Print ISSN : 0016-450X
46 巻, 4 号
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  • 宮地 徹, 北村 且, 妹尾 亘明, 小田 富雄, 村田 吉郎
    1955 年 46 巻 4 号 p. 523-547_8
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    本文中に記した各大学および病院の好意によって, 気管支癌の剖検例388と手術例18を集めえたので, それらについて主として形態学的研究をおこなったのが本論交である。まず肉眼的分類をおこない, ついで組織学的には, 扁平上皮癌, 腺癌, および未分化細胞癌に大別し, さらに腫瘍細胞の分化程度と形熊を考慮してくわしく分類した。この詳細は北村によって発表されるが, 仮に低分化性腺癌とよぶ腺癌がかなり多数をしめ, これは従来扁平上皮癌のあるものあるいは未分化癌にいれられていたと考えられる。したがって, ここに集めえた例のうちで充分な組織学的検査をおこないえた369例では, 腺癌36.9%, 扁平上皮癌32.0%, 未分化癌31.4%となり, 腺癌がもっとも多数をしめている。結核との共存は53例にみられたが, その関係について簡単にふれておいた。転移については, くわしい研究が妹尾によって発表される予定であるが, ここでは300例について, 組織像と転移臓器および転移リンパ節との関係をのべた.
  • 木村 勇
    1955 年 46 巻 4 号 p. 549-566_4
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    腫瘍組織の発育像はその悪性度診断の上に重要な所見とされているが, 炎症におけると同様 Host-parasite Relationship 追究の要請されねばならぬことはすでに諸家の触れる所である。かかる二重の生物学的見知に立ち人胃癌発育の態度とともに同所間質内多糖類の所見を組織化学的に検索を行った。
    腫瘍は同一例にあっても部位環境によってその組織橡並びに発育型を異にするが, 間質多糖類の所見もまた腫瘍の発育環境, 発育型の変化に伴って変動し, この種反応が個体の腫瘍に対する全体的表現でなく, 局所的な腫瘍, 間質間の相互関係に規定せられると同時にまた該部位の膠原繊維の所見と密接なる関係を持つことが認められる。その個々の部位における反応態度を同所の膠原繊維の所見と併せわれわれは次の如き四型に分ちこれを整理した。
    1) 無反応型; 多糖類反応陽性物質 (PSP) の増量が顕著でなく, 膠原繊維もまた増生を見ない。
    2) 多糖類型; 膠原繊維の新生は極めて乏しく, 一部に既存繊維の膨化が見られ, かつPSPの増量顕著なるもの。
    3) 多糖類繊維型; 前者と次の繊維型との移行型と考えられるもので, PSP増量とともに微細膠原繊維の増生が見られる。
    4) 繊維型; 膠原繊維の増生, 生長著しく, PSPはむしろ減少している。
    多糖類の重合度を示す異染性は多糖類型に強く, 他の型に属すべき反応部にては極めて微弱であり, 中馬の成績と比較考案し, これらの諸型は反応の時間的経過に因るものと考えられる。以上の諸型を腫瘍の発育型 (今井) に対応せしめると肥大発育部は無反応型を, 延伸発育部および簇出発育部にてはその時間的経過に応じて多糖類型, 多糖類繊維型を示し, とくに簇出発育部位ではしばしば多糖類型を示し, 腫瘍の発育型と多糖類性反応の間には一連の関連を求めることができる。
    これらPSPの増量は腫瘍発育先進部および近隣血管周囲より起り, 前者については中馬の述べるが如き局所基質の解重合に基くPSPの増量とともに, 血液成分由来のPSPの存在もまた考慮せしめられ, 瘢痕部, 筋層における多糖類性反応の微弱なる事は同所の血管保有量の乏しい事にも依るものであろうか。
    之等PSPの増量刺戟として, 腫瘍の異物性, 腫瘍発育に伴う組織の離断, 並びに膠様物質の化学的刺戟よりむしろ近時多数報告されつつある腫瘍組織の産生する諸組織融解性酵素(Hyaluronidase, Trypsin 等) を重視したい。
