環境教育，ESD, SDGsを踏まえた中学校理科の自然災害に関する学習において，ジオパーク活用の意義を明確化し，解説したうえで，ジオパークの活用の課題について考察した．ESD,環境教育には「持続可能性」という視点から，防災教育が含まれ，それを効果的に学習するフィールドとして，日本のジオパークが適していることなどを示した．また，教科書準拠の副読本の作成・活用，教育課程に準拠した学習指導案の作成及びジオパークにおける専門的な知識を有した講師の活用など，効果的に活用するための手立てを講じることで，ジオパークの活用が促進され，中学校理科の自然災害に関する学習の充実を図ることが可能であることを指摘した．

小学校5年理科，流れる水の働きの学習で科学専門家と担任教師が連携して行う授業を広島県内の6校で行った．授業では筆者らが開発した流水モデル装置による流水の作用の実験とともに土石流，洪水・津波の再現実験とそれらの動画視聴を取り入れている．授業における児童の反応及び授業後の自由記述形式の児童アンケートの分析結果から本連携授業は児童の防災認識を高めるうえで一定の成果があったと判断した．

土石流に特徴的な現象の一つとして挙げられる，流下に伴って粒径の大きい岩塊が先頭部に集中する現象について， 2つのモデル実験教材の開発を行った；実験1：混合粒径のカラーサンドが入ったビーカーを振って挙動を観察する実験；実験2：ガラスビーズ（小・中・大）を入れた瓶を斜面で転がす実験．実験1では，粒径の大きな粒子が上端に浮かび上がり，逆級化構造を示す様子が観察された．実験2では，ガラスビーズ（小）とガラスビーズ（中）の量比により結果が異なり，それらの量比が実験の成功に重要であることがわかった．これらの2つの実験によって，土石流の先端部に巨礫が集中する現象を，実感を伴って理解できる．

ハザードマップを用いた効果的な防災教育の開発を目的に，学習者の認識調査と試行授業を行った．ハザードマップの認識調査では，「危険度がわかる」，「避難場所がわかる」などの情報に関わる側面の認識は高いものの，想定の読み取り状況との間に関係性は確認されなかった．一方，「備える」，「情報弱者への配慮」などといった防災意識を保有する者の割合は低かったものの，想定の読み取り状況との間には関係性が確認された．また，改訂前と改定後のハザードマップを比較し，ハザードマップが示す限界を理解させる学習は，ハザードマップのリテラシーと防災意識の向上に効果があることが示唆された．

本研究では，高校生に高潮の理解を図ることを目的として棒磁石と方位磁針を使って台風の進行方向に向かって右側と左側とで風向の時間変化が異なる様子を再現するモデル教材，および台風通過時のアメダス気象観測データを利用したパソコン実習とモデル教材を利用した風向変化を調べる実習の授業プログラムを開発し，試行授業を通して，その有効性を調べた．その結果，授業は台風について詳しく調べたいという意欲を促し，生徒にとって楽しい授業であった．授業プログラムは台風移動に伴う風向の時間変化と高潮発生の仕組みの理解に役だった．