Print ISSN : 0016-450X
45 巻, 4 号
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  • 太田 邦夫, 田中 良
    1954 年 45 巻 4 号 p. 567-579_4
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    子宮頸部癌の組織発生については, 従来扁平, 円柱上皮境界が重視され, ことに扁平上皮に重点が置かれて来た。また円柱上皮起原を重視する学者中にも, まずその扁平上皮化生があって, そこに発癌するとの解釈が多数を制する傾きを示してきている。これに反して著者等は例の早期癌手術子宮中, 26例の上皮内癌をも含め, その原発部位が, 主として円柱上皮領域内にあること, 円柱上皮癌の癌化後の化生的機転が, 子宮癌に最も頻度の高いいわゆる「類表皮癌」の組織像に導くものであること, の二つの具体的証拠を提出して, 子宮頸部癌の発生母地中, 円柱上皮起原を強調する。進行した101例の癌についても同様の結論が適用できることを認めた。
  • 太田 邦夫, 松本 昭三
    1954 年 45 巻 4 号 p. 581-590_5
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    ある発癌の場においては, 発癌は多中心性に行われるにもかかわらず, 通常発達した癌は一個の結節を形成し, 形態学的特徴, 移植上の態度から単一腫瘍と看做しうる場合が多い。著者らは多中心性に生じた初期癌が発達した単一の癌塊として認められるに至る過程において, 二種以上の癌巣間の衝突並びに一つの癌による他の癌の圧迫を, dimethyl-aminoazobenzene ネズミ肝癌実験によって実証することができた。多中心性発癌が単一癌塊に発達するには, 優勢な一種の癌による劣勢の癌の征服が行われる。優勢な癌による劣勢な癌の同化 (Assimilation) なる機転は証明されなかった。
  • 太田 邦夫, 松本 昭三
    1954 年 45 巻 4 号 p. 591-599_3
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    木下 (1937) 以来, dimethyl-aminoazo-benzene ネズミ肝癌実験において, 間葉性反応の著しいことが注目されてきたが, これについての詳細な記載は不足していた。著者らは, 米及び高脂肪食を基本食餌として行った同実験について, 間葉性反応を分析記載し, ことに軟骨島の出現と, 間葉性反応一般並びに肝癌上皮成分との相関関係について論じた。軟骨島は肝癌51例中8例において見られ, 一例では移植一代にも現われた。また一例の癌肉腫についても記載した。すべて上記の例に著しい間葉性増殖が認められ, 幼若型から種々の段階の分化をも追求できた。軟骨島が, 腺管形成のある癌組織に直接する間質に認め得られたことは, 癌上皮の間葉分化誘導を示唆すると思われる。
  • 附: 発癌過程におけるSH基結合説について
    田頭 勇作
    1954 年 45 巻 4 号 p. 601-618_2
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    1938年,西山氏が濃厚葡萄糖皮下注射による肉腫発生に成功して以来,糖原,乳糖,果糖の如き生理的に重要な糖類についてもその発癌性が相次いで知られるようになった。しかしその発癌の機序に関しては今日ほとんど追究がなされていないといって過言ではない。そこでわれわれは,葡萄糖が生体内で分解をうけるに当り,如何なる段階のものが発癌に関与しているかを明かにするために,糖代謝酵素系の中断を行うと考えられるフツ化ソーダまたは沃度醋酸を葡萄糖と同時に負荷することによって,およそ葡萄糖の三炭糖に分解される以前の段階が発癌に与っていることを明かにした(第I報)。しかしこの実験においては,O-アミノアゾトルオールを発癌促進剤として葡萄糖,沃度醋酸と同じ注射部位に適用したため,この三者が発癌に際して,相互に如何に作用し合っているかをさらに検索することが必要となった。そこで下記の如く,前後二回にわたって発癌実験を試み,若干の結果を得たが,それらの相互作用については確定的な結論を見出すには至らなかった。しかし他方,これ等の実験において沃度醋酸単独でラッテの皮下に肉腫を発生せしめ得ることが明かとなり,その発癌機構の考察により,広く一般の発癌性物質にまで及ぼし得る発癌の生化学的過程の第一段階を新たに想定することができた。
