本格的な天体望遠鏡システムのSTEM教育用教材としての可能性を調査するために,東京学芸大学40 cm望遠鏡を教材として桐朋中学校・高等学校の生徒を対象とした授業実践を行った.望遠鏡の光学系,観測プログラム,各種センサーについて,数学,理科,プログラミングとの関連を示しながら解説した後,生徒自身に望遠鏡の遠隔操作を体験させた.その結果,生徒は天文学と他教科の関係について理解し,望遠鏡システムそのものがSTEM教育の有用な教材に成り得ることが示唆された.
粉粒体層を水平短縮させて変形させる「粉粒体ウェッジ実験」は,断層と褶曲を観察するのに有効である.本研究では,多様な地層変形を短時間で作成できる教材を目指して実験装置と手順を作った.小学生を対象とした実践では,作った装置と手順により粉粒体ごとに多様な地層変形が高い再現性でできることを確認できた.今後,装置の改良や粉粒体の強度特性データを増やすことで,より充実した実験も可能になると期待される.
ヒートアイランド現象について,教科書調査ならびに教育学部の学生に対してアンケート調査を行った.高等学校「地学基礎」や「地理総合」の教科書では11冊中7冊がヒートアイランド現象を取り扱っており,定義は記載されているが要因や一般的な特性まで言及したものは少なかった.大学生の傾向としては,本来の定義や発生原因を理解できておらず,語句だけを知識として知っている傾向が見られた.
本研究の目的は,中学校理科単元「大地の成り立ちと変化」で学習する深成岩が地表で見られるしくみを用いた長大な大地の変化を実感させる授業を,身近な深成岩体を使って各地の中学校で実施できるようにするための材料を提供することにある.そのためにまず,日本の地表に露出する深成岩体の固結深度について文献調査を行った.その結果,固結深度が求められた深成岩体は39例で,その範囲は2~27 kmであった.次に,生徒の身近にある深成岩の固結深度を用いて深成岩が地表で見られるしくみの学習を行った結果,少なくとも10%の生徒が本しくみを正しく理解したうえで,大地の長大な変化を実感できたことが明らかになった.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら