝固状態を確認し、その温度をそのまま保った場合の経時変化を測定した。

    <方法>恒温槽を用い、水温65℃、68℃、70℃に設定し、卵をいれて中心が設定温度になるまで加熱し、その後所定の時間保持した。卵は市販の物を購入して用いた。水温、卵中心温度は熱電対で測定した。加熱後の卵を割卵し、形状(長径、短径等の大きさ)と、TEXTURE PROFILE UNIT卓上型物性測定器(YAMADEN TPU-2S)を用いテクスチャー(破断強度、凝集性、付着性)を測定した。

    <結果>所定の温度に達した時点の凝固状態を確認した。この温度に一定時間保持した場合の変化は、卵白の凝固は65℃では変化はないが、68℃、70℃では時間経過によって、卵白では水溶状態の減少傾向がみられた。卵黄は65℃、68℃では保持時間が長くなると形状が変化し、高さが増す傾向にあったが、70℃では大きな差はみられなかった。到達温度と各温度での保持時間での、卵白と卵黄の凝固状態が明らかになったので、これらの結果を利用して好みの成績を得るための操作の指標のためのデータが得られた。
  • 小泉 昌子, 島村 綾, 峯木 眞知子
    セッションID: 2E-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】鶏卵の品質は、鶏の週齢、鶏の環境、鶏に与える飼料に影響される。例えば、飼料により、卵の卵殻質の改善、卵黄の色、産卵率や卵の鮮度保持、卵黄の脂肪酸組成にも影響する。しかし、鶏の週齢の違いと卵の調理特性の研究報告は見当たらない。そこで、週齢により調理特性に違いがあるのかどうかを、同じ飼料を給与したボリスブラウン鶏種(赤玉R)とジュリア鶏種(白玉W)の30週齢、70週齢鶏の産んだ卵を用いて比較した。
    【方法】両卵の生卵の卵質と重量、卵殻厚、pH、卵黄の粘度、成分、およびその加熱(全熟)卵のテクスチャー測定および官能評価を行った。加熱卵の卵白のかたさは卵の鋭端部を厚さ15mmに切り、その最上部を3mmのプランジャーで貫入した。また、卵黄は卵白から外し、丸ごとの形でくさび型のプランジャーにより山電レオナーで測定した。組織構造を観察し、卵料理を調製して官能評価を行った。
    【結果】生卵の重量は、両卵ともに30週齢よりも70週齢の方が重かった。W卵は部位別重量比に週齢による違いはなかったが、R卵では、70週齢で卵白割合が低下した。卵殻厚は両卵ともに、週齢による差はなかったが、卵殻強度は、R卵で30週齢の方が70週齢より高かった。生卵黄の粘度は、W卵で30週齢、R卵では70週齢の方が高い値であった。
    加熱卵の卵白のかたさは両卵ともに70週齢の方がやわらかく、水分含有率が影響したと考える。卵黄のかたさは両卵共に70週齢の破断応力が増加した。加熱卵の官能評価においてR卵の70週齢では、おいしいと評価された。これらのことから、鶏の週齢の違いが卵の調理特性に与える影響があることがわかった。また、この影響が鶏種により異なった。
ポスター発表
  • 筒井 和美, 岩下 滉平, 田中 裕子, 奥村 日菜子, 權田 栞, 西成 勝好
    セッションID: 1P-1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】澱粉の温水処理とは、大量の水存在下で糊化開始温度以下で加熱処理し、澱粉の物理化学的特性を変化させることである。本研究では米澱粉の温水処理を行い、加熱温度の違いによる熱特性の変化を調べることにした。
    【方法】試料には、2010年新潟県三条市産コシヒカリから抽出した粳米澱粉を2種類用意した。超高感度示差走査熱量計(SII製DSC6100)にて、20wt%粳米澱粉の糊化温度、糊化エネルギーを調べた。25℃90分間膨潤させ、その後、25℃、48℃、54℃にて各12時間温水処理をDSC炉内、湯浴などで施した。その後、25℃~120℃まで1℃/分で昇温させた。
    【結果】未処理の粳米澱粉には、低温側、高温側に2つの吸熱ピークが見られた。DSC炉内で温水処理を施すと、低温側のアミロペクチン溶融に由来する吸熱ピークに変化が見られた。温水処理温度が高いほど、低温側の吸熱ピークの糊化開始温度は上昇する傾向にあったが、糊化ピーク温度や糊化終了温度はほとんど変わらなかった。温水処理前の澱粉の糊化開始温度や糊化エネルギーが低い場合も、同様に温水処理の影響が見られたが、澱粉の種類による影響については、現在、実験を重ね検討している。
    なお、本研究は科学研究費基盤研究(C)26350092、17K00814の助成を受け、遂行された。
  • 佐藤(栗原) 幸子, 澤山 茂
    セッションID: 1P-2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】日本で米は主食とされ、加工食品にも用いられ、アレルゲンになりにくいことから小麦粉の代用品として活用されている。より安全に提供するには、喫食者の身体特性に対応し、物性に考慮した製品作りが必要である。そこで、菓子作りに用いられる膨張剤がうるち米を原料とする上新粉の物性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】1.試料:新潟県産の上新粉と水道水を用い、①膨張剤なし、②膨張剤+重曹(上新粉重量の2%)、③膨張剤+イスパタ(2%)、④膨張剤+BP(2%)、⑤膨張剤+BP(5.5%)を加え調整した。2.焼成:ベーカリー(アーネスト株式会社)と600W電気コンロを用いた。ベーカリーは焼成前に電気コンロで両面の表面温度が130℃になるまで加熱し、試料15ml/枚流し入れ、蓋をして3分30秒、裏返して3分間焼成した。焼成後ベーカリーから外し、常温で12時間以上静置した。3.体積の計測:菜種法で実施した。4.破断試験:3点曲げ試験治具とレオメーターⅡ(破断強度解析Ver2.3)(株式会社山電)を用い、測定条件Load cell 200N,Speed 1,Step0.1で測定し、試料毎に外れ値検定を実施した。
    【結果】有効データ数は①3件、②6件、③7件、④9件、⑤9件であった。焼成後試料の体積[㎝3]は①17.8で、②~⑤13.4~19.4であった。最大応力[Pa]は①(膨張剤無)2.2×106、②~⑤(膨張剤有)9.7×105~1.8×106であった。破断応力[Pa]は①2.2×106、②~⑤7.0×105~1.8×106であった。破断エネルギー[J/m^3]は①3.4×105、②~⑤8.1×104~3.3×105であった。膨張剤を使用しない①は、1枚岩のように固く急激に破断した。重曹やイスパタを用いると軟化し、表面に近い部分で破断した。ベーキングパウダーは中心部に近い部分が硬くなり、2%では軟らかくはならなかった。
  • 山﨑 貴子, 赤塚 千佳, 古谷 彩音, 馬場 彩佳, 岩森 大, 伊藤 直子
    セッションID: 1P-3
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】新潟市北区ではさつまいも(品種:シルクスイート)の特産化をすすめている。我々は、収穫後1-4か月貯蔵したシルクスイートは、未加熱試料のβ-アミラーゼ活性がベニアズマと同程度で、べにはるかより低いにもかかわらず、85℃60分加熱時のマルトース生成量はベニアズマより多く、べにはるかと同程度であったことを報告している。本研究では、シルクスイートの加熱時のマルトース生成量が多い理由を検証するため、β-アミラーゼの最適温度及び加熱試料の残存活性を調べた。
    【方法】新潟市北区の同一圃場にて栽培し、室温で1か月以上貯蔵したシルクスイート、ベニアズマ、べにはるかを用い、塊根の中央部より1.5cm角に切りだした。未加熱試料の粗抽出液について、反応温度20-90℃でのβ-アミラーゼ活性を測定した。また、未加熱及び65-95℃で60分蒸し加熱した試料の粗抽出液のβ‐アミラーゼ活性及び糖量を測定した。β-アミラーゼ活性はDNS法、糖量はHPLC法にて測定した。
    【結果】未加熱試料のβ-アミラーゼ活性は、3品種とも60℃で最も高く、品種による差はなかった。65℃加熱試料のβ-アミラーゼ活性は、ベニアズマとべにはるかでは未加熱試料の約60%まで低下したのに対し、シルクスイートでは約80%残存していた。マルトース生成量は、65℃加熱試料ではシルクスイートとべにはるかに差はなかったが、75,85℃加熱試料ではシルクスイートの方が多かった。以上より、シルクスイートはベニアズマやべにはるかに比べ、加熱試料のβ-アミラーゼ活性残存率が高いことから、熱安定性に優れている可能性が示された。今後マルトース生成に関係する糊化状態についても調べる必要がある。
  • 加藤 美穂, 高木 明奈, 小早川 和也
    セッションID: 1P-4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】

