日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第20回大会
選択された号の論文の109件中101~109を表示しています
ポスター
  • 星野 祐司
    セッションID: P2-B15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    作動記憶の処理には限界があるため,状況に応じて作動記憶の内容は更新されると考えられる。知覚された手がかりによる更新を検討するために,画面上に複数のドットを短時間提示し,それらの一部を移動させ,提示直後に移動したドットの数を推定する実験を行った。先行研究では,移動する複数のドットが異なるタイミングで移動を終了する提示条件で,同時に終了する提示条件よりも,実験参加者による推定数が少なくなることが確認されている。本実験では移動ドット数が少ない条件と多い条件を比較し,移動ドット数を推定するために実験参加者が用いる方略の影響を検討した。37名が実験に参加し,どちらかの条件に無作為に割り当てられた。両条件において,異なるタイミングで終了する提示条件での推定数減少が見られ,方略の影響は示されなかった。実験結果は作動記憶における忘却とドットの移動終了と事象分節化との関連性を示唆すると考えられる。
  • 池田 寛香, 楠見 孝
    セッションID: P2-B16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    懐かしさとは,自伝的記憶の想起時に生じる感情である。自伝的記憶は一度きりの出来事,繰り返される出来事,自伝的事実,自己知識などの抽象度が異なる記憶によって構成される。しかし,懐かしさ生起時に想起された記憶内容を分析した先行研究は数少なく,懐かしさのトリガーである記憶の抽象度と感情強度の関連性については不明な点が多い。この点を検討するために,大学生55名を対象とした自伝的記憶の想起・記述・評定の実験を行った。その結果,小学校時代の繰り返される出来事と自伝的事実の想起は,自己知識の想起よりも強い懐かしさを伴った。また,高校時代における一度きりの出来事と繰り返される出来事の想起は,他の記憶よりも強い懐かしさを伴った。これらの結果は,現在からの時間の距離 (または人生の時期)によって強い懐かしさを伴う記憶が異なること,抽象度が低い記憶と高い記憶の双方が懐かしさの生起を支えていることを示唆している。
  • 瀧川 真也, 横光 健吾
    セッションID: P2-B17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    過去の経験を他者に伝える際,実際の経験よりも誇張したり,過小に表現したりすることがある。先行研究により,人が自身の経験を他者に伝える際,半数以上に何らかの修正(自伝的編集)が行われることが明らかとなっている。このことから,ギャンブル依存において,ギャンブルに関する自身の記憶を歪めることで,ギャンブル行動が強化されると考えらえる。そこで,本研究では,ギャンブル依存傾向と自伝的編集との関連を明らかにすることを目的とした。日常的にギャンブルを行っている一般成人221名を対象にオンライン調査を行ったところ,対象者の60%以上が自身のギャンブル体験を正確に他者に伝えたと評価したが,一方で,そのうちの30%がなんらかの自伝的編集を行っていた。また,ギャンブル依存傾向が高いほど,自伝的編集を多く行っており,ギャンブル経験を誇張したり,実際にはなかったことを付け加えて他者に伝えていることが明らかとなった。
  • :意味的体制化の影響と加齢変化
    岩根 榛花, 原田 悦子
    セッションID: P2-B18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    地図にあるランドマークの位置や関係を尋ねると,意味的に関連するランドマーク間の距離が,そうでないランドマーク間の距離に比べて短く想起されることが知られている(Hirtle & Mascolo, 1986)が,そうしたランドマークの意味的関連性の影響は,高齢者では小さいとの報告がある(Thomas et al., 2012).しかしこれらの先行研究では,地図を記憶するようにとの教示をした課題が用いられており,日常的な空間探索や地図利用の結果としての地図の記憶とは異なる可能性がある.そこで本研究では,地図上で指定されたターゲットを探索するという課題を作成し,高齢者と若年成人各20名に実験を実施した結果,若年成人ならびに高齢者群いずれにおいても,意味的に関連するランドマーク間の距離が短く推定される意味的関連性の効果が示された.加齢変化と意味処理の有効性の関係について考察する.
