著者は, 1947年以来, 兄妹交配をつづけて新しく乳癌好発系ハツカネズミを分離した。この系に自然発生した乳腺腫瘍を組織学的に検索して, 主に乳管から発生した乳管型, 腺房から発生した腺房型, 後者から化生をおこした化生型などの癌に分類し, これらに非上皮性腫瘍としての肉腫を加えた。
この分類をもって, 著者の系, RF, C3H/He, DBA2, C3H/N及び市販雑系ハツカネズミの腫乳腺腫瘍を比較すると, C3H/He系では腺房型が多く, 著者の系では乳管系が多いのがめだった。
また, 幼若な動物には乳管系が多く, 老年動物では腺房型が多い。担腫瘍動物が妊娠すると腺房型となることが多い。転移は, 腫瘍年齢 (腫瘍が発生してから動物が死亡するまでの期間) に比例して高くなる。そして, 腺房型に比べると, 乳管系の転移率はやや高い。腺房型の腫瘍でも転移巣では乳管型を示す傾向があり, 腫瘍摘出後に再発した腫瘍も乳管型が多い。また, 移植をつづけると腺房系の要素が失われる。こうしたことから, 乳管型腫瘍は分化の程度が低く, 増殖力がつよいと考えられる。
移植は, 乳管型, 腺房型のいずれでもできるが, そのつくか, つかないかは遺伝的関係によって左右され, 組織適合性 (histocompatibility) の限界をこえることはない。
著者の系からえた移植性腫瘍MK-7は, 25代にわたって継代移植できたが, ついに腫瘍細胞の壊死によって移植性を失った。この組織像から, 間質のもつ腫瘍増殖に関する役割に言及した。
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