    小麦全粒粉は、製パン後の物性やにおい、色調が悪いため、市販食パンにおける全粒粉の配合割合は数%~10%と低い。そこで、さまざまな食品の物性向上に利用されている加工でん粉を配合し、全粒粉の配合によって低下する製パン性および嗜好性の改良について検討を行った。

    【方法】小麦粉100%をControlとして、全粒粉10~40%を置換したパンに加工タピオカでん粉(α-アミラーゼ処理アセチル化リン酸架橋でん粉(APAS))を5%置換し、その製パン性について検討を行った。それぞれ得られた試料について、生地発酵試験、テクスチャー解析、色差解析および官能評価を行った。

    【結果および考察】生地発酵試験では、APASによる生地への影響は認められなかった。製パン性について、全粒粉の置換割合を20%まで上昇させ焼成するとケービングが起こったが、APASを置換することによりケービングが抑制された。また、全粒粉の置換割合が増えると最大強度が上昇し硬い食感のパンになったが、APASを同時に置換することにより最大強度は、Controlと同程度となり物性の改善が認められた。クラストの色調は、全粒粉の割合上昇に伴う変化は認められなかった。クラムは全粒粉20%までAPASによる明度の変化は認められなかったが、30%以上になるとL*値は低く、a*値は高くなった。官能評価では、全粒粉10%+APASのパンは、日常的に食べている市販品と同じように好まれたが、全粒粉30%+APASのパンは、好みに個人差が大きく反映し、ばらつく結果となった。今後は、Controlの硬さにより近づけるために、加工でん粉の種類および置換割合の増加などを検討する必要がある。
  • 濱石 貴士, 森永 賀亮, 森田 洋
    セッションID: 1P-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】近年、機械による大量生産により様々なパン生地改良剤が使用されており、特に乳化剤はパン体積の増加や食感の改善、老化防止の役割を果たしている。本研究では従来の乳化剤に代わる新しい新規乳化剤として脂肪酸塩に着目した。脂肪酸塩は脂肪酸とアルカリからなる塩であり、抗カビ効果を有することが先行研究により明らかとなっている。そこで本研究では脂肪酸塩を生地添加剤として用い、各種脂肪酸塩における製パン性の評価を行った。
    【方法】使用した脂肪酸塩はカプリル酸カリウム(C8K)、カプリン酸カリウム(C10K)、ラウリン酸カリウム(C12K)、ミリスチン酸カリウム(C14K)、パルミチン酸カリウム(C16K)、ステアリン酸カリウム(C18K)で各脂肪酸塩をそれぞれ350 mM、pH 10.5に調整した。パン生地は小麦粉(日清製粉(株))100 g、砂糖5 g、食塩1.7 g、ドライイースト(日清製粉(株))1.7 g、水68 mL、各種脂肪酸塩を添加して手で500回混捏した。調製したパン生地について、日本イースト工業会のパン用酵母試験法に基づき、生地膨張力試験を行った。生地比容積は100 gに調整し、180℃のオーブンで15分間焼成。常温まで冷ました後に一定容量の容器とガラスビーズを用い、菜種置換法により比容積を測定した。
    【結果】小麦粉生地での120分後の生地膨張力試験ではコントロールの生地膨張力と比較し、C14K、C16K、C18Kの炭素鎖が14以上の脂肪酸塩において生地膨張力の増加が認められた。また炭素鎖が14以上の脂肪酸塩では生地膨張が認められた一方で焼成後における比容積試験では、各種脂肪酸塩添加による比容積に影響を及ぼさなかった。
  • 平尾 和子, 米山 陽子, 佐藤 清香, 三星 沙織
    セッションID: 1P-6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】東京都江戸川区は小松菜発祥の地域とされ、本学では授業等での献立立案に積極的に導入し、学生への地域食文化への浸透を計っている。本報告では、小松菜粉末を用いた栄養バランスの良い米粉蒸しパンの開発および、その導入部に学生を参加させることが調理学への興味関心の向上に関連するかについて検討した。
    【方法】試料は、製菓用米粉(2016年度新潟産うるち米、(株)富澤商店)、小松菜粉末(島村商店(株))、上白糖(三井製糖(株))、ベーキングパウダー((株)アイコク)に、蒸留水、牛乳((株)明治)または豆乳(無調製豆乳、(株)紀文食品)を加えて調製した。副材料は学生の提案から10種を選定した。蒸しパンの物性測定はクリープメータ((株)山電)で、官能評価は評点法および順位法を用いて行った。アンケート調査の対象者および官能評価のパネルは、本学食物栄養専攻一年生45名とした。