    最後に組織化学的な基礎的問題として, 水溶性固定剤によっても青木の分類せるγ物質を証明し得たとともに, その成績から可溶性固定液を使用しても被検物質が巨大分子の一部を形成せる場合は基材の困定が同物質の固定に他ならないとの Lison の考えを支持したい。なおフォルマリン固定液を使用せる場合は間質多糖類は結合織繊維上に附着凝集して認められ, 純アルコール固定時の瀰漫性な徴細顆粒状像とその所見を異にする。
  • 武田 勝男
    1955 年 46 巻 4 号 p. 567-584
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    癌細胞に特殊な抗原性が存するか否かを11系のラッテ腹水癌をマウスに異種移植して検した。用いた腹水癌は形態機能的にI) 吉田肉腫型 (吉田肉腫, MTK 1-3, 弘前肉腫), II) 武田肉腫型 (武田肉腫, 臼淵肉腫), III) 肝癌型 (AAT 1, 2, DAB 1, 2) の3型である。
    これらの腹水癌をマウス腹腔に移植すれば5日前後(肝癌では8日)よく増殖し後免疫の発生によって急激に自然治癒し, その後は同癌の再移植, 同型癌の交又移植を300日以上強く阻止して take されない。しかし異型の腹水癌を交叉移植すれば治癒後50日までは明かに移植は阻止されるがそれ以降の移植は正常マウス同様阻止されない。対照として感受系ラッテ組織でマウスを免疫すれば30日間はすべてのラッテ腫瘍の移植を共通に阻止するが以降の移植はいずれも正常マウスに等しい。
    すなわちラッテ癌自然治癒後の抗移植性免疫は 1) 短時日すべてのラッテ癌移植を共通に阻止する正常ラッテ組織免疫とも共通な種属特異性免疫と 2) 長期間上記3腫瘍型間に独立した抗移植性を示すラッテ正常組織と無関係な抗原に基く腫瘍型特異性免疫の2つの因子からなる。
    ラッテ各癌を凍結乾燥, 凍結融解してマウスを免疫すればすべてのラッテ癌移植を共通に20日間阻止し, 正常ラッテ組織を同様に処理して免疫しても同一の結果を得る。すなわちかかる方法で腫瘍型特異抗原性は低下し, 種属特異抗原性は安定である。
    しかるにラッテ癌を5%のフオルモールあるいは5%の三塩化醋酸処理後水洗してマウスを免疫すれば免疫原癌と同型の癌移植を20-30日間強く阻止するが, 異型癌の移植ははじめから正常マウス同様に成立する。対照として感受系ラッテ組織を同様処理して免疫しても各癌のtake は阻止されない。すなわちかかる処理では逆に種属特異性因子は消失して腫瘍型特異性因子のみが残り, 両抗原因子はその性状を異にすることを知る。
    以上の事実からラッテ腹水癌細胞にはラッテ正常組織と共通な抗原性がある他になお各癌に特異な抗原性があり, この後者は同一の形態機能を有する一定の腫瘍型間にのみ共通で, 正常組織および他型癌から独立した特殊な抗原性であると思われる。
  • 中川 諭, 小菅 高之, 徳中 弘之
    1955 年 46 巻 4 号 p. 585-596
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    癌組織より注射することにより, 廿日鼠の肝カタラーゼを減少せしめる物質を分離した。
    1. 組織を減圧加熱, 加溜水加熱抽出後, アルコール, 硫酸銅処理を行い, さらに三塩化醋酸にて主核酸部分と主蛋白部分に分離した。分劃物は分劃が進行するにつれ, より少量で肝カタラーゼ活性度を減弱せしめた。すなわち最終産物の主核酸部分 (KNAと名付けた) は, 0.1mgで有効 (他方, 主蛋白部分は1.5mgでも無効) であった。
    2. KNAは雪白色の粉末で, 水溶性 (溶液は無色透明) にて, その0.1%水溶液は, ビューレット反応, ニンヒドリン反応およびヂフェニールアミン反応陰性にて, モーリッシュ反応, オルチン-塩酸反応強陽性である。紫外線吸収試験により260mμ附近に最大吸収を示した。よってKNAは, リボ核酸を主体とし, 微量の蛋白を含有する (クロロホルムゲル法にて僅微の蛋白の存在を認めた) 物質と考えられる。
