Print ISSN : 0016-450X
49 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 1. 動物実験
    塚本 憲甫, 北川 俊夫
    1958 年 49 巻 1 号 p. 1-4_1
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    ラッテの大腿部皮下に移植した吉田肉腫に, ラジゥムを用いて長時間連続照射を行い, 照射後摘出した腫瘍組織の活動性腫瘍細胞数を時間の経過に従って Glucksmann の方法により算定し, 一曲線を得た。この曲線より, 照射後, 腫瘍の致死的効果が充分現われるのに少くとも3週日を要することが分った。
    すなわち放射線照射後, その腫瘍に対する致死的効果を論ずるためには, 少くとも3週日以上経過していなくてはならないことを知った。
  • 2. 臨床実験
    塚本 憲甫, 北川 俊夫
    1958 年 49 巻 1 号 p. 5-8_9
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    先にわれわれは動物実験により, 吉田肉腫のラジゥム照射後の致死的効果が充分に現われるには少くとも3週日を要するという結果を得たが, 臨床上, しかもX線の分割照射を行った場合にも適応できるか否かを, 前実験と同様の方法で皮膚癌19例に対して行った。
    その結果, 臨床実験においては, 再発は, その照射方法の如何にかかわらず, 組織細胞学的にすべて照射後より2.5週後まで起っており, これにより人癌 (扁平上皮癌) の放射線治療後の腫瘍の致死的効果は少くとも2.5週日経過した後に始めて論ぜられるべきであることを知ったのである。
  • 北川 俊夫
    1958 年 49 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移癌の治療は従来ほとんど手術的に行われ, 放射線による治療は著明な進歩を示していない。著者は鉛板で周囲の皮膚, 軟部組織を蔽い, これらを放射線より防護することにより, すなわち小照射野法を用いて目的を達したが, この方法を用いた場合, 与えるべき線量およびその適応についてさらに研究を行った。
    すなわち3~5週日内に平均7000rを与えるのが最適であり, 転移リンパ節の長径が3cm以下のものにだけ, この治療法を適応する意義があることを知った。
  • 塚本 憲甫, 北川 俊夫
    1958 年 49 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    われわれは1946年より1955年までの間に治療した皮膚癌の155例を, 一般性状の特に興味ある2, 3の事項について分析するとともに, 主として放射線治療成績を対象として検討を行った。すなわち
    1. 誘因としては火傷, 創傷が最も多く, 身体の露出部に発生率が大であり, 眼瞼, 口唇にては下部のものに特に多く発生している。
    2. 組織学的には, 欧米では基底細胞癌が最も多いのに対し, 扁平上皮癌が最も多く, また基底細胞癌が最も予後がよい。
    3. ラジゥムを用いての治療の場舎は3~5週日に, 平均8000rを腫瘍に与えるのが最適と考えられる。
    4. 皮膚癌は体表に存在するため治療が比較的容易である如く考えられるが, 現在のわが国においては, 欧米の報告にあるものよりも, 初診時すでに臨床進展の進んだものが多いので, その治療はなお楽観を許さないものがある。
  • 塚本 憲甫, 北川 俊夫
    1958 年 49 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    われわれは1946年より1955年までの間に治療した97例の甲状腺癌症例を, 主として放射線治療の見地から分析考察して次の結果を得た。
    1. 5年生存率は16%であった。
    2. 放射線感受性の高い腫瘍は, その低いものより予後が悪い。
    3. 臨床進度I度のもに対しては, 手術に放射線照射を併用して100%の治癒率を得ているが, II, III度の症例においては放射線だけを用いて治療したものと, 手術との併用治療したものとの治療成績に明らかな差異を認めないので, 現在われわれはII, III度の症例には放射線のみによる治療を行っている。
    4. 治療を始める前に組織学的性状を確めることは, 診断の確認, 放射線感受性の推測, 予後の推定上特に重要である。
  • 梅田 真男
    1958 年 49 巻 1 号 p. 27-31_2
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    Scarlet red による発癌実験は1906年 Fischer がオリーブ油にとかして, ウサギの耳の皮下に注射して上皮の異型増殖をみたのがはじまりで, その後山極らが鶏輸卵管上皮性腫瘍, Schmidt, Korteweg らが肝腺腫, Maisin, Picard, Puccinelli らが乳嘴腫を作ったにとどまる。私は先の実験の m-toluylenediamine が溶媒を propylene glycol にすることによって, ラッテの皮下に100%肉腫ができたことにかんがみ, 最近 Truhaut らによって tumor promoter といわれている Tween を Scarlet red の溶媒として用いた結果, 8匹のラッテのうち4匹に皮下肉腫を発生することができた。