    【結果】蒸しパンのかたさは、豆乳を用いたものが最も大であったが有意の差は認められなかった。評点法による官能評価の特性評価では、豆乳を用いた蒸しパンは牛乳を用いたものよりも小松菜の青臭さと苦味が有意に少ないと評価された。嗜好では、豆乳と水の蒸しパンの間には、味(甘さ、青臭さ、苦味)、かたさ、飲み込みやすさ、総合評価の項目で有意の差が認められたが、牛乳と豆乳の蒸しパンの間には有意差が認められなかった。順位法による総合評価では豆乳>牛乳>水の順に好まれた。牛乳蒸しパンに副材料10種を添加したところ、小松菜の青臭さと苦味が軽減されるものが好まれ、中でもコーン(粒)の添加が最も好まれた。今回の食品開発の基礎を経験したことで、67%の学生が調理学への興味が高まったと回答した。
  • 村元 美代, 吉田 和馬, 吉田 莉萌, 阿部 真弓, 佐藤 佳織, 横山 恵, 鈴木 惇
    セッションID: 1P-7
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】乳清はそのたんぱく質の組成から,近年ではリハビリを必要とする患者や高齢者向けに利用する動きも見られる。本研究では,通常の食事として摂取することによりその効果を期待できないかを目的に調理法の検討を行ってきた。「乳和食」では,炊飯に乳清を利用しているものがある。そこで,乳清をより有効的に高齢者に食してもらえる調理法を模索するため,飯の味や組織上の違いについて実験を行った。
    【方法】乳清は,「乳和食」に記載されている方法に従って調製した。米は岩手県産のひとめぼれを使用し,炊き水は乳清と水をa)1:2およびb)1:1.25の割合とし,水で吸水させた後で乳清を混合して炊飯した飯と通常に炊いた飯の3種類を試料とした。官能評価は,学生33名を対象として嗜好型の評価を行った。検鏡試験は,飯をφ2㎝×H2.5㎝の円柱形に成形し,ドライアイスで冷やしたアセトンで急速凍結後にコールド・ミクロトームで厚さ16μmの切片を作成してアクロレイン・シッフ染色(たんぱく質を染める)を行った。
    【結果】乳清飯の官能評価では,色はa)b)ともに60%以上が“好ましい”“好ましい方だ”と回答し,においと総合評価は“好ましくない”“好ましくない方だ”という回答が多く,においで60%前後,総合評価では50%前後であった。検鏡試験では,米粒内のたんぱく質が染まったが、通常飯と乳清飯の染色性に大きな違いは見られなかった。
  • 島田 和子, 重永 織江, 松元 葵, 原田 和樹, 村上 恵, チキサンクル ワニダ, 塚本 知玄
    セッションID: 1P-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】大豆の浸漬により量や組成が変化する成分がある一方、新たな成分が生成されることも知られている。これらは短期間の浸漬(12~24時間)で行われたので、今回、大豆の長期間浸漬で、代表的な機能性成分と食味成分がどのように変化するかについて検討した。
    【方法】タイ産の黄大豆(Chaing-Mai 60)と黒大豆(Sukhothai 3)の各々に5倍量の水を加え、35℃、暗所にて0~48時間浸漬した。浸漬水は6時間ごとに交換した。成分分析には、0、12、24、48時間浸漬した大豆を使用した。遊離糖、イソフラボン、サポニン、アントシアニンは高速液体クロマトグラフィー分析、葉酸は微生物学的定量法、遊離アミノ酸はアミノ酸分析計、抗酸化能はH-ORAC法で測定した。
    【結果】スタキオース、ラフィノースは黄大豆では浸漬時間に伴って減少したが、黒大豆では変化がなかった。イソフラボンは、黄大豆ではマロニル配糖体と配糖体が減少し、アグリコンが増加した。黒大豆では、48時間の浸漬でも各イソフラボン量に変化はなかった。浸漬24~48時間の間にDDMPサポニンが減少し、グループBサポニンが増加した。γ-アミノ酪酸は、両大豆ともに浸漬12時間で最大量となった。葉酸は両大豆ともに浸漬12時間でわずかに増加したが、長期浸漬を通じて大きな変化はなかった。黒大豆のアントシアニンは浸漬12時間までに約80%が減少した。黄大豆と黒大豆のH-ORAC値は、浸漬期間中増加しなかった。以上の結果より長期間浸漬は、12時間の短期間浸漬と比べて機能性および嗜好性成分ともに大きな利点がなく、大豆の浸漬は12時間程度が望ましいことが認められた。
  • 松尾 将平, 三貝 咲紀, 秋野 利郎, 畠山 敦, 高瀬 智禎, 森田 洋
    セッションID: 1P-9
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】焼酎などの酒類醸造では「麹」の役割が不可欠である。従来の麹造りは、穀類の固体表面上に麹菌を生育させる固体培養法が用いられるが、発酵熱などの培養制御が困難である。そこで、培養制御が容易である液体培養法に着目した。液体培養法とは、水にその他栄養分を添加した液体培地に麹菌を生育させる培養方法である。しかし、固体培養法と比較すると、麹菌の酵素生産性が著しく低く、特に焼酎醸造で重要となる耐酸性α-アミラーゼ(Aα-A)がほとんど生産されない。そこで本研究では、Aα-Aが高生産する液体培養法の検討を行った。