  • —平面作品と立体作品の相違—
    藤木 晶子, 西原 進吉
    セッションID: P2-B19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
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    折り紙は,一枚の紙を折ったり,曲げたりしながら形を変化させ,一つの作品を作り上げる行為である。本研究では,この折り紙作品を制作する過程を心の中でシミュレートする際にどのような認知機能が関わるのかを,折り紙イメージの鮮明性を測定する質問紙調査によって検討した。とくに,『手の感覚』,『折り紙操作の統御性』,『形に関する視覚イメージ』,『色に関する視覚イメージ』の4つの折り紙イメージ因子が立体作品を制作する場合と,平面作品を制作する場合に,どのような質的相違があるのかを検討した。具体的には,心的操作能力を代表する剛体変換と非剛体変換が折り紙イメージとどのような関連性があるのかを検討した。その結果,立体折り紙イメージの場合には,剛体変換能力と非剛体変換能力の2種類の心的操作能力が利用されていたが,平面折り紙イメージに関しては,非剛体変換能力のみの関与が示唆された。
  • 大塚 遥音, 浅野 倫子
    セッションID: P2-B20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    Orghian & Hidalgo (2020) は、ノイズにより部分的に遮蔽された顔は、ノイズのない顔よりも魅力度が上昇することを明らかにし、魅力度の高い平均顔によって情報の不足を補完しているため魅力度が上昇すると解釈した。しかし、これはあくまで間接的な解釈である。本研究は形態情報の不足した顔の観察時における平均顔補完の可能性についてより直接的に検証することを目的とした。顔を観察し、その顔の典型性(平均顔との距離) を操作した選択肢の中から観察したと思う顔を選択するBest Likeness課題と、顔の典型性評価を行った。その際,観察対象の顔のノイズの有無を操作した。 Best Likeness課題の結果、ノイズのある顔を観察したときはノイズのない顔を観察した時よりも典型性の高い顔がより多く選択された。一方ノイズの有無による典型性評価の違いはなかった。Best Likeness課題の結果より、形態情報の不足した顔の観察時には平均顔補完が起こることが示唆された 。
  • 細川 亜佐子, 北神 慎司
    セッションID: P2-B21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    アレキシサイミアは自己の感情認識に乏しい性格傾向であり,他者への共感性も低いことが示唆されている。アレキシサイミア傾向が高い場合,共感性を介した互助に結びつきにくく,精神的健康の問題を抱えやすい。他方,感情制御方略は,精神的健康と関連し,心理臨床への応用が期待されている。感情制御方略はアレキシサイミアと共感性の関係に影響すると考えられるが,その関連性は明らかにされていない。そこで,本研究はアレキシサイミア傾向による共感性の抑制効果が感情制御方略によって異なるのかを検討するため,質問紙調査を実施した。その結果,アレキシサイミア傾向が高いほど共感性は低下するが,物事の捉え方を変えることでネガティブ感情を緩和する「再評価」方略の使用傾向が高いと,認知的共感性が高くなることが示唆された。したがって,感情制御方略を調整することで,アレキシサイミア傾向による共感性の抑制を低減する可能性が考えられる。
  • —「●は▲ではない」を我々はいかに判断しているか—
    金城 光, 齊藤 俊樹, 竹馬 望, 濵田 歩実, 熊本 颯雲
    セッションID: P2-B22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    命題文に否定が含まれると真偽判断の正確さや反応時間が異なる。たとえば「24は奇数ではない」(真否定)は、肯定文の真偽判断よりも正答率が低く、反応時間が長くなる(Wason, 1961)。本研究では、論理構造が同じであれば刺激が異なっても上記と同様の反応傾向が認められるのかについて、一般常識についての単文(例「バナナはリンゴではない」)、図形についての単文(●は▲ではない)、図形についての数式(●≠▲)の3つの課題で検討した。また、論理判断に至るまでの個々の認知処理時間も測定した。実験はオンラインで行われ、大学生・大学院生23名が参加した。結果、正答率では課題の主効果と交互作用はなく、命題の種類の主効果があり、真肯定=偽肯定>偽否定>真否定の順に高かった。反応時間では課題の主効果と交互作用があり、全課題で真否定=偽否定>真肯定の関係が認められた。これらの結果から刺激の体裁によらない反応傾向の頑健性が確認された。
  • 尾崎 翼, 立花 大希, 橋本 芳, 佐々木 恭志郎
    セッションID: P2-B23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    2020年から続くコロナ禍でマスク着用生活を余儀なくされている。マスク着用は,表情や印象の評価などの顔の認知処理を変調することが示されている。本研究では,さらにマスクの着用が年齢推定にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。成人の顔写真 (無加工写真) について,若く見えるように加工した写真 (若加工写真) と老いて見えるように加工した写真 (老加工写真) を作成した。さらに,これらの3種類の写真に対してマスクを合成した写真 (マスク有条件) と合成を施す前の写真 (マスク無条件) を刺激として用いた。参加者の課題は,これらの顔写真の年齢を推定することであった。実験の結果,マスク有条件に比べて,マスク無条件の方が年齢加工の影響が顕著であった。これらの知見は,顔の比較的下側の局所特徴 (口元など) が年齢の推定をある程度左右することを示唆している。
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