本論文は,中学校理科における気象と気象災害の関連付けに関する学習に焦点を当てる.第2学年「気象とその変化」について,教科書を対象に降水に関する言葉に着目した内容分析を行った.気象災害と関連が深い降水の強さや量に関する言葉に着目すると,その使用頻度は教科書間に有意な差があった.また,降水の強さや量に関する言葉のうち,すべての教科書で使用されていた言葉である「降水量」「大雨」「雨量」について,いずれも主文での使用は一部の教科書に限られた.これらの結果から,内容分析の考え方に基づけば,降水の強さや量に関する内容とその表現の多様さ,その扱いの重点を置く度合いが,教科書によって大きく異なると推論された.客観的で再現可能なデータに基づくことで,教科書における降水に関する内容とその扱われ方について議論する点を明確化できた.
本研究では,簡単な模擬マグマの生成実験,流水のはたらき,および防災の役割を体験的に理解することのできる教材の開発を行い,これらの教材と既存の教材を組み合わせた小学校第6学年「大地のつくりと変化」の単元における学習プログラムを開発した.開発した学習プログラムは全て教室内で行うことができ,準備や片付けが容易であるということが特徴である.開発をしたプログラムを用いて授業実践を行ったところ,開発した学習プログラムは,新学習指導要領における3つの資質や能力をバランスよく育成しながら児童の地球に関する興味・関心を醸成できることが分かった.
理科教員志望学生を対象とした,「経験」と観察活動後の「リフレクション」を重視する野外観察実習プログラムを考案・実践した.その結果,類似した岩相を異なる露頭で複数回観察する,「往還的な内化と外化」を意図した観察活動の配置によって野外活動を通した学習とその定着が図られ,地質の専門家が作成した模式的な柱状図と実際の露頭とを対応させながら行う活動が観察視点の獲得に有効であることが示唆された.また,作成した複数の柱状図の比較を促す観察活動後のリフレクション活動は,学習者に自らの変容を認識させ,実習を通して何を学んだかを明らかにすることにつながった.
本稿ではスマートフォンアプリを用いた局地気温分布の移動観測の具体的方法と実習事例について概説した.従来,気温の移動観測を実施するためには気温と観測位置のデータを正確に記録する必要があり,データを密に観測するほど作業量が膨大になった.しかし,時定数の小さいデジタル温度計とGPSロガーアプリを使用することによって,観測中は一切機器の操作をせずに密なデータを得ることが可能となった.気温データは無料のGISソフトを使うことで地図上に簡単に表現することが可能であり,図化された観測結果と観測ルートの環境を比較することで,環境の違いと気温の差異について探究することができる.
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