    【方法】菌株にはAspergillus kawachii NBRC 4308を使用した。改変SLS液体培地(米粉: 1.0 g、K2HPO4: 0.1g、KCl: 0.1 g、トリプトン: 0.6 g、MgSO4・7H2O: 0.05 g、FeSO4・7H2O: 0.001 g、ZnSO4・7H2O: 0.0003 g、CaCl2: 0.021 g、クエン酸: 0.33 g /100mL (脱イオン水) ) に初発胞子数1×107 個/mLになるように植菌し、30 ℃、200 rpmで72 h振とう培養を行った。Aα-A活性はα-アミラーゼ測定キット(キッコーマン社製)を用いて測定を行い、粗酵素液1 mLがN3- G5- β- CNPから1 μmolのCNPを遊離したときを1 Uと定義した。発酵試験は、Saccharomyces cerevisiae NBRC 2373を使用し19日間発酵させ、ろ過したろ液のアルコール度を測定した。

    【結果】改変SLS液体培地のAα-A活性は1.0 U/mLであった。次に、改変SLS液体培地組成中のトリプトンをスキムミルク2.0 g、硫酸亜鉛塩をいりゴマ(白) 5.08 g、硫酸鉄塩は脱イオン水を水道水に代替し、本格焼酎醸造へ利用できる液体培地(SLS-SS培地)の検討を行った結果、13.4 U/mLの高いAα-A活性を示した。そして、固体麹とSLS-SS液体培地を用いて発酵試験を行った結果、固体麹では11.3 %、SLS-SS液体培地では10.6 %のアルコールが得られた。SLS-SS液体培地は、固体麹と同等のアルコール度数であったことから、SLS-SS液体培地による本格焼酎醸造への利用可能性が示された。
  • 有機酸のpHおよびキレート効果
    板橋 未奈, 山田 夏代, 高木 明奈, 松本 祥子, 大橋 かすみ, 山澤 正勝
    セッションID: 1P-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】大量調理施設では、食中毒事故防止のため「大量調理施設衛生管理マニュアル」が施工され、調理後直ちに提供されない卵調理加工食品では65℃以上に保管することによって緑変による品質低下が問題になっている。本研究では、卵調理加工品の緑変防止法として有機酸のpH低下およびキレート効果について検討した。
    【方法】加水10%全卵溶液を対照とし、加水の代わりにクエン酸を0.1、0.25、0.5%になるように調整した全卵溶液試料と2mol/L塩酸でクエン酸試料と同pH値に調整した全卵溶液を調製した。これらを直径30mmポリ塩化ビニリデンケーシングに充填し、90℃で60分間加熱・冷却後常温に戻し、各25mm厚に切断したものを試料とした。品質評価として、色調(L値:明るさ、a値:+赤色、-緑色、b値:黄色)、硫化水素生成量、破断強度等物性測定、および官能検査を行った。
    【結果】対照は硫化水素生成量が多く、a値が低下して緑変するのに対し、pHが低下するほど硫化水素生成量は低下し、L、a、b値が増加して黄色化し、緑変は認められない。同一pHにおけるクエン酸と塩酸の添加効果を比較すると、クエン酸の方が硫化水素生成量は少なく、色調はb値が明らかに高かった。このことから、クエン酸の添加効果はpH低下効果とキレート効果によると推察された。ただし、クエン酸濃度が高くなると、離水量の増加、酸による風味等品質上の問題があり、クエン酸単独使用には課題が認められた。
  • 還元糖の添加効果
    大橋 かすみ, 山田 夏代, 高木 明奈, 松本 祥子, 板橋 未奈, 山澤 正勝
    セッションID: 1P-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】大量調理施設では、食中毒事故防止のため「大量調理施設衛生管理マニュアル」が施工され、調理後直ちに提供されない卵調理加工食品では65℃以上に保管することによって緑変による品質低下が問題になっている。本研究では、卵調理加工品の緑変防止法として還元糖の添加効果について検討した。
    【方法】加水10%全卵溶液を対照とし、加水の代わりに0.2M糖類全卵溶液(還元糖:キシロース、フルクトース、グルコース、マルトース、非還元糖:ソルビトール、スクロース)を調製した。これらを直径30mmポリ塩化ビニリデンケーシングに充填し、90℃で60分間加熱・冷却後常温に戻し、各25mm厚に切断したものを試料とした。品質評価として、色調(L値:明るさ、a値:+赤色、-緑色、b値:黄色)、硫化水素生成量、破断強度等物性測定、および官能検査を行った。