    第I実験右背皮下左背皮下
    I群葡萄糖+沃度醋酸O-アミノアゾトルオール
    II群葡萄糖+沃度醋酸
    III群沃度醋酸各群8例
    葡萄糖は20%水溶液とし沃度醋酸は0.4gr./dl.水溶液としてそれぞれ1cc,0.5cc隔日に注射,OATは5%オリーブ油溶液として0.5cc隔週に注射した。注射期間は3カ月,その後は単に飼育するにとどめた。
    第I群では200日以上生存せるものは7例で,その中3例に実験日数230~290日でOAT注射部位に一致して肉腫(血管内皮腫1例,繊維肉腫2例)を発生せしめ得た。第II群では300日以上生存せるものは7例で,最高676日まで生存せしめ得たが注射部位に肉腫の発生せるものは1例もなかった。489日で斃死した1例は膵間質に細網肉腫が組織学的に証明せられたが発癌物質の作用によるものとは決定し難く,寄生虫との関係も否定し得なかった。第III群では500日以上生存せる3例の中1例に沃度醋酸注射部位に一致して繊維肉腫を生じた(実験日数549日)。以上の結果から,かかる条件においては葡萄糖,沃度醋酸の併用注射は,動物に発癌に必要な全身的要約を与え,OATは局所的要約を与えると考えられ,また3カ月という短い注射期間でも発癌には充分有効であると考えられた。さらに1例ではあるが沃度醋酸単独で注射部位に肉腫を発生せしめ得たことは,該薬物の発癌性を予想せしめるものとして興味深い。
    第II実験
    第I実験では注射期間は僅かに3カ月であったが,本実験においては注射期間を1カ年とし,かつ多数の組合せの下に発癌実験を行った。
    右背皮下左背皮下
    I群葡萄糖+沃度醋酸O-アミノアゾトルオール
    II群葡萄糖O-アミノアゾトルオール
    III群沃度醋酸O-アミノアゾトルオール
    IV群葡萄糖+沃度醋酸オリーブ油
    V群葡萄糖+沃度醋酸
    VI群沃度醋酸
    VII群葡萄糖
    VIII群O-アミノアゾトルオール各群13例
    注射期間が1カ年である以外,注射量,注射間隔,飼育法は第I実験と全く同様であった。
    本実験においては第I実験に比し動物の斃死率は一般に大であったが,沃度醋酸,OAT併用注射群である第III群,及び沃度醋酸単独注射を行った第IV群で各々2例沃度醋酸注射部位に一致して腫瘍の発生をみたことは注目に値する。すなわち,第III群では250日以上生存せる9例中2例に,それぞれ287,456実験日に繊維肉腫を生じ,第VI群では500日以上生存せる2例の中1例に形質細胞肉腫を,1例に繊維腫を発生した。これに反し他の群では,第I実験の成績から按じて発癌期と考えられる250日以後においても,第II群に585実験日に発生したチスチセルクス肉腫を除き,1例の腫瘍発生もみなかったことはやや理解に困難な現象である。その原因として幾つかの理由を挙げ得るが,発癌性物質の相互作用についてはなお将来の研究が必要であろう。
    沃度醋酸の発癌性について今日まで報告せられたものは皆無である。われわれの実験結果から直ちに発癌率を云々することはもとより不可能であるが,注射局所の増殖性変化,ほぼ一定の発癌潜伏期,及び注射局所での発癌という事実より按じて沃度醋酸による肉腫発生と断じて誤りはないであろう。かつまた適当な飼育を行えば高率の発癌を期待することも不可能ではない。さてその発癌機序について考えてみるに,従来のわれわれの構想よりすれば,燐グリセルアルデヒド脱水素酵素(SH酵素)の抑制による六炭糖の蓄積によると考えられるが,他方沃度醋酸はひろく蛋白,SH基との結合が考えられるので,その結合による(燐グリセルアルデヒド脱水酵素をも含めて)酵素の抹殺乃至は蛋白構造の変化が発癌へ導くとの推定も可能である。