  • 中原 和郎, 福岡 文子, 酒井 純雄
    1958 年 49 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    4-Nitroquinoline N-oxide が極めて強力な癌原性を有することは前報に発表した。今回はそれに近似の8種の誘導体について発癌実験 (簡井法) を行い, 化学構造と癌原性との関係を検討し (1) 4-nitroquinoline N-oxide の2 (あるいは6) 位にCH3, C2H5あるいはCl基を導入しても物質の癌原性に大なる変化は起らないが, (2) 4位のNO2基と1位のO原子とは絶対必要で, そのいずれかを欠くと癌原性が失われることを見出した。
    このような簡単な二核化合物の強力な癌原性が, このNO2基とO原子とによって規定されているという知見は, われわれの展開しつつある発癌機構論の具体的な出発点を成すものである。
  • 福井 謙一, 永田 親義, 米沢 貞次郎
    1958 年 49 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    著者らは, さきにπ-電子をもつ発癌性物質について, 著者らの提出したフロンティアー電子理論を用いて, 電子状態と発癌性との関連をしらべ, その間に顕著な並行関係の存在することを見いだしたが, 同じように, 安息香酸誘導体のような植物生長素性物質の電子状態とホルモン活性との間にも密接な関係があることを知った。
    本論文では, これらの物質の電子状態とホルモン活性との関係を簡単に述べ, これが, 発癌性物質と, その作用機作および活性中心に関して極めて強い類似性をもっていることを指摘し, これらの関連を論じた。すなわち, 反応様式は, 生体内の求核的反応基 (ここではSH基) との反応であると考えられ, また反応中心としては, 発癌性物質の主発癌団, 副発癌団に対応して植物成長素性物質にも二つの活性団 (これを著者らは Principal auxiuophore, および Subsidiary auxinophore とよんだ) が考えられたが, これらの作用機作は極めてよく類似している。
  • 大出 浩
    1958 年 49 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    1. 肝臓の一部を切除したラッテの脾臓内に, 10mgのニコチン酸アミドを, 単独で, またはカーボワックスとともにペレットにして埋植した。処理後, 24時間吃経ても, 再生肝のピリジンヌクレオチドの含量は増加しており, 同時に核分裂像が著しく減少しているのが観察された。
    2. 肝臓の切除を受けぬラッテを, 10mgのニコチン酸アミドで処理した場合には, 処理を受けぬ対照群に比して, その肝臓のピリジンヌクレナチドの含量はほとんど変化が認められなかったが, 核分裂像は非常に減少しているのが観察された。
    3. 組織中のピリジンヌクレオチドの含量と, その組織の核分裂能との間の関連性について論議された。
  • 市川 康夫, 天野 重安
    1958 年 49 巻 1 号 p. 57-64_4
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    C3Hの乳癌細胞中に特有の封入体と増殖様式とを示すウィルスの発現することは, もはや, 確認されているが, このような乳癌発生系に属しない系統のマウスに認められる特発性のマウス乳癌においても, 同様に, ウィルスが存在するかは別の重要課題である。白血病頻発マウスSL系の飼養観察中に, 極めて稀であるが, 乳癌の発生を認めて, これを電顕的に超薄切片によって観察中, 形態•大さにおいて全く Milk factor 類似のウィルス (50~70mμ×75~100mμ大にて核様物を備える) を確認した。このウィルスは癌細胞腺腔面の細胞膜直下で生じ, 直ちに腔内に排出されるが, 鈴木氏がC3H, DBA系で示した如き細胞内封入体や, 細胞内増殖集団は作らない。従ってその増殖様式は Morgan 等のインフルエンザウィルス増殖の形式に従うものといえよう。しかしながらわれわれの場合, ウィルスを作る細胞小突起には軸の位置に中心繊状物があり, この中心繊状物の一端はウィルスが完成して細胞小突起の尖端から離断する際にその中に含まれ核様体となる。これは該ウィルスの外内構造の二元性を物語るものである。ウィルスが癌性増殖に関与するためには, 核内増殖では不適当であり, 細胞質においても大規模な増殖巣を作ることは, むしろ腫瘍増殖を妨害することになる。この度のわれわれの腫瘍ウィルスの如き増殖形式は腫瘍の発現のために一つの適当な存在様式と解される。腫瘍性ウィルスの増殖様式自体が一つの研究課題であるとき, この一例の所見は動物および人の腫瘍ウィルス探索上一示唆を与えるものであろう。
  • H. L. SARKAR, R. DUTTA CHAUDHURI
    1958 年 49 巻 1 号 p. 65-68_1
    発行日: 1958/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    印度産ナマズの1種 Wallago attu に見出された骨形生性線維腫の1例を記載し, その組織発生を論議した。
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