    【結果】対照はa値が低下し、硫化水素生成量が多く緑変するのに対し、各種0.2M還元糖全卵溶液の添加効果は、キシロース>フルクトース>グルコース>マルトースの順に硫化水素生成量は抑制されたが、メイラード反応による褐変および褐変臭は分子量が小さいほど促進された。一方、非還元糖では対照と同程度の色調であり、硫化水素生成抑制効果は認められなかった。還元糖濃度(0.1M~0.5M)の影響をグルコースで検討したところ、添加濃度の増加とともに硫化水素生成抑制効果および褐変、褐変臭は上昇傾向を示した。以上より、硫化水素生成抑制効果、褐変および褐変臭を総合的に評価するとグルコース濃度0.2Mが有効と考えられた。ただし、グルコース単独添加には褐変および褐変臭等品質上の課題が認められた。
  • 伊藤 直子, 伊庭 結花, 内山 弘将, 酒井 葵子, 本間 彩友美, 山﨑 貴子, 岩森 大
    セッションID: 1P-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】リンはほぼすべての食品に含まれており、特に動物性食品に多いため、慢性腎不全患者にとって過剰摂取には注意が必要な栄養素である。食品中のリンを低減する方法として、茹で調理がある。野菜類、肉類で茹で調理によるリンの低減効果を調べた報告は散見されるが、日本人の摂取頻度の高い魚について実測した報告はほとんど見当たらない。そこで我々は、魚の茹で調理によるリンの低減効果について調べた。
    【方法】実験材料はカラスカレイ、ギンザケ、アカウオ、ブリの切り身を用い、約3×5×2cmのブロック状に整形したものと、ブロックと同じサイズのものを厚さ5mm(6切れ)にスライスしたものを試料とした。また表面積とリン溶出との関係を見るため、ブリを厚さ1cm、5mmにスライスしたものを比較した。いずれの試料も茹で時間は10分とした。それぞれの試料は日本食品標準成分表の測定法に従い、乾式灰化後、塩酸抽出を行い、バナドモリブデン酸吸光光度法にてリンを定量した。
    【結果】茹で調理により、リンはすべての試料においてブロックでは生の20~34%減少し、5mmスライスでは30~53%減少した。茹でている間に身崩れを起こしたサケ、カラスカレイではリンの減少が大きかった。茹で最中に全く身崩れを起こさなかったブリを用いて、スライスの厚さを変えて茹でたところ、5mmにスライスしたほうがリンの溶出は大きかった。これらのことから、リンを効率よく低減するには表面積を大きくして茹でることが有効と考えられる。しかしながら、魚は重要なたんぱく質源食品であり、今後は茹で調理によるタンパク質の変動についても調べる予定である。
  • 久木野 睦子, 柿山 章江
    セッションID: 1P-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】演者は現在、脱血処理が魚肉の品質におよぼす影響を検討中で、本研究は、今後、脱血魚肉刺身の官能評価を行う際に留意すべき点を知ることを目的として行った。脱血処理は食肉では一般的であるが、魚においては一部の高級魚でしか行われておらず、赤身魚においては、研究が進められているものの、現在は殆ど行われていない。
    【方法】刺身の評価において血なまぐさみがどのように影響しているか知るために、本学学生に好きな魚、嫌いな魚とその理由を質問した。また、魚のなまぐさみを抑えると考えられているしょう油を用いることで刺身の評価がどのように影響されるのか、天然マグロの赤身を用いて官能評価を行った。さらに、九州地方ではよく知られている糖分が添加されている刺身専用のしょう油について、家庭での使用状況を質問した。
    【結果】学生が好きな魚として挙げたのはサーモン(53%)、タイ(25%)などの白身魚で、嫌いな魚として最も多かったのがキビナゴ(17%)で、その理由はなまぐさい、血なまぐさいであった。マグロの赤身は好きな魚としても(14%)、嫌いな魚としても(11%)挙げられ、好きな理由はうま味であったが、嫌いな理由は血なまぐさいであった。天然マグロ赤身を試料として、しょう油を用いないで食べた場合と、糖分を添加した刺身しょう油、添加していない刺身しょう油を用いて比較したところ、しょう油を用いることで、血なまぐさみを感じにくくなったが、糖分の添加の有無の影響はみられなかった。刺身用のしょう油については、殆どの学生が知っており、半数以上の家庭で所有されていた。
  • 大貫 和恵, 武藤 亜矢, 五百藏 良, 野口 玉雄
    セッションID: 1P-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】フグの肝臓には,フグ毒テトロドトキシン(TTX)が含まれているとして,全てのフグ類の肝臓が廃棄されてきたが,無毒トラフグの生産が可能になり,本研究では,未利用資源トラフグの肝臓(フグ肝)の利用を見据えて,加工品の嗜好性を高めるべく,加熱時に生成される魚類特有のにおいを軽減させるため,魚臭抑制効果がある調味料(味噌,日本酒,赤酒)を組み合わせて加工処理した加工品の嗜好性を官能評価より明らかにする。