  • 田頭 勇作
    1954 年 45 巻 4 号 p. 619-629_2
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    動物の形質細胞腫はBloomが犬の大腿骨髄に自然発生したものを報告しているにとどまり,その他に記載をみない。われわれは葡萄糖肉腫の発生過程において,一沃度醋酸が如何に作用するかという点を実験的に検索中,単に一沃度醋酸のみを注射した一疋のラッテから悪性形質細胞腫と称すべきものの発生を認めた。
    この動物の実験条件をのべると,一沃度醋酸0.4gr/dl 0.5ccを隔日に皮下注射180回1年に及び,後放置,観察中,実験日数540日頃に右背皮下の注射部位に相当して,腫瘤を触知した。その後急速に大さを増し,556実験日には3.2×2.4×1.1cmとなり,硬度は弾力性鞏で皮膚面の著しい血管拡張は認め得なかった。562実験日に腫瘍は一部を除き軟化し始め,564実験日において斃死した。初期体重100g,末期体重185gである。腫瘍組織は直に組織学的検索に供するとともに,他方三疋のラッテに皮下乃至腹腔内腫瘍移植を試みた。
    剖検時皮下原発腫瘍の大さは3.6×3×1.6cmで粘稠血性の液状物及び軟い壊死状物をそれぞれ腫瘍の1/3程度含有し,皮下の底部に固着している。腫瘍自体は厚い結締織性の被膜を被り皮膚との癒着はないが,底部において筋層を破って腹腔内に浸潤している。後腹膜腔内に入った腫瘍は右側後腹壁に浸潤し,さらに腹部大動脈に沿って上行,横隔膜を全面において腫瘍化せしめてこれを突破し,前縦隔洞に大腫瘍を形成し,この中に心臓を擁し,さらに両肺内側を完全に侵している。肺は横隔膜面及び肺門から実質内に腫瘍浸潤を受けているが,肺実質と鋭利に境されており,その他に実質内の転移結節の撒布もみられる。胸水,腹水はないが旁大動脈淋巴腺の腫脹せるもの1個があり,腫瘍転移を認めた。腋窩,鼠蹊淋巴腺の腫大は認めなかったが,腋窩淋巴腺には組織学的に腫瘍転移を認めた。その他の臓器,例えば心,肝,脾,腎,骨髄等にはいずれも転移形成はなかった。
    腎では人の形質細胞腫例で注意されているような蛋白結晶,巨細胞などは認めないが,その細尿管には硝子円柱が散見された。
    固定切片標本の所見では腫瘍細胞は炎症組織におけると同様の比較的胞体の狭い形質細胞の型をとり,核周明庭を有し,核はいずれも定型的車輻状核で,人の形質細胞腫の如き大型の仁は認め難い。この間に巨細胞化せるものが混在するが,その場合には概ね胞体が狭小となっている。核分裂像もしばしば認められる。細胞内封入体はない。鉱銀繊維は一見多いように見えるが,腫瘍が間質内を発育しつつある関係で残存結締織に割込むことと関係あるらしく,個々の細胞との関係は明かでない。
    塗抹ギームザ染色所見も切片所見とほぼ同様であるが,ペルオキシダーゼ反応は陰性で,メチール緑,ピロニン染色の態度は正常形質細胞と異るところはない。
    超生体染色所見では,ヤーヌス緑染色糸粒体は比較的広く胞体内に分布するが,時に核周に集るものもある。中性赤空胞はその核周明庭部に数個集合性乃至分散して認められるものがあるが,これは一都である。墨粒貪喰能は陰性である(墨膜法による)。
    位相差顕微鏡によると糸粒体の状態はさらに明瞭で,正常形質細胞に比して細い短桿状の糸粒体が極めて多数認められる。元来糸粒休は分裂細胞では細短桿状化し数を増すが,この場合にはその傾向が著しい。なおこの方法で核分裂の各期を観察した。元来形質細胞の核膜には色素塊が鐘乳石の如く垂れ下っているが,この性質のために分裂前期の態度を明確に把むことは困難で,一般腫瘍細胞核に見る染色体の第一乃至第二収縮期の染色糸像を把えることは困難であった。そして第三収縮状態(中期への移行期)から初めて前期として確認し得る。これは天野が述べている如く形質細胞核が融合性前染色体状態にあり,容易に前期を通過して中期に至るためと考えられる。これに対して末期の染色体のほぐれてゆく像は確認し得た。