    3. 非癌の上皮細胞組織からの分劃では, 硫酸銅処理にて収量が極めて減少し, KNA相当分劃物の収得は未だ成功していない。
    4. 市販のRNA, DNA注射群では, 肝カタラーゼ活性度に無影響である。
  • 梅田 真男
    1955 年 46 巻 4 号 p. 597-604_2
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    現在まで非発癌物質とされていた m-Toluylenediamine の0.4% Propylene Glycol Solution を白鼠の皮下に反復注射することによって (注射量•1週間1回, 0.5cc宛), 8ヵ月以上生存した9匹の白鼠のうちの9匹 (発癌率•100%) に肉腫を発生せしめた。
  • 酒井 純雄, 蓑田 健二, 斎藤 伍作, 赤木 仙平, 上野 明, 福岡 文子
    1955 年 46 巻 4 号 p. 605-616
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    われわれはNF肉腫を用うる in vitro の方法で多数のキノリン誘導体の制癌作用を検して 4-nitroquinoline-N-oxide, 4-nitro-2-alkylquinoline-N-oxide および 6-bromo-4-nitroquinoline-N-oxide が極めて強い制癌作用を有することを発見した。更に Ehrlich 腹水癌を使用して延命効果を観察するに 4-uitroquinoline-N-oxide は7mg/kgで 6-bromo-4-nitroquinoline-N-oxide は3mg/kgで 2-ethyl-4-nitroquinoline-N-oxide は8mg/kgでそれぞれ対照より28.3日, 26.7日および35.8日延命している。Ehrlich 癌 (固型) に対しても之等化合物は対照に比して相当発育を抑制している。
  • 小野 哲生, 杉村 隆, 梅田 真男
    1955 年 46 巻 4 号 p. 617-630
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    腫瘍のアセトン乾燥粉末を氷醋-メタノール (2:3) で加熱抽出し, トキソホルモン作用を呈する一分劃を得て O-Fraction と仮称した。ローダミン肉腫 (梅田) よりのものは, 20mgで, 移植肝癌 (ラッテ), NF肉腫よりのものは40mgでマウスの肝カタラーゼを低下せしめ, さらに注射24時間後で胸線を著明に萎縮せしめた。
    ローダミン肉腫よりの一標本をアルコール分劃し4つの分劃を得た。各分劃はいずれも胸腺萎縮作用を示したが, 肝カタラーゼ低下作用は第3の分劃にのみ認められ10mgで有効であった。
    以上各腫瘍よりの O-Fraction は燐酸定量及び紫外部吸収試験で核酸をふくまないことが確認されたので, 同じ抽出法を粗製トキソホルモン (アルコール沈澱の段階) に応用して同様に核酸を含まない10mgで有効な分劃を得た。このものは胸腺には注射24時間後では影響を示さなかった。
  • 森 和雄, 一井 昭五, 重田 吉輝
    1955 年 46 巻 4 号 p. 631-635_4
    発行日: 1955/12/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    メチルコランスレンを乳剤として白鼠に経口的に与え, その腺胃部に腺腫様過形成が生成できることは前報で示した通りである。本報ではメチルコランスレンをやや大量に動物に与えることによって前回より確実にかつ短期間に胃腺腫が生成されることを記載した。就中1例では胃粘膜の腸上皮化生を伴う腺腫様変化がみとめられた。さらに他の1例では結腸に腺癌の形成がみとめられた。
  • 1955 年 46 巻 4 号 p. e1
    発行日: 1955年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
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