    【方法】管理の行き届いた室内の開放系循環水槽(佐賀県)で2年間養殖したトラフグの肝臓を用い,公定法に準じて毒性(TTX)試験した。そのフグ肝に味噌と日本酒あるいは赤酒を混合した各調味料に漬けて下処理し,パウチ詰めにて加熱処理をした加工品を作製した。混合調味料は,味噌1に対し赤酒1,2,3とし,日本酒も同様に調製して各調味料の濃度を検討した。作製した全6種の加工品につき,においと味の嗜好性を官能評価(順位法,5段階評点法)した。

    【結果】毒性試験の結果,フグ肝は10 MU/g未満で無毒であった。官能評価の順位法の結果,味噌と赤酒1:1で処理した加工品の「味」は,最も好まれ(p<0.01),「におい」も最も感じられない傾向であった。日本酒と味噌で処理した加工品の「味」は,1:1が最も好まれる傾向,「におい」は,類似した評価が得られた。5段階評点法の「におい」および「味」は,味噌と赤酒(1:1)で処理した加工品がそれぞれ3.7±1.0,3.7±0.9で,最も好まれる傾向となった。
     以上により,味噌と赤酒で処理したフグ肝は,魚臭抑制効果や嗜好性が高く,各調味料1:1が最適な割合であることが分かった。
  • 星野 亜由美, 童 霖, 飯田 文子
    セッションID: 1P-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】肉豚生産は、繁殖性を重視した雌豚(ランドレース種と大ヨークシャー種を交配)に肉質に大きく関与する雄豚(デュロック種)を交配する方式がとられ、国産豚の多くがこの三元交配による交雑種である。一方、海外でも、育種改良されたハイブリッド豚が多く開発され国内に導入されている。そこで、本研究では国内種が海外種と比較して、どの程度の水準であるかを食味評価により検討することを目的とした。
    【方法】試料は国内三元豚のAおよび海外ハイブリット種4種B、C、D、Eの計5種とした。部位は胸最長筋を用いた。調製は170℃のオーブン中で天板にのせ、内部中心温度が70.0℃に達するまで加熱した。途中、前後を入れ替えた。その後1.0㎝厚さにスライスし、1枚を筋肉部分と脂肪部分のどちらも付いた状態に切り分け、官能評価用試料とした。筋肉評価項目はテクスチャー6項目、フレーバー4項目、脂肪部は3項目および総合評価とし、訓練パネルによる8段階尺度の分析型官能評価を行った。併せて山電製レオナーRE2-33005Bによる定速圧縮破断測定も行った。
    【結果】海外ハイブリット種においてCはやわらかさ(後)の項目で種Eに比べ有意に高値であった。また、総合的食感の項目で、CはBより有意に高い結果であった。Bは破断測定値も高値で、硬い肉質と考えられた。国内三元豚のAは海外ハイブリット種のDに比べ、脂肪のやわらかさにおいて有意に高い結果であった。全体的に、フレーバー項目において品種間に有意な差は認められず、テクスチャー項目が豚肉において食味評価に影響を及ぼすことが考えられた。以上より、汎用性の高い海外種は、国内三元豚Aに比べ、肉質が劣るとされていたが、今回の調査では大きな差が認められなかった。
  • 三好 恵子, 長田 早苗, 竹中 眞紀子, 三宅 紀子, 小野 裕嗣
    セッションID: 1P-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アクリルアミド(AA)は、食品を120℃以上で加熱したときにメイラード反応によって非意図的に生成する有害化学物質である。日本人では、高温加熱された野菜調理品(炒め・揚げ)からの摂取量が多いと推定されており、前報で野菜の炒め調理において各調理条件がAA生成に及ぼす影響を明らかにしている。一方、煮る調理ではAAは殆ど生成しないとされているが、120℃以上となる加圧を含め、加圧調理がAA生成に与える影響は明らかではない。そこで本研究では、野菜を加圧調理した時のAA生成についての知見及び低減対策の必要性の判断に資する知見を得ることを目的とした。

    【方法】前報炒め調理でAA生成量の高かった、ごぼう、れんこん、じゃがいもの水煮又は蒸し調理について検討を行った。また、カレー(ルウを加える前)の煮込みについても検討した。加圧調理に用いた圧力鍋は、A(146、80 kPaG)、B(140 kPaG)、C(95、70、45 kPaG)の3種であり、常圧条件として通常のステンレス鍋を用いた(n=4)。なお、146 kPaGの加圧条件では、5、2、0分間の加圧調理も実施した。調理終了後、調理品全体を混和してAA濃度を測定した(検出限界 2 μg/kg、定量下限 5 μg/kg)。

    【結果】各品目について、ほとんどの加圧条件でAA濃度は定量下限未満だった。なお、ごぼうとれんこんでは、146 kPaG、5分間以上の調理条件で、カレーでは146 kPaG 、10分間の調理条件で定量下限以上のAAが生成した(ごぼう:5~13 μg/kg、れんこん:7~30 μg/kg、カレー:6~8 μg/kg)。炒め調理時に比べAA濃度が極めて低いこと、野菜の加圧調理で推奨される標準時間は最高圧に達して2分程度であることを考慮すると、野菜の加圧調理について低減対策を検討する優先度は低いと考えられた。

    ※農林水産省の委託研究事業を活用して本研究を実施した。
  • -処理時間による比較-
    近藤 寛子, 高橋 知佐子, 石井 香代子, 渕上 倫子
    セッションID: 1P-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでの研究で、高圧力処理を利用してマーマレードを作製すると、加熱処理より本来の色や風味を保ったマーマレードが作製できることを明らかにした。本報告では、処理時間を変えてマーマレードを作製し、性質の差を比較した。
    【方法】市販のユズの外果皮を2㎜幅に切断した。中果皮、内果皮、果肉は種を除いた後、pH 2.7のクエン酸溶液を加えて磨砕した。ユズのペーストを6等分し、その中に6等分した外果皮のスライスを入れ、混合した後に35℃で24時間静置した。グラニュー糖を添加して糖度50%として真空包装し、各々500 MPaで10分、20分、30分高圧力処理、沸騰水中で10分、20分、30分加熱処理を行った。各マーマレードについて品質比較を行った。
    【結果】色差の測定では、高圧力処理のL値(明るさ)とb値(黄色度)が高値で、明るくやや緑みを帯びた黄色のユズマーマレードになった。加熱処理のa値(赤色度)は、メイラード反応による褐変が起きたため処理時間の経過に伴って高値となり、やや赤みを帯びたオレンジ色であった。レオロジー評価では、G’(貯蔵弾性率)は高圧力処理では処理時間を変えても変化しなかった。加熱処理は時間の経過にしたがってやや低下したが、処理時間による大差はなかった。破断強度解析では、高圧力処理した外果皮は生と同程度の硬さであった。加熱処理では、時間の経過とともに軟化した。
    以上より、高圧力処理では処理時間による変化がほとんど見られなかったため、10分間以上の高圧力処理によってマーマレードが作製できると考えられる。ただし、食中毒菌などの細菌の不活性化には20分以上の加圧が必要であるとの報告があるため、加圧時間と細菌数の関係についても今後検討する必要がある。
  • 岡崎 尚, 小柗 有貴奈, 重津 七香, 中西 唯奈
    セッションID: 1P-18
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】 身崩れの少ない果実ジャムの製造方法を検討するため、果実の硬さと糖濃度の関係を調べた。

    【方法】 市販の生鮮イチゴ(11.5g±1.4g)および冷凍ブルーベリー(2.3g±0.4g)を実験材料に用いた。生の果実に10~60%の濃度となるようにスクロースと0.3%のクエン酸を加え、耐熱性の袋に密封して沸騰水中で30分間加熱した。冷蔵庫(10℃)で2日間保持して室温に戻し、果実の硬さを測定した。測定はクリープメータ(RE2-33005C、㈱山電)を用い、試料の破断応力を求め、硬さ(N)とした。破断は速度5㎜/sで1.5㎜φの円柱状プランジャーを用いて行い、その最大破断応力を硬さ(N)とした。