    腫瘍細胞の移植は主として腹腔,皮下において成功し第七代まで移植可能であった。その間睾丸,肝,骨髄,血液内等の移植も試みたがすべて失敗に終った。また移植動物の血液並びに腫瘍組織の蛋白像を電気泳動法により検索したが,グロブリン分屑における著明な変化を認め得なかった。唯,第4代の腹腔内移植例において移植後15日で強度の貧血を来し,脾においても髄外造血像を認めたことは人の形質細胞腫が高度の貧血を伴う事実と比較して興味深い。
    以上の細胞学的性状から本腫瘍細胞が形質細胞の性状と一致することはほとんど疑を入れないところであるが,その増生の性格が比較的緩徐であることから,一血球種の腫瘍性増生ではあるが白血性ではなく,むしろ比較的悪性度の強くない肉腫,従って形質細胞肉腫と呼ぶことが出来よう。また天野の述べる如く形質細胞が血管外膜細胞から発生するものである以上,それが骨髄腫以外の形で発生することのあるのは当然で,むしろその頻度の少きに疑問のある程である。
  • 高橋 剛男
    1954 年 45 巻 4 号 p. 631-636
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    2-Acetylaminofluorene (AAF) あるいは P-Dimethylaminoazobenzene (DAB) を白鼠に与え, 実験的に肝癌を生成する過程における肝のグァナーゼおよびアルギナーゼの活性度を測定検討した。
    最適酸度(pH 9)におけるグァナーぜ活性度は, 正常肝より肝癌に至る病変の進行過程には無関係にほとんど不変であったが, 他の酸度における活性度は病変の進行に応じてかなり減じてゆき, 肝癌では正常肝の1/2程度の活性度を示すにすぎなかった。
    アルギナーゼ活性度については, 従来の多くの報告と同じく病変の進行に応じて漸減し, 肝癌では正常肝の1/5を示した。しかして硫酸マンガンの存在の下では顕著に賦活された。
  • 一井 昭五, 稲葉 正子, 森 和雄
    1954 年 45 巻 4 号 p. 637-642
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    2-Acetylaminoflourene (AAF) あるいは p-Dimethylaminoazobenzene (DAB) を白鼠に与え実験的肝癌生成過程における肝ロダネーゼの活性度を測定した。
    初期の病変を示す肝ロダネーゼ活性度は正常肝に比し大差が認められなかったが, 硬変を呈した肝ロダネーゼはかなり低い活性度を示した。さらに癌化した肝のロダネーゼは正常肝の1/8~1/12程度を示すにすぎなかった。
    活性度の最高を示す酸度が肝の病変に応じて酸性域に移動した事実から肝癌生成過程における白鼠肝ロダネーゼは量的並びに質的に変化することを暗示している。
  • 岩鶴 龍三, 加藤 績, 玉置 治彦
    1954 年 45 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 1954/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    1. 胃癌胃液のメタノールによる沈澱 (トキソホルモン及びK. I. K. 因子を含む) 及び三塩素醋酸による沈澱 (トキソホルモンに相当) は, これを注射することにより, ダイコクネズミの肝カタラーゼ値を低下せしめるが, 三塩素醋酸で沈澱しない部分 (K. I. K. 因子に相当) はこの作用を有しない。
    2. 胃癌胃液のメタノールによる沈澱及び三塩素醋酸による沈澱は, これを注射することによりダイコクネズミの肝アルカリ性フォスファターゼ力価を低下せしめるが, 三塩素醋酸で沈澱しない部分 (K. I. K. 因子に相当) はこの作用を有しない。
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