菌類の植菌によるカシノナガキクイムシの羽化脱出防止効果を検討するため,カシノナガキクイムシの穿入を受けて枯死したミズナラ樹幹部に,シイタケ菌(東北S10,森121),Beauveria bassianaおよびTrichoderma sp.を植菌し,植菌木からの脱出数を無処理木や菌類を植菌しないドリル穿孔のみの調査木からの脱出数と比較した。その結果,東北S10またはTrichoderma sp.の植菌には羽化脱出防止効果があることが示唆された。また,同じシイタケ菌でも,品種により羽化脱出防止効果に差があることが示唆された。ドリル穿孔のみの調査木からの脱出数が少なかったのは,ドリル穴から水分が蒸発し,高含水率を必要とするカシノナガキクイムシの繁殖が阻害されたためと推察された。B. bassianaを植菌しても脱出数が減少しなかったのは,B. bassianaが虫体に接触しなかったためと推察された。カシノナガキクイムシ以外の昆虫の脱出数を調査した結果,菌類の植菌によって脱出数が大きく減少した種類はなかった。また,東北S10の植菌は,被害木から子実体が収穫できることから,被害木の有効な利用法となる可能性もある。
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