    【結果】ショ糖濃度10~40%では糖濃度が高くなるにしたがって、直線的にイチゴが硬くなったが、40~60%では直線の傾きが顕著に大きくなり、イチゴが著しく硬くなった。同じ現象がブルーベリーでも見られた。これらのことから、イチゴおよびブルーベリーの硬さと糖濃度の関係は10%から60%まで直線的に硬くなるのではなく、糖濃度40%前後を境に果実が徐々に硬くなる濃度範囲に続き、急激に硬くなる濃度に移行する境界があると考えられる。
  • 阿部 雅子, 上坂 晴香, 中野 楓, 松岡 寛樹, 小澤 好夫, 綾部 園子
    セッションID: 1P-19
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】カリン、マルメロはともにバラ科の果実であり豊かな芳香を持つが、果肉が硬く渋みを持つため生食には不向きであり、果実酒やはちみつ漬けやゼリー(エキスゼリー)として加工され、薬理効果の期待できる食品として利用されてきた。一方、昨今様々な甘味料が食品に使用されており、低カロリー、低う蝕性、腸内環境の改善など甘味料の使用目的が多様化している。本研究では数種の甘味料を用いてカリンおよびマルメロエキスゼリーを調製し、その着色と食味特性について検討した。
    【方法】群馬県産カリンおよび長野県産マルメロ果実の芯部分を除去して薄切りし、水さらし後、水を加えて30分間加熱して抽出液を得た。抽出液に上白糖、マルトース、グルコース、フルクトース、キシリトール、パラチノースなどの甘味料を果実の30%添加して最終濃度50%になるまで煮熟しエキスゼリーを調製した。煮熟中それぞれ15分ごとに分光測色計にてL, a*,b*値を、分光光度計にてスペクトルを測定した。さらにそれぞれのエキスゼリーを希釈したジュースを調製し、7段階尺度の評点法による官能評価を行った。
    【結果】抽出液に上白糖を添加し調製したカリンエキスゼリーでは、経時的に赤色を示すa*値が上昇し、最終濃度におけるスペクトルは390および500nmに強い吸収が見られた。一方マルメロエキスゼリーでは、黄色を示すb*値が経時的に上昇し、可視部における強い吸収は見られなかった。官能評価ではカリンジュースの赤み、渋み、酸味の評価が有意に高く、甘味ではマルメロジュースが有意に高かった。糖度・濃度計(Brix)による測定ではカリンジュースの方が高い値であったが、カリンの持つ渋みや酸味にマスクされ甘みの感度が弱まることが示唆された。甘味料の違いによる着色では、マルメロは有意な差は見られなかったが、カリンはフルクトースを有する甘味料の添加が着色に大きく影響することが明らかとなった。
  • 佐藤 佳織, 横山 恵, 阿部 真弓, 鈴木 惇
    セッションID: 1P-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    目的:カボチャの皮層の細胞には、脂質が存在している。ほかの野菜においても皮層に脂質が存在するかを確かめるために、本研究をおこなった。
    方法:材料は、市販のカボチャ、キュウリおよびレンコンを用いた。これらの材料から、皮層の部位(1㎝角)を切り取って試料とし、これらをドライアイス・アセトンで急速凍結した。凍結試料をコールド・ミクロトームで薄切して、切片(厚さ:16μm)を作製した。未固定の切片およびカルノアの液(エタノール8:酢酸2)で固定した切片を、脂質を染めるズダン・ブラックBで染色した。糖質を染める過ヨウ素酸・シッフ液で、ほかの切片を染色した。
    結果:過ヨウ素酸・シッフ染色では、カボチャ、キュウリ、およびレンコンの表皮および皮層の細胞の細胞壁および糖質が染まった。カボチャおよびキュウリにおいて、未固定の切片の表皮および皮層の細胞がズダン・ブラックBで染まった。固定した切片では、表皮の細胞だけが濃く染まった。レンコンの未固定の切片では、皮層に相当する部位が、ズダン・ブラックBに染まらず、レンコンの未固定および固定した切片ともに、表皮の細胞だけが、ズダン・ブラックBで染まった。カボチャとキュウリにおいて、固定した切片で皮層がズダン・ブラックBで染まらなかったのは、存在した脂質がエタノールに流出したことを示す。未固定のレンコンでズダン・ブラックBに染まらなかったのは、皮層に相当する部位には、脂質が存在しないことを示す。固定した切片で、表皮がズダン・ブラックBで染まり、同じ部位の表皮が過ヨウ素酸・シッフ染色でも染まったことは、表皮に糖と脂質が結合した糖脂質が存在することを示唆する。
  • 片山 佳子, 増田 桃子, 加藤 円佳, 榑林 雅貴, 元木 悟
    セッションID: 1P-21
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】近年、消費者の健康志向が高まり、機能性成分を多く含む野菜が注目されるようになってきた。欧米では定番野菜であるヒユ科植物のレッドビートは、ベタレインを多く含有していることが知られており、抗酸化能はアスコルビン酸よりも強力であると報告されている(前田,2009)。そこで本研究では、レッドビートの成長時期別のベタレイン含量の比較を行うとともに、抗酸化活性との関係を明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料は、明治大学生田キャンパスの露地圃場で収穫されたレッドビート(デトロイト・ダークレッド)の春播き(3月下旬)の可食部である肥大根(抽根期、適期、過熟期)を使用した。ベタレイン(ベタシアニン、ベタキサンチン)含量の測定は、試料溶液を分光光度計(UVmini-1240,SHIMADZU社製)を用いて吸光度を測定し含量を算出した。抗酸化活性は、ラジカル消去能をDPPH法により測定した。またDPPHラジカル消去能はTrolox相当量として算出した。

    【結果】ベタシアニンおよびベタキサンチン含量は抽根期が最も高く、次に過熟期、そして適期の順であり、過熟期と適期ではあまり差が見られなかった。DPPHラジカル消去能は抽根期が最も高く、次に適期、そして過熟期は最も低い値となった。また、両者の関係を見たところ、ベタシアニンおよびベタキサンチンの2種のベタレインとDPPHラジカル消去活性との間には高い正の相関関係が認められ、レッドビートの抗酸化活性はベタレイン由来によるものであることが示唆された。まだ日本では馴染みの少ないレッドビートではあるが、高い抗酸化活性を有している野菜であるため、今後のさらなる消費拡大に繋がればと考える。
  • 今井 峻平, 多田 麻理, 田口 巧, 元木 悟, 片山 佳子
    セッションID: 1P-22
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】アスパラガスは、ルチンなどの機能性成分を多く含み、抗酸化活性の高い野菜の一つである。収穫調製後の若茎の重量が大きく、茎径が太いものほど高単価で取引されている。本研究では、一般的に広く流通しているグリーンアスパラガスに加え、グリーンに比べてルチンなどの機能性成分に優れ、今後の需要増加が期待されるムラサキアスパラガスの規格別および収穫時期別の抗酸化活性を検証した。

    【方法】供試材料は、明治大の露地圃場で栽培した‘ウェルカム’(グリーンアスパラガス)および‘満味紫’(ムラサキアスパラガス)の2L、L、MおよびS級規格の若茎を分析対象とした。糖度はデジタル糖度計、アスコルビン酸はRQフレックス、破断応力は小型卓上試験機で測定した。抗酸化活性は、ラジカル消去能をDPPH法により測定した。また、DPPHラジカル消去能はTrolox相当量として算出した。

    【結果】抗酸化活性は、‘ウェルカム’の春どりではS級がほかの規格に比べて有意に高く、夏秋どりでは春どりに比べて規格間差が小さかった。‘満味紫’はいずれの収穫時期においても、S級がほかの規格に比べて有意に高かった。アスコルビン酸は、S級がほかの規格に比べて有意に高く、糖度では規格間差が確認できなかった。破断応力は、‘ウェルカム’では細い規格ほど低い傾向であったが、‘満味紫’では規格間差が確認できなかった。以上の結果、‘満味紫’は収穫時期に関わらず、S級が小売店などで広く販売されているLやM級に比べて高い抗酸化力を有することが明らかになった。そのため、出荷可能な重量に満たずに廃棄される細い若茎においても、機能性食品の素材としての利用価値がある可能性が示唆された。
  • 孟 琦, 北川 莉帆, 今村 美穂, 片山 弘, 小幡 明雄, 菅原 悦子
    セッションID: 1P-23
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    目的:我々は、近年販売されている火入れをしていない醤油(生醤油)の香気特性を調べ、2012年の本大会で発表した。また、醤油はみりんや砂糖を添加した醤油調味液として使用されることが多いことから、醤油調味液の加熱香気変化についての研究成果は2013年の本大会で発表した。そこで、本研究では、製造法の異なる醤油を使用した調味液の調理加熱による香気成分の変化の特徴を解明することを目的とした。

    方法:製造法の異なる醤油として、生醤油とそれを火入れした醤油(濃口醤油)を用いた。調味液は、醤油:みりん:砂糖を3:2:1の容量比で混合して調製した。醤油調味液中の香気成分はジクロロメタンを用いて抽出した香気抽出物をSAFE (Solvent Assisted Flavor Evaporation)法により精製した。これらの香気成分の精製は調理加熱前後の醤油調味液で行い、それぞれの香気濃縮物をAEDA( Aroma Extract Dilution Analysis)法によって香気成分の特徴と強度(FDf:Flavor Dilution factor)を評価した。

    結果:生醤油調味液から感知できた香気成分数は調理加熱後に減少したが、火入れ醤油調味液では感知できた香気成分の数に大きな変化はなかった。感知できた香気成分を分類したところ、生醤油調味液では「甘い」、「不快臭」や「スモーク様」の数は加熱後に減少し、「香ばしい」の数は加熱後に増加した。一方、火入れ醤油調味液では大きな変化はなかった。AEDAの結果、生醤油調味液では調理加熱前後でFDfが最も高かった香気成分である4-hydroxy-2(or 5)-ethyl-5(or 2)-methyl-3(2H)-furanone (HEMF) のFDfが低下したが、火入れ醤油調味液では変化しなかった。生醤油を用いた調味液の調理加熱による香気成分変化の特徴をさらに解明し、それぞれの特徴を活かした調理への活用の検討が必要である。
  • 小林 由実, 澤入 駿哉, 根岸 晴夫, 宮田 茂, 山中 なつみ, 小川 宣子
    セッションID: 1P-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    【目的】海津市は富有柿の生産が盛んであるが、規格外のものは廃棄される。そこで、廃棄される富有柿を利用した柿酢製造方法を検討することとした。これまで、柿酢を製造するために海津市産の富有柿から酵母菌と酢酸菌を分離し、アルコール発酵能の高い酵母菌と酢酸発酵能の高い酢酸菌の菌種の同定を試みた。酵母菌はPichia kluyveriと判明したが、酢酸菌は約800 bpの16S rDNA領域の解析のみでは属名の特定(Gluconobacter属)に留まり、菌種の同定には至らなかった1)。本研究では酢酸菌の菌種を同定し、それを用いた柿酢の製造を繰り返し行い、安定した品質の柿酢製造方法を検討した。
    【方法】1)酢酸菌の菌種同定:①約1.4 kbの16S rDNA領域をPCRにより増幅した。②16S rDNAと23S rDNAの間のinternal transcribed spacer領域をPCRにより増幅した。①と②で得られたPCR産物のシークエンスを決定し、相同性解析を行った。2)柿酢の製造:海津市産の規格外の富有柿に分離した酵母菌、酢酸菌を接種し柿酢を製造し、製造過程の糖度、酢酸濃度を測定した。
    【結果】1)酢酸菌の菌種同定:①のDNA断片では菌種の同定に至らなかったが、②のDNA断片よりGluconobacter albidusであると考えられた。2)柿酢の製造:柿表面の菌数を無菌レベルまで低減させ酵母菌を接種し、糖度の減少が横ばいになった後、酢酸菌を接種し、酢酸濃度をモニタリングすることで安定した品質の柿酢が製造できると考えられた。
    [文献]1)小林他:日本調理科学会平成28年度大会研究発表要旨集、p110(